組織改革とは?その課題と解決策~働き方改革を実現するために~
働き方改革が叫ばれる中、経営レイヤーやマネジメントレイヤーであれば今組織の改革を実施している人は多いと思われます。
組織改革の必要性を理解して実施しているにも関わらず、ねらった改革・改善がなされず逆効果、という方も多いのではないでしょうか。
どこに課題があり、何がポイントかあなたは知っていますか?
この記事ではそこにある課題、ポイントから具体的な方法論までブレイクダウンしてご説明します。
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組織改革の意味とは? 働き方の改革が今求められる理由
組織改革とは?
組織改革とは、企業を包囲している外部の環境変化のスピードに柔軟に対応し、組織内部の構造や運用方法を変えること・会社の継続的成長を促すことをいいます。
組織改革が求められる理由
人手不足、長時間残業、時間当たりのアウトプットが少ないことを示す、労働生産性の低さにより、働く人のモチベーションは著しく落ちています。
あるいは、現場と経営の関係は逆転している、と考えてもいいでしょう。
働く人が主体的に仕事に取組み、短い時間でも収益性を確保し、持続的な労働市場・企業環境を作ることが急務であることは間違いありません。
そのため、国全体で「働き方改革」が実施されて、メインの目標として、労働生産性の向上が据えられているのです。
組織改革は、ますます下にとがっていく人口ピラミッドに対応し、会社の持続的な成長を目標としています。会社の組織改革は、一面において、働き方改革を会社経営の側から見たものということができます。
働き方改革とは?課された義務やメリット、導入方法をわかりやすく解説
国内企業の外部構造変化への対応は喫緊の課題であり、従業員の獲得や離脱の防止、労働生産性の向上が求められ、現状の体制では厳しくなる企業も多いといえます。
その手段が、働き方の柔軟性の確保・社内の労働時間に関する精度の整備・女性や障害者、外国人の採用の促進などであり、また、ITツールの導入でもあります。
ただし、経営層が取り組むべき究極の課題は、働き方改革の数値目標を達成することにとどまらず、構造変化・企業文化の変革です。
正しい手段をとり、いくら成果を出したとしても、それが一時的なものにとどまれば、変革を常に続け、成長を続ける目標が長期・永続的に達成できません。
企業が自発的に持続的成長を止めない企業文化を作り、意思決定構造に常に変革を起こし、変革をいつでも起こせる体制を維持することが組織改革の究極の目標であることを、経営層は自覚すべきことになります。
組織改革で得られる効果
組織改革を実行することにより、組織が抱える課題が解決しやすくなります。
一般従業員も管理職層も、組織改革を実行することは、
- 正しく変革を起こせば報われる
- 会社の成長を助ければ報われる
との実感を持たせることになるため、課題解決に助力するようになります。
また、組織改革の在り方は、従業員にそのように感じさせるものでなければならないことを意味します。
うまくいけば、従業員のモチベーションのアップ→優秀な人材の定着率が向上→課題に向き合う余裕ができて課題の解決が進む→労働生産性の向上→企業のブランドイメージアップと好循環になります。
組織改革で発生する課題
組織改革のメリットや意味は知っている方は多いと思われます。しかし現実には簡単には進まないのも組織改革の特徴です。
実際に、推進することにより以下の問題が組織の中で発生することが多く見られます。
課題1:感情のギャップ(経営層と従業員間)
必ず経営層から現場社員に落ちるまでに意識のギャップが生まれます。
早ければ執行役員レイヤー、だいたい部長クラスからギャップが生まれることもあるくらいです。
結論をいうと、変革を実施するのは個人であり、個人の意識や、行動の変化なくして組織変革の成功はありえません。
人間は本質的に変わることを嫌うものであり、そのためにも経営層と従業員の間には感情のギャップが生じやすい点は理解しておく必要があります。
課題2:合意形成のプロセス問題
