データマネジメントとは?営業部門へのメリットと現場で生かすためのポイント
現代の営業活動では、さまざまなデータの活用が求められています。
一方で、せっかく集められたデータが、ただ貯めているだけで営業成績の向上にうまくつなげられていないことも多いのではないでしょうか。
企業に蓄積されているデータを効果的に活用する方法に、データマネジメントがあります。この手法を理解し実践することで、データを業績アップにつなげることが可能です。
ここではデータマネジメントが営業活動にどのようなメリットをもたらすか、また現場で生かすためのポイントを取り上げ、解説していきます。
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データマネジメントとは?
データマネジメントを営業活動に活用するなら、どのような内容か知っておくことは重要です。
まずデータマネジメントの定義を解説した後、営業部門で実施するメリットや何を行うべきかについて触れていきます。
国際的な「DMBOK」によって定義されている
データマネジメントの定義や実施する際のガイドラインは、DMBOK(データマネジメント知識体系)によって定められています。
2017年に刊行された「データマネジメント知識体系ガイド」には、以下の記載があります。
データマネジメントとは、データとインフォメーションという資産の価値を提供し、管理し、守り、高めるために、それらのライフサイクルを通して計画、方針、スケジュール、手順などを開発、実施、監督することである。
DAMA International(DAMA日本支部、Metafindコンサルティング監訳): データマネジメント知識体系ガイド第二版. 日経BP社, 東京, 2017, p40
引用した文章で示されている通り、データマネジメントでは以下に挙げる例のような、さまざまな活動が求められます。
- データの設計
- ビジネスでデータを有効に使うための検討
- データの保守や管理、品質の確保
- 有効なセキュリティの実装
- データに関する意思決定の明確化
上記のとおり、データマネジメントはただデータを効率的に保管するだけの活動ではありません。
効果的な利用方法や安全性の確保、社内の責任体制の確立なども含まれます。
情報システム部門はもちろん、全社をあげて活動すべき事項といえるでしょう。
営業に関するデータなら、営業部門の関与は不可欠
「データマネジメント知識体系ガイド」には、以下の記載もあります。
データマネジメントにはITスキルと非ITスキル(例えば業務スキル)の両方が必要とされる。データマネジメントの責任は業務とITの担い手の双方が持つ。
DAMA International(DAMA日本支部、Metafindコンサルティング監訳): データマネジメント知識体系ガイド第二版. 日経BP社, 東京, 2017, p40
つまり営業に関するデータであれば、実際にデータを使って業務を行う営業部門の関与が不可欠です。
最新かつ正しいデータに基づいて決断を行わないと、市場と顧客にマッチした営業活動ができず、失注の続出など営業成績の悪化につながりかねません。
IT化が進んだ時代の営業活動において、データは事業の成否も左右する重要なものです。「難しい」「面倒」などと避けず、積極的に関わることが事業の成功につながります。
営業活動では何を行えばよいか
営業活動でデータマネジメントを行う場合、すべての活動を営業部門で行う必要があるとはいいきれません。
たとえばセキュリティの確保などは、情報システム部門が大きく関与するケースが多いでしょう。
営業部門が主導的に関与すべき事項の1つに、データの利用に関する項目があげられます。
そもそも入力するデータや必要な情報を最もよく知っている人は、営業部門に所属する方です。
使いやすさだけでなく営業成績にも直結する項目ですから、適切なデータマネジメントの実行は欠かせません。
アウトプットすべき情報に応じて、データを収集し整理する
営業活動で収集されるデータは、営業成績の向上と顧客満足のために活用される必要があります。
このためアウトプットすべき情報を決めた上で、データを収集し整理することが求められます。
具体的には、以下に示す項目が検討されることになるでしょう。
- 収集すべきデータの項目(必須項目か否かの検討も必要)
