データ分析とは?メリットや手順・8つの分析手法を徹底解説
DXの取り組みを推し進めるには、データドリブンな経営アプローチが不可欠です。企業に蓄積されるデータの利活用を図るため、組織階層や部門ごとに扱うデータの種類、分析の目的、分析の手法を知っておく必要があります。
本記事では、データ分析とはどんなものなのか、役割やメリットをはじめ、データ分析の種類や方法、導入する際に押さえるべきポイントや注意点からデータ分析を解説します。
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データ分析とは
まずはじめに、データ分析が持つ意味や役割について解説します。
分析対象となるデータ
データ分析とは、ある目的(今回はビジネス)において不可欠な情報や数値、文字などを収集し、その集めたデータを分類・整理・成形・取捨選択した上で解釈することです。それにより、物事を数値データや客観的事実にもとづいて判断することができます。
近年のIT技術の進歩により膨大なデータの高速処理や蓄積が可能になり、データ分析の有用性が高まったことで、多くの組織で重要視されるようになりました。
各部門における「データ」とは以下のような項目を指します。
部門 | データの内容 |
経営管理・財務部門 | 経営判断に関わる財務データ、収益・経費・利益・資産・負債・キャッシュフロー・株主関連・税務関連 |
営業部門 | 年齢・性別・職業などの顧客の属性、製品や各地域における売上データ、商談発生件数、商談成約までのプロセス、販売数データ、商品の仕入れ |
製品・在庫管理部門 | 製品の販売実績、原価・売価推移、需要予測、仕掛り・製品在庫量、在庫コスト、資材関連の数量・費用 |
人事部門 | 従業員データをはじめ、勤怠データ、キャリア、情報採用活動における応募者情報 |
マーケティング部門 | 各種広告媒体やセミナー、イベントプロモーションにおける参加者データ、費用対効果、競合商品動向、地域特性、ターゲット層の選定 |
カスタマーサポート部門 | 商品・サービスごとの問い合わせ件数・ヒアリング内容(VOC)、問い合わせ種別、クレーム対応の種類・意見集約 |
データ分析を活用するメリット
IT技術の進歩にともない、企業活動におけるデータ分析の重要性は年々増しています。現在、業務プロセスにデータ分析を用いていない組織でも、今後は導入することは必須でしょう。
以下では、データ分析を活用することのメリットや得られる効果について解説します。
意思決定の根拠、判断の理由を客観的な数値として明確できる
データドリブンな意思決定は、ビジネス上の判断を科学的・論理的な方法で行うことを意味し、より戦略的で客観性の高い合意形成に結びつきます。
属人的な要素を排除することにもつながり、個人の経験や勘に頼るリスクを低減させ、組織全体としての行動基準を明確にすることができます。
確度の高い現状分析・将来予測することが可能
データ分析の活用によって、これまで不確実性のあった情報をより精度を高めて抽出できるため、継続的な売上やシェアの拡大、またはそれらに繋がる施策の検討が容易になります。
分析の精度は、完璧とまではいかないものの、各データの関連性や因果関係などから不確実性を減らすことで、確度の高い分析や予測が可能です。
これまで見落としていた問題点や可能性を抽出できる
データ分析の活用は、これまで組織内に散らばっていた情報を集約して、問題点や新たな可能性、ヒントの発見を可能にしてくれます。
従来、企業が抱える課題の分析は、経験則や勘に頼ったものが一般的でした。
しかし、データ分析から得た結果は、収集・蓄積したデータを分析・加工したものになるため、これまでの精度の低い情報ではなく、組織の資源として資産化することが可能です。
スピーディーな意思決定
現代における企業活動では、迅速な意思決定が不可欠です。
データ分析の導入は、企業が抱える課題に対して、それに関連したデータをすばやく提供してくれるため、迅速な意思決定や判断をサポートしてくれます。
【目的別】データ分析手法8選
データ分析といっても、目的や手法によって活用する場面や環境は異なります。
以下では、多種多様なデータ分析手法の一部を厳選して紹介します。
バスケット分析
バスケット分析とは商品分析の手法の1つで、頻繁に購入される商品の組み合わせや、どの商品がどれだけ購入されたかを知る際に用いる分析手法です。
