生成AI(ジェネレーティブAI)とは?従来型との違いや種類・ビジネスでの活用例を紹介
生成AIは、新たなテキストや画像をゼロから生み出せるAIの総称です。日本のビジネスシーンにおいても、ChatGPTをはじめとする生成AIが幅広く活用されています。
本記事では、生成AIと従来型のAIとの違いや種類、具体的な活用例などを詳しく解説しています。生成AIをビジネスに活用し、自社の成長に役立てたい方はぜひ参考にしてください。
生成AIとは?
生成AIとは、学習したデータをもとにまったく新しいオリジナルデータを生み出すAIのことです。文章や画像、音楽などさまざまなコンテンツを、人間が作ったかのような品質で生成できます。
ディープラーニング(深層学習)と呼ばれる手法を活用し、データをより深く多層的に学習することによって、AIみずからが高度なコンテンツを創造します。
従来のAIとの違い
生成AIが従来のAIと大きく異なる点は、AI自身がオリジナルのコンテンツを生み出せることです。従来のAIは、与えられた大量の学習データをもとに適切な答えを予測・提示したり、決められた作業を自動化したりすることが主な役割でした。
一方、生成AIはディーブラーニングによって「みずから」学習を行い、与えられていない情報やデータも含めてインプットしたうえで新たな答えを導き出すことができます。これまで人間にしかできないとされていた創造的な行為をAIで実現できるようになったことで、多くの企業や組織が生成AIの導入を進めています。
参考:ChatGPT(チャットGPT)の業務における活用事例10選【2023年11月版】
生成AIの種類
生成AIにはさまざまな種類が存在し、それぞれ異なる領域で活用されています。以下では、身近な4種類の生成AIについて、用途や代表的なサービスを紹介します。
テキスト生成AI
テキスト生成AIは、ユーザーがテキストボックスに「プロンプト」と呼ばれる文章(質問)を入力すると、自動的に回答となるテキストが生成されるシステムです。代表的なサービスとしては、OpenAIの「ChatGPT」や、Googleの「Gemini(旧:Bard)」が挙げられます。
参考:ChatGPTは業務に使えるか?特徴やメリット・デメリットを解説
参考:対話型AIサービス「Google Bard」とは?ChatGPTとの違いや活用法、注意点を解説
テキスト生成AIは、ビジネス文書の作成やアイディア出し、プログラミングコードのエラー探しなど多岐にわたる用途で活用できるため、ビジネスシーンでよく活用されています。
音声生成AI
音声生成AIは、音声やテキストを入力することによって新たな音声を生成するシステムです。Microsoftの「Microsoft Azure Text to Speech」や、Amazonの「Amazon Polly」をはじめ、さまざまな企業がサービスを提供しています。
音声サンプルを入力すると、その人の声を忠実に再現したテキスト読み上げモデルが完成します。オーディオブックの制作や、多言語対応のナレーション読み上げなどが実現できるため、幅広い分野で活躍している生成AIです。
画像生成AI
画像生成AIは、ユーザーが入力したテキストに応じてオリジナルの画像を生成するシステムです。生成したい画像のイメージをテキスト入力するだけで高品質な画像をアウトプットできるため、広告・デザイン業界をはじめとするさまざまな分野で活用されています。
世界的に有名なサービスでは「Stable Diffusion」や「DALL·E 」などが挙げられます。
動画生成AI
画像生成AIが発展した形として、テキストや画像データをもとに新たな動画コンテンツを生成できるシステムが動画生成AIです。たとえば米Runway(ランウェイ)が2023年11月に試験公開を始めた「Motion Brush」が、いま注目を集めています。
Motion Brushでは、取り込んだ画像の動かしたい対象をブラシで塗りつぶし、移動方向を指示するだけで数秒の動画を作り出すことができます。
参考:日経XTECH「文章・画像の次は生成AI動画、『Runway』が爆速進化」
まだまだ発展途上の技術ではあるものの、数年後にはさまざまな動画コンテンツがAIで生成できる時代が到来すると予想されています。
生成AIのビジネスにおける活用シーン
生成AIは、実際の現場でどのように活用されているのでしょうか。以下では、ビジネスにおける代表的な活用例を4つ紹介します。
コンテンツ制作
生成AIの特徴をそのまま生かした活用例として、Web記事やイラストなどのコンテンツ制作が挙げられます。
たとえば、オウンドメディアに掲載する記事の執筆を生成AIに任せ、最終チェックのみを人の手で行うことで人件費を大幅に削減可能です。広告で活用するイラストやBGMを生成AIで制作し、外注費を抑えることもできます。
コンテンツ制作における生成AIの活用は広告業界を筆頭に広がりを見せていますが、上記のような使い方は業界を問わず幅広い企業で再現可能です。
アイディア創出
生成AIは、コンテンツを新たに生み出すことはもちろん、人間のクリエイティブな業務のサポートにも活用できます。
たとえば、新製品制作のアイディアをテキスト生成AIに求めると、意思決定のヒントになるアドバイスがもらえます。
さらに、みずから立案した企画の壁打ちにも活用可能です。生成AIに「ダメ出し」を求めることで、自分では気づかなかった抜け漏れや改善点を発見することに役立ちます。
定型業務の自動化
定型業務を生成AIで自動化することで、生産性の高い業務にリソースを集中できます。
たとえば、コールセンターの応対を録音したデータを文字に起こしてシステムに保存したり、会議資料の作成時に重要ポイントを要約してもらったりなど、アイディア次第でさまざまな使い方ができるのが生成AIのメリットです。
顧客対応の強化
生成AIは、顧客対応の強化にも有用です。膨大な顧客データを分析し、最適な回答を導き出せるため、コールセンター業界では問い合わせ対応に生成AIを導入する動きが急速に広まっています。
