営業におけるクロージングのコツ|成約率を高めるトークとテクニックを解説
営業におけるクロージングとは、営業活の最終段階において商談を契約成立につなげる重要なシーンです。クロージングを成功させるための正解や法則はないものの、テクニックやコツを覚えると成約率向上が期待できます。
本記事では、クロージングの流れや成功させるためのポイント、シーンごとの対応法などを詳しく解説します。
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営業におけるクロージングとは?
営業活動において、クロージングは最重要のプロセスです。以下にその理由を詳しく解説します。
営業のクロージングとは?
営業の商談は一般的に、「ヒアリング⇒提案⇒交渉⇒クロージング⇒成約・受注」といった流れとなります。営業活動におけるクロージングとは、営業の最終段階で顧客の成約や受注へとつなげるステップのことです。
初期のヒアリングから交渉段階ではお互いの条件のすり合わせを行い、そこで確認した条件をもとにゴールへいざなうプロセスがクロージングです。
クロージングがなぜ重要なのか
クロージングは、商談相手に意思決定をしてもらう重要なフェーズです。
そこまでのプロセスで顧客に最適な提案ができていても、クロージングが適切でなければ失注してしまう可能性は十分にあります。
クロージングは、確実に成約につなげる最後の駆け引きであり、改善すれば最も成約率アップにつながるため、営業活動における最重要プロセスと言えるでしょう。
クロージングの流れ
クロージングは、以下の流れを意識して交渉を進めると成功率アップを期待できます。
ステップ1:テストクロージング
テストクロージングとは、これまでの商談の中で得られた顧客のニーズ(抱える悩み)や要望をもとに、購買や成約意欲を見きわめるプロセスです。提案した製品・サービスに対して、現段階での反応を確認しましょう。
この段階で購買の意思を示していればクロージングの成約率は高く、また反応が薄い場合は次のステップまでに早急に対応する必要があります。顧客が何に不安を感じているかをヒアリングしておき、不安を解消できる提案を準備しておきましょう。
ステップ2:クロージング
テストクロージングで顧客の購買意欲や反応を確認できたら、正式にクロージングに進みます。ここでは、顧客の購買意欲を最大限高めたうえで、契約締結(購入の手続き)へと進めます。
たとえば、一軒家の購入におけるクロージングの場合、不動産の営業担当者は目の前の夫婦が未経験の高額な支払いに不安を感じていることを知ると、これからの幸せな未来が一軒家の購入後に待っていることを説明し、祝福することで契約締結へと移行するといった工夫をします。
テストクロージングの段階で確認した、成約までに足りない要素をクロージングで顧客に提供し、契約の締結へとステップを進めましょう。
ステップ3:契約締結
いよいよ契約を締結するプロセスへと移ります。最後は契約書へのサインや捺印といった作業を顧客に対応してもらうステップです。
契約内容についての不明点や疑問を残さないように、最後までサポートすることを心がけましょう。
クロージングの成功に重要な要素
ここでは、クロージングを成功させるための3つの重要な要素について解説します。
最後まで顧客のニーズに合わせる
クロージングは成約前だからと安心してしまうと、少しでも不安要素を抱えている場合成約にはつながりません。
どの商談であっても、常に顧客のニーズに合わせた対応を行うことで不安が解消され、また成約率が最も高い状態でクロージングに臨むことができます。クロージングまでに、顧客が最も価値を感じる形に商談を進めることが成功の鍵です。
顧客との信頼関係を確立する
クロージングの成功には、顧客との信頼関係の構築が不可欠です。
顧客は信頼できる営業担当者との取引を好む傾向があります。営業担当者が誠実で信頼性があり、これまでのどの商談においても顧客の立場やニーズを理解していたと感じさせることが重要です。
繰り返しヒアリングで意思を確認する
営業活動でのヒアリングは初回のみ行うのではなく、クロージングの段階でもヒアリングを実施し意思や反応を確認するようにしましょう。
特に、クロージング時でいまだ顧客が懸念や疑問を抱えており、またそれを認知していない状況はなんとしてでも避けなければなりません。一歩距離を詰めてヒアリングで本音を聞き、共に悩みや不安を最後まで解消する姿勢を心がけましょう。
成約率を高めるクロージングのテクニック7選
クロージングで成果をあげるうえで、役立つ7つのスキルやテクニックを以下でわかりやすく解説します。
1. 導入するメリット・ベネフィットを提示する
クロージングの際、自社製品やサービスを利用するとどのようなメリットやベネフィットが生まれるかをしっかり伝え、相手がはっきりイメージできる状態にすることが重要です。
具体的には業務効率化や事業展開のスピードアップ、従業員の業務負担の軽減、顧客製品の品質向上など、顧客の課題解決になるベネフィットを提示しましょう。
2. 選択肢を絞って話す
選択肢が多すぎると、迷いが生じて意思決定を鈍らせてしまうこともあります。
複数の中から「どれがいいですか?」「どうしますか?」と選ばせるより、有力候補の2~3案に絞り込んで「AとBのどちらがイメージに近いですか?」と聞く方が、クローズしやすくなります。
3. 相手の不安を払拭する
商談相手の不安を払拭することも、重要なテクニックです。
クロージングの段階では、「もっと安価で優れたなものがあるかも」「この会社を信じてよいのか」といった疑問が、契約を妨げる主な要因です。
これらを払拭するためにも、自社商材が相手の課題解決を以下に解決するかを説明し、価値が高いことを訴えかけるようにしましょう。
4. ドア・イン・ザ・フェイステクニックを使う