バスケット分析の有名な話としては、「おむつ」と「ビール」の組み合わせがあります。
米大手小売りチェーンでPOSデータを分析したところ、ビールとおむつが一緒に買われやすいという分析結果が可視化でき、その情報をもとにその2つを隣合わせに陳列してみると売り上げが伸びた、というエピソードです。
商品の相関関係を分析して陳列棚を変更する、といったケースへの活用が有効です。
ABC分析
ABC分析とは、重点的に販売する商品を絞り込んだり、売れ筋商品などを把握する分析手法で、これにより効率的なマーケティング施策を打つことができます。複数のデータを重要度にもとづいて分類することが可能です。
在庫管理への活用が有効です。
クロス集計分析
クロス集計分析とは、アンケートなどによる設問に対し、単純集計で算出した値を、回答者の情報(性別、年齢、地域、職業など)などと掛け合わせて、集計データを深堀りしていく分析手法です。
ユーザーの属性ごとの平均値の把握や、既存データを集計したい時に有効です。
アソシエーション分析
アソシエーション分析とは、「連関分析」とも言われ、データマイニングの中核を成す手法です。一見、関連性のないように見える情報の中から、複数の事象の関連性を見つけ出し、仮説を立てて、経営戦略の立案などに用いることができます。
POSシステムへの活用が有効です。
クラスター分析
「クラスター」とは英語で「集団・群れ」の意味です。クラスター分析は、異なる性質のものが混ざり合った集団から、互いに類似した性質を持つものを集め、集団(群れ)に分類する手法を指します。
クラスター分析を行う際には、グループ分けの選定をするだけでなく、分類の形式や対象間の距離(ユークリッド距離、マハラノビス距離など)、クラスターの測定方法(ウォード法、最短距離法、群平均法など)が求められます。
One to Oneマーケティングや、ユーザーのセグメントやブランドポジションの確認への活用が有効です。
顧客分析に有効なフレームワークについては、以下の記事で詳しく解説しています。
顧客分析とは?10のフレームワークや分析に役立つツールを解説
度数分布
度数分析とは、ある集団データをいくつかの階級に分けたり、一定のルールで整理する手法です。データがどのような値を中心にして、どのようなばらつき方をしているのかを把握できるため、全体のデータの特徴や性質などを理解しやすくなります。
時間当たりの客単価の算出などに有効な手法です。
主成分分析
主成分分析とは、たくさんの量的な説明変数を、より少ない説明変数や指標に要約する分析手法です。主成分分析を行うことで、データの要約ができることから、データの特徴を可視化し判断しやすくなったり、データのカテゴライズに適しています。
アンケート調査の結果分析や研究開発への活用が有効です。
回帰分析
回帰分析とは、原因となる数値や結果となる数値の関連性をデータに、ある変数(y)の変動を、別の変数(x)の変動により、説明するための手法を指します。これによって仮説を立て、事象発生の関連性について把握することが可能です。
数値を使って予測することで、統計的かつ根拠のある推論を立てることが可能で、データがないところでも予測が可能という利点があります。
有効なデータ分析にするための4つのステップ
データ分析を有効な手段にするためには、適切な運用をすることが不可欠です。
以下では、データ分析を導入するためのポイントを段階的に解説します。
STEP1「データ分析を活用する上での明確な目的・目標を設定する」
まずはじめに意識すべきポイントは、データ分析を活用する目的や目標を明確にすることです。目的やゴールが明確でないまま分析を進めると、分析の軸がズレたり、分析作業に多くの時間を割いてしまい、業務効率が低下してしまいます。
なぜデータ分析を導入する必要があるのかを明確にしてから、導入について検討するようにしましょう。
STEP2「仮説に応じて、データ分析の種類・手法を理解する」
分析の種類や手法を理解せずに活用すると、得られる効果が薄れたり、限定的な結果にとどまってしまいます。
活動において有益な結果を手に入れるためには、しっかりとした仮説を立てて、それにもとづいたデータ分析を行うことが求められます。
各種データの相関関係や因果関係といった位置づけをしっかり区別して、それに応じたデータ分析手法を用いましょう。
また、適切な仮説を立てることは無駄な分析や手法を避けることにも繋がるため、業務効率化にも役立ちます。
