ビジョンの策定が肝! 働き方改革を成功させる秘訣とそのメリットとは?
ITツールやリモートワークを導入しているにも関わらず、「どうも働き方改革が進んでいるようには思えない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
それはひとえに、働き方改革におけるビジョンの策定が不十分であるためです。
そこでこの記事では、働き方改革が求められる背景を踏まえて、ビジョンが必要な理由や策定するときのポイントを紹介していきます。
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働き方改革が求められる背景
働き方改革という言葉は、今や企業で当たり前のように使われるようになりました。
この働き方改革、そもそもなぜ求められているのでしょうか。
労働人口の減少による人手不足
1つには労働人口の減少が挙げられます。
厚生労働省の「人口の推移と見通し」によると、15歳〜64歳までの生産年齢人口は今後も継続して減少していく見通し。
一方で65歳以上の人口は、2040年まで増加していくといわれています。
つまり高齢者は増加するものの、働き手の中心となる世代は減少していくことで、企業の人手不足はますます深刻になることが予想されます。
現時点ですでに人手不足を感じている企業も多く、帝国データバンクの調査によれば、企業の52.5%が人材の不足を感じているといいます。
ではなぜ人手不足によって、働き方改革を行う必要があるのでしょうか。
例えば、仮にこれまで5人の人手が必要となる業務があったとしても、人手不足の影響で1人しかその業務に手が回せない状態になったとします。
つまり、これまで5人でやっていた業務を1人で行う必要があるということです。
時間外労働の上限規制など、長時間労働を是正する動きにある現在。
短時間でより多くの業務をこなす必要が出てくると、働き方改革によって業務を効率化することは必須といえますよね。
IT環境の変化
2つ目の背景は、IT環境の変化。
RPAなどの自動化ロボットの普及をはじめ、IT技術は年々進化しています。
ITツールの導入によって業務改善に着手する企業も増えているといいます。
事実、2018年度は「前年と比べてITツールへの投資予算が増加する」と回答した企業は全体の40.7%でしたが、2019年度は47.6%と半数近くに達しているというデータもあります。
このように働き方改革の手段としてITツールを導入する企業は、今後もますます増加していくことが予想されます。
ITツールによって業務改善に着手する企業とそうでない企業の差は、ますます広がっていくでしょう。
世の中の流れに取り残されず、企業が今後持続的に成長していくためには働き方改革を通じた業務の改善などは不可欠といえます。
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ITツールやリモートワークの導入=働き方改革ではない
ここで注意しておきたいのが、働き方改革といえば「ITツールやリモートワークの導入」という話になりがちですが、それらはあくまでも手段であるということ。
本当の働き方改革は、従業員にITツールやリモートワークなどの道具を手渡しただけでは成しえません。
そこで冒頭の話に戻りますが、「なぜ働き方改革を行うのか?」という全従業員が目指すべき「ビジョン」を策定することがまずは大切です。
そしてビジョンに向かって歩き出すために必要な道具として、ITツールなどを手渡す必要があるでしょう。
働き方改革における真の成功は「ビジョンの策定」にある
働き方改革で大切となる「ビジョンの策定」。なぜ、必要といえるのでしょうか。
なぜビジョンを策定する必要がある?
ビジョンが不明確なままでは「残業時間を減らす」「有給休暇の取得率を高める」といった「手段」が「目的」となってしまう可能性があります。
「どんな手段を使うか?」ばかりに目を向けてしまっては、逆にこれまで以上に余分な業務が増えてしまい、働き方改革によって生産性を向上させるはずが、いたずらに従業員の業務負担を増やしてしまう可能性もあるでしょう。
企業にとって働き方改革の目的は生産性の向上です。
そのためにもビジョンを共有することで、働き方改革の意味を従業員が理解すること。
そして会社にやらされるものではなく主体的に仕事に取り組むことで、生産性の向上につながるのではないでしょうか。
働き方改革における「ビジョン」とは?
