DX推進とは|必要とされる理由や進め方7ステップ・成功ポイントを紹介
デジタル化の流れが加速している現代において、DX化を進めて生産性や作業効率を高めることは、企業の競争力に直結します。本記事では、DX推進の概要や注目されている理由、DX化を推し進めるためのステップについて紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
DX推進とは|概要を解説
DXとは、デジタル技術を活用して企業の業務プロセスや製品・サービスを変革し、人々の生活をより良いものへ高めていくことを指します。データとデジタル技術を駆使した新たな価値を創造することが、DX化の目的です。
DXには、単にデジタル技術やシステムを導入するだけではなく、ビジネスモデルや組織文化の変革も含まれます。たとえば、小売業ならデジタル技術を活用してEC事業を強化したり、店舗オペレーションを自動化したりすることなどが挙げられるでしょう。
顧客接点の拡大や業務効率化、新サービスの創出など、幅広い取り組みがDXには含まれます。一方、IT化は既存の業務プロセスを保ったまま効率を向上させたり、生産性を高めたりすることを指します。つまり、IT化はDX推進の一つの要素といえるでしょう。
DX推進は一朝一夕では実現しないため、長期的な視点で戦略的に取り組む必要があります。
なお、DXとデジタル化の違いについては、別記事「DX(デジタルトランスフォーメーション)とデジタル化の違いは?DX推進を加速する施策の例も解説」を参考にしてみてください。
DX推進が必要不可欠な理由
次に、DX推進がこの先の時代において欠かせなくなる理由について3つ紹介します。
競争力の強化が求められている
グローバル競争の激化や新興企業の台頭により、企業は競争力を高めることが求められています。DX化が進行している現代において、従来型のビジネスモデルでは差別化が難しくなってきているといえます。
現に、AmazonやNetflixに代表されるアメリカの巨大企業によって、小売業やレンタルビデオチェーンなどの業界は甚大な影響を受けています。つまり、DXによる顧客体験の向上や業務効率化を図り、日本国内からも既存事業の変革を起こす必要があるのです。
ただし、DX推進自体が目的なのではなく、あくまでも競争力強化の手段であることを理解することが重要です。自社の強みを生かしつつ、デジタル時代における新たな価値を創り出す方法を模索する必要があるでしょう。
外部環境の変化に適応しなくてはいけない
デジタル技術の急速な進歩や、消費者ニーズの多様化など、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。とくに通信技術の発展にともない、オンラインシフトやリモートワークが加速するなど、社会全体がデジタル化の波に後押しされています。
環境変化に適応できない企業は淘汰されるリスクが高まっているため、外部環境の変化を敏感に察知し、スピーディーにDXを推進することが求められるでしょう。
「自社のビジネスが現在のトレンドに合っているか」「デジタル技術を活用してさらなる業績向上を見込めないか」などについて、常にアンテナを張っておく必要があります。
「2025年の崖」に対応する
経済産業省が提唱する「2025年の崖」は、多くの企業がDX推進に舵を切るきっかけとなりました。「2025年の崖」とは、DX化を推進しない場合に多くの日本企業が2025年前後に直面すると予想されている問題のことです。
具体的には、システムの老朽化や、デジタル市場の拡大にともなって増えていく莫大なデータ、デジタル技術に精通した人材の不足などの問題が挙げられます。
とくに、過去の技術や仕組みで構築されたシステムであるレガシーシステムに依存した企業は、システム刷新とDX推進を迫られている状況にあります。「2025年の崖」への対応を怠ると、システム障害やセキュリティ問題などの深刻なリスクに直面するでしょう。
たとえば、老朽化したシステムが原因で、大規模なシステム障害が発生するようなケースです。
ここでレガシーシステムを刷新することを、単なるシステム入れ替えと考えるのではなく、ビジネス全体のデジタル変革の好機ととらえるべきでしょう。
「2025年の崖」を逆手にとり、競合に先駆けてDXを推し進めることが、差別化につながるはずです。
参考:経済産業省|ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開
DX推進に着手するメリット
次に、今からDX推進に着手すべき理由や、メリットについて解説します。
生産性が向上する
DXにより業務のデジタル化・自動化が進むと、生産性の大幅な向上が期待できます。定型業務をAIやRPAなどのデジタル技術を活用して対応することで、人的ミスの削減や作業時間の短縮につながるでしょう。
たとえば、営業部門の事務作業をRPAで自動化すれば、営業員は売上アップにつながる提案活動に注力できます。人が対応する定型作業を減らし、より創造的な活動に集中する時間を創り出せるのが、DXを推進するメリットです。
