売上予測の計算方法をわかりやすく解説|精度を高めるツールも紹介
売上予測とは、過去実績や社会情勢を考慮して、将来の特定期間の売上を予測することです。経営戦略などを立てる際の重要な指針となるため、SFAツールなどを活用した精度の高い売上予測が求められます。
本記事では、売上予測の計算方法や精度を高めるための方法を解説します。
売上予測とは
売上予測の定義と、似て非なる言葉である「売上目標」との違いを説明します。
売上予測とは
売上予測とは、過去の実績や自社の成長率、業界・市場動向、トレンドなどのデータをもとに、将来のある一定期間の売上を予測することです。
売上予測により将来的な利益を見きわめられるため、経営戦略や営業戦略を立てる際の重要な指針となります。
また、客観的で根拠のあるデータを用いて高い精度で算出すれば、予算や人材などリソース配分も適切に行えるでしょう。社内だけではなく、金融機関やステークホルダーなどへの交渉や説明材料としても活用できます。
売上予測と売上目標の違い
売上予測も売上目標も、過去の実績などを踏まえて設定する点では同じです。
売上予測は客観的・定量的なデータを用いて正確性を重視します。それに対し、売上目標には「今後このくらいの売上をあげたい」といった、期待値や理想などの主観的な要素が含まれ、人により計算結果が変動します。
売上目標は売上予測をベースにして、従業員のスキルアップや戦略改善の期待や効果を上乗せした数値といえるでしょう。
売上予測を立てる重要性
売上予測を立てることで、在庫・人材の最適化や適切なキャッシュフローの管理などが可能となり、社内外への説得材料としても役立ちます。ここでは、売上予測が重視される5つの理由を解説します。
適切な在庫管理ができる
売上予測を立てることで、適切な在庫管理が可能となります。売上予測に基づき生産すべき数や必要な部品、原料数を把握できれば無駄な発注を抑えられ、適正在庫を実現できるでしょう。
人材やリソースの最適化が可能になる
売上予測を立てれば、売上見込みが少ない部署から売上増となって人員不足になりそうな部署にスタッフの異動を行うなど、配置すべき人数も把握できます。正確な売上予測ができていれば、人的リソースの適正維持につながります。
適切な売上目標を設定できる
売上予測がないと、実現不可能な高すぎる売上目標を設定しかねません。売上予測によって実態に即した目標を設定でき、現実的かつ利益を最大化できる目標数値の具体化が可能となるでしょう。
適切な予算やキャッシュフローの管理ができる
売上予測を立てておけば、適切なキャッシュフローの管理にも役立ちます。
順調に売上が伸びていればさほど問題ではありませんが、売上が伸びなかった場合は資金繰りが悪化して会社が危機に陥ることもあります。売上予測を正確に算出していれば、キャッシュフロー上のトラブルが減少し、経営のリスクも抑えられるでしょう。
ステークホルダーとのコミュニケーションが円滑になる
金融機関への資金繰り相談では、売上予測を用いた事業計画書の提出が求められます。また、株主とのコミュニケーションにおいても、根拠のある客観的なデータから算出された売上予測を活用すれば、説得力が増すでしょう。
売上予測に必要なデータとは
業界や製品、サービスによって多少の差異はありますが、精度の高い売上予測を行うには、おおよそ以下のようなデータを揃えておくとよいでしょう。売上高や契約までの期間、平均成長率などの基本的なデータのほか、業界や景気の動向なども必要に応じて用意しましょう。
- 期間別の売上高
- 製品・サービス別の売上高
- リードタイムの平均値
- 見込み顧客の契約率
- 平均的な契約期間
- 製品・サービスの更新率・解約率
- 案件数
- そのほか業界、製品、サービスにより必要なデータ など
売上予測を計算する方法
売上予測の計算方法には、大きく以下の2種類があります。必要なデータを揃えたら、いずれかの方法を活用して算出しましょう。
過去実績をもとに算出する
過去の売上実績から予測を立てる計算方法は、以下のようになります。
「売上予測=1年間の売上×年間平均成長率」
たとえば、一昨年の売上が1,000万円で昨年が1,100万円だとすると、年間平均成長率は10%となります。これにより今年の売上予測は、1,100万円×1.1=1,210万円となります。
販売から日が浅くしっかりした過去データがない場合には使えませんが、直近2年分の売上データがあればこの計算式で算出可能です。過去データのほかに季節要因や業界特有の変動要因などを加味すれば、より正確な予測ができるでしょう。
営業パイプラインをもとに算出する
営業パイプラインとは、案件の獲得から受注に至るまでのプロセスのことです。売上予測は、営業パイプラインを活用した方法でも算出可能です。
過去の初回訪問→ヒアリング→提案→見積→受注のプロセスに沿って、今月の初回訪問件数やヒアリング件数、提案件数など各ステージごとに予測をします。そこから受注に至るまでの過去の平均値をあてはめれば、今月の売上予測を出せます。
営業パイプラインをもとに算出すれば、データの蓄積が少ない新商品でも、1週間や1カ月程度の営業実績から暫定的な予測を立てられます。また、顧客の属性に合わせた売上を予測でき、従業員の取るべき行動が明らかになるのも特徴です。
参考:【図解】パイプライン管理とは?効果的な営業マネジメント方法について徹底解説
売上予測の精度を高めるには
精度の高い売上予測を行うには、算出基準の統一や情報共有の体制づくりなど、社内環境の整備が必要です。また、正確なデータを蓄積して効率的に分析、活用できるツールの導入も検討しましょう。
算出基準を統一する
各部署で売上予測を立て、その後にまとめて全社の売上予測を立てる場合は、算出基準が揃っていないと精度が低くなる可能性があります。何を基準に算出するかをあらかじめ決めておき、社内で統一しておきましょう。
情報共有体制を整備する
売上予測を効率的に行うには、データや各種情報をリアルタイムで把握、共有できるしくみを整えることも重要です。
メンバーのスケジュールや売上、行動を一元管理することで、マネージャークラスはリアルタイムで情報を把握でき、課題やトラブルが起きてもスピーディに解決できるでしょう。また、目標を全員で共有できれば、組織としての意思統一を図ることも可能です。
SFAツールを導入する
SFAとは、「Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)」の略語で、営業支援システムのことです。
SFAツールを導入すると大量のデータを扱うことができ、分析手法の知識がなくても精度の高い予測を立てられます。従業員の負担が軽減され、営業活動の効率化を実現できるでしょう。
参考:営業の仕事を助けるSFA(営業支援システム・ツール)とは? ~ SFAの基礎知識
SFAツールを活用して精度の高い売上予測を立てよう
売上予測は経営戦略構築の指針になり、ステークホルダーに対する説得材料としても活用できます。また、在庫管理や人材・資産などのリソースの最適化も実現できるため、できるだけ精度の高い予測を行いたいものです。
売上予測の計算方法には、過去実績を使う手法と、営業パイプラインをもとに算出する方法の2種類があり、状況に応じて選ぶとよいでしょう。また、SFAツールを活用すると誰でも簡単に高精度な売上予測が可能となり、営業活動の効率化につながります。
従業員の負担を軽減しながら適切な売上予測を実現したいなら、SFAツールの導入を検討しましょう。