ソフトバンクグループの創業者である孫正義氏は、2011年度新卒向けイベントで「登りたい山を決める。これで人生の半分が決まる」と話しています。ビジョンの策定を「登る山を決める」ことに置き換えると、これで働き方改革は半分成功したものだといえるでしょう。
では、働き方改革における登りたい山を決める(=ビジョンの策定)とはどういうことか。
それは「全員が目指すべき、働き方のありたい姿を決める」ことといえるでしょう。
ビジネスにおいて企業がビジョンを策定することのメリット
働き方改革はもちろん、ビジネスにおいてもビジョンを策定することでメリットがあります。
メリット1)手段の目的化を防げる
これまでやってきて慣れてるからという理由で、ルーティン化している業務は「そもそもやる必要はあるのか?」「何のためにこの業務をやっているのか?」といった問いが浮かびにくくなるもの。
しかしこういった、これまでの流れで実施している業務のなかには手段が目的化してしまい、本来はやらなくても良い業務であったり、もしくはもっと良い方法があるかもしれません。
例えばビジネスの身近なシーンでいうと、無駄な会議が挙げられます。
会議はいわば、新たなアイデアを出したり、未来に向けた意思決定を行ったりすることが本来の目的です。
しかし気づけば、顔を合わせてただ上司の発言を聞く場になってはいないでしょうか。
無駄な会議というのは、本来は手段であるはずの会議そのものが目的となっており、目的が共有されていないことで起こりえます。
目的が新しいアイデアを出すことであれば本当に対面での会議が必要なのか、ビデオ会議という手段でも良いのではないか、もしくは雑談を促す環境を作ればわざわざアイデアを出す時間を別途設けずとも良いのではないか。
このように目的から逆算して手段を柔軟に変えていけるはずです。
これは働き方改革やビジネスにも当てはまり、まずは従業員が同じ方向を向いていられるビジョンがあれば、目指す方向や目的はそのままに時代に合わせて戦略や戦術といった手段を柔軟に変えていけるはずです。
つまり手段が目的となり、無駄な業務が発生してしまうことも防げるでしょう。
メリット2)判断に迷ったときの指針となる
例えば極端な話ですが、「世界を代表する企業になる」というビジョンがあった場合、世界的に名を知られるために業績を拡大させることが一番の目的になるかもしれません。
そのためには多少の無理はしても国内だけでなく海外に積極的に進出し、業績を拡大していく必要があるでしょう。
一方で「世界で1番従業員の幸せを考える企業」というビジョンの場合は、従業員の労働時間の増加や過度な業務負担などを懸念して、無理な業績拡大は行わないといった判断ができます。
このようにビジョンは判断に迷ったときの指針にもなりえるのです。
メリット3)価値観の違う社員の行動を統制しやすくなる
従業員1人ひとりのやり方が違ったとしても、向かうべきビジョンが共有されていれば、会社全体としての足並みを揃えることができます。
ビジョンのみを共有し、後は現場のやり方に任せることで、従業員の自主性も育みやすくなるといったメリットもあるでしょう。
最終的に富士山の頂上で合流するということが共有できていれば、歩いて登ろうが、ヘリコプターで向かおうが、その手段はバラバラであっても良いわけです。
価値観の違う人の集合体である会社であれば、なおさらビジョンの共有は不可欠といえるでしょう。
ビジョンを策定するときの5つのポイント
ここまでビジョンの必要性やメリットを紹介してきましたが、最後にいざ策定するにあたってのポイントを5つ紹介していきます。
ポイント1)各部署レベルで考えた内容から共通項を見出す
ビジョンは言葉で理解するだけでなく、従業員全員が納得してこそ本来の効果を得られるといえます。
そのため他社のビジョンを真似て、ただそれっぽいビジョンを作り出したとしても、従業員に納得してもらうことは難しいでしょう。
そこで納得してもらうためのポイントは、現場の1部門ではなくさまざまな部門の意見を引き出したうえで見つけた共通項をもとに、ビジョンを策定すること。
現場からあがってきた意見を汲んで作るからこそ、従業員もビジョンに納得しやすいといえます。
ポイント2)未来志向で考える
働き方改革におけるビジョン策定とは「全員が目指すべき働き方のありたい姿を決める」ことと紹介しましたが、このように、ビジョンは「将来どうなっていたいか?」から逆算して決めることが大切です。
現在の課題の延長線上でビジョンを定めてしまっては、企業が今以上に飛躍する見込みは低いといえるでしょう。
ポイント3)ビジョンを実現した際の「財務目標」と「非財務目標」を設定する
会社が「どういう状態になったらビジョンを達成したといえるか」を定めることで、目指すべき方向はより明確になるといえます。そこで「財務目標」と「非財務目標」も、あわせて設定しておきたいところ。
財務目標としては、ビジョンが実現したときの売上高や営業利益などの業績水準を設定します。
そして非財務目標は、お金以外の部分で目標を設定しましょう。
例えば働き方改革であれば、残業の削減時間や離職率などが挙げられるでしょう。
ポイント4)ビジョンの実現に向けた「具体的な行動」を決める
ビジョンを具体的な行動に落とし込むことで、より実現の可能性は高まるといえます。
これは、前述した財務目標や非財務目標を達成するための手段を考えても良いでしょう。
例えば働き方改革でいうと、リモートワークや業務効率化を目的としたITツールの導入などが考えられます。
そして具体的な行動を決めるのと同時に、ビジョンの実現には不要な「やめること」も決めておきたいところ。
例えば先で紹介した無駄な会議を止めたいのであれば、対面の会議は本当に必要な場合に限り申請制にするなどといったことです。
ポイント5)現在と将来をつなぐロードマップを策定する
ビジョンが「将来のある時点におけるなりたい姿」であるならば、現時点とビジョン実現時までの道筋を可視化してあげることも大切です。
ビジョンという向かうべきゴールが分かっていても、そこに到達するための地図がなければ、一向に辿り着くことはできないためです。
ポイント4で決めた具体的な行動を実施する優先順位などを明確にし、どういったステップでビジョンの実現に向かっていくのかを定めましょう。
そしてビジョンの実現に向けた道筋が決まったら、あとは実施する施策ごとに推進者を立てて遂行していきましょう。
ビジョン策定は「なりたい姿」から逆算する
働き方改革におけるビジョン策定では未来志向、つまり将来のなりたい姿を考えることが大切です。
なぜなら現在の課題から考えるだけの働き方改革では、企業のさらなる成長にはつながらないため。
まずは働き方の理想像を描き、そこから逆算してビジョンの実現に向けたアプローチ方法を検討していきましょう。