- データの保存形式(表のレイアウトなど)や、データ間の関連付け
- 更新する頻度や有効期限
データをもとに画面データや報告書、グラフなどが作成されますから、上記の項目をうまく考えることは欠かせません。
仕組みがよく練り上げられている場合はデータの二重入力を防ぐことができ、業務の効率化にも寄与します。
データマネジメントで使われる主な手法
データマネジメントの実施には、さまざまな手法が使われます。
ここでは代表的な手法を3つ紹介していきます。
コードの付番
データを区別する目的でコードを付けることは、データマネジメントの重要な手法の1つです。
営業担当者のなかには「社名や担当者名で区別すれば大丈夫」と考えている方も多いかもしれません。
しかし社名を頼りにデータを検索することには、以下のリスクがあります。
- 取引先のなかに同じ社名を持つ会社が複数出た場合、対応できない
- 社名や担当者名が変わった場合、関連するデータを一気に修正しなければならない
社名や担当者の変更は、案外よくあるものです。
別途「会社コード」「担当者コード」といった項目を設け、このデータをキーに検索することが重要です。
この方法ならば、もし社名や担当者が変わっても、修正箇所が少なくて済みます。
名寄せ
整理されていないデータのなかには、同じ会社や担当者のデータが重複して保管されている場合があります。
ばらばらの状態のままで保存すると、以下の不利益が生じます。
- 合計値が正しく表示されない
- 過去のデータが正しく検索、表示されない
このためシステムの導入時には、会社や担当者などを1つのデータにまとめる「名寄せ」が重要です。
導入後は「同一の会社名、かつ住所が同じ」データは二重に入力させないように制御することで、名寄せの実施をしなくて済む場合が多いです。
データクレンジング
入力ルールを定めている企業であっても、情報を入力する際には表記の揺れが発生する場合が多いです。
これらの表記を統一することを、データクレンジングと呼びます。一例として、以下の例を見てみましょう。
社名 | 担当部署 |
---|---|
株式会社パピプファクトリー | ベビーキッズ事業部 |
(株)パピプ・ファクトリー | ベビー・キッズ事業部 |
(株)パピプファクトリー | ベビーキッズ事業部 |
上記の例では「株式会社」の表記方法や全角・半角の使い分け、中黒(・)の有無がばらばらとなっています。
このままでは同じ会社や担当部署なのに記録が別々に行われ、一貫した対応がしにくくなります。
データクレンジングは表記を統一する上で欠かせない作業であり、名寄せの前段階として必要な作業です。
また表記の揺れは随時発生しますから、導入時のほか導入後も定期的に行うことが望ましいです。
営業部門でデータマネジメントを行うメリット
営業部門でデータマネジメントを行うことには、さまざまなメリットがあります。
現状多くの企業の営業部門でデータマネジメントは進んでいません。弊社が行った調査では、「現在、データを活用した営業ができていますか?」という質問に対して、「できている」と答えた企業はわずか15%にとどまりました。さらに、およそ8割の企業が「データを分析・活用できる人材がいない」と答えています。そのため、”いかにデータマネジメントを進めるか”が営業部門で差が付くポイントになっています。
ここでは4つのメリットを取り上げ、解説していきます。
必要な情報を簡単に得られ、対応を適切かつ迅速にできる
スピーディーに適切な判断を行い、対応を実施することは、営業部門のみならず多くのビジネスマンにとって重要な行動です。
たとえば「情報をまとめるのに1日かかります」と言われたら「ああ、ではいらない」という情報でも、迅速に用意できるのならば「必要」という場面は多いのではないでしょうか。
データマネジメントを適切に行うことで、営業活動に必要なデータを最新かつ整理された状態に保てます。
その結果、各自の営業活動で必要な情報を簡単に得ることが可能となります。
新しいデータによる状況把握ができるため、顧客などへの対応を適切かつ迅速に行えます。
これによりビジネスチャンスを逃さないことはもちろん、顧客からのクレームや不満を未然に防ぐ効果も期待できます。
確かな情報を元に決断でき、適切な営業戦略を取れる