参考:日本経済新聞「コールセンターの顧客対応、生成AIで5割短く 13社調査」
顧客の購買履歴や問い合わせ内容などをもとに、パーソナライズされたサービスを提供することも可能です。顧客が真に求めているものを最適なタイミングで提供できれば、企業と顧客の関係性が強化され、長期的な業績の向上につながるでしょう。
顧客データを自社の売上拡大に活かすには、顧客情報を蓄積・管理するCRMが不可欠です。CRMをまだ導入していない方、現状のCRMに不満がある方は、以下の資料もご活用ください。
企業による生成AIの活用事例
以下では、生成AIをビジネスに取り入れている企業の事例を見ていきましょう。現状はChatGPTによる業務効率化の事例が多いものの、最近では生成AIで新たなサービスを展開する企業も続々と増えています。
三越伊勢丹|AIモデル撮影サービスの提供
株式会社三越伊勢丹は、AI model社と協業し、画像生成AIを活用したBtoB向けの「AIモデル撮影サービス」の提供を開始しました。ファッションブランドのカタログやECサイトに掲載する写真の撮影に、AIモデルを利用できるサービスです。
人間のモデルを起用する場合と比較して、物理的な着替え時間や掲載期間の制約が少なく、撮影にかかるコストを削減できます。
三越伊勢丹は「三越伊勢丹オンラインストア」への導入効果としてCTR(クリック率)や売上、離脱率などの実証実験を実施しつつ、新たなビジネスの展開拡大に取り組んでいます。
参考:PR TIMES|「ISETAN STUDIO」AIモデル撮影サービス、「三越伊勢丹オンラインストア」専用AIモデルの提供をスタート
JR東日本|各種説明会で活用できる想定問答生成AIを試験導入
東日本旅客鉄道株式会社は、株主総会や記者会見などの想定問答集を自動生成するサービス「exaBase IRアシスタント」を試験導入しています。
exaBase IRアシスタントは、各種説明会において想定される質問と回答案をChatGPTで自動生成するサービスです。企業固有の情報を含んで回答を生成できるため、熟練のIR担当者に依存することなく資料の作成を進行できます。
JR東日本は、グループ経営ビジョンである「変革2027」の実現に向けてDXを推進しており、AIと協働しながら新たなアプローチや生産性向上の実現を目指しています。
参考:PR TIMES|JR東日本が「exaBase IRアシスタント」の試験導入を開始
トランスコスモス・デジタル・テクノロジー|生成AIによる採用業務の効率化を実現
株式会社トランスコスモス・デジタル・テクノロジーは、採用活動における書類選考の効率化を図るべく、ChatGPTを活用した実証実験を行いました。
当社では、書類選考におけるスキルの確認や、書類の記載形式の確認などに多くの時間を費やしていました。これをAIによって一部自動化することで、以下の作業時間の削減に成功しています。
- フォーマットが異なる職務経歴書を担当者が読み込む時間
- RPAを活用することで、採用管理システムに反映する作業時間
年間では約400時間の工数削減となる見込みで、生成AI活用により人事部門の業務効率化につながることが確認できました。
長文の評価がしづらいことや、異なる職種での選考ができないことなど課題点はあるものの、活用法の工夫を重ねることで更なる精度の向上を目指しています。
参考:PR TIMES|生成AI(ChatGPT)を利用した採用業務の効率化を確認~トランスコスモス・デジタル・テクノロジーの実証実験レポート~
生成AIの課題に対する向き合い方
生成AIはさまざまな分野において活用されているものの、利用方法によっては思わぬトラブルに見舞われる可能性もあります。利用者にとって「諸刃の剣」となり得るツールであることを忘れてはなりません。
以下では、現状の生成AIが抱える課題と対策を紹介します。
データの真偽・品質
生成AIからのアウトプットは、入力したデータの品質に大きく依存します。そのため、偽情報や古い情報を使用すると、誤った情報が出力されるおそれがあることを見越しておきましょう。
ビジネスにおいて誤った情報をそのまま使用してしまうと、自社の信頼失墜につながります。生成AIで出力した情報のチェックは、かならず人の手で行うことが大切です。
セキュリティ
生成AIにはセキュリティ上の懸念があることも留意しなければなりません。
たとえば、テキスト生成AIであるChatGPTは、入力された情報を蓄積していきます。個人情報や機密情報を入力してしまうと、意図せず情報の漏洩を招くおそれがあるのです。
実際にChatGPTを業務に活用している企業では、個人情報の扱いについて厳密なルールを定めている例が多いことからも、情報漏洩の危険性を軽視してはならないことが伺えます。
生成AIを導入する際は、適切に活用するためのユーザー教育や規制の遵守などを含めた多岐にわたるセキュリティ対策が必要です。
雇用への影響
生成AIは、これまで人にしかできないとされてきたクリエイティブな仕事をも代替します。現にアメリカでは2024年1月の人員削減が8万人を超えており、AI活用の広がりが雇用や投資削減の一因になっています。
参考:日本経済新聞「米人員削減、1月8万人超 リストラ・AI導入で高水準」
AIの生成能力に過度に依存することで、人間の能力や個性、判断力が失われるリスクもあるでしょう。人の価値を再定義し、AIと協働できる組織を構築することが大切です。
生成AIと協働できる組織を目指そう
生成AIは、まったく新しいコンテンツをゼロから生み出せることから、これまで人にしかできないとされてきたクリエイティブな作業も代替できます。生成AIが台頭する現代においては、ますます「人」の存在意義・価値を見直す必要があるでしょう。
生成AIを正しく運用するうえでは、組織の人材育成・マネジメントを強化する必要があります。社員教育やルールの整備、組織風土の構築などを進め、生成AIのメリットを十分に享受できる基盤を整えることが大切です。