売上予測の立て方|営業戦略の立案に活かすポイントも解説
昨今の急速なビジネス環境の変化に対応していくためにも、企業は常に新たな戦略設計を行わなければいけません。
それは営業戦略においても同様であり、精度の高い売上見込みを予測することで現状を把握し、適切な営業戦略の立案を行うことができます。
本記事では、売上見込みの予測に必要なデータや予測方法、営業戦略の立案に活かすポイントについて解説します。
営業の売上見込みを立てる重要性
営業部門では、売上見込みの予測と各営業担当者の目標達成度合いを把握し、最適化を行うことで会社で定められた売上目標を実現しなくてはなりません。
まずは、営業の売上見込みを予測することで、具体的にどのようなメリットがあるのかを見てみましょう。
営業部の現状を把握できる
売上見込みの算出は、営業部門の現状を客観的かつ詳細に把握するうえでとても重要です。
過去のデータをもとに営業部全体の売上を分析して売上見込みを立てることで、自社の成長要因や市場の変化と影響、現状の営業課題などを分析することができます。
売上目標の達成可否を判断できる
営業の売上見込みが分かれば、売上目標の達成可否を明確に判断することができます。
前年度と同様の目標達成も難しい状況で、営業部全体の改善が必要なのか、あるいは目標以上の達成が可能で、売上拡大に向けた施策を行う余裕があるかといったことについて、的確な判断が可能となるでしょう。
具体的な営業戦略の策定に役立つ
売上見込みと目標の差が明確になれば、具体的な営業戦略の策定にも寄与します。
営業データから売上見込みの詳細な分析を行えば、どの市場セグメントや顧客層に焦点を当てるべきか、どの商品やサービスの販売に注力すべきかなどの改善箇所が明確になります。
これにより、効果的な施策の企画や営業リソースの最適な分配が可能となり、営業部の成果を最大化する戦略が構築できるでしょう。
参考:営業戦略の立て方とは? 立て方のポイントやフレームワーク、成功事例を解説!
売上の予測に必要なデータ
売上予測を高い精度で実施するには、各商品の売上高、契約期間、平均成長率などの基本的な営業データの他に、業界や景気の動向など、さまざまなデータを必要に応じて分析することが重要です。
以下は、営業の売上見込みを予測する際に必要となるデータ項目をまとめた表になります。
データ項目 | 必要となる理由 | データ例 |
過去の売上実績 | 現在のトレンドとパターンを理解し、将来の予測の基礎を構築 | 月ごとの売上データ、年度ごとの総売上 |
コンバージョン率 | マーケティング施策やWEBサイトの効果を評価し、見込み客から実際の購入に至る割合を把握 | クリックから購入への変換率(例: 5%) |
商談化率 | リードから商談への変換率を把握し、営業の効果を評価 | リード数に対する商談数の割合(例: 20%) |
リードタイム | 商談から契約または購入までの平均期間を知り、サイクルの効率性を評価 | 商談開始から契約締結までの平均日数 |
受注率 | 商談から実際の注文または契約にいたる割合を理解し、営業プロセスの効果を判断 | 商談数に対する注文数の割合(例: 15%) |
解約率 | 顧客の離脱率を把握し、顧客維持の課題を特定 | 総顧客数に対する解約した顧客数の割合(例: 8%) |
商品・カテゴリーごとの売上 | 商品・サービスや部門、エリアごとの売上を把握し、収益源の特定と効果的な販売戦略を策定 | 商品別売上、部門別売上、エリア別売上 |
時間軸ごとの売上 | 売上の季節変動や成長率を理解し、キャンペーンや戦略のタイミングを最適化 | 月別、四半期別、年度別の売上データ |
平均成長率 | 売上の安定性や、企業の将来的な成長性を予測 | 四半期ごとまたは年度ごとの平均成長率(例: 10%) |
売上分解の指数 | 売上構成要素を理解し、成長の鍵となる要因を特定 | 客数、客単価、購買率のデータ |
営業データの収集状況や分析体制によって要不要は異なりますが、売上予測に用いるデータは、正確かつ数が多い方がよいでしょう。できるだけ多くのデータから、多角的な分析を行い売上の予測精度を高めましょう。
売上見込みを算出する方法
売上見込みを算出する方法はさまざまですが、ここでは代表的な方法を2つ紹介します。
1つ目は比較的、容易に行える過去の売上データからの予測方法、2つ目は高い精度で売上見込みが予測可能な営業パイプラインデータでの予測方法になります。
1. 過去の売上データから予測する
過去の売上実績をもとに予測する方法は、最もシンプルでわかりやすい方法です。具体的には、以下の計算式で売上予測を立てることができます。
- 「売上見込み=過去の売上実績 × 成長率」
成長率は、直近何年間かの売上実績の平均成長率を用います。たとえば、直近3年間の売上実績が以下の通りの場合、来期の売上見込みは以下のように予測できます。
【直近3年間の売上実績】
2年前:7億円
1年前:8.4億円(前年比120%)
今期:10億円(前年比120%)
【売上見込みの算出例】
「売上見込み=10億円 × 1.2=12億円」