データマネジメントは、現状を正しく把握した上で営業戦略を決定するためにも重要です。
経験に頼らず現状に即した決断を行えるため、競合他社に先んじたスピーディーな対応を行えます。
市場の要請にマッチした製品やサービスを投入できれば、多くの顧客から支持を集めることにつながるでしょう。
結果として市場で優位な立場を得ることにもつながりうることは、データマネジメントを活用する効果の1つとして見逃せません。
有効な組織知として活用でき、情報共有によって属人化が防げる
データマネジメントがもたらす効果には、組織知としての活用と、属人化の弊害を防ぐことも重要なポイントにあげられます。
データマネジメントにより、データが整理された形で活用可能となります。
組織知として、営業部門全体で情報共有できることは1つのメリットです。
またAIや営業管理システムで蓄積されたデータを活用することにより、営業担当者ごとに次のアクションをアドバイスするといった活用も可能となります。
属人化を防げることも、データマネジメントがもたらす効果の1つです。
営業活動の情報が適切にデータとして保存されていれば、何らかの理由で営業担当者が不在であっても、他の人が代わりに対応できます。
このため顧客からの信頼を保ち、チャンスを逃すリスクを下げられます。
また活用の方法によっては、営業担当者が情報を1人で抱え込む「属人化」を防ぐ効果も期待できます。
上司や他のメンバーのチェックが入るため、営業担当者の不適切な業務を防げることも見逃せません。
担当者が入力する手間を最小化できる
営業の現場によっては、「作成する表やグラフごとに、そのつどデータを入力・作成している」という状況があるかもしれません。
データマネジメントを効果的に行うことで、入力の手間を減らせます。
1回の入力でさまざまな表やグラフに反映できる仕組みを作ることで、同じデータを何度も入力する手間を防げます。
入力の時間を削減することで、営業活動により多くの時間を割り当てられるメリットは見逃せません。
加えて二重入力の場合にありがちな「同じデータのはずなのに、内容が違う」といった入力ミスも防げます。
どのようにデータマネジメントを行えばよいか?
データマネジメントは、ただデータを管理すればよいものではありません。
営業活動に有効に機能させるには、やり方も重要です。
ここではデータマネジメントを行う上で重要な、5つのポイントを取り上げます。
目的や目標を明確にする
データマネジメントを行う上ではじめに考えるべき項目は、データを集める目的や目標です。
やみくもにデータを集めても、営業活動の効率化や営業成績の向上に役立たなければ意味がありません。
組織の課題を明確にした上で、データを活用する目的や目標を決めることが先決です。
必要な情報と入力データを考える
データを活用する目的や目標が決まったら、必要なアウトプットを考えましょう。
収集すべきデータは、求めるアウトプットに依存します。
このため初期の段階で、アウトプットに盛り込むべき項目をよく検討する必要があります。
もしアウトプットの内容があやふやな場合、データを何度も取り直さなければならず、業務効率を著しく下げるおそれがあります。
計画をきちんと立て、1回のデータ取得で済むように工夫することが重要です。
データを効率的に整理し管理する
取得したデータは、以下の点に注意して活用する必要があります。
- わかりやすい方法で保管する
- できるだけ多くのアウトプットに活用する
営業部門の主な目的は売上と利益の増大のため、案件を受注することにあります。
多忙な業務を少しでも軽減するためにも、入力作業の軽減や効率的な管理方法を検討しましょう。
またさきに取り上げた通り、二重入力を防ぐことも重要です。
SFAなどを活用するとデータを整理でき、効率的な活用が実現できます。
また管理作業の軽減も可能です。
組織として管理する姿勢を明らかにする
データマネジメントでは、組織としてデータを管理する姿勢を明確にすることも重要です。
そもそもデータは、組織運営を左右する重要な情報です。
そのためデータ管理の責任者も担当者レベルではなく、役員など上層部が任命される必要があります。
これにより営業部門や経営戦略に関する意向もデータマネジメントに反映されやすくなり、効果的な管理が可能となります。
