ナレッジマネジメントとは?メリットや実践方法、導入フローを徹底解説
ナレッジマネジメントとは、従業員が保有するノウハウや経験を共有して、新しい知識の獲得や創造的な仕事の促進につなげる経営管理手法です。ナレッジマネジメントを導入すれば、企業の永続的な成長や競争力の向上を期待できるでしょう。
本記事では、ナレッジマネジメントのメリットや導入方法などを詳しく解説します。
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ナレッジマネジメントとは?
ナレッジマネジメントとは、従業員それぞれの持つ知識や知見、技術、スキル、ノウハウといったナレッジを、組織全体で共有・活用することで新しい知識を創造するマネジメント手法です。
ナレッジについては以下の記事でも解説していますので、参考にしてください。
参考:ナレッジとは?ビジネスにおける意味・共有する5つのメリットを解説
ナレッジマネジメントの目的
ナレッジマネジメントの目的は、企業の成長を促し競争力を向上させることです。慢性的な人材不足と雇用の流動化が進む状況下では、従業員間の知識継承や長期的な人財育成が難しく、何も対策をしないままだと企業内の知識・ノウハウ量や技術、知識の質が縮小していってしまいます。
ナレッジマネジメントは知識の処理や活用だけではなく、そこから新たな知識がうまれることを重視しているため、新事業の開発やイノベーションの創出を期待できます。これにより生産性向上や企業の永続的な成長と競争力向上を見込めます。
ナレッジマネジメントの4つのタイプ
ナレッジマネジメントは、目的・手段により以下の4種類に分類できます。
ベストプラクティス共有型
ベストプラクティス共有型とは、組織内で優秀な成績をあげている社員の考え方や行動パターンを言語化して共有するタイプです。成功事例のノウハウや成績優秀者の思考パターンなどを共有して組織全体のスキルの底上げを図り、業務改善に役立てます。
専門知ネット型
専門知ネット型とは、社内外の専門知識を有する人々をネットワークで結び、データベース化する手法です。専門知識を活用した課題解決や意思決定のヒントを、迅速に探し出せるようになります。
問い合わせの多い事項をFAQ化すれば、必要な情報を活用しやすくなるでしょう。
知的資本型
知的資本型とは、特許や著作権を持つ制作物・プログラムやブランドといった、組織の知的資産・無形財産を新たな価値を生むように再構築することで、経営戦略に活用する手法です。
自社で独自開発した業務システムを他社に売り出す、自社レストランの人気メニューを商品としたテイクアウト専門店を運営する、などがこれにあたり、収益向上を期待できます。
顧客知共有型
顧客知共有型とは、顧客との知識の共有・提供を継続的に行う手法です。顧客からの意見・クレーム、顧客対応の履歴といった情報をデータベース化し、顧客対応プロセスの最適化を図ります。
顧客満足度の向上につながり、顧客維持・事業安定といった成長基盤を整えられます。
ナレッジマネジメントを行うメリット
ナレッジマネジメントを行うことで、業務の効率化やコスト削減、組織力強化などさまざまなメリットを得られます。以下で詳しく解説します。
業務の効率化につながる
優秀な従業員の知識や業務の進め方をナレッジとして共有すれば、他の社員も真似ができるため、業務を効率的に進められるようになります。組織全体で業務の最適化と質の向上も期待できるでしょう。
組織力を強化できる
他部署の知見や知識、ノウハウを広く共有すると業務の属人化を防げるため、組織全体のパワーを強化できます。さまざまな事例に対する応用力を高められ、競争力も高まるでしょう。
コスト削減につながる
ナレッジ共有による業務の効率化は、コスト削減も実現します。人材や資源などリソースの最適化にもつながるでしょう。
新製品/サービス開発を促進できる
社内のさまざまな部署の意見やノウハウ、技術を共有できれば、単独部署のアイディアに留まらない新製品やサービス開発も期待できます。日頃からナレッジマネジメントに積極的に取り組んでいると、こうした部署間の知識連携もスムーズに進むでしょう。
人材育成が効率化する
業務に必要なナレッジをナレッジマネジメントによって集約できていれば、同じことをゼロから教える労力がなくなり、人材育成の効率化が進みます。
成功率の高い実践的で専門的な知識やノウハウを身につけやすくなるため、従業員の早期のスキルアップが期待できます。
DXを効果的に推進できる
ナレッジマネジメントを効率的に推進するには、社内の知識を集約・共有や一元管理ができるCRM/SFAツール等の導入が効果的です。必然的に社内におけるDXを推進でき、ナレッジの継承もスムーズに進められるでしょう。
