テレワーク(リモートワーク)の人事評価制度の課題と対策、成功事例を紹介
テレワーク(リモートワーク)の実施にともない「人事評価がしづらい!」「評価とキャリアが見えない…将来が不安…」といった声が出てきていませんか?実際、テレワークの人事評価は難しいと管理職の73.7%が回答したデータもあります。
しかし、テレワークに適した人事評価制度やマネジメントはすでに確立されているのが実情です。また、評価の難しさからテレワークをやめるのは将来的に大きな損失につながる恐れもあります。
そこで今回、テレワークの人事評価について詳しく解説していきます。人事評価のストレス軽減はもちろん、自社の将来性の拡大にもつながるので、ぜひ参考にしてください。
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人事評価を整えてテレワーク(リモートワーク)を導入する価値は大!
まず、今の評価制度だとテレワーク(リモートワーク)をする従業員の人事評価が難しいからといって、テレワークをやめてしまうのはもったいないといえます。たしかに人事評価制度を変えるのは手間がかかりますが、以下のメリットから制度を整えてテレワークを導入する価値は大きいからです。
- 働き手の減少対策になる
- 人材の確保と流出抑制の手段になる
- 移動費などを削減できる
- 企業ブランドイメージがアップする
上記のメリットに加えて、テレワークの人事評価制度の整え方も確立されています。たとえば、MBOといった人事評価制度を追加したり、OKRなどの相性の良いマネジメント手法を導入したりなどです。
したがって、2020年から2030年にかけて800万人減るといわれている生産選年齢人口の減少にそなえて、きちんと評価やマネジメントできるテレワークを準備しておく価値は大きいです。なお、働き方改革のメリットや取り組まざるを得ない理由について詳しくは以下の記事を参考にしてください。
ただし、見切り発車のテレワークできちんとした人事評価ができないと、従業員のモチベーションや自社の成長に悪影響がでやすいのも事実です。そこで、テレワークの人事評価の課題と解決策について解説していきます。
テレワークの人事評価が難しい原因2つと対策
テレワークにおける人事評価の課題は主に以下の2つです。
- 業務態度が確認できない
- 時間と場所を共有しない働き方への評価制度がない
上記2点への対策はすでにあるので、それぞれへの対策を解説していきます。
業務態度が確認できない
テレワークは時間と場所を共有しない働き方なので、業務態度が確認できません。成果主義をより導入するという解決策もありますが、後輩の育成やチームワークを円滑にする力といったいわゆるソフトスキルの人事評価はどうしても難しい部分があります。
おすすめの解決策としては、マネジメントの強化によって現状の評価制度をある程度機能するようにしてしまうことです。マネジメントの強化といっても社員を監視したりマイクロマネジメントをしたりといったことではありません。バーチャルオフィスやオンライン会議システムなどを使って夕会や1on1ミーティングをしたり、OKRといったマネジメント手法を使ったりといった工夫です。
テレワークにおけるマネジメントの工夫は以下の記事に詳しくまとめています。各マネージャーに徹底させれば既存の人事評価制度でカバーできる可能性が高まるので参考にしてみてください。
時間と場所を共有しない働き方への評価制度がない
時間や場所を共有しない働き方への評価制度自体がない場合は、ある程度の人事評価制度の見直しが必要です。具体的には、自社の目標から下ろした部署の目標をさらにブレイクダウンして各従業員のすべきことを明確にし、成果主義を導入する必要があるでしょう。KPIやOKRなどのマネジメントと合わせて成果主義をすすめるのがおすすめです。
KPIやOKRについてあらためて知りたい場合は以下の記事をご参考ください。
各従業員の仕事が明確になれば成果主義が機能しますが、MBO(目標管理制度)といった人事評価制度を導入するのもおすすめです。テレワークと対象の良い人事評価制度をまとめると以下の表のとおりになります。
人事評価制度名 | 評価制度の概要 |
バリュー評価 | 自社の価値観や行動基準を明文化。 自社と社員のベクトルがそろっているかを評価すれば、 組織力や社員の能動的な動きにつながる。 OKRとの相性がよく、メルカリやChatWorkなどの企業が導入している。 |
MBO | マネージャーが各社員に目標決定をさせて達成度合いを評価する。 マネージャーと社員の納得がいきやすく、評価も簡単になりやすい。 モチベーションも維持しやすいが、自社の目標と合致してるかは要チェック。 |
