組織開発とは?働き方改革を越える組織の活性化に向けて
近年よく耳にする「働き方改革」について、貴社ではどのように取り組みをされていますでしょうか。
多くの企業では働き方改革の取組を進め、残業時間の削減やリモートワークの導入が進んでいるかと思われます。
しかし、その一方で、その目的とされている「色々な人々がそれぞれの形に合った活躍」が実現できている企業は少ないのではないでしょうか。
本記事では、働き方改革の次の一手として期待されている「組織開発」を取り上げながら、組織の活性化について考えていきたいと思います。
組織開発とは
まずは、本記事のメインテーマである組織開発について、その定義や目的を踏まえながら、その内容について見ていきたいと考えます。
組織開発の定義
組織開発とは別名OD(Organization Developmentの略称)とも呼ばれ、人やその関係性、組織目標の浸透といったソフト面に働きかけ、組織を変革していく行動科学に基づいた計画的なアプローチのことを言います。
この概念自体の歴史は長く、1970‐80年代にかけて日本ではODブームが起こりましたが、80年代後半になると次第にその影は薄くなっていきました。
つまり、一度はビジネス界での注目を失った組織開発およびODがいま、「働き方改革」を契機に再度脚光を浴びていると言えます。
組織開発の定義で気をつけたい点は、「開発」という言葉です。
一般的に「(人が)(何かを)開発していく」という使い方をされることが多く、そのように捉えると、「組織開発」には「組織が(第三者から)開発をされていく」のような印象を受けます。
しかしながら、本来「Development」には「発達」や「発展」という意味があり、組織開発・ODとは上記のような「組織が開発されていく」という受け身ではなく、「組織自身が発達・発展していく」ことを意味しています。
組織開発の目的
それでは、組織開発の目的とは何でしょうか?
組織開発の目的としてよく挙げられることは、
- 組織の有効性を上げること
- 組織の健全性を高めること
の2つです。
組織の有効性とは、組織が個人やチームの潜在力を発揮させて、効率的に目標を達成する能力のことを指しています。
また、組織の健全性とは、組織内の人々の満足度や幸せ度、つまりワークライフバランスの質や人間関係の良質さのことを言います。
これらを高めることが組織開発の目的とされています。
組織開発の主な手法
次に、組織開発の主な手法を見ていきたいと思います。
南山大学の中村和彦教授は自身の論文「組織開発の特長とその必要性」(https://www.kpcnet.or.jp/od/report/od2013report_01.pdf)の中で、以下の4つの手法を取り上げています。
ヒューマンプロセスへの働きかけ
まず、最初の手法が「ヒューマンプロセスへの働きかけ」です。
ヒューマンプロセスとは人と人の間に生じる関係性を指しています。
つまり、コミュニケーションやリーダーシップに関する諸問題を解消することにより、組織開発を行なうことを意味しています。
具体的には、個人に対するヒューマンスキル系の研修や、お互いの信頼性を高める活動、チームの目標やビジョンを共有するなどのチームビルディング活動といったものが挙げられます。
技術構造的働きかけ
次が「技術構造的働きかけ」です。
技術構造と言うと、製造などの技術を改善して効率性を上げるようなことがイメージされがちですが、それだけではありません。
ここで言う「技術構造」には、組織の構造を変革する方法も含まれます。
具体的には、日本企業に多いピラミッド型の組織構造を、様々な組織形態(例.マトリクス型組織、フラット型組織等)へ変革することや、組織自体のダウンサイジングなどがあります。
人材マネジメントの働きかけ
3つ目が「人材マネジメントの働きかけ」で、いわゆる人事部がとる人事制度構築や各施策の実施などがここに当たります。
つまり、目標設定による管理手法、給与への成果報酬制度の導入、個人のキャリア設計に基づいたキャリア開発等といった手法がここに入ります。
戦略的働きかけ
最後が「戦略的働きかけ」です。
「戦略的働きかけ」とは、組織の中長期的な戦略を、組織を構成する個人レベルにまで浸透させ、組織文化を変革していくことを指しています。
GAFA(Google, Amazon, Facebook, Apple)を始めとする有力企業が、ビジョンやミッションに基づいた経営を実践し、成果を出していることから、組織開発の観点からも非常に重要視されている手法です。
組織開発とは上記4つの手法を総合的に採用し、組織の有効性や健全性を高めていくものです。
それぞれの手法には依存関係があり、どれか1つを進めればよいというものではありません。
働き方改革とは
さて、組織開発に対する理解を深めていただいた上で、働き方改革について見ていきたいと思います。
すでに実践されている企業も多いと考えますが、働き方改革とは「一億総活躍社会」つまり「色々な人々がそれぞれの形に合った活躍」を実現させるための取組のこと。
その主な内容を見ていきましょう。
働き方改革の主な内容
2018年に国会で可決された通称・働き方改革関連法で定められており、主なものは以下の4つとされています。
