SFA(営業支援システム・ツール)活用でデータサイエンス指向の営業パーソンに変身しよう
世界中の企業がDXに追随する今、データサイエンスはもはやデータ分析の専門家だけのものとは言えず、営業職にも積極的に取り入れたい分野です。
SFA(営業支援システム・ツール)を活用すれば、データサイエンティストでなくとも、日々、生成されるさまざまデータを効率よく分析し、営業活動をスピードアップさせることが可能。
本記事ではデータサイエンスとは何かを解説し、またSFA(営業支援システム・ツール)の活用により営業プロセスがどのように変化するか、そしてデータサイエンスを営業活動にどのように生かせばよいかを確認したいと思います。
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データサイエンスとは
データサイエンスが何であるか、理解するところから始めましょう。
DXとデータサイエンスのポジショニング
データサイエンスはDX(=デジタルトランスフォーメーション)と同義語と考える方もいるのではないでしょうか。実際は違うので、まずこの2つのポジショニングを明確にします。
DXの定義
2019年に発表された経済産業省のDX推進指標によれば、企業が顧客や社会ニーズから新たな価値を創出するため、データやデジタル技術を活用することで、ビジネスモデルや企業文化などを改革し、競争上の優位性を確立する、というのがDXの定義。単なる企業のIT化を推進するものではありません。
データサイエンスの定義
一方、データサイエンスとは「データを用いた科学」、つまりデータに関する総合的な学問のこと。用語としてのデータサイエンスは1974年あたりから使われていて、統計学や情報科学など様々な領域から、有意義な知見やビジネスデータを引き出すための研究分野でした。
それが、データサイエンスのアプローチのひとつである、AIや機械学習、ディープラーニングなど先端技術の登場と、DXのブレークスルーで2019年以降急速に知られてきたのです。
データのデジタル化でデータサイエンスの環境が整えることが、DXを推進する上で重要な要件のひとつといえます。
データサイエンスに求められる知識レベル
企業でデータサイエンスに関わる人の誰もが、研究者である必要はありません。データサイエンティスト、営業職に必要なデータサイエンスの知識レベルを確認しましょう。
データサイエンティストの場合
一般社団法人データサイエンティスト協会の定義によれば、データサイエンティストとは、次の3つのスキルを有する人です。
- 統計学や先端技術などの学術的な理解がある(データサイエンス力)
- 大がかりなデータベースやDWH(データウェアハウス)が操作でき、プログラムの知見がある(データエンジニア力)
- データ分析結果から、ビジネス課題を解決する(ビジネス力)
これらのスキルを身につけるには、統計学、情報処理、数学、機械学習などの十分な知識が必要となります。
営業職に求められるのはビジネス力のみ
ビジネスサイエンスの基本を知ることは大切ですが、3つのスキルのうちで営業職に本当に必要なものはビジネス力。残り2つのスキルで営業職に必要とされるのは極めて狭義な部分であり、それはデータサイエンティストの協力や、ツール活用で十分キャッチアップできます。
データサイエンス活用を成功させるためのフォーメーション
企業においてデータサイエンス活用を成功させるには、データサイエンティストと営業職との協働が不可欠です。どのような業務分担が望ましいのでしょうか。
データサイエンティストのTo-do
従来、ビジネス上の課題を抽出し、その解決に向けて必要なデータの収集、加工および分析をする業務は、外部コンサルティング会社に委託するか、企業の事業企画が担当していました。
しかし、データが複雑かつ膨大になった現在では、ビッグデータやAIの取り扱いに長けたエキスパート=データサイエンティストが行うことが望ましいでしょう。
業務システムやSNSなどから得た大容量のデータを収集するプログラムを作成し、データベース構築後には、それを分析。その後、分析結果から仮説を検証して分析対象のデータ項目をみやすく整理し、KPI(Key Performance Indicators=重要指標)を設定した上で次の施策を提言するまでが、データサイエンティストの具体的な業務です。
