トークスクリプトで部下育成を加速し3ヵ月で受注率を2.42倍UP
マネジメントをした事がある人であれば、部下の育成が思い通りに進まずに四苦八苦した経験をお持ちだと思います。
部下育成の王道といえばOJT。
例えば営業マンのOJTであれば、先輩社員と一緒に同行して、先輩のやり方を見て真似してくるというものです。
いわゆる「背中を見て学べ」という手法です。
しかし、この方法だけでこれまで育成してきた後輩社員の育成が全て成功しているという訳ではないと思います。
また、よく聞く話ではありますが、営業マンとして優秀な成績をおさめていてマネジメントを任されるようになったが、部下の育成を担当するも、うまくいかずにマネージャーとしての能力を思うように発揮できずに終わってしまうこともあります。
マネジメントをする立場になって早い段階でぶち当たる壁です。
今回は、そんな壁を破る一つの手法として、「トークスクリプト」を使った部下育成方法をご紹介します。
実際に売上に伸び悩むチームで実施したこの取り組みで、3ヵ月で下記の図のような成果を得ることができました。
提案から受注する前進率が2.42倍、訪問から案件化する前進率が2.18倍になっています。
この方法は育成スピードを飛躍的に加速させることができるのです。
1章 トークスクリプトの有効性
そもそもトークスクリプトとはなんでしょうか?
ビジネスの世界においてはお客様と話をするためのトークが開始から完了までが書いてある教科書のようなものです。
営業現場、飲食業の接客、コールセンターと使われていないところは無いのではないかと思うくらい一般的なものです。
振込め詐欺グループがトークスクリプトを作って荒稼ぎしていたなんてニュースもありました。
もちろん、私が以前に勤めていたコールセンター業界でも使っていました。
業界ではトークスクリプトが命です。これがなければ仕事になりません。
コールセンターでは新人を採用して電話に出る前にトークスクリプトを用いてOJTを行います。
最初は先輩が話している内容をスクリプトを見ながらモニタリング。それが終わったら先輩とロールプレイングを実施。
最後に独り立ちに向けて先輩に聞いてもらいフォローを受けながら、実際にお客様と話をして経験を積んで試験に合格しなくてはなりません。
業務内容によって差異はありますが、この期間中1ヶ月から2ヶ月で、離脱してしまうスタッフの方は約20%です。
逆を言えば80%以上の方がクリアして短期間に独り立ちをします。
トークスクリプトがあることによって短期間での育成を実現していました。
営業現場ではどうでしょうか?トークスクリプトを使ってOJTを行っているでしょうか?
セールストーク集はあってもトークスクリプト(開始から完了までの教科書)まで整備されている所はまだあまり無いのではと感じています。
では営業活動において使えるトークスクリプトとは何があるでしょうか?
実は、アポイント獲得、日程調整、訪問時等、様々なところで使うことができます。
例えばアポ獲得業務において、成績の良い営業マンはある程度固まったトークがあり、それをベースにそれぞれのお客様の業界事例を盛り込みながら価値訴求をしてアポイント獲得につながっているパターンが多いのではないでしょうか?
どんな業務においても、経験を積んである程度成功するトークスクリプトを持っているはずです。
ただ、その中でも獲得率の高い人と低い人がいるというのも事実だと思います。
マネージャーとしてはアポ目標は早々に達成してもらい、顧客接点を増やして欲しい所です。
ですがアポが取れないので訪問にまで辿り着かない部下も実際にいるのです。
そして部下が躓いている課題で苦労した事がないマネージャーの場合、教え方が分からないことも多々あります。
これら課題を解決に導くのが、マネージャーである貴方が作成するトークスクリプトです。
マネージャーの貴方がアポ獲得の時、お客様に訪問した時に話すパターン、これをトークスクリプトに落とし込みます。
貴方が今の立場やポジションを形成する成長の過程で実践してきた事をトークスクリプトに落とし込み、部下にマネをしてもらいます。
部下は最初は訳も分からずマネをしているだけですが、トークスクリプトがある状態で見せる背中と、無い状態で見せる背中では1回のOJTで得る学びや理解のスピードが倍以上になるので効率的に育成を進める事ができます。
またトークスクリプトにない事を話した時に部下も気づく事ができるので分からないことが明確になり、それを解消することでより理解が深まります。
次章では、私がどのようにトークスクリプトを作り進めたかをご紹介します。
2章 トークスクリプトの作り方
最初は時間と手間がかかります。しかし、後は微修正を繰り返すだけなので最初は我慢して取り組んでみてください。
まず部下に自分がよく使うトークのパターンを録音してもらい、文字起こしをする事から始めてください。
次に、文字起こしした内容を上長や同立場の同僚にもレビューしてもらい修正を加えてさらに磨きをかけます。
お客様訪問時のトークスクリプトであれば資料を持って訪問すると思いますので、トークスクリプトに「●●という資料の△△ページを開きながら」と“具体的な注釈”を入れます。
資料の挿絵が入っていればベストですが時間がなければ後でバージョンアップすればよいです。
これで終わりです。文字にすると短いですが意外と手間がかかりますので頑張って実施してみてください。
このトークスクリプトをどのように使うかを次章でお伝えします。
3章 トークスクリプトを使った練習
トークスクリプトが完成したらひたすら練習です。それ以外に方法はありません。
可能であれば練習に付き合ってあげるのが一番ですが、マネージャーの仕事は育成だけではないのでなかなか時間が取れないと思います。
その場合は1回勉強会を開いてあげるという方法があります。
最初から最後まで自身でやり方を見せてあげてください。
その時に動画撮影をしておけば将来の教材として残りますし、場合によっては通勤時間や移動時間に聞いて練習する事もできるので時間を効率的に使えます。
忘れないで欲しいのは必ずテストを実施する事です。
当社でも推奨している「ゴールから逆算する」という考えを基に、“貴方がいつまでに部下を独り立ちをさせたいか”というゴールから逆算し「●月●日までに合格して下さい。」と宣言します。
そうすることで部下に危機意識が生まれ、必死になって練習に取り組んでくれるでしょう。
4章 トークスクリプトのバージョンアップ
もし部下の実績が落ち込んできたら、それはトークスクリプトが現場で実行されていないか、バージョンアップする時期になったというサインかもしれません。
その時は、部下のトークスクリプトのチェック、自分が実践しているトークとの比較で見直しをする事をお勧めします。
今までぼんやりしか見えていなかった貴方の背中がトークスクリプトを加え、ハッキリと見えるようなれば部下育成スピードも早まるのではないかと考えます。
これで少しでも貴方のマネジメントが効率的なものになれば幸いです。