売上表をエクセルで管理する方法|ポイントや関数も解説
商品や事業を成長させるために、日々の売り上げ管理は欠かせません。最も手軽なのは、売上表をエクセルで作成・管理する方法でしょう。
売り上げ管理に必要なポイントを押さえ、エクセルのメリット・デメリットを理解しておくと先々も困りません。
本記事では、エクセルを使った売り上げ管理表の作成手順や、使うと便利な関数などを合わせて解説します。
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売上管理の必要性とは
売上管理は営業活動をする上で不可欠な要素です。
売上管理により、実績の分析と売上予測が行いやすくなります。日々の営業活動から生まれる売上データを日次や月次、年次にまとめることで、売上の傾向を把握し、目標の達成度を分析できるためです。
目標と実績の差異が明確になると、差異を埋めるための適切な対策を行うことが可能になります。
部署や担当者レベル、地域やターゲット層ごとの違いを明らかにできれば、営業戦略や事業戦略を修正し、さらなる成長への道を見つけることもできます。
売上管理は、目標達成や事業の成長のために重要な情報源です。
エクセル(Excel)で売上表を作成する方法
エクセルで売上管理をするためには、売上表を作成します。
まずは売上の管理に必要な項目やデータを決め、マスターデータを作ります。そのうえで、日々、売上表を更新します。
ここでは、エクセルで売上表を作成する方法および更新の手順を説明します。
エクセルの基本操作をおさらいしたい方は、以下の記事を参考にしてください。
Excel(エクセル)の使い方・基本機能を初心者向けに解説【2024年版】
売上管理に必要な項目・データを決める
売上管理を行うにあたって、基本的なデータ項目を設定する必要があります。
基本的な項目の例は以下の通りです。
項目名 | 内容 |
取引番号 | 取引ごとに設定する番号 |
取引日 | 販売や契約をした日 |
取引先名 | 取引先の企業名など |
商品番号 | 商品ごとに決められた番号 |
商品名 | 商品やサービスの名前 |
単価 | 商品やサービスの単価 |
販売個数 | 販売した商品やサービスごとの個数 |
売上金額 | 単価×販売個数 |
原価 | 商品やサービスを仕入れた価格 |
粗利 | 売上金額から原価を引いた金額 |
企業や事業の特性によっては、上記のような基本的な項目以外にもデータを追加する必要があります。
例として、住所や電話番号などの取引先の情報や、売上管理のための売上目標があります。1回の取引で複数商品を扱うことがあるのであれば、売上金額の合計や、消費税、割引金額などを入れる場合もあるでしょう。
売上管理の目的にそって必要な項目を追加・削除することで、より有益な売上管理が可能です。
マスターデータを作成する
マスターデータを作成しておくと、同じ取引先や商品に対して頻繁に取引を行う場合、その都度の手入力が不要になり効率的です。
手入力では略称や全角・半角の違いなどによるデータの不一致によって、バラバラの記録となってしまうことも発生しがちです。そのため、売上管理シートとは別に取引先マスターと商品マスターを作成し、それらの基本情報を管理すると良いでしょう。
マスターデータはテーブル形式で作成します。デフォルトのテーブル名では管理が難しいので、具体的なテーブル名を設定すると良いでしょう。
作成した取引先マスターと商品マスターは、計算式や関数を使って売上管理シートと連携させます。売上管理シート上で、繰り返し使う引用したい情報(取引先、商品など)はマスターデータから取得し、入力規則を設定してリスト選択ができるようにします。
マスターデータを作ることで、長期的に運用してもデータの整合性が保たれます。
売上表を更新する
売上表とマスターデータを作成したら、売上表を以下のステップで更新・管理します。この流れに従うことで、売上管理や営業活動の改善が効率的に行えます。
エクセルにデータ入力をし、自動集計する
手作業での集計は時間がかかり、ミスも起こりやすいため、売上データはエクセルに入力し、計算は計算式で自動集計します。
数値の分析と考察
算出されたデータを元に、目標との差分や達成率、先月比などの数値を分析し、それに基づいた考察により、売上の傾向や問題を明確にします。集計したデータをそのままにしては意味がありません。
改善策の策定とフィードバック
分析や考察から、具体的な改善策を策定・実行します。実施後に結果から再度の分析と考察を行うことで、持続的な改善が可能になります。
以下の記事では、エクセルで顧客管理を行う際に役立つテンプレートを紹介しています。
顧客管理はExcel(エクセル)でできる! 作り方や無料テンプレートを紹介
エクセル(Excel)で売上管理をするときに便利な関数7選
関数を使うとエクセルの計算や分析が簡単になります。特に売上管理では、次の関数を知っておくと便利です。
IF関数
IF関数は、条件付き計算を行うための関数です。
