営業マネージャーが抑えておくべきソリューション営業7つの鉄則
「従来の人海戦術のような泥臭い営業手法から脱却したい」、そう考える多くの営業マネージャー、営業マンから、従来の営業手法に代わるものとして支持されているのが「ソリューション営業」です。
しかし、ソリューション営業の本質を正しく理解して、さらに実践している企業となると、まだまだ少数派ではないでしょうか。
今回は、ソリューション営業を身につける上で理解しておいていただきたい考え方をお伝えします。
営業マネージャーの方も指導に活用いただければと思います。
ソリューション営業とは何であるのか
まず前提にはなりますが、「ソリューション営業」の定義から説明します。
営業の役割は、時代とともに変化しています。
かつてよく見られた営業スタイルとして、お客様の都合を考えずに強引に自社の製品やサービスを売り込むという「押し売り」型の営業や、お客様の言いなりになり、わがままを聞きながらなんとか買ってもらう「御用聞き」スタイルの営業があります。
ただ商品の説明をして、たまたまニーズがあれば買ってもらうのが商品説明型、いわゆる「物売り」スタイルの営業です。
さらにそこから一段階進んで、よりお客様の課題に寄り沿うスタイルになったのが、近年になって注目を集めたコンサルティング営業でしょう。
コンサルティング営業は、お客様の課題を解決することを目的にしており、ソリューション営業と本質的には近いものがあります。
しかし、コンサルティング営業の目的は自社商品を売ること。
これに対しソリューション営業は、最終的には自社商品を選んでもらうことのみにこだわりません。
例えば、自社の商品ではお客様の課題を解決できない時、あえて無理して販売する必要はありません。
その時点で商品が売れなかったとしも、もっと広く、また長期的な観点で双方に利益をもたらすことができればよしとします。
押し売り型営業では、商品は売れてもお客様は喜びません。
自分が得をし、お客様が不満を持っている状態になります。
これでは信頼関係は築けず、おそらく取引もその場限りとなってしまいます。
御用聞きの場合、お客様は得をしているかもしれませんが、自社としては良好な状態ではありません。
ソリューション営業が成り立っている状態とは、お客様と自社とが双方幸せな「win-win」の関係を築けている状態です。
ソリューション営業5ステップ
ソリューション営業を効率的に身につけるためには、営業プロセスと各プロセスに必要なスキルを理解する必要があります。
まずは営業活動を下の5つのステップに分解します。
ステップ1 事前準備
面談に向けて個別の準備を行います。
ここですべきことは、情報収集や仮説を立てることなどです。
ステップ2 アプローチ
本格的な商談に入る前の足掛かりとして、信頼関係を築き、「こちらのヒアリングに対して回答する価値があること」を認識してもらいます。
ステップ3 ヒアリング
お客様のニーズを見つけて理解するために、徹底的に話を聞きます。
課題はもとより、予算、決裁者など細かな点もすべて確認します。
ステップ4 プレゼンテーション
お客様のニーズを理解した上で、解決策(商品)を提案します。
また、お客様の持つ不満や誤解、無関心などを解消します。
強引な売り込みではなく、お客様の意見を受け止めながら話を進めることが重要です。
ステップ5 クロージング
お客様が商品やサービスに納得した段階で商談は締めとなります。
答えが出ない場合には、必ず次回の約束を取りつけます。
大事なことは、闇雲に売上目標を追いかけるのではなく、プロセスに沿って何が問題なのかを認識することです。
課題が見つかれば、今後の成長につながります。
そうやって個人としても、組織としても営業スキルを高めていくことが成功の秘訣といえます。
続く項目では、ソリューション営業を実践する営業マンが押さえておかなければならない鉄則を、7つに分けて紹介します。
ソリューション営業力を高めるための鉄則
鉄則1:自分の売りたい商品を売らないこと
もしあなたが営業マンならば、自社のイチオシ商品の1つや2つを持っているはずです。
しかし、お客様のニーズに応えるためには、まずは一旦「自分の売りたい商品を売る」という意識から離れ、お客様のニーズを探すことに専念しましょう。
自社商品の紹介をしながら会話の中でお客様のニーズを探るといったテクニックもあれば尚よいでしょう。
鉄則2:欲しがっているものが必要なものとは限らない
では、お客様の真のニーズとはどのようなところにあるのでしょうか。
実は、お客様が欲しいと言っているのものが、お客様の課題を必ず解決するとは限りません。
それが、潜在的なニーズです。
例えば、「ノートPCが欲しい」と言っているお客様に、ノートPCを販売すること、これはたしかに間違ってはいません。
しかし、本来お客様はノートPCで何をしたかったのでしょうか。
出張先から社内のファイルサーバーにアクセスしてバリバリ仕事をしたかったのかもしれませんし、単に外出先でメールのやり取りをしたかったのかもしれません。
もし前者なら相応のマシンが必要ですし、併せてセキュリティ対策なども提案するべきだったでしょう。
後者なら、もしかしたらお客様の要望は、より安価なタブレットやスマートフォンで十分満たすことができるかもしれないのです。
