セールステックとは~導入に必要な要点
コロナウイルス渦の収束も未だ完全ではない現在、各企業様のご苦労やお悩みは察するに余りあります。
まだまだ大変な時期が続きますが、アフターコロナとして動き始めなければならない今だからこそ、このセールステックの導入や増強を選択肢の一つにされてみてはいかがでしょうか。
本記事では、
- セールステックとは
- セールステックの概要・セールステックを導入するメリット
- セールステックを導入する場合の注意点
を中心にレポート致します。
このページのコンテンツ
セールステックとは 生まれた背景と目的
セールステックとは何をするものか?
新しいビジネス用語「Sales」+「Technology」の造語です。
IT技術を活用して、営業活動に技術の力を足すことによって、より効率的で効果的な営業活動を行う事を指します。
またはそのツール全般の総称として使います。
セールステックが産まれた背景
労働力人口の減少と生産性の向上
現在の8000万人から2060年には4500万人へ
少子化に向かっている現在の試算で、2060年には労働力人口が現在の8000万人から4500万人まで減少すると言われています。
そのためさらなる省人化や効率化が求められる状況になっています。
そのためIT技術を活用してより効率的に営業活動ができるように考えられたのがセールステックのきっかけとなります。
※図の15~64歳人口が労働力人口です。
旧来の営業組織からデータを活用した発展的組織への変革
少子化の事情に加えて、IT技術をビジネスに活用することそのものがビジネス業界で当たり前になって行く中で「さらなる他社との差別化」を求めてセールステックと言われる各ツールが編み出されてきたとも言えます。
ビッグデータを蓄積するIT環境やツールの出現(クラウド・5Gなど日々の技術革新)
このタイミングでセールステックが隆盛している他の理由が、ビッグデータを蓄積する世の中のITインフラがセールステックに耐えうる環境まで整った事もあります。
「高速データ通信」「大容量通信」「クラウドシステムの汎用化」などが実現し、ビッグデータと呼ばれる大容量データの活用が可能な時代になったことで、セールステックイノベーションが起こったのです。
働き方改革とアフターコロナ
そして皆さんがご存知である理由の最後の一つがコロナウイルスにともなうビジネススタイルの変化です。
皮肉なもので働き方改革の一部である「テレワーク」や「リモートワーク」「オンラインミーティング」を一気に推し進めたのはコロナウイルスでした。
実際に活用が当たり前になった現在、セールステック技術はさらに注目度を上げており、業界を問わずニーズが一気に高まっています。
セールステックの詳細と採用のメリット
セールステックのツール各種について理解する
引用している図は「セールステックカオスマップ」と呼ばれています。
カオスマップは米国や日本の複数の団体や企業から発表されていますが、目的と役割が分かりやすいので本画像を引用しました。
セールスカオスマップの全体的な見方
- 縦軸:そのツール群を利用する大目的
データ管理
営業効率化
組織・人材育成
- 横軸:ツール利用でユーザーが見込むメリット分類
見込み顧客発掘(事業分析やマーケティングツール)
営業商談管理(営業支援システム SFA)
顧客となった営業機会の創出(顧客との関係維持管理 CRM)
- 縦横交差点:該当ツールのジャンル分け詳細
※後ほど各種詳細を解説します
セールステックに属するツール詳細で代表的なもの/現在注目されているツールの解説
- SFA(営業・商談管理システム)Sales Force Automationの略
- CRM(顧客関係維持と管理システム)Customer Relationship Managementの略
- BI(業務をデータに基づき分析を行うシステム)Business Inteligenceの略
- MA(マーケティングの自動化)Marketing Automationの略
- Online Meeting(オンライン商談ツール)
- Sales Enablement(営業力の強化・成功事例の共有ツール)
- Chat Support(オンラインチャットコミュニケーションシステム)
- Coaching/Knowledge Management(社内財産である知見の共有ツール)
セールステック導入のメリット~時代に乗り遅れないために
多くのツールがセールステックを構成するために存在することをご理解頂いたと思います。
このツール群を採用することでどのようなメリットが生まれるのか確認してみましょう。
コロナからの復活を後押ししてくれる
現時点でコロナウイルスによる業績への影響を完全に取り返した企業はほとんどいないのではと世間は見ています。
そのくらい大きなダメージを与えてくれた現在、「アフターコロナ」への取り組みが各企業の業績を左右していくのではと言われています。
セールステックツールが貢献する「オンライン化」「省人化・省力化」「コストダウン」を適切に採用することで「ニューノーマル」と呼ばれるコロナ後の新業務様式対応に先行し、同業他社に差をつける事ができるのではと指摘されています。
コストダウンに有益
初期投資は必要になりますが、セールステックを謳う以上しっかりと社内で浸透させて活用すれば作業効率を落とさず、かつ大きなコストダウンにつながります。
運用がカギを握りますが社内にイノベーションをもたらしてくれる存在になるはずです。
人材確保のため~省力化や効率化に乗り遅れたインフラはIT人材に見限られる
みなさんはデジタルトランスフォーメーション(DX)という言葉をごぞんじでしょうか?