- 基本的な構文:=IF(条件, 真の場合の値, 偽の場合の値)
上記の条件が真(TRUE)であれば、指定した「真の場合の値」が出力され、偽(FALSE)であれば、「偽の場合の値」が出力されます。
たとえば、セルA1に数値が入っていて、その数値が10以上なら”OK”、10未満なら”NG”と表示したい場合、「=IF(A1>=10, “OK”, “NG”)」と入力します。
COUNTIF関数
COUNTIF関数は、特定の条件に一致するセルの数をカウントします。
- 基本的な構文:=COUNTIF(範囲, 条件)
「範囲」は調査対象のセル範囲であり、「条件」はカウントするための基準です。
たとえば、A1からA10までのセルに数値があり、その中で5以上の数値がいくつあるのかを知りたい場合、「=COUNTIF(A1:A10, “>=5”)」と入力します。この関数は、条件「5以上」に一致するセルの数を値として返します。
特定の条件にあった取引の件数を算出する場合などに使用します。
SUMIF関数
SUMIF関数は、指定した条件に一致するセルの合計値を計算します。
- 基本的な構文:=SUMIF(範囲, 条件, [合計範囲])
「範囲」は条件を適用するセルの範囲で、「条件」は合計を求める基準です。「合計範囲」はオプションで、条件に一致した行の「合計範囲」が合計されます。
たとえば、A1:A10に各商品のカテゴリ、B1:B10にその価格が入っている場合に、カテゴリが「食品」である価格合計を求めるには「=SUMIF(A1:A10, “食品”, B1:B10)」と入力します。
商品別や日ごとの売上合計額を算出する場合などに使用します。
AVERAGE関数
AVERAGE関数は、指定した範囲のセルに含まれる数値の平均値を計算します。
- 基本的な構文: =AVERAGE(数値1, [数値2], …)
「数値1, [数値2], …」は1つまたは複数の数値、または数値が含まれるセル範囲を指定します。
たとえば、セル範囲A1:A5に(90, 85, 77, 92, 88)が入力されている場合、その平均スコアを求めるには「=AVERAGE(A1:A5) 」と入力します。これにより、結果として平均値「86.4」が出力されます。
月次や地域、担当者などの平均の売上や販売数を算出する場合に使用できます。
RANK関数
RANK関数は、指定した数値がデータセット内で何位かを計算します。
- 基本的な構文は=RANK(数値, 数値リスト, [順序])
「数値」は順位を知りたい対象の数値、「数値リスト」はその数値が含まれる範囲または配列、「順序」は順位付けの方式(0は降順、1は昇順)を指定します。
たとえば、セル範囲A1:A5に(90, 85, 77, 92, 88)があり、A2セル(85点)のランクを知りたい場合、「=RANK(A2, A1:A5, 0)」と入力すると、「4」という結果が出力されます。これはA2セルの数値が範囲A1:A5内で4位であることを示しています。
商品や営業担当者の売上ランクを算出する場合に使用できます。
VLOOKUP関数
VLOOKUP(Vertical Lookup)関数は、指定した値に基づいて、1つの列から別の列にある関連するデータを検索・取得するための関数です。
- 基本的な構文:=VLOOKUP(検索値, テーブル範囲, 列インデックス番号, [近似一致フラグ])
式の中の項目はそれぞれ以下の意味です。
- 「検索値」は検索したい値
- 「テーブル範囲」は検索対象となるセル範囲
- 「列インデックス番号」は取得したいデータがある列のインデックス番号
- 「近似一致フラグ」はオプション。TRUEなら近似一致、FALSEなら完全一致で検索します(デフォルトはTRUE)
例として、A1:B5の範囲に「ID(A列)」と「名前(B列)」があり、IDが「3」の名前を検索する場合、=VLOOKUP(3, A1:B5, 2, FALSE)と入力します。この場合、ID「3」に対応する「名前」が返されます。
VLOOKUP関数はマスターデータから商品の単価などを引用する場合に便利で、売上表の作成を効率的にしてくれます。
ERROR関数
Excelでエラーを処理するための「エラー関数」には、以下のようなものがあります。
関数名 | 式 | 内容 |
IFERROR | =(value, value_if_error) | 第一引数で指定した式がエラーを返す場合、第二引数で指定した値を返す |
ISERROR | =(value) | 指定した値がエラー(#N/A、#VALUE!、#REF!、#DIV/0!、#NUM!、#NAME?、または #NULL!)であればTRUEを、そうでなければFALSEを返す |
ISNA | =(value) | 指定した値が#N/AエラーであればTRUEを、そうでなければFALSEを返す |
売上表では、数値計算でエラーがあると、その値を参照する合計などの計算もエラーとなります。あらかじめエラー関数を組み込んでおくことで、最終的な計算のエラー表示も防ぐことができます。
