【サンプルあり】RFP(提案依頼書)の書き方を一からわかりやすく解説
RFP(提案依頼書)は、システムの導入や開発を発注したい企業が、候補となるシステム開発会社(ベンダー)に依頼内容や要件を提示する資料です。
本記事では「RFPに何を書けばいいのかよくわからない」という方に向けて、RFPの書き方をサンプル付きで一から解説しています。専門知識がない方にもわかりやすく紹介するため、ぜひRFP作成時の参考にしてください。
参考:RFP(提案依頼書)とは?意味、4つのメリット、作成手順・注意点をわかりやすく解説
RFPの構成|全体像の把握
概要 | 提案依頼内容 | 選考の進め方 |
本書の目的 | 受注側の会社情報 | 選考スケジュール |
プロジェクトの背景 | 提案システム概要・構成 | 提案書提出先 |
現状の課題 | 機能要件 | 評価基準・方針 |
システム化の目的 | プロジェクトのスケジュール | |
ゴール | プロジェクトの体制図 | |
プロジェクトの範囲 | 成果物 | |
会社情報 | サポート体制 | |
現行のシステム構成 | 概算費用 | |
機器情報 | 制約事項 | |
契約内容 |
RFPを作成するまえに、まずは記載する情報の全体像を把握しておきましょう。
RFPに記載する情報は、大きく「概要」「提案依頼内容」「選考の進め方」の3つに分かれます。
概要
「概要」は、自社の現状や解決したい課題、目指すべきゴールなど、本プロジェクトの全体像をベンダーに伝える部分です。
本書の目的 | 何のためのRFPなのか |
プロジェクトの背景 | システム導入を検討することになった自社の環境や経営的背景 |
現状の課題 | 現状抱えている課題や解決したい問題 |
システム化の目的 | 何のためにシステム導入を行うのか |
ゴール | 品質・費用・納期 |
プロジェクトの範囲 | IT機器の購入や保守の有無など |
会社情報 | 発注側の会社概要や組織図 |
現行のシステム構成 | 現在使用しているシステムやソフトウェアなど |
機器情報 | 現在使用しているサーバやPCなど |
提案依頼内容
「提案依頼内容」は、どのような情報を盛り込んで提案書を作成してほしいのかをベンダーに伝える部分です。
受注側の会社情報 | 提案内容に関連するすべての会社・組織の情報 |
提案システム概要・構成 | 提案システムにおける情報提示の方法・手段 |
機能要件 | システムに盛り込んでほしい機能や不要な機能など |
プロジェクトのスケジュール | 要件定義~リリースまでの全体スケジュール |
プロジェクトの体制図 | プロジェクト参画メンバーの経歴やマネジメント方法など |
成果物 | 納品を希望する成果物の一覧 |
サポート体制 | 納品後のサポート・運用体制 |
概算費用 | 初期費用・月額費用の見積 |
制約事項 | 現時点で明らかになっている制約事項やリスク |
契約内容 | 契約内容や支払い方法 |
選考の進め方
「選考の進め方」は、ベンダーから提案書を受け取ったのちにどのような手順で選定を行うのか、どのような基準で評価をするのかを伝える部分です。
選考スケジュール | 提案書の提出期限、プレゼン日程、選考結果の連絡日、選考結果連絡の方法など |
提案書提出先 | 提出先名称、住所、担当者氏名、メールアドレスなどの連絡先 |
評価基準・方針 | 評価する際に重視するポイントや採点方法など |
RFPの「概要」の書き方
ここからは、RFPの「概要」の具体的な書き方を項目ごとに解説します。
サンプルにしたがって作成できるよう紹介するため、専門知識は不要です。ぜひ参考にしてください。
表紙
営業支援システム導入プロジェクト提案依頼書(RFP) 本書は、XXX株式会社の営業支援システム導入に際して、営業支援システム選定に関するベンダーへの提案依頼内容を取りまとめたものである。 YYYY年MM月DD日 XXX株式会社 |
表紙には、自社の会社名とプロジェクト名、提案依頼書の目的を記載します。
本書の目的
現在、XXX株式会社では営業効率の向上を図り、営業支援システムの導入を計画しています。 本書(提案依頼書/以下RFP)の目的は、貴社が提供可能なご支援内容について取り纏めていただく際に参考となる、XXX株式会社の基本情報やプロジェクト要件を示すことです。 当社では、貴社からの提案書をもとに本プロジェクトの発注先を選定させていただきます。 |
読み手側に本書の全体像が伝わるよう、RFPの目的や位置づけを端的にまとめます。