セールステックよりさらに大きな社会全体のIT技術による変革で世の中のインフラやサービスがさらに良くなっていくという概念です。
その時に欠かせないのはITスキルを持つ人材です。
そして2025年にはその新技術を保有するIT人材が40万人以上不足する、という統計試算が経済産業省から出ています。
必然的にIT人材の争奪戦が始まります。
一部の企業では「IT人材は年齢に関係なく1000万円を越える年収で迎える」といった対策案などが出ています。
その中で既に始まっているセールステックツールがデジタルトランスフォーメーション(DX)に深く関わっていくことは明白です。
企業の競争力はこの流れに適応できるかどうかが大変重要になってくるのです。
結果として優秀な新技術を持つIT人材を確保しなければいけませんが、そのためには人材を活かすインフラや開発環境、社内体制を作ることが重要なポイントになると言われています。
セールステック導入準備段階 注意点
導入検討初期のアクション
セールステック化検討プロジェクトチーム
まずは導入に関するプロジェクトチームを発足させることとなります。押さえるポイントは二つあります。
- セールステックに関わる全部門からヒアリングできる体制
- 役職階層のバランスを考慮した人選
偏った部署だけが検討チームの中心になってしまうのは導入失敗のよくあるケースです。
顧客と直接コンタクトする営業部、市場予測や販売方針を決めるマーケティング部、受注を受けるバックオフィス部門、販売後のカスタマーサポート、それぞれの要望と課題や悩みを全方位から集めるべきです。
得てして「ツール導入はIT部門と営業販促部門で決定」といったチームを見かけますが、マーケティング部門は市場経済など手法や理論には詳しい一方で、現場にどっぷりと浸かってからマーケティング部門に配属される方は比較的少ないと言われます。
営業現場の声が届かない、という悩みはこのような組織人事構造から発していることが見かけられますので、ご留意頂きたいと思います。
そして、役職者だけからのヒアリングではユーザーとしての使いやすさや詳細についての問題をカバーできない事が多々あります。
現場に触れているスタッフの貴重な意見をくみ取れるような幅広い人員構成にしていただくことを強くお勧めいたします。
採用必須ツールとサブツールは自社の悩みを包含すべき
前の解説に多少関連しますが、一つの大きな課題は複数の派生する詳細問題を起因させます。
ブレーンストーミングで様々な悩みを挙げた後、選択候補であるツールがどの程度の範囲で問題解決を行う事ができるのかの確認をしていただくと良いのではないでしょうか。
当然、一つのツールで複数の課題を解決してくれる「自社の課題に則した」ツールを選択することが成功のカギとなります。
初歩的な電子化とステップアップ計画
ツール導入前に自社がどこまで基礎的な電子化が出来ていますか?
ツール導入検討を始めたはいいものの、
- 重要データは新ツールで互換性の無いファイル形式である
- そもそも紙データである
- 事業買収で加わった新部門は異なるツールを使っていて互換性がない
など、社内共有の基礎的な仕組みが出来ていない事が往々にして起こります。
事業部ごとに異なるツールを使っている企業はあると思います。
現在致命的ではないにしても、誰かの業務効率を落としているのは間違いないと思われます。
そして、セールステック、ひいてはデジタルトランスフォーメーション(DX)対策を取る時に大きなボトルネックになることが予測されます。
このタイミングで少しでも互換性や共有に可能性を持たせる検討を忘れてはいけません。
全社でのコミットメントを得る
こちらも重要な作業であると思われます。
最終的にツールを使用する人は営業現場のみなさんです。
そして、このツールを活かすも殺すも現場の方の意識次第です。
これまで見てきた現場では、
- ツール活用率が上がらない
- ツールの利用ルールが曖昧でデータとして集約しづらい
- 貴重なデータアウトプットやメリットとして活用できていない
等の問題が発生していました。
導入前から導入開始直後までは現場メンバーが「有益な活用」をコミットしてくれるまで教育とモニタリングが必要なのではないでしょうか?