ノーレイティング | 目標に対してリアルタイムで対話と評価をし ランクづけなどはしない。 マネジメントスキルが要求されるが、1on1ミーティングなどが自然に増えるのでテレワークと相性が良い。 |
あしたのチームの調査によると、成果主義の推進や成果の見える化などが必要との声がある一方で、成果につながる行動自体が見えづらいので成果主義自体の見直しも必要との声もあります。したがって、必要に応じて上の表の人事評価導入は検討すべきです。そこで、人事評価制度の変更や追加のコツを紹介していきます。
人事評価制度の変更のコツ2つ
人事評価制度の変更や追加のコツとして以下2つがあげられます。
- PDCAやOODAの活用
- 職種ごとに微調整
それぞれ詳しく解説していきます。
評価制度変更のコツ①PDCAやOODAの活用
1つ目のコツとして、速いPDCAやOODAといったフレームワークを使うことがあげられます。完璧に評価制度を決めてしまおうとすると多大な労力がかかりますし、大なり小なり課題がでるからです。
したがって、通常よりも細かい期間で試しの人事評価を導入してブラッシュアップしていくのがおすすめになります。その際に、PDCAやOODAなどのフレームワークが効果的というわけです。
PDCAやOODAについてあらためて確認したいという場合は、以下の記事が参考になります。
評価制度変更のコツ②職種ごとに微調整
職種や業務の特徴ごとに人事評価制度を微調整するのも重要なコツです。ます、評価制度全体が変わっていく中で「試行錯誤していく評価制度であること」を従業員に理解してもらう必要があります。以下の表から各部署と業務の特徴を理解していきましょう。
組織 | 具体的な業務内容 | 業務の特徴 |
部門全体で評価される組織 ※比較的評価がしやすい | ・事務職やバックオフィス ・定型的、機械的な販売業務 ・特殊法人や公務員など非営利団体 | 実直に作業を進めれば、相応のアウトプットが出てくる |
個人ごとに目標を与えられ成績が明確に出る組織 ※評価が難しい | ・民間企業の営業組織 ・クリエイティブ系や商品開発などの創り出す組織 | 時間をかけても必ず成果がでるとは限らない |
やっかいなのは「時間をかけても必ず成果がでるとは限らない」業務の評価方法です。単純に「成果が出なかったので評価はゼロです」と評価するのは現実的ではないからです。
コロナ禍のようになんらかの理由で、ビジネスが停止するケースもあります。そのような厳しい状況下で、業務プロセスを見ないで成果だけで評価をしてしまうと従業員の離職率などにも影響してくるでしょう。
したがって、先に紹介したテレワークに適したマネジメントをして勤務態度などの評価もしたり、MBOやバリュー評価などの人事制度の導入が必要です。
テレワーク(リモートワーク)による効率化や改善の事例
テレワーク(リモートワーク)による効率化や改善は主に以下3つです。
- 効率的ではない(不要な)残業時間の削減
- 会議で一切発言しないといった行動の評価見直し
- 社内決済や押印のためだけの出社見直し
それぞれの詳細を解説していきます。
効率的ではない(不要な)残業時間の削減
テレワークで残業時間が減って収入が減った、という声が聞かれました。
しかし、毎月ほぼ固定の残業時間を申請している業務チーム(または個人)の生産性はやはり高いとはいえません。生産年齢人口が確実に減る将来において、「残業ありき」で業務を回している組織はもたない可能性があります。残業時間の削減を考える、きっかけにしたいところです。
会議で一切発言しないといった行動の評価見直し
会議も「実際にしゃべっている人は議長と2-3人」や「上長の独演会になっている」といったことが、特に古い組織やワンマン企業の意思決定時に見受けられます。体質の不健全さに気づき、対策を打つことは有益です。
社内決済や押印のためだけの出社見直し
社外のお客様や取引先と結ぶ契約書は書面に割り印を入れたり、署名捺印が直筆でないと許されないことはあるでしょう。しかし、社内承認はPDFファイルなどの編集ができない書面と電子サインでまかなうことが現代の主流となりつつあります。
「当たり前と思っていた」「ここを改革する事は不文律として難しい」などあきらめていた慣習や決めごとは多くの企業であるものです。そして、テレワーク(リモートワーク)の導入は良くも悪くも大きな変化を生み出しています。
避けられない変化であれば、少しでも自社の得にしてみようとする気持ちで向き合い、課題解決に活かせられれば一石二鳥になります。
最適な評価制度の前に最適なテレワークは導入てきている?