営業職のTo-do
売上高や受注率などから、その数値の増減に影響する要素は何かを分析した結果を社内共有したり、ツールの活用により商談の進捗や顧客情報の見える化を行うことが、データサイエンスにおける営業職のメインタスクといえます。
ビジネスとエンジニア(テクニカル)両サイドの協働あっての成功
データサイエンスにおいては、ビジネスだけを熟知していても、どのデータを使うのがよいのかわからなければ、課題解決まで到達できません。逆に、学術的な知識を持っていても営業現場での問題点がわからないのでは、その知識も役に立たないのです。
お互いの足りないところを補完し合う、営業職とデータサイエンティストの協働体制の確立が、企業でのデータサイエンス活用を成功へと導きます。
データサイエンスの活用事例
次にデータサイエンスに関する事例を紹介したいと思います。
機械学習の活用はデファクトか
データサイエンスの活用事例では、AIを駆使した機械学習を用いた予測により、素晴らしい精度が得られたという内容が多いのですが、データサイエンスははたして機械学習ありきなのでしょうか。
AIを使うイコール100%成功というわけではない
A社では受注率をアップするために、迅速なフォローが必要な顧客を営業部長が把握した上で、営業担当と一緒に対象となった顧客のフォローを行っていました。
そのため、全営業担当の書いた商談記録の確認を、営業部長がその日のうちに済ませることが暗黙のルールに。しかし商談記録の絶対量が多すぎるため、確認が雑になり、重要項目を見落とすことが少なくありませんでした。
そこで、営業部長の負担を軽くするため、データサイエンスの活用が計画されました。具体的な作業内容は、データサイエンティストが機械学習を使って、商談記録に優先順位をつけ分類をすること。
しかし、機械学習で導き出した結果と営業部長の判断基準に解離があり、機械学習から得た結果の利用を営業部長が躊躇しました。
原因はデータサイエンティストの現状把握が甘く、また営業部長もデータサイエンティストの作業の全貌を十分に理解できていなかったことにありました。その後、データサイエンティストが営業部長の判断基準について再度ヒアリングを行い、機械学習から出てきた結果について営業部長に詳しく説明し、ようやく機械学習の結果が受け入れられました。
AIが導き出した結果をビジネス側(営業)が受け入れるには、エンジニア(データサイエンティスト)による十分なサポートが必要な場合があるということが、この事例から確認できます。
既存データを活用するほうがいい場合も
次に、最初から機械学習を使わない方がよいデータサイエンス活用の事例も紹介します。
多くの店舗を有するB社の課題は、飛び込みで訪れる顧客数が予想できないこと。飛び込み顧客が3名以上だと、予約して来店した顧客を待たせることになります。
それを回避するために、飛び込み顧客が3名来店した段階で、接客担当の社員数を1名追加する必要が生じました。また、社員の労働時間の長時間化も課題となっていました。
そこで、飛び込み顧客の数を予測できれば、顧客対応の社員数も調整できてこの状況が改善されると考え、データサイエンスを活用した機械学習の導入が検討されました。
しかし、こちらの企業では、今まで過去の傾向の分析すら行ったことがなかったため、一足飛びに機械学習導入したところで、適切な予測データが生成される確率は極めて低いと判断されたのです。
そのため、まずは曜日ごと、時期ごとの平均来店者数(既存データ)を把握し、運用でカバーすることがベターという結論になりました。
機械学習の結果と過去の傾向を確認する合わせ技がベスト
データサイエンスとは、あくまでもデータを活用して業務を改善するためのものであることを忘れてはいけません。先端技術を利用しさえすればすべて解決、ということではないのです。
まずは過去の傾向に鑑みることから始め、より高度なレベルでのデータ活用が求められた段階で機械学習に移行し、機械学習から得られた結果と過去の傾向を比較することも忘れずに行うとよいでしょう。
SFA(営業支援システム・ツール)を活用したデータサイエンス指向の営業プロセス
データサイエンス指向の営業プロセスへの移行には、ツールが必要です。手軽なところでは、エクセルが頭に浮かぶかもしれませんが、企業の将来も考えるとSFA(営業支援システム・ツール)が最適と言えます。