プロジェクトの背景
当社ではエクセルによる顧客・案件管理を行ってきましたが、管理方法が支店によって異なり情報管理の負荷が増大しています。また、案件の属人化による対応の抜け漏れが目立ち、クレームの発生も増加傾向にあります。 このような現状を解決するとともに、さらなる業績向上を図り営業効率を改善すべく営業支援システムの導入が求められています。 |
「なぜこのプロジェクトが発足したのか」がわかるよう背景を記載します。
現状の課題
●案件情報の把握 担当以外の案件情報をキャッチアップできず、対応の遅延や抜け漏れが発生しており、営業活動における応対品質が低下しています。 ●データの利活用 エクセルへ入力する情報に統一性がなく、データをマネジメントに生かしきれていない状態となっています。 ●データ管理 エクセルに入力されたデータを集約・資料作成する手間がコア業務を圧迫しています。 ●現場担当者の教育 過去の情報や成功事例を蓄積できておらず、営業担当者の教育はマネージャーの経験と勘により行われています。結果として人材育成が進まず、受注率低下の要因となっています。 |
現状抱えている課題について記載しましょう。箇条書きや図表を用いて情報を整理すると、読み手に伝わりやすくなります。
システム化の目的
上記背景および課題をふまえ、当社ではシステム化の目的を以下のように設定しました。 ・顧客・案件管理の自動化による応対品質および業務効率の改善 ・情報の一元化によるデータの利活用促進 ・情報共有の円滑化によるマネジメント精度の向上 |
本項目では「何のためにシステムを導入するのか」を明確に記載します。現状の課題と同様、箇条書きの下に詳しい説明を記載してもよいでしょう。
ゴール
●品質(Quality) 現課題がすべて解決されること 業務で使用する全画面において検索、保存、更新の処理が3秒以内に完了すること システム稼働日には、営業支援システムを活用する全従業員が活用方法を十分に理解している状態であること ●費用(Cost) 見積金額以内でプロジェクトを完了させること ●納期(Delivery) YYYY年MM月DD日までにシステムを稼働させること |
プロジェクトのゴールは「品質(Quality)」「費用(Cost)」「納期(Delivery)」ごとに設定します。
プロジェクト終了後に行う成果の評価がしやすくなるため、できる限り定量的な指標を用いましょう。
プロジェクトの範囲
・営業支援システムの構築・導入 ・サーバなど必要なIT機器の購入・設置・設定 ・新業務フローの定義 ・新システム運用マニュアルの作成 ・新システム運用保守体制の確立 ・関係各所への導入支援 |
プロジェクトのうち、受注側に提案を依頼したい範囲を記載しましょう。
システム構築のみを依頼したいのか、IT機器の設置・設定までお願いしたいのかなどを明確化することで、受ける提案の精度を向上させる効果があります。
会社情報
・会社名:XXX株式会社(https://www.xxx.co.jp/) ・代表者:代表取締役社長 〇〇 ・設立:YYYY年MM月DD日 ・資本金:〇〇億円 ・年商:〇〇億円 ・従業員数:〇〇名 ・事業内容:〇〇の開発、販売、運用 ・本社所在地:東京都中央区銀座◯-△ ・組織図 |
自社の会社概要を記載します。
システム上の権限管理が必要な場合があるため、組織図もあわせて添付しましょう。組織図がない場合は、必要事項を箇条書きで記載しても構いません。
現行のシステム構成
現在は、従業員それぞれのPCにインストールされたエクセルを用いて案件・顧客情報を管理しています。 使用しているPCはすべて社内LANに接続されており、共有フォルダを通して関係各所へ情報が共有されています。 |
新システムの導入が既存システムへどのような影響を及ぼすのかを明確化するため、現行のシステム構成を記載しましょう。
使用しているシステムが複数ある場合は、システムの構成を図式化し、パッケージ名やデータの連携方法を記載するとわかりやすくなります。
機器情報
●サーバ(4台) Windows Server 2019搭載 ●クライアントPC(50台) 機種:ASUS Vivobook 15X OS:Windows 11 Home 64ビット ●タブレット(10台) iPad Air 32GB |
現在社内で使用しているPCやサーバなどの台数とスペックを種類別に記載します。
RFPの「提案依頼内容」の書き方
続いて、RFPの「提案依頼内容」の書き方をサンプル付きで解説します。