必ず意思決定メンバーとなる人の権限は決定しておくことが必要です。
全部署や従業員に承認をもらえることはありませんし、不必要でもあります。
あるコンサルティング会社のグローバル・リーダーは、その講演のなかで「良いことは20%の支持率でスタートして構わないのです」と繰り返し説くといいます。
そのあとやってよかった、と思える改革になるかどうかは、経営層の手腕の問題となります。
支持率20%でスタートし、とにかく早く意思決定をして進めていかないと事実上改革を成し遂げることは厳しいといえます。
ただし、その決定が独善的すぎると、人はついていけなくなります。決定・議論・決定・議論というように、効率的にテンポよく、合意形成していくためには、押さえるべきキーパーソンを巻き込む議論のプロセスがあります。
誰がキーパーソンになるのか、巻き込まれないと亀裂が入りそうなのか、組織全体を巻き込むためにも知っておくことが必須といえるでしょう。
課題3:新規ワークフロー現場の定着拒否
様々なツールを導入してワークフローを立案、現場に導入したとしても定着しないことが多くあります。
現場は基本的に変化を嫌います。新しいものを持ちこめば、それに伴う新しい作業が発生するためです。
しかし、新しいものに対して、その有用性を説得し、常にマネジメントで定着とその効果を観測しなければなりません。
新しいものを使うと、一人一人にメリットがあることを理解してもらう、また効果が実感しやすいツールを選ぶなどの工夫が必要になります。
以上を一言でまとめると「人」に関わる問題が発生するのが組織改革です。そして、現場の従業員までが歩いてくれないと改革を成し遂げることは厳しいのです。
課題を解決できない場合に発生する組織改革の問題点
人に課題が残ったまま組織改革を進める・進んでいないのに、進んでいると考えて、打ち手を全く打たないと、新たに導入した業務フローやツールの定着を望むことができません。
新しいものの定着には労力をかけて観測すべきことはすでに述べましたが、そこをおろそかにすると、以下のような状況となることが多く見られます。
疲弊感の蔓延/モチベーションの低下
現場に変革における「疲弊感」「やらされ感」が蔓延する。
モチベーションが下がる。
業務エラー/残業時間の増加
業務のエラーが増え、逆に残業時間が増える。
抜本的な生産性向上ができない。
属人化の蔓延
新規フローが定着しないので属人化が蔓延。
個人の努力でなんとかしようとしている組織傾向になることが多い。
新規施策が実施されなくなる
1~3の結果とともに、働き方改革における業務の圧迫も含め、業務フロー改革・ツールの導入のキモとなる、業務要件定義の時間は圧迫される。
例えば、従業員満足度調査など様々な調査・サーベイを行うも具体的な改善策が何も実行されないこともまた多い。
以上のような色々な要素が絡まった結果、改革をしているのに効果が現れないことも多いのです。こうなると、改革どころか組織は動かなくなります。
組織改革で上手に組織を動かす4つのポイント
上記の問題点を解決するためには果たしてどうすればいいかですが、一言でまとめれば「経営層」が「現場が動く仕組みを作る」ことにかかっています。
Point1:改革におけるビジョンの設定
まずは先ほどの3つの課題の全てに通じる要素「自ら動いてもらう」ことが必須となります。組織の目指すべき目標(経営ビジョン)を明確化し、これを社員に理解させるだけでなく、共感を得なければなりません。
共感は、理解以上に、人を動かすのに強力です。
外部環境に適応して、自分から動く現場を作るために、企業文化を変化させ、新しく醸成せねばならないのです。
Point2:意思決定者であるステークホルダーの明確な策定
次に合意形成におけるプロセスの改善が必須となります。
前提として人は変化を嫌うので、変化に対してすべての人がYesということはないこと、先ほどご説明した通りです。人が多くなればなるほど、そして、大企業であればあるほど、障壁は高くなります。
こうした中では合議制によると、物事は永遠に進まないので、1つのプロジェクトとして意思決定者であるコアメンバーを明確に選定し、権限差配する必要があります。