またDXには、既存の業務のデジタルへの置き換えだけにとどまらず、業務フロー自体を見直す活動も含まれます。会社組織を俯瞰して、過剰に工数が割かれている仕事や無駄な業務を見直し、合理的なプロセスを再構築することも重要です。
DX化によって一人ひとりの仕事の質や付加価値を高めることで、企業全体のパフォーマンス向上につながることも期待できます。
人手不足が解消する
少子高齢化にともない、多くの企業が人手不足に直面しています。パーソル総合研究所の推定によると、2030年には644万人の人手が不足するといわれています。
人手不足解消への備えとして、DXによる業務の自動化は有効な手段の一つです。単純作業をAIやロボットに任せることで、人的リソースを戦略的な業務にシフトできるでしょう。
たとえば、小売店の接客にAIチャットボットを活用すれば、定型的な質問に関しては自動対応が実現し、人的リソースの削減につながります。また製造業では、繰り返しの作業をロボットに任せ、熟練工の技術をデジタルデータ化することで、人手不足のリスクを緩和できるでしょう。
人的リソースの最適配分により、企業の生産性向上と持続的成長が期待できます。自動化によって人手を減らすことは人件費の削減にも直結するため、収益性の改善にもつながります。
製造業のDX推進については、別記事「製造業のDXは現状把握から! 事例や必要性も合わせて徹底解説」を参考にしてみてください。
新規事業の創出につながる
DXの取り組みは、新たなビジネスチャンスの発見にもつながります。デジタル技術を活用することで、従来の発想では得られなかった、革新的なアイデアが生まれる可能性があります。
たとえば大手損保のAIGは、ドローンで建物や設備の損傷状況を調査し、保険金請求の迅速化を実現しました。このようにデジタル技術を活用することで、付加価値の高いサービス創出も期待できるでしょう。
DXにより蓄積したデータから潜在ニーズを発掘し、次の成長の芽を見出すことも重要です。新規事業の創出は、企業の持続的成長と競争優位性の確保につながるでしょう。
DXを推進する7つのステップ
ここからは、DXを具体的に進める手順を7段階に分けて解説します。
STEP1:自社の現状・課題を把握する
DXに取り組むには、最初に自社の現状や課題を把握する必要があります。
自社のビジネスや社内状況を正確に理解し、可視化することが重要です。既存のシステムや情報資産、人材の能力・適性などを全面的に把握するようにしましょう。
また、競合他社との比較も行いながら自社の強みと弱みを洗い出し、評価できる点と解決すべき課題を明確にしておきましょう。
STEP2:DXの目的を明確にする
現状や課題が明確になったら、DXを活用してどのように解決するのか、どんな新しいビジネスにチャレンジするのか、なぜDXするのかといった目的を設定します。
明確な目的がないと効果計測や改善も難しくなり、成果が見えずに現場だけが混乱する可能性もあります。
STEP3:DX推進のビジョンを共有する
DXの目的が固まったら、経営層が明確にビジョンを描いて従業員に向けて発信し、しっかりと浸透させることが重要です。DXは組織全体の取り組みであるため、組織のリーダーやメンバーがDXのビジョンに賛同して、積極的に参画できるようにしましょう。
また、DXに関する教育や研修を実施し、デジタルスキルや考え方をアップデートさせながら人材を育成していくことも重要です。
STEP4:DX推進人材の確保と体制を構築する
続いて、DX人材の確保と体制を構築する段階に進みます。
これには、適切な人材アサインとそれを支える組織体制の構築が不可欠です。既存組織で対応が可能なのか、それとも新たに専門部署・チームを立ち上げるのかなどを検討して、自社の目的や環境に合った体制づくりを目指しましょう。
DX実施後も企業が成長し続けるには、自社で長く活躍してくれるDX人材の育成も視野に入れておきましょう。どうしても社内で確保できない場合は、CRM/SFAツールの活用による代用や外部サービスの利用も検討しましょう。
<DX推進に必要な主な人材>
- プロジェクトマネージャー
- ビジネスデザイナー
- テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)
- データサイエンティスト
- 先端技術エンジニア
- UI/UXデザイナー
- エンジニア/プログラマ
参考:業務効率化の定番ツール15選! 目的別に特徴や料金プランも含めて紹介
STEP5:DX推進予算を確保する
人材確保と同時に予算を確保することも重要です。
まずは現行のITコストを洗い出し、必要な機能と不要な機能を振り分けます。既存システムのスリム化やコストカットができれば、DX推進のための既存システムの刷新や新システム導入を実現しやすくなります。
資金的に余裕がない場合は、「IT導入補助金」などの補助金制度の活用も検討しましょう。