この方法では、過去の実績をもとに予測するため、比較的簡単に算出することができます。
しかし、過去の実績が今後も続くと仮定しているため、市場環境の変化や競合他社の動向など、外部要因の影響を受けやすいというデメリットがあります。
2. 営業パイプラインデータから予測する
営業パイプラインは、営業活動における一連の営業プロセスをパイプに見立てたものです。具体的には、以下のフェーズに分けられます。
- 「リード獲得▶商談化▶提案▶見積もり▶受注」
営業パイプラインのデータをもとに、成約率に焦点を当てて予測すると、以下の計算式で売上の予測ができます。
- 「売上見込み=商談数 × 案件単価 × 成約率」
営業パイプライン内の商談数は、営業担当者が管理している案件の情報から算出します。案件単価は、商品・カテゴリーごとに設定します。成約率は、過去の営業実績から算出します。
たとえば、四半期の1Qで営業パイプライン内に以下の案件が存在した実績がある場合、翌期の年間売上見込みは以下のように予測できます。
【1Qの営業パイプラインデータ】
商談数=100件 | 案件単価=1,000万円 | 成約率=10%
【年間売上見込みの算出例】
年間売上見込み=100件 × 1,000万円 × 0.1 × 4=4億円
この方法は、過去の実績だけでなく、現在進行中の営業活動も考慮して予測するため、外部要因の影響を受けにくいというメリットがあります。
しかし、営業パイプラインでの営業データ管理を実施したうえで、さらに適切なデータ収集・分析がされていないと精度の高い予測ができないことには注意が必要です。
参考:【図解】パイプライン管理とは?効果的な営業マネジメント方法について徹底解説
売上予測を活かして営業戦略を立てるポイント
売上見込みを立てたら、それをうまく営業戦略や施策改善に活かすことが重要です。
以下のポイントを参考に、売上目標を確実に達成することができる営業戦略を立てましょう。
データ分析のもと現状を正しく把握する
前提として、売上見込みの予測精度が悪ければ実現不可能な営業戦略や売上目標を立案してしまい、結果として営業部全体の業績が悪化してしまう可能性も十分に考えられます。
過去の売上からだけでなく、なるべくさまざまなデータから売上見込みを算出することが、より精度の高い売上予測につながります。
営業部だけで分析業務を担うのではなく、マーケティング部門との連携や営業ツール(CRM/SFA)を活用して、適切にデータ分析を行いましょう。
参考:データ分析とは?メリットや手順・8つの分析手法を徹底解説
現実的な目標を設定する
売上予測の結果をもとに、達成可能な売上目標を明確に設定しましょう。
前年度に目標達成できなかったにも関わらず高い目標を設定すると、モチベーションの低下だけでなく、営業活動の非効率化につながる可能性があります。
ただし、あえて目標を高く設定して、営業部の業務効率化やマネジメントなど、目標達成に必要な施策を打ち出すことも時には必要です。
営業部門の現状を売上予測から把握し、改善余地や成長の可能性をうまく見きわめることがポイントです。
具体的な施策を講じる
売上見込みの予測結果から、自社の営業部門に足りていないものを洗い出すことができます。
適切な売上目標を設定したうえで、目標達成のために必要となる施策を具体的に立案していきましょう。
施策を立てる際には、以下の点に注意しましょう。
- 現状の課題や改善点を解決できる施策を検討すること
- 営業担当者のスキルや経験を考慮すること
- 市場環境や競合他社の動向を踏まえること
施策を立案する際には、複数の案を検討し、それぞれのメリットやデメリットを比較検討することが重要です。また、施策を実行する際には予算やスケジュールも明確にしておきましょう。
具体的な営業戦略の例としては、以下のようなものが挙げられます。
- 新規顧客の開拓に注力する
- 既存顧客のアップセル・クロスセルを強化する
- 営業担当者のスキルアップを図る
- 営業ツール(CRM/SFA)の導入や活用を推進する
このように営業の売上見込みから適切な営業戦略を立てることで、営業部全体の目標達成や売上拡大につなげることができます。
営業戦略の事例をまとめた記事は、以下をご参考ください。
参考:【営業戦略の事例12選】自社の事業拡大につなげるポイントを解説!
売上見込みを予測し、営業部の成果につなげよう
本記事では、営業における売上予測の重要性や予測方法について詳しく解説しました。
営業データを正しく活用し、さまざまな観点から売上見込みを予測することで精度の高い売上予測が可能となります。
たとえば、過去の売上実績や市場環境などのデータだけでなく、営業担当者のスキルや経験、顧客のニーズなどのデータも活用することで、より精度の高い売上予測が可能となります。
そのためには、マーケティング部門や情報システム部門と連携して全社的にデータ活用を推進していく横軸体制の構築や、CRM/SFAを活用して営業のDX化を進めるなど、データドリブンな営業を実施していくことが重要となっていくでしょう。
精度の高い売上見込みを予測し、営業部の現状把握とこれから行うべき営業戦略の立案に活かして、営業部の成果につなげましょう。