これは「返報性の原理」を応用したテクニックで、譲歩を利用して顧客と交渉します。
例えば、最初に100万円のプレミアムプランを提示し、金額面で断られた後に80万円のスタンダードプランを提示することで、顧客も「交渉した結果、自分に有利な結果にできた」と感じてもらえます。営業側としては想定通りの結果であっても、顧客には喜んでもらうことができます。
また、あらかじめ上位プランを紹介しておくことで、後のアップセル営業のきっかけにもなります。
5. ゴールデンサイレンスを妨げない
「ゴールデンサイレンス」とは、相手が考える沈黙の時間のことです。
顧客が条件のすり合わせや自問自答をしている時間なので、ここでむやみに話しかけると思考を中断させてしまい、もう少しで成約しそうだったのに破談に終わる可能性があります。
あえて間を作り沈黙を上手に活かすことも、クロージングのコツと言えます。
6. ifクロージングを使う
ifクロージングとは、「もし~だったら」といった仮定の話をすることで、実際に活用しているシーンを具体的にイメージさせるテクニックです。
「もし導入するなら、いつ頃が適切か」「もしAプランを選んだら、どんなメリットがあるか」など、状況に応じて活用しましょう。
7. 松竹梅の法則を使う
松竹梅の法則とは、「3段階の選択肢があった場合、多くの人は真ん中の選択肢を選ぶ傾向にある」といった、心理効果を活用したテクニックです。
たとえば、10,000円、8,000円、5,000円の商材があった場合、顧客は真ん中の8,000円を選ぶことで、「高過ぎず、安過ぎず」のものを選んだ安心感を得られます。
重要なのは、単なる買う・買わないの選択ではなく、「どの商品を選ぶか」という顧客の判断の過程に焦点を当てることです。これにより顧客との関係性を深めることができるため、心理的な障壁が低くなります。
あわせて読みたい:営業活動で使われる、今更聞けない「営業用語・基礎知識」まとめ
クロージングの対応例文【顧客の状況別】
ここからは、商談相手である顧客が迷っている場合や商談に慣れていない場合など、状況別・シーン別で活用できる対応例文を紹介します。
顧客が判断に迷っている場合
顧客が判断に迷っている場合は、無理強いするのではなく顧客自身も気づいていない悩みを引き出してあげる方法が有効です。
たとえば、顧客にifクロージングなどを活用した以下のような質問を投げかけることで契約後をイメージしやすくなり、判断を下しやすくなります。
【有効な質問例】
- 日時の設定 「もし導入するとしたら、○月くらいが最適ですか」
- プランの選択 「もし導入するならAプランですか?Bプランですか?」
- 担当者の決定 「もし契約するとしたら、ご担当者は○○様でよろしいですか?」
- 次回アクションの決定 「(商談を前進させるため)次回は○○するということでよろしいですか?」
- 個人的な意思の確認 「○○様個人のご意志としては、採用したいとお考えですか?」
商談相手が決裁者ではない場合
商談相手に決裁権がない場合は、決裁者ないしは強い影響力を持つ担当者との面談を依頼することが最短距離となります。窓口担当者の立場を考慮して、決裁者との橋渡し役を以下のようなトークで依頼しましょう。
【決裁者・影響者への面談を依頼するトーク例】
「もし(窓口担当者)様がこの度の商談の必要性をご理解いただけているのであれば、ぜひとも(決裁者)様にもお話させていただきたいのですが、ご調整をお願いできますか?」
「(窓口担当者)様の業務効率化への思いを私どもから間接的にお伝えさせていただく意味でも、できればご一緒に(決裁者)様にご面談させていただき、(決裁者)様のニーズについても整理させていただきたいのです。お時間を調整いただいて、同席されませんか?」
顧客が商談に慣れていない場合
顧客が商談に不慣れな場合、次に何をすべきかわからない、という担当者も多いため、契約成立までの以下のような手順や項目を整理して共有するとよいでしょう。
【商談を前進させるために再確認すべき項目】
- 契約成立のために承認が必要な決裁者の有無とその面談時期
- 契約成立のために面談が必要な影響者・関連部署の有無とその時期
- 契約成立のために必要な資料・データ
せっかく契約成立へと向けたプロセスを整理しても、役割分担と実行のタイミングを規定しなければ、お互いに行動へと移すことができません。いつ、誰が、何をするのかもあわせて整理して、折に触れて具体的に伝えるようにしましょう。
【次のステップに向けた行動を依頼するトーク例】
「では、5月20日までに提案書の内容を社内でご検討いただき、21日中に回答を私までメールでいただけるということでよろしいですか?」
顧客がまだ検討段階の場合
今すぐ導入する必要がない、決断できないなどの検討段階の場合は、ほかに安いものやよい機能のものがあるのではないかといった疑問や不安が顧客側に残っています。
この場合は、クロージングのテクニックでも書いたように、自社商材がどれだけ相手の課題解決に利用でき、多くのベネフィットを与えられるかをしっかり伝えるようにしましょう。
クロージングはテクニックを活かして成功させよう
クロージングは一連の営業活動の中で成約につなげる重要なプロセスで、適切なトークやタイミング、少しのテクニックなどで成約率を上げることが可能です。
これらの営業のコツを活かして成功させるにも、相手の課題や環境、予算などの条件といった細かな情報を把握しておき、会話の中で臨機応変に対応することが重要です。
CRM/SFAツールを活用すると、常時更新される顧客の最新情報を把握できます。営業活動を可視化・共有できるため、業務の効率化や活動の平準化につながります。
クロージングには、テクニックのほかCRM/SFAツールも上手に活用して、成約率の向上を目指しましょう。