STEP3「データを収集・蓄積して可視化する」
情報収集の段階からデータ分析に至る過程では、それぞれの部門や担当者に遍在するデータを分析に適した状態に加工する手間が発生します。フォーマットの変換やデータクレンジング、名寄せなどデータ加工のプロセスが必要であることも頭に入れておくことが必要です。
収集・蓄積した情報を分析し、可視化することで、はじめて経営戦略の立案や意思決定などに役立てることができます。
データ分析には多くの専門性が必要とされるため、そこまでの人的リソースを割くことができない企業は、専用ツールやシステムを活用するようにしましょう。
データ分析ツールやBIツールを活用すれば、分析内容を選ぶだけで簡単に分析することができます。
STEP4「結果の解釈と評価」
データ分析の結果を解釈し正しく評価することが精度の高い意思決定につながります。数値によって示された分析結果の本質的な意味を解釈し、インサイトに結びつける分析力が求められます。
さらに、データドリブンな意思決定を組織に定着させPDCAサイクルに乗せていくためには、経営層や専門部署だけではなく、データにもとづく意思決定プロセスを形式知として組織全体に浸透させる取り組みが必要です。
データ分析のPDCAサイクルを適切にまわすためには、分析したままにせず、得られた情報や効果を測定するようにしましょう。
取得したデータによって求めていた結果が得られればよいですが、想定外の結果が出たときは、分析のプロセス内のどこに見落としや間違いがあったのか、詳細を把握し評価することが求められます。
業務にデータ分析を活用する際の3つの注意点
最後に、各種業務にデータ分析を用いる上での注意点を解説します。
データ分析を導入するだけでは、メリットや効果を最大限に高めることはできません。また、運用や活用方法を誤ると、かえって業務が煩雑になったり、非効率になってしまうおそれがあります。
以下では、企業活動や業務プロセスにデータ分析を用いる際の注意点について解説します。
1. 主観的な分析によりバイアス(偏り)が生じるリスク
データ分析には、データの中に見られる因果関係や規則性を正しく見きわめることが重要です。主観的な仮説やデータ分析の手法のみに頼ると、かえってその後の行動や結果に偏りが生じる可能性があります。
また、偏りのある仮説やデータ分析では、可視化できていない課題や問題を見落とすリスクもあります。
そのため、分析しようとする問題への理解をあらかじめ深めることや、目的に沿った分析手法を選択する必要があります。それらを間違えると、その後の行動に誤りが生じ、方向転換が必要になることを覚えておきましょう。
2. 手法にこだわりすぎない
多くの企業がデータ分析を導入しているからといって、データ分析の手法に固執すると、視野が狭くなり、ビジネスを発展させるためのヒントを見落としがちになります。
あくまでもデータ分析は、経営判断や戦略を立案する上の1要素に過ぎません。
安直に戦略やマーケティングに適用するのではなく、データ分析は、そのデータが有効なものかを判断する材料にすぎないことをあらかじめ理解しておきましょう。
3. 明確な目的意識を持って分析を行う
失敗点として最も陥りやすいのが、「なぜデータ分析を行うのか?」といった目的が明確になっていないことです。
この点を見落とすと、かえって現場が混乱したり、業務が煩雑になりかねません。
データ分析を用いる際は、分析手法に対する理解や、分析結果に対する判断力が重要であることを理解しておく必要があります。
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データ分析の目的や手法を理解し最大の成果を
データ分析は、導入する目的や方法によっては幅広い用途に活用することが可能です。特に近年の経営戦略においては、組織に蓄積するデータを分析・加工することで、付加価値のあるものにすることができます。
ただし、IT化にならってデータ分析を導入するだけでは無意味です。
本記事で述べたように、分析の概要や効果の理解、目的意識の明確化など、導入ステップを把握した上で正しい運用を目指しましょう。これを機に、ぜひ企業の業務プロセスや課題の解決にデータ分析を導入してみてはいかがでしょうか。
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