もしデータに関する事故が発生した場合は企業の信頼が失われ、業績の悪化にもつながります。
たとえばデータの紛失や、外部への流出があげられます。
業務体制の不備を問われないためには組織として責任をもって管理する姿勢を持ち、体制を整えることが重要です。
まずは一部の部門や機能からスタート
「よいことはスピード感をもって実施すべき」
このような考えを持つ営業職の方も多いのではないでしょうか。
しかしデータマネジメントを実施する場合、必ずしもこの考えが適するとはいえません。
いくらよい仕組みであっても、実際に導入すると多少なりとも問題が発生するものです。
もし一気にすべての業務に対して導入してしまうと、問題が起きた場合の影響や、対応するための修正も大きくなります。
何度も手直しが発生したのでは、現場の不満も大きくなりかねません。
このような失敗を防ぐには、一部の機能からスタートすることが賢明な方法です。
一部の営業部門に限ってスタートすることも、よい方法の1つといえるでしょう。
まずは小さく始めることが重要です。
運用で発生した課題を整理し解決した上で導入することで、営業活動全体に広げた際のトラブルを少なくでき、安定した活用が見込めます。
データマネジメントを営業の業務に生かす4つの心得
データマネジメントを営業の業務に生かし業績のアップにつなげるには、押さえておきたい心得があります。
ここでは4つの心得を取り上げ、それぞれの内容を解説していきます。
目的はあくまでもビジネスの成功である
データマネジメントの最大の目的は、営業成績の向上であり、ビジネスの成功です。
仕組みを考えるうえで、「営業活動にどのような形で活用できるか」という視点は欠かせません。
とかくデータマネジメントというと、データを適切に保管・管理することが着目されがちです。
もちろんこれらは大変重要ですが、データを適切に活用する前提の項目にすぎません。
「どう安全に管理するか」という観点ばかりに目を奪われていると、データの活用がおろそかになりかねません。
せっかく集めたデータを有効に活用せず、利益に貢献できるチャンスを見逃すことは本末転倒です。
データを集める最終的な目的は営業成績のアップですから、「どう活用するか」という観点に立った仕組みづくりも欠かせません。
仕組みづくりやシステムの導入を目的にしない
ありがちな失敗パターンの1つに、「仕組みやシステムは完璧に作ったが、現場で利用されない」というものがあります。
このような事態は、現場で働く従業員が使いにくい場合に起きやすいものです。
せっかくよい仕組みやシステムを作っても、利用され業務改善に生かせなければ、ないものと同じことになってしまいます。
データマネジメントも例外ではありません。
どれだけ優れた結果をもたらす仕組みを作ったとしても、現場で使われなければ意味がありません。
このため仕組みづくりやシステムの導入を目的としてはいけません。
継続して活用されるためには、現場に配慮した仕組みづくりが求められます。
データの鮮度を保つ
データに基づいて判断を行う際、「いつのデータか」はきわめて重要です。
古いデータによる判断を下すことは、競合他社の後追いにつながるだけではありません。
顧客の行動や嗜好の変化が激しい分野では、古いデータの活用により誤った判断を行うリスクもあります。
最新のデータを準備して「鮮度」を保つことは、正しい判断を行う上で欠かせません。
もっともデータの更新をすべて人手で行っていたのでは、そのぶん肝心の営業活動に割ける労力が減少してしまいますから、本末転倒です。
可能な範囲でデータ収集の自動化を図り、営業や事務担当者の手間を省く工夫が求められます。
結果を定期的に検証し、仕組みをアップデートする
どのような仕組みでも、実際に運用すると多少なりとも想定と異なる課題が出るものです。
これはデータマネジメントも例外ではありません。
データマネジメントは、一度仕組みを作ればよいものではありません。
運用した結果を定期的に検証することが重要です。
もし課題があれば改善を行い、仕組みをアップデートしましょう。
絶えず改善を繰り返すことで、営業活動に役立つデータの活用に寄与し続けることが可能です。
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そのためには営業担当者各自の積極的な関与も欠かせません。