STEP6:DX推進計画を立案して実行する
ここまでの準備が整ったら、社内の課題解決に向けた具体的なDX推進計画を立案していきます。計画は順に実行に移していき、当初の目的が達成されているかどうかを確認しながら、検証・改善のプロセスを繰り返していきましょう。
STEP7:PDCAを継続的に回す
DXは一度で完了するものではなく、継続的な改善が必要です。データや指標の分析により効果を測定して、PDCAを回し続けていきましょう。また、成功事例や失敗事例を社内外で共有し、学びや知見を蓄積するのも有効です。
自社の状況の見直しだけではなく、市場や顧客のニーズに応じてDXのビジョンや戦略の更新を実施することも大切です。
DX推進を成功させるポイント
最後にDXを効果的に推進させるための、注意点やコツを紹介します。
経営トップが推進する
DXを成功させるには、経営トップみずからがその推進に強い意思を持ち、遂行を促すことが不可欠です。
トップの強い思いがあってこそ、従業員が一丸となって取り組むことができます。また、経営層と現場が連携して進めることも重要で、情報共有やモチベーションが上がる対策を積極的に行いましょう。
経営戦略やビジョンと連動させる
DX推進を行うには、経営戦略や経営ビジョンと連動させることも重要です。
経営トップが積極的に推進しても、経営戦略と紐づかない場合は齟齬や混乱が生じてしまい、DX推進のスピードが落ちかねません。DX推進の計画を立案するには、自社の経営戦略や経営ビジョンを意識した内容にしましょう。
DXを実現するツールやシステムを導入する
DXを成功させるには、DXを実現するツールや基盤となるITシステムの構築が重要です。個別のツールやシステムが連動し、共通したひとつのプラットフォーム上で稼働できる環境を構築することで、相互の連携が取れた効率的な稼働が可能になります。
DX実現に役立つツールやシステムとしては、CRM/SFAやWeb会議ツール、ビジネスチャット、RPA、ノーコードツールなどが挙げられます。それぞれ特徴や機能が異なるため、自社の目的や環境に合ったシステムを選択しましょう。
参考:DXは低コストでも実現できる!DXに役立つ14の無料ツールを紹介
参考:営業部門のDXにはMA、SFA、BIの各ツールが有効!業績アップにつながる活用法を解説
デジタル技術のみに焦点を当てない
DX推進で重要なのは、デジタル技術の導入だけに目を向けないことです。技術ありきではなく、自社のビジョンや戦略にもとづいてDX化に取り組みましょう。
たとえば「顧客満足度の向上」が目的なら、顧客接点のデジタル化だけでなく、社内の意識改革も必要不可欠です。「業務効率化」を目指すなら、単に自動で定型作業を処理するRPAを導入するだけでは不十分で、業務プロセス全体の見直しをしてこそDX化が進みます。
他には、デジタル人材の育成・獲得も欠かせません。自社内でデジタルスキルを持つ人材を育てる施策も必要です。
デジタル技術は手段であり、目的ではありません。ビジネス戦略と一体となったDXの推進が成功のカギを握ります。
なお、DX化を推進する人材については、別記事「DX人材とは|必要なスキルや職種、採用・育成方法について解説」を参考にしてみてください。
データを積極的に活用する
データの収集や分析は、DXにおいて重要な位置づけにあります。自社に眠るデータを活用し、ビジネス課題の解決や意思決定の高度化を図ることが重要です。
たとえば顧客データを分析すれば、ニーズや行動パターンが見えてきます。DX化によって自動化が進めば、顧客一人ひとりのニーズに合わせてコミュニケーションをとる「One to Oneマーケティング」を導入してもよいでしょう。
ただし、データを正しく活用するには適切な管理体制の構築が必要です。具体的には、セキュリティ対策の準備や人的リソースの確保が欠かせません。データサイエンティストなど、専門人材の育成・獲得も急務でしょう。
自社内だけでなく、他社と連携してデータを共有・活用することで、新たなイノベーションが生まれる可能性もあります。徹底的にデータを活用することが、DX時代を勝ち抜くポイントといえるでしょう。
なお、DX化に成功した事例については、別記事「【DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例12選】推進ポイントを業界別に解説」を参考にしてみてください。
DX推進で自社の競争力を高めよう
DX推進は競争力強化や生産性向上、新規事業創出など、多くのメリットをもたらします。デジタル技術を活用し、顧客体験の向上や業務効率化を図ることが、企業の持続的成長につながるでしょう。
ただし、DXはIT導入だけが目的ではありません。ビジネス戦略と一体となった変革が求められます。自社の強みを生かしつつ、データを徹底活用し、新たな価値創造を目指す姿勢が大切です。
競合に先駆けてDXを進めることが他社との差別化につながるので、スピード感を持って変革に着手しましょう。