時間外労働の上限規制
新たな時間外労働の上限規制が設けられ、月45時間かつ年360時間を原則とするなどの規制が導入されました。
また、違反企業には罰則も規定されています。
有給休暇の消化義務
有給休暇の取得義務も新たに導入されており、年間10日以上の有給休暇の権利を有する従業員に対して、5日以上取得させることが企業に義務付けられました。
高度プロフェッショナル制度
年収1075万円以上や本人の同意などの条件をクリアした人について、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度が導入されております。
導入が認められる業務としては、「高度の専門的知識等を必要とし、その性質上、従事した時間と従事して得た成果との関連性が通常高くない」と認められるものとなっています。
具体的には、金融商品の開発、新技術の開発、アナリストやコンサルタントなどが挙げられています。
同一労働同一賃金の推進
雇用形態(正社員/非常勤/パートタイム等)に関わらず、同じ仕事をする者には同じ待遇を確保することを企業に義務付けています。
また、格差が生じている場合には、企業は労働者に対して仕事の内容の違いや格差発生の理由を説明しなければならないと定められています。
働き方改革については、弊社ホームページ上で詳しい記事を載せております。
ご興味のある方はこちらをご参照ください。
働き方改革から組織開発へ
組織開発と働き方改革のそれぞれの内容をご理解いただいた上で、なぜ働き方改革から組織開発へと向かう必要があるのか、その効果は何かについて説明したいと思います。
働き方改革と組織開発の違い
まず、働き方改革と組織開発の違いについて確認します。
働き方改革とは法令で規定されていることもあり、企業としてはどうしても組織のハード面に目が行きがちとなってしまいます。
その結果、導入される制度としては残業時間規制やノー残業デー、リモートワークなどが典型的なものとなります。
一方で、組織開発は組織のソフト面の強化が必要となります。
そのため、取られるアプローチは個人のヒューマンスキル・リーダーシップの向上、チーム内コミュニケーションの改善、組織構造変革や長期的な組織戦略の浸透といった、組織を本質的に変革するものとなります。
働き方改革のその先へ
したがって、組織の活性化を目的とした場合、働き方改革のその先へ進むためには、ハード面の整備に留まらず、組織開発を通じたソフト面の強化が必要となります。
上記で説明したような組織開発の4つの手法を実践することにより、より効率化された業務、創造的で主体的な人材育成、長期的な戦略に基づいた企業文化の浸透などが可能となり、真の組織変革が実現できることになります。
その結果として、働き方改革の目的である「一億総活躍社会」つまり「色々な人々がそれぞれの形に合った活躍」を実現できると考えます。
組織開発に関するおすすめ本
組織開発の初歩について紹介しましたが、さらに学びたい方へは以下の書籍をおすすめいたします。
組織開発の探究 理論に学び、実践に活かす(中原淳, 中村和彦)
本記事でも引用している南山大学教授の中村氏と、立教大学教授の中原氏の共著です。
本書では組織開発の歴史を振り返りながら、組織開発に関する哲学や変革手法を学ぶことができます。
また、実践事例についても解説がされています。
マンガでやさしくわかる組織開発(中村和彦)
こちらも中村教授の著書ですが、マンガを用いた解説がなされています。
業績は良いものの休職者や退職者の数が増加している自動車販売店が舞台で、主人公である店長が組織開発の手法をもとに、職場改善に取り組むストーリーとなっています。
組織開発の実践についてマンガで疑似体験し、理解を深められる、入門書として最適な一冊です。
対話型組織開発―その理論的系譜と実践(ジャルヴァース・R. ブッシュ, ロバート・J. マーシャク)
米国のビジネススクールでリーダーシップと組織開発を専門とするブッシュ氏と、組織開発コンサルタントとして長年にわたり活躍しているマーシャック氏の共著。
著者は2009年に、組織開発における新しいコンセプトである「対話型組織開発」を提唱しており、本書はその「対話型組織開発」の初の専門書となっています。
非常に情報量が多く、組織開発の現在について学びたい方におすすめの一冊です。
なお、訳者は本記事で何度も名前の出ている南山大学の中村教授が務めています。
組織開発に興味がある方は、弊社ホームページに詳細記事がございますので、併せてこちらの記事もおすすめいたします。
組織開発による真の組織活性化に向けて
さて、働き方改革を越える組織活性化の手段である組織開発について、働き方改革との違いなどを踏まえながら解説いたしました。
ハード面の制度の充実が中心となる働き方改革のみではなく、ソフト面の強化を行なう組織開発が、真の組織活性化にいかに有効であるかをご理解いただければ幸甚です。
また、その結果として働き方改革の目的である「色々な人々がそれぞれの形に合った活躍」が実現できるということもご理解いただけたのではないでしょうか。
なお、弊社では営業の組織開発に向けてセミナーを実施しているので、ぜひご興味ある方はご参加をご検討ください。