受注側の会社情報
ご提案の内容に関連するすべての会社、組織を明示のうえで提案書の作成をお願いします。 プロジェクト内に再委託する役割がある場合はその相手先、内容も明示してください。 |
本来、受注側の会社情報はRFI(Request for information:ベンダーの企業情報や製品情報の提示を依頼する書類)を作成することで得られるため、RFIを作成している場合は本項目の記載は不要です。
RFIの作成を省略し、RFPのみを用いて発注先を選定する場合は、本項目でベンダー側の情報開示を依頼します。
ベンダーの得意とする業界を探る意味でも重要な役割を果たすため、しっかり提示してもらいましょう。
提案システム概要・構成
概要 ・システムの機能一覧を明示してください。 ・主要機能の画面キャプチャを提示してください。 ・システムの機能拡張が予定されている場合、現時点で判明している範囲で明示してください。 ・他社製品に対する優位性、特に当社に適合する点があれば補足をお願いします。 構成 ・システムを構成するハードウェアに必要なスペック情報を明示してください。 ・システムのハードウェアとネットワーク構成図を明示してください。 ・オンプレ型かクラウド型かサービスの利用体系を明示してください。 |
ベンダーから提案してもらうシステムについて、どのような形で情報を提示してほしいのかを記載します。
機能要件
以下の機能要件を満たす営業支援システムのご提案をお願いします。 1.案件管理機能 ・案件ごとに顧客、営業担当者、商品、売上金額などを紐づけて管理できる機能 ・案件管理画面上で、表示する項目や順序を顧客ごとに設定できる機能 ・案件管理画面上で、見込み客の購買意欲を一覧表示できる機能 2.案件シナリオ機能 ・営業活動におけるタスクをシナリオ化し、進捗を可視化できる機能 ・当日のスケジュールや期限切れタスク等が各担当者に通知される機能 ・シナリオをテンプレート化できる機能 3.予実管理機能 ・営業プロセスごとの受注予定金額をグラフで可視化できる機能 ・営業担当者が活動報告をするとリアルタイムで情報が反映される機能 ・営業担当者が外出先で情報を入力できる機能 |
システムにどのような機能を実装してほしいのかを具体的に記載します。
詳細な機能要件は、発注の際に用意する「要件定義書」に記載しますが、RFPにもできる限り機能要件を記載しておくことがスムーズな提案を受けるコツです。
プロジェストのスケジュール
週単位の全体スケジュールを明示してください。 全体スケジュールの中で発生するタスクを、担当(貴社/当社/委託先など)がわかるように明示してください。 |
発注先の決定から導入にいたるまでの全体スケジュールを、週または月単位で明示してもらいます。
プロジェクト遂行に際して「自社が担うべきタスク」が明確化するように提示を依頼しましょう。
プロジェクトの体制図
プロジェクトに参画するすべてのメンバーとその役割を明示してください。現時点で確定していないメンバーは「未確定」とし、役割はすべてを網羅するようにお願いします。 また、プロジェクトマネージャーの方の経歴を示す資料の提示もお願いします。 |
本項目では、プロジェクトをどのような体制で推進するのかを明示してもらいます。
プロジェクトマネージャーの能力がシステム導入の成否を分けるため、経歴はかならず記載を依頼しましょう。
成果物
納品物の内容や形態を一覧で提示してください。また、納品物のうち数点のドキュメントサンプルの提示をお願いします。 |
後のトラブルを防ぐためにも、あらかじめ納品物を明示してもらうことが大切です。納品を希望する成果物が決まっている場合は、箇条書きで記載しても構いません。
また、納品予定のドキュメントの品質を確認するうえで、過去のサンプルは必ず提示してもらうことをおすすめします。
サポート体制
システム本稼働後のサポート体制、窓口の対応フローと受付時間、緊急時窓口、SLAなどを明示してください。 また、対応に時間を要する場合に業務へ支障を与えない運用方法についても明示をお願いします。 |
システムに障害が起こった際、どのような対応をしてもらえるのかを事前に確認しておくことが大切です。
概算費用
初期費用は、システム開発費、機器購入費、ミドルウェア購入費、ユーザー教育費など項目別の合計金額とその内訳がわかるように明示してください。 月額費用は、システム保守費、ネットワーク費、サポート費など項目別単価とその内訳がわかるように明示してください。 |
概算費用は、初期費用、月額費用別に明示してもらいます。