顧客満足度向上を実現できる
ナレッジマネジメントでCRM/SFAを使うと、顧客に関するデータや対応ノウハウを有効活用できるため、顧客満足度や顧客ロイヤルティの向上が期待できます。顧客の定着は安定的な経営基盤となり、企業の成長や事業継続に欠かせない要素となります。
ナレッジマネジメントの実践に欠かせない要素①知識資産
ここからは、ナレッジマネジメントを実践する際に覚えておきたい要素や実践方法を解説します。
ナレッジマネジメントを行う上で欠かせない要素のひとつとして、「知識資産」が挙げられます。
知識資産とは、業務上の技術・ノウハウ、従業員が個人的に習得した知識・人脈など、企業で活用できる幅広い知識のことを指します。価値を創出するための材料ともいえ、以下のように4つに分類できます。
- 経験的知識資産:経験によって得られるスキルやノウハウなど
- 概念的知識資産:組織の中の理念や経営コンセプトなど
- 体系的知識資産:マニュアル化され体系化されたもの
- 恒常的知識資産:組織内に日常的に存在するもの
知識資産は既に獲得しているノウハウや理念、技術といった既存知識のほか、ナレッジマネジメントの過程において創造された新たな知識も含まれます。これらの知識資産をどのように創って蓄積し、活用していくかを決めることがナレッジマネジメントや経営戦略において重要となります。
ナレッジマネジメントの実践に欠かせない要素②SECIモデル
ナレッジマネジメントを実践するには、暗黙知を形式知へと変換する「SECIモデル(セキモデル)」というフレームワークを利用すると効果的です。
SECIモデルは4つのフェーズで構成されている、新たな知識や資産を創造するプロセスのことです。新しく知識が生まれる際には「暗黙知」と「形式知」の転換が相互に行われるとしており、その転換過程である各フェーズの頭文字を取ってSECIと呼ばれています。
暗黙知と形式知
暗黙知とは、言葉や数字で表現しにくい技能やノウハウのことです。優秀な営業マンの持っているスキルやノウハウ、職人の技術などがこれにあたります。
一方の「形式知」とは言葉や数式で表現できる知識のことで、マニュアルなどが含まれます。
暗黙知は言語化できない要素のため、そのままだと組織全体のスキルアップにつながりません。ナレッジマネジメントでは従業員一人ひとりが有する暗黙知を形式知に変換し、それを相互交換しあうことで新たな創造につなげることが重要です。
これを理論的に体系づけたのがSECIモデルで、ナレッジマネジメントの実践に適したモデルとされています。
SECIモデルの4つのプロセス
知識創造のための継続的なプロセスモデルであるSECIモデルは、「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(internalizetion)」の4つのプロセスに分けられます。
① 共同化(Socialization):暗黙知→暗黙知
共同化は、従業員それぞれの暗黙知を共通体験を通じて伝達し合うプロセスです。
OJTや子弟制度などがこれにあたり、積み上げた技術やノウハウ、経験にもとづいた信念や勘といった、主観的な知識の共有は言葉だけでは伝えづらく、体や五感などを駆使した伝達となるのが一般的です。
② 表出化(Externalization):暗黙知→形式知
表出化は、暗黙知を形式知に変換するプロセスです。共同化で得た暗黙知はそのままでは組織内での共有が難しいため、言葉や映像、図、ストーリーなどにより形式知に変換します。マニュアルや報告書などもこれにあたります。
③ 連結化(Combination):形式知→形式知
連結化は、形式知同士を組み合わせることで、新たな知識体系を創造するプロセスです。複数のマニュアルを比較検討して新たなマニュアルを作成する、他部署の手法を取り入れて業務の効率化を図る、といったことがこれにあたります。
④ 内面化(Internalization):形式知→暗黙知
内面化は、連結化で得られた新しい形式知を自分のものとして体得するプロセスです。頭で理解した形式知を実際に行動に移して体験したり、反復練習したりすることで、新しい知識やノウハウといった個人の暗黙知に変換するステージです。
SECIモデルに沿ってこのサイクルを繰り返すことで、組織内でナレッジを共有し深めていくナレッジマネジメントが成就します。
ナレッジマネジメントの実践に欠かせない要素③場
このほかナレッジマネジメントでは、知識資産を創造して共有し、活用するための関係性や空間、環境といった「場」も欠かせない要素のひとつです。