おまけ:集計・分析にはピボットテーブルが便利
ピボットテーブルはExcelの高度なデータ処理機能の一つで、列や行、値をドラッグアンドドロップするだけで、複雑なデータ集計やクロス集計が可能です。
たとえば、売上データから各商品カテゴリの月別売上を瞬時に計算したり、顧客別の購入履歴を一覧にできます。
ピボットテーブルを使うと数式や関数を使うことがなく、売上表をさまざまな切り口で分析できます。
参考:【2023年版】エクセル(Excel)を独学で勉強する方法4選|おすすめサイトや本・アプリを紹介
エクセル(Excel)で売上表を作成するメリット・デメリット
メリット
簡単に始められる
エクセルは日頃から多くの人が使っているソフトウェアなので、多くの企業で使用されています。そのため、すぐに使い始められる点がメリットです。
使用方法もインターネットで簡単に調べられ、特別な知識や経験も不要です。
コストが低い
Microsoft office系のソフトは多くの会社でもともと用意されています。導入にあたって新たなコストが必要ない場合がほとんどでしょう。
カスタマイズがしやすい
エクセルは自由に表を作成して計算式を組み込め、柔軟にカスタマイズできます。いったん作成した後でも、数値やデータの項目を必要に応じて増やしたり変更したりもできます。
集計や計算に強い
エクセルは関数を活用することで、さまざまな計算ができます。表計算ソフトというだけあって、データを計算したり集計したりすることに長けています。
デメリット
同時に編集ができない
エクセルは、リアルタイムでの複数のユーザーによる編集には適していません。共同編集のためにはMicrosoft365に加入する必要があり、そのための設定やメンバーの招待などの手間がかかります。
管理が大変
作成したファイルはルールを決めてきちんと管理しておかないと、すぐに散逸してしまったり、共有化されにくいなどの問題が生じやすいです。
クラウドやファイルサーバーで整理して保管する仕組みや、ファイル名をつけるルールを作ったり、どのファイルにどのようなデータが保存されているのかを管理しておく必要があります。
また、月次や年次でファイルを管理している場合は、月ごと、年度ごとにファイルをコピーするなど、いちいち手作業でメンテナンスをする必要があります。
複合的で膨大なデータの管理には向かない
データが膨大だったり、計算式を組み込みすぎたりすると、ファイルを開くのに時間がかかったり、保存に時間がかかったりします。
他のツールやシステムとの連携ができない
エクセルは他のツールと直接連携するのが苦手です。エクスポートしたデータを貼り付けるなど、手作業が必要なことが多々あります。
売上表を作成するために、他のシステムからデータを連携する必要がある場合は、基本的には手作業になります。
エクセル(Excel)による売上表の課題を解決するおすすめの方法
エクセルだけでは顧客や営業情報との連携が難しい場合、クラウド型の管理ツールを導入する方法があります。
事業や組織の拡大が見込め、将来的にエクセルだけで管理しきれない可能性があるのであれば、早い段階から導入を検討しておくと、後々の手間がかかりません。
売上管理ができる代表的な管理ツールは以下の2種類です。
SFAツール
SFA(Sales Force Automation)は、営業活動を自動化し、効率化するためのツールです。顧客管理機能・案件管理機能・予実管理機能・商談管理管理機能・レポーティング機能などが備わっており、売上管理や売上予測ができます。
導入によって、営業チームはルーティン作業の時間を削減し、より多くの時間を販売活動や顧客対応に注ぐことができます。
CRMツール
CRM(Customer Relationship Management)は、顧客との関係性を管理するツールです。主な機能には、顧客情報の一元管理、顧客対応のトラッキング、キャンペーンの管理などがあります。
顧客ごとの商品の販売履歴や商品を管理する機能が備わっており、売上管理もできます。顧客対応の質を高め、販売効率を向上させ、顧客ロイヤルティを強化することに向いています。
参考:営業の仕事を助けるSFA(営業支援システム・ツール)とは? ~ SFAの基礎知識
まとめ:エクセルで売上表を作る際はツールの導入も視野に入れよう
エクセルは使い勝手のよい便利なツールで、売上管理表を作成して管理するために十分な機能があります。
関数やピボットテーブルを使えば、高度な計算や集計・分析も可能であるため、手軽に売上管理を始めるには最適です。
ただし、デメリットもあるため、売上管理の目的や自社にとっての必要性によっては、ツールの導入を検討するのも一つの手です。
特にSFAやCRMツールであれば、売上管理以外に、顧客情報の管理や営業活動の効率化もできます。事業が拡大していたり営業組織の改善を測りたい場合は、合わせて検討してみてください。
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