Point3:改革プロジェクトマネージャーへ権限を
組織や報酬体系の改変を含めて複数部署がまたがる全社的なプロジェクトとなることが多くなります。
その中で、現場にはじめの1歩を自ら歩ませないといけませんが、最初から現場のメンバーが自ら動くことは稀といえます。
そこで、改革プロジェクトマネージャーをアサインして、権限を委譲しましょう。そして、プロジェクトマネージャーを保護することも必要です。
プロジェクトマネージャーが変革を実行するのに対しては、現場が「抵抗勢力」となります。
下からの突き上げで、プロジェクトマネージャーが動きにくいようでは改革が程遠くなります。
プロジェクトマネージャーの資質に頼ることは限界がありますので、権限がある上位マネジメント層の人事面での保護や助言を欠かさないようにしましょう。
Point4:実施者が承認される評価制度や報酬体系の組み込み
そして最後は従業員自らが望んで動く制度を構築する必要がありますが、インセンティブが不明確では従業員自らが望んで動くようにはなりません。
そこで、改革に力を貸した従業員には評価や昇進で報いて、逆の場合はよい評価はない、ということが会社の中で明確になるようにします。
具体的には、例えば、ツールを導入し、そのあとの定着のフェーズにまで力を尽くした従業員は評価で報いる一方、あまりツールを使わず、旧態依然とした業務に固執する従業員には昇進のチャンスを与えないなど、はっきりとした待遇の差を設けてよいでしょう。
動く人に組織として承認の状態を作り出すこと
行動を起こす動機づけには、評価や待遇もそうですが「人に承認されている」状態にするのが人間の本能として一番効きます。
ネガティブに指摘しても人は動きません。
人間は社会的な生き物であるため、良きパフォーマンスを出すベースにその社会(会社での仲間)に承認され、その意味で安心している状態が会社にとっても最も望ましい状態です。
そのために「自己承認」と「役に立っている状態」が必要であり、「怒られる」「やらされる」よりは「自らやる」方が、良い結果を期待できます。
その人の承認を会社として報奨で対応すること
そして、経営レイヤー内の評価ではなく「会社」として評価をすることが大事です。
人は論理より感情で動くものですから、これらを感じられるよう表彰制度を設けたり、給与体系に反映させたりすることも視野に入れるべきです。
なお、間違っても経営レイヤーが「仕組み」をつくらないのに、従業員が動かないと言ってはいけません。
先んじて動き現場の課題を指摘、改善提案を出した従業員に最大限の承認を与えましょう。
具体的な組織改革の方法論 〜書籍/コンサル/セミナーについて〜
組織改革を実施するには社内のコアメンバーにナレッジの醸成を、具体的にはプロジェクトマネジメントのスキルを醸成する必要があります。
オススメの書籍について
まず、費用がほとんどかからず手軽にナレッジを得られるものの一つに書籍があります。実務で使えるおすすめの書籍をご紹介します。
マンガでわかるプロジェクトマネジメント
漫画でわかりやすく、購読が苦手な方でも人を先導する知識が得られるのでお勧めです。
「プロジェクトマネジメント」実践講座
日本のプロジェクトマネジメントの第一人者、敏腕マネジメントとしても知られる伊東氏の出版した本です。PMPなどの教本とは違いわかりやすく端的に教えてくれる本です。
担当になったら知っておきたい「プロジェクトマネジメント」実践講座
おすすめのセミナーについて
セミナーもナレッジを短時間で取得するには有効です。無料でも参加できるセミナーも多くあります。
ソフトブレーン主催セミナー
実は、弊社も組織改善に特化したセミナーを実施し、組織にSFAを導入するにあたり営業組織の改善に多く参画しています。
セミナーのナレッジを社内でも落とせるような内容を提供できますので、営業における業務改善が必要な場合はぜひご参加ください。
リンクアンドモチベーション主催セミナー
従業員エンゲージメントを高める人事ツールであるモチベーションクラウドで有名なリンクアンドモチベーション社はセミナーも多数実施しています。クライアント先で得られた複数の会社での知見をナレッジとして提供してくれるセミナーです。