合計額のみでは金額の妥当性が判断できず、費用交渉が難しくなるため、内訳まで明示してもらうことがポイントです。
制約事項
今回のプロジェクトに関して、現時点で明らかな制約事項やリスクについて提示してください。 |
制約事項とは、データの登録数や同時にアクセスできる人数の制限などのことです。これらが稼動直前に見つかると、スケジュールの遅延や追加費用の発生を招くおそれがあります。
現時点で判明している制約事項は忘れずに明示してもらいましょう。
契約内容
契約内容と支払い方法について明示をお願いします。 項目別に契約内容・支払い方法が異なる場合や、複数回に分けて支払いが発生する場合は、そのことがわかるよう明示してください。 |
トラブルの原因となる要素(口約束や認識相違など)をできるだけ排除するため、契約内容の明示を依頼します。
規模の小さいベンダーは支払方法にも制約が発生する可能性があるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
RFPの「選考の進め方」の書き方
RFPにおける最後のパート「選考の進め方」の書き方を詳しく解説します。
選考スケジュール
選考に関しては以下の日程での進行を計画しております。日程に不都合がある場合、あらかじめ希望する日程をご連絡ください。 YYYY年MM月DD日:提案書締め切り YYYY年MM月DD日~MM月DD日:提案書の内容精査、提案プレゼン YYYY年MM月DD日~MM月DD日:提案内容に対する質問と回答 YYYY年MM月DD日~MM月DD日:社内合意 YYYY年MM月DD日~MM月DD日:発注手続き YYYY年MM月DD日:プロジェクト開始 |
選考スケジュールは、自社が想定しているスケジュールを記載します。
提案依頼書の送付から提出までは2週間程度を要することが一般的ですが、規模が大きいシステムの場合はさらに期間が必要になる場合もあります。
ベンダー側の意向も反映しつつ、スケジュールの見直しを求められた場合は再検討する判断も必要です。
提案書提出先
本RFPに基づき、貴社が取り纏めいただいた提供可能なご支援内容についての提案書は、電子ファイル形式で以下の宛先まで提出をお願いします。 XXX株式会社 担当部門名 担当者名 メールアドレス 提案書はYYYY年MM月DD日17:00までに提出をお願いします。 期限を過ぎてもご提出いただけない場合、選定対象外とさせていただくことがございます。あらかじめご了承ください。 |
「いつ」「誰に」「どのような方法で」提案書を提出するのかを記載します。
評価基準・方針
貴社から頂いた提案に対して、以下の観点から評価を実施する予定としております。 1.ソリューション評価 ・本RFPに記載の要件をすべて満たし、かつ運用に必要十分な機能を有していること ・機能の追加が短期間・低費用で実現できる拡張性の高いものになっていること ・制約事項が明確になっていること ・システムならびにデータの信頼性、可用性、保全性が高いものになっていること ・機密漏えいや改ざん等が起きにくい機密性の高いものになっていること ・障害発生時、迅速に復旧できる体制が整っていること ・マニュアルやヘルプデスクサポートが充実しており、ユーザーの問題解決が迅速に行えること 2.マネジメント評価 ・本プロジェクトの位置付けを正しく認識していること ・プロジェクトマネージャーの経歴が十分であること ・プロジェクトに参画するメンバーの資質・能力が十分であること ・プロジェクト全体で発生するタスクの内容と責任範囲が明確になっていること 3.価格評価 ・初期費用および月額費用が優れた価格提案であること ・初期費用、月額費用それぞれの内訳が明確になっており、算出根拠の合理性が理解できること 4.ベンダー評価 ・貴社の事業継続性、安定性が十分であること ・貴社に十分な過去実績があること |
選定時に何を重視するのか、評価のポイントを記載しましょう。
評価ポイントが明確化されることで、自社の意図に沿った提案をもらえる可能性が高くなります。
RFPはシステム導入成功の鍵を握る
本記事では、RFPの書き方を一から具体的に解説しました。
ぜひ自社の状況にあわせてサンプルをカスタマイズし、RFP作成の一助にしていただければ幸いです。
営業ラボでは、営業活動を効率化させるためのさまざまなノウハウを提供しています。
営業部門においてシステムの導入を検討している方は、候補となるベンダーを絞り込むうえで以下の資料もご活用ください。