データサイエンスツールとしてのSFA(営業支援システム・ツール)の使い方
SFA(営業支援システム・ツール)はデータサイエンスツールとしてもベストです。
- 実績をリアルタイムで把握(営業プロセスの遅れや対応漏れも自動表示)
- 顧客ごとの営業活動の見える化(ビジネス上の課題も一目瞭然)
- 上長(管理職)が営業担当者とともに顧客をフォローすべきタイミングが図りやすい
データサイエンスに必要なスキルのうち、営業職に最も必要とされるビジネス力は、SFAの活用で準備ができます。
MAとの連携
SFA(営業支援システム・ツール)とMAを連携させることで、データサイエンスのビジネス力がさらにパワーアップします。MAの見込み顧客のデータをSFAと同期すれば、営業職が見込み顧客の状況までを、SFA上で確認することができるようになるのです。
ポテンシャルのある見込み顧客をあらかじめ把握していれば、次の営業フェーズへの移行もスピードアップできます。
従来の営業プロセスとの違い
SFA(営業支援システム・ツール)を活用したデータサイエンス指向の営業プロセスを確認しましょう。
数値によるエビデンスが提示できる
以前の営業スタイルでは、受注金額やタイミングは、実際に発注書が届くまではどんぶり勘定も容認される文化がありました。とくにベテラン営業の場合、営業勘に絶対的な自信がある人が多かったのですが、勘からでてきた数値には根拠がありませんでした。
しかしSFA(営業支援システム・ツール)を使う場合、リアルタイムに情報をアップデートをするので、入力された数値には信憑性があります。
現状の見える化が容易
SFA(営業支援システム・ツール)なら営業ステータスをリアルタイムで共有していますので、営業担当が次の一手を上長に相談するにも、資料を一から用意することが不要です。また入力されたデータを分析することで、問題点を見つけやすくなります。
マーケティング部門とも協業しやすい
マーケティングが生成した見込み顧客データを、MAとの同期でSFA上で共有すれば、見込み顧客データの鮮度が落ちないうちに営業担当に受け渡せますし、フォロー漏れも防げます。
またマーケティング側でSFA(営業支援システム・ツール)のステータスを確認できれば、営業担当の意向も把握しやすくなるので、社内の風通しもよくなるでしょう。
営業職が注意すべき点
データサイエンス指向を意識する前からSFA(営業支援システム・ツール)を導入している企業にありがちなのが、営業日報の代わりに利用しているだけで、SFAをデータ分析に活用したことがない場合。また、データ更新をしないだけでなく、SFAに滅多にログインしない場合もあります。
これでは宝の持ち腐れ。データサイエンスツールとしての活用には、まず上長が率先してSFAを利用することが必要でしょう。
現状多くの企業でDXは進んでいません。弊社が行った調査では、「現在、データを活用した営業ができていますか?」という質問に対して、「できている」と答えた企業はわずか15%にとどまりました。さらに、およそ8割の企業が「データを分析・活用できる人材がいない」と答えています。つまり、データ活用ができる営業部署を作ることで、他者との差別化が可能となります。
データサイエンス指向の営業パーソンになる早道は SFA(営業支援システム・ツール)の活用
激変する市場に対応するには、営業職も絶えずデータを分析して課題を抽出し、その解決策を考える、データサイエンス指向の営業プロセスを習慣づけるべきです。
しかし、これは何も営業職に一人相撲を課しているのではありません。上長、データサイエンティスト、マーケティング担当との協働と、SFAの利用で、データサイエンス指向の営業にすみやかに移行できることでしょう。
営業戦略での早急なニューノーマルへの対応、DX( デジタルトランスフォーメーション ) 推進が求められている昨今、営業ラボでは営業マネージャーや経営者へ向けたデータドリブンな営業戦略をサポートする資料を配布しています。実際に7,000社以上の導入をサポートしてきた我々が、「営業とデータ活用の必要性」「データ活用がうまくいかない五つのパターン」「どのようにデータ活用を進めればいいか」と言った内容を解説します。よろしければご参照ください。