お客様の要望に耳を傾けることは大切ですが、お客様の出した結論「○○が欲しい」が誤っていることも少なくありません。
ソリューション営業の観点では、お客様が「何を達成(解決)したい」のかに耳を傾け、共に達成(解決)の糸口をつかむことが求められます。
鉄則3:対等な立場だからこそ、win-winの関係が築ける
お客様だからと媚びへつらい、言いなりになるのは大きな間違いです。
お客様の言うことを何でも聞くイエスマンは、お客様より下の存在。決して「頼もしいパートナー」にはなりえません。
お客様と営業マンの理想的な関係は、対等なパートナー。
しかも双方にとってメリットのある、いわゆる「win-win」の関係を目指しましょう。
この関係を維持するためには、時にはお客様に対して主導権やリーダーシップを握る必要があり、できないことはできないとはっきり伝えることも必要です。
相手のわがままを聞き無理を通していては、やがて要求がエスカレートして対処できなくなることは目に見えています。
お客様との関係であってよいのは、「win-win(双方にメリット)」「no-deal(取引なし)」のいずれかだけです。
それ以外の中途半端な関係ならば、どちらかの状態にまで持ちこむことを考えましょう。
鉄則4:それはお客様のニーズに合致するのかを考える
人気商品やハイスペックな商品ならばどのお客様にとっても価値があるわけではありません。
どんなに素晴らしい性能でも、そのお客様にとってのニーズを満たしていなければ不要なものです。
自分視点のダメな営業マンは、自分の推している商品がいかに素晴らしいかを一方的に語りたがる傾向があります。
数字を交えれば説得力があると安易に誤解しているのか、例えば「この機械はモーターが何万回転で、何馬力、それなのに騒音レベルは60デシベルです」などと説明しがちです。
しかし、それに価値があるかないかを決めるのはお客様。
コストなのか、性能なのか、それともデザイン性なのか、商品に求めるスペックはお客様によってまったく違います。
営業マンがしなければならないのは、とにかくニーズを聞き出すこと。
お客様の背景がわかれば、自ずと的を射た提案ができるものなのです。
鉄則5:安易な値下げをしない
他社がもっと安かったら、もっと値下げしないと買ってもらえないのでしょうか。
結論からいうと、決してそんなことはありません。
もし同じ商品が2つ並んでいたら、お客様は安いほうを選択します。
しかし、たとえ値段が高くても、課題を解決したり、目標を達成したりできる商品だったら、お客様はその価値を認めてくれるでしょう。
価格比較で競り負けたのは、自社製品の魅力がお客様に理解されていなかったからです。
営業マンが正しくお客様のニーズを理解して、それに応える商品であることを伝えることができていれば、価格に関わらず選んでもらえる確率は格段に上がります。
お客様のニーズを満たすことにより、価格ではなく価値で満足させるのがソリューション営業の基本です。
鉄則6:自社の商品の素晴らしさをお客様目線で説明できる
「実は、自社の商品に自信がない」、そんな営業マンも中にはいるかもしれません。
しかし、自信が持てないのは商品に対する知識が足りないからではないでしょうか。
なぜこの商品がお客様を幸せにできるのかを徹底的に考え、答えを見出し、すぐに説明できるようにしておくのは、ソリューション営業の基本です。
この時、例えばお客様や競合他社の立場から多角的に考えることも必要。
商品を理解することが営業マンの自信の源であり、これができてはじめて説得力ある言葉でお客様に語りかけることができるようになるのです。
鉄則7:営業を停滞させないことと、引きさがる決断
最後に、商談の結果とその先の見極めについて考えてみましょう。
まず、商談の結果は次の4パターンに分類できます。
- (1)契約
- (2)前進
- (3)停滞
- (4)拒絶
状態として望ましいのは(1)と(2)、(4)は打つ手なしです。
そして、見極めが難しいのが(3)の停滞です。
一般に、全客層のうち今すぐに契約に結びつく確率は3~5%、そのうち将来には買うかもしれない見込み客が15~20%と言われています。
つまり、全体の7割が見込みのないお客様ということ。
すべてのお客様に同じ対応をしていては効率が悪く、リソースは見込みのあるお客様に注ぐべきです。
そこで(3)のようなケースについては引き下がる決断も必要になります。
停滞かそうでないかの見極め方法として、例えば「次回」という日時の決まっていないアポがあります。
これは一見前進のように見えますが、いつのまにか話が立ち消える可能性も高く、停滞と判断できます。
「次回の日時の確定」は、脈あり/なしを判断するわかりやすいポイントです。
最後に:ソリューション営業で強い組織に
ソリューション営業は、一朝一夕に身につけられるスタイルではありません。
しかしながら、プロセスを分解し、必要なスキルや心構えを明確にすることで、再現性がある手法に昇華できます。
まずは本内容の理解を深めていただき、社内のロールプレイングなどを通じてスタイルに磨きをかけ、ソリューション営業力を高めていっていただければと思います。
営業マネージャーなど管理者の方は、売上などの結果だけで評価するのではなく、プロセスも評価対象に組み入れましょう。
必ず、部下の成長を促進できるはずです。