参考:https://www.motivation-cloud.com/seminar/
リクルート主催セミナー
人材大手リクルートが実施しているセミナーです。人材戦略面だけでなく組織戦略面にも精通する無料セミナーも多く開催されています。
参考:https://www.recruit-ms.co.jp/seminar/
コンサルティングについて
ナレッジを醸成する時間的リソースや、社内に複数部署を統括できる人材がいない場合はコンサルを活用するのが合理的です。第三者視点でロジカルに課題を抽出し、課題の解決においては明確な意思決定のサポートをしてくれます。
日本プロジェクトソリューションズ|JPS
参考:https://www.japan-project-solutions.com/pmo-c134
目標に対して複数の部署を束ね成果へ導くこと全般のナレッジがあり、錚々たる大手企業との取引実績も多数です。PMOサービスを提供。業務改善、組織改善、新規事業の構築などさまざまな分野に対応しています。
リンクアンドモチベーション
ベンチャー~古参の大企業の組織改革に複数介入している実績があります。組織改善のコンサルティングに特化しており、その領域のノウハウは頭一つ出ている印象です。
組織改革の成功事例3つ
改善の成功事例の一例をあげますので、参考にしてください。
ひまわりネットワーク株式会社 様
ITツールの一元化に苦労し、なかなか工数が減らない悩みを抱えていました。
SFA/CRMツール eセールスマネージャーの導入により、一人当たりの月の事務処理時間を60.5時間削減することに成功、社員満足度の向上と、売り上げ目標の継続的達成を実現しています。
メディキット株式会社 様
eセールスマネージャーの導入により、脱・紙日報を実現しました。
スマートフォンによる情報共有の一元化により、課題を抽出、改善に取り組んだ結果、業務が大幅効率化されています。
情報共有の質も上がり、分析を積み重ねた結果、営業の「成功の方程式」を確立しています。
株式会社インボイス 様
海外製のSFA/CRMを導入したものの、失敗、新たなExcelでの工程を発生させてしまっていました。
最適な営業の情報共有プラットフォームをeセールスマネージャーで実現し、マネジメント層によるメンバーへのフォローアップ業務が適時に行われ、かつ業務の大幅な効率化を達成、会議は週1から、月1にまで減少しています。
組織改革は従業員が動く仕組み作りで決まる
ここまでを端的にまとめますと経営レイヤーが仕組み化をし、従業員自身が動いてもらうことが成功のための必須要素となります。
従業員に動いてもらうためには、従業員に理念を伝え、共感してもらうためのツールや評価体系の導入による効率化・業務改善の推進をベースとして行います。プロジェクトマネージャーに権限を与え、意思決定から実施までのPDCAサイクルを粘り強く回します。
評価・報奨により、自分から動く仕組みに乗ればちゃんと承認されることがはっきりしており、この会社には自分の価値を認めてくれる人がいると思い安心して働ける職場の実現が不可欠です。
組織改革は長期的目線かつ全社的な最適化が求められるので、この記事にて課題と問題点がクリアになり、一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
よくある質問
Q1:組織改革とは?
組織改革とは、企業を包囲している外部の環境変化のスピードに柔軟に対応し、組織内部の構造や運用方法を変えること・会社の継続的成長を促すことをいいます。
Q2:組織改革の目的は?何のため?
組織改革の究極の目標は、企業が自発的に持続的成長を止めない企業文化を作り、意思決定構造に常に変革を起こし、変革をいつでも起こせる体制を維持することです。
Q3:組織改革で得られる成果は?
組織改革を実行することにより、組織が抱える課題が解決しやすくなります。うまくいけば、従業員のモチベーションのアップ→優秀な人材の定着率が向上→課題に向き合う余裕ができて課題の解決が進む→労働生産性の向上→企業のブランドイメージアップと好循環になります。