採用検討開始から導入決定前までの注意点
正しい方向性を向いているかダブルチェックを行う
現場で定着の教育を徹底する体制
ツール活用の徹底、これは何がなくとも絶対にやり遂げなければならない事です。
定着をけん引するリーダーシップとインセンティブ
実現のために求められるのは、「成功に責任を持つ推進チームのけん引」です。
その意識をまずリーダーに持ってもらう必要があります。
本来の業務のサブ的な仕事をやらされている、という意識では社内に浸透させることは難しいと思われます。
セールステックツール導入の成功は会社の業績やコストダウンに大きなリターンを与えるので、上層部勅命ミッション的な位置づけであると認識してもらい、大きな期待と責任を担っていることをハッキリと伝える必要があります。
ツールベンダー開催の無料セミナーなどでトレンドをつかむ
セールステックツールベンダーにとっても、セールステック導入の風潮が高まっている現在は大きなビジネスチャンスとなります。
そのため、セールステックカオスマップに載っている各社がツール導入案内や無償の導入支援相談などを行っています。
プライベートセミナーや個別面談などで情報を収集してみてはいかがでしょうか?
セールステックのベースとなるのはSFAやCRMツールです。
マーケティング関連、カスタマーサポート、オンライン面談など複数ベンダーが載っていますので、比較検討されるのも良いのではないでしょうか。
コンサルティング会社による妥当性の確認(有償)
こちらは費用が発生する内容です。
従来はクラウドを活用したセールステックツールはほとんど無い時代がありました。
コンサルティング会社が入り、システム納入完了まで一気通貫で行う事が多かったのですが、クラウド導入でシステムも導入費用もコンパクトになりましたが、ITシステム構築のプロフェッショナルの見解や意見を得ることも一つの選択肢であると思います。
プロなりの経験則からアドバイスされるアウトプットを見て、またあらたにひらめくこともあると思います。
活用徹底を遂行するために
社内体制整備の開始
コミットメントの実行
推進プロジェクトチームがいかに機能できるか
二度繰り返すほど大切な事であるとご理解いただきたいのですが、社内で「ツール活用を徹底する」ことを会社目標とすることを全従業員に知らしめることが大切です。
プロジェクトチームを配置したのは良いものの、結局現場にはその意図が浸透せず苦戦する組織は少なくありません。
そのために必要なのは
- 現場側でリーダーシップを取る調整役の任命
- 定期的な活用率やデータの質のモニタリングとフィードバック
などが必要になってくると思われます。
そして、これは繰り返し行われなければ結果には繋がりません。
ツールユーザーに対してのヒアリングとヘルプ役
現場の声収集が成功を呼ぶ
推進プロジェクトチームは働きかけやリーダーシップだけではいけない
推進チームは一方的に「対応してほしいこと」「ルールとして守ってほしい事」だけを発信するだけでは効果が上がりません。
推進チームは旗振り役であり、ユーザーの理解者であり、悩みを解決してくれる存在にならなければなりません。
自分達がどれだけユーザーをケアするかによってツール活用浸透度合に大きな影響を与えると言われています。
導入がうまくいっている部門の成功事例と理由をフィードバック
旗振り役にとって効果的なのがユーザー内でうまく活用してくれている部門を成功事例として社内に情報としてフィードバックすることです。
- 周りの部門がしっかりやっているという認識と焦り
- どんな業務と絡めると効果的か、というヒントになる
- 自分達の部門も他部門に評価されたいという承認欲求の醸成
が見込めます。
継続すること 成功事例の認識が成功事例を呼ぶ
そして、何事もこれを忘れてはいけませんね。
「継続は力なり」です。
最初は各ユーザーが停滞してしまい「成功事例が一つもない!」なんてこともあり得ます。
その段階を転がすために最初の一押しをするのが推進チームの役割なのです。
何事も「最初の苦労+その後の継続」が必要です。
おわりに ツール導入イコール成功ではない
ここまでセールステックの概要と導入についてまとめてきました。いかがでしたでしょうか。
あらためて振り返ると大きく内容は
- セールステックとは
- 各セールステックツールの説明(セールステックカオスマップをベースに解説)
- ツール導入時の流れと組織として成功させるための注意点
についてお話してきました。
セールステックの各ツールは様々な可能性を提供してくれますが「自社が運用を行う仕組み」を用意して働きかけないと絶対に活用されません。
ツール選定を終えた時点がようやく入り口です。
成功のカギは導入作業からの継続的な「働きかけと支援」「成功体験の共有」を「リーダー役が旗を振ってけん引する」ことです。
この事を肝に銘じていただき、軌道に乗るまでは時間をかけて育ててください。
ツール導入の成功は貴社へのコストダウンと営業活動推進のための力を与えてくれます。
皆様のセールステック導入活動が成功に繋がることを願っております。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。