顧客との対話の場や業務を行う現場、プレゼンテーション、グループウェア内の掲示板、データベースなどがこれにあたり、組織内でのできごとや業務進行上のさまざまなシーン、接する情報などが、ナレッジマネジメントの場となります。
ナレッジマネジメントを効果的に展開するには、場ごとの暗黙知をどのように形式知に変換していくかを検討するとよいでしょう。
ナレッジマネジメントを導入する流れ
ここからはナレッジマネジメントを導入する流れについて、段階的に解説します。
STEP1:導入する目的を明確にする
まず、ナレッジマネジメントを導入する目的を明確にして、組織で共有することが重要です。「ナレッジマネジメントによって何を解決・実現するか」「従業員にどのようなメリットがあるか」といった目的は、できるだけ明確に定めておきましょう。
明確な目的を共有できれば、従業員にとってナレッジマネジメントが自分事になり、取り組む姿勢も積極的になるでしょう。
STEP2:共有する情報を決める
ナレッジマネジメントの目的が定まったら、達成のために必要な情報や、どのような情報を共有する必要があるかを検討しましょう。
共有・可視化したい情報を整理するには、従業員が業務を進める上で困っていることや不満、要望などをヒアリングします。なるべく具体的にヒアリングすることで、本当に必要な情報が把握できるでしょう。
STEP3:情報共有する場を設ける
続いて、必要な情報を共有できる場や新たな知識を創造できるプラットフォームなど、知識資産を効果的に活用するための基盤となる「場」を整備しましょう。
たとえば外部から知識を獲得するには、社外セミナー、外部講師による講習会、提携企業との情報交換会などがあてはまります。外部から獲得した知識を活用・発展させるには、ミーティングや社内SNS、データベース等が使えるでしょう。
適切な場を設けるには、「課題を解決するために、知識をどこで獲得して、どこで共有し、どこで発展・活用するのか」を念頭に検討すると決めやすくなります。
STEP4 :ツールやシステムを活用する
ナレッジマネジメントを効果的に進め組織内で共有するには、ツールやシステムの活用が有効です。自社の環境や知識の共有のあり方、活用方法に応じて、CRM/SFAなど必要なツール・システムを整備しましょう。
ナレッジマネジメントに適したツールとしては、以下が挙げられます。
【ナレッジマネジメントに適したツール】
- クラウドストレージやファイルサーバー
- ビジネスチャット
- 社内SNS
- CRM
- SFA
- FAQシステム ほか
CRMの使い方を詳しく知りたいなら、以下も参考にしてください。
STEP5:定期的にPDCAを回す
ナレッジマネジメントを効果的に運用するには、定期的に見直しを図りPDCAを回すことが重要です。目的としている効果が現れているか、有効な情報を見つけやすいか、従業員に負担はないかなどを確認して、問題があれば改善していきましょう。
ナレッジマネジメントの注意事項
最後に、ナレッジマネジメントを効率的に進めるための注意点を解説します。
自社に適したツールやシステムを選ぶ
ナレッジマネジメントを効果的に作用させるには、自社の目的や環境に合ったツールやシステムを選ぶことが重要です。ナレッジマネジメントでは特に知識の創造や活用を促進する知識共有が欠かせないため、各所に分散しているナレッジを一元管理でき、誰でも簡単に共有できる場が必要です。
CRM/SFAツールは、情報を一元管理して共有できるだけでなく、オンラインミーティングやグループウェアといった情報共有ができる場を提供する機能も備わっているため、ナレッジマネジメントに適したツールといえるでしょう。
知識を積極的に共有できるようにする
ツールによって知識を共有できる場を作るだけでなく、各従業員が積極的に知識を共有してくれるような工夫や仕掛けをしないとなかなか浸透しないでしょう。
たとえば、有用な知識を共有してくれた従業員にプラス評価を与える、共有した知識量に応じてインセンティブを出すなど、ナレッジ共有が進むよう対策を施しましょう。
ナレッジマネジメントで持続的な成長を目指そう
企業が市場で生き残り持続的に成長していくためには、ナレッジマネジメントなどを取り入れた経営資源とコア・コンピタンスの再定義や、リソースの最適化が求められます。これらを効果的に実現するには、顧客や営業案件、営業活動を可視化して管理できるCRM/SFAが有効です。
自社に適したCRM/SFAの活用で業務を効率化することで、理想的なナレッジマネジメントが実現するでしょう。