一口にテレワークといってもモバイルワークやサテライトオフィス勤務、在宅勤務などにわかれます。そして、テレワーク自体への理解や自社に最適な導入を知らずに人事評価を刷新するのは難しいです。本記事はあくまでもテレワークと人事評価について解説していくので、テレワーク(リモートワーク)の長所と短所が人事評価に与える影響を深堀りしていきます。
テレワーク自体についてより詳しく知りたい場合は、以下の記事を参考にしてください。
テレワーク(リモートワーク)の長所と人事評価への好影響
テレワーク(リモートワーク)の長所と人事評価への好影響につながる要素は以下の2つです。
- 慣習や惰性で続く社内ルールの中止・廃止を実現できた
- コロナは経営者にとってピンチでもありチャンスでもある
それぞれ具体的に解説していきます。
慣習や惰性で続く社内ルールの中止・廃止を実現できた
以下の慣習や惰性で続く社内ルールの中止・廃止を実現できたという声が多くあります。
- 通勤時間の削減
- ハンディキャップを解消(または縮小)できる
- 育児世代女性が社会復帰しやすくなった
それぞれ詳しく説明してきましょう。
通勤時間の削減
首都圏や大都市近郊から通勤している方は、合計2時間前後の通勤時間が不要となります。満員電車で過ごす2時間の削減がとても大きいと感じるのは当然の事でしょう。
ハンディキャップを解消(または縮小)できる
総じてハンディキャップと書かせていただきましたが、例えば
- 障がいを持たれている方
- 物理的に通勤で通える距離ではない地域にお住まいの方
など「従来の勤務体系では働きにくかった理由」がテレワークによって解消された、という意見もありました。
育児世代女性が社会復帰しやすくなった
結婚・妊娠・出産・育児により、それ以前に積み重ねたキャリアをリセットしなければならない方が多かったのも事実ですが、テレワーク(リモートワーク)を導入する事により、以下のような対応が可能になったそうです。
- 育児をしながらでも可能となる勤務体系の実現
- 突発で起こること(育児中の緊急事態やトラブル)への対応
コロナは経営者にとってピンチでもありチャンスでもある
各企業に長年はびこる慣習や惰性で続けてきたムダな作業やルールの見直しの絶好のタイミングだったという意見も多いです。具体的には、
- 「個人的エゴを見てみぬふり」
- 「問題提起するには些細な事で、周囲の人から自分が疎まれる」
など、といった問題です。会社のコスト面へ大きく問題を与えることではありませんが、モラル面の崩壊につながることが懸念点であるといわれています。
つまり「規律正しく業務を遂行する意識」を失い、企業を悪い方向へ蝕んでいくきっかけになる、と筆者は考えます。
テレワーク(リモートワーク)の短所と人事評価への悪影響
テレワーク(リモートワーク)の短所と人事評価への悪影響が懸念される要素は以下の4つです。
- 労務管理上の行き過ぎ・濫用に注意
- ON/OFFについての切り替えとスタッフ管理
- 業務時間外にメールや電話の発信をしない
- テレワーカーの孤立防止
上記4点の詳細を解説していきます。
労務管理上の行き過ぎ・濫用に注意
こちらは総じて、現場の中間管理職が引き起こす問題です。
従業員を管理する立場の者に「必要以上のスタッフ監視行為や強制的指示等を行わせてはいけない」という事です。働き方改革に逆行するのはもちろんのこと、パワハラやセクハラなどにつながりかねない大変危険な注意点となります。
ON/OFFについての切り替えとスタッフ管理
まず上司による「即応」の強要は厳禁です。オンラインで業務中かどうか、などはITツールの標準機能により自動で関係者に知らせる機能がついています。
※写真参照 以下のような状況確認が行えます。左写真で黒いぬりつぶし横のランプが緑色になっており、現在オンラインで連絡可能である状態を示しています
業務時間内で、常にトランシーバー通信のような即応を求めることは業務管理の域を逸脱し、モラルに反している事を忘れないでください。
業務時間外にメールや電話の発信をしない
働き方改革に逆行する、終業時間外の指示や電話はメリットを打ち消してしまいます。管理職こそ自分の仕事を整理して、あらかじめ部下に対して送る指示を早めの準備が必要です。
※ガイドラインに逸脱する言動はコンプライアンス違反問題になる恐れがありますので、以下のリンクを参照の上社内のテレワークルールを決めていくことを推奨いたします。
国土交通省テレワーク(リモートワーク)ガイドラインリンクURL:https://www.mlit.go.jp/crd/daisei/telework/p4.html
テレワーカーの孤立防止
テレワークは通勤によるストレスが無くなる等のメリットもありますが、一方で「1日誰とも会わなかった」「業務連絡以外の雑談やストレス発散の何気ない会話が減った」という弊害も出てきます。
その対応も加減が難しいところですが、スタッフの適度なケアは大切であると言われています。
テレワーク(リモートワーク)業務者とのコミュニケーション円滑化
人は程度の違いこそあれ、やはり人とのつながりがあることで幸せややりがいを感じる生き物です。
テレワーク環境であろうとなかろうと、何気ないねぎらいや感謝の気持ちを伝えること、相手に対して興味をもって接することが組織の結束を強くしたり雰囲気を良くすることは間違いありません。
管理職や経営者は必要最低限のケアを常に意識しながら管理業務をするように心がけたいところです。
出社している人とテレワーク(リモートワーク)業務者の待遇や評価面について
出社しているスタッフとテレワークスタッフに格差を作らないよう意識することも大切です。どうしても、目の前でプロセスと成果を確認できるスタッフの事が良く見えてしまう傾向は避けられません。
大切なのは、プロセスを経由してどのような成果が出ているのです。テレワーク従事者の不利な点なども理解した上で、双方を客観的かつ平等な評価をつけられるよう意識することが管理職の責務といえます。
まとめ:テレワーク(リモートワーク)に適した人事評価で生産性アップ!
今回はテレワーク(リモートワーク)に関する評価制度を以下のとおり解説しました。
- テレワーク(リモートワーク)の概要
- メリットとデメリット
- 評価制度のあるべき方向性
人事評価制度の似見直しは、自社の点検と将来への展望を見直す良い機会でもあります。ぜひより良い評価制度を実現して生産性のアップ、ひいては自社の将来性の拡大につなげてください。