在宅勤務とテレワークの違いとは?職種やメリット・デメリットも紹介
在宅勤務とテレワークは、よく比較されます。どちらも柔軟な働き方を実現するうえで注目される一方で、両者の意味は異なります。どの業種や職種でも活かせる手法ではないため、適材適所での活用が有効です。
本記事では「在宅勤務」に加え、よく比較される「テレワーク」について詳しく解説します。どのような働き方なのか、向いている職種や業種、メリット・デメリットに加えて、始める際にはなにが必要かを確認していきましょう。
このページのコンテンツ
在宅勤務はどのような働き方か?
在宅勤務はオフィスに出社する代わりに、自宅で業務を行う仕事の方法です。あくまで勤務先に雇用されているわけですから、勤務先の就業規則に沿って、また指揮命令を受けて業務を進めることが特徴です。
このため、勤務先との連絡手段は不可欠です。近年ではインターネット回線を使い、勤務先とネットワークをつないで働く方法が主流です。
在宅勤務はある程度の自由と裁量があるものの、勤務すべき曜日と時間は決まっている場合が一般的です。個人事業主のように「期限内に成果物を提出すれば、時間をどう使ってもOK」というわけにはいきません。
在宅勤務はテレワークの一種
テレワークは「オフィスから離れた場所で、IT技術を使って仕事を行う」ことを指し、社外で仕事をすることの総称です。
在宅勤務はテレワークと混同されがちですが、テレワークの一種に過ぎません。在宅勤務は自宅での仕事が必須ですが、テレワークは自宅でなくても勤務先以外で働くのであれば該当します。
テレワークは、リモートワークとも呼ばれます。テレワークで働く方法と主な特徴は、この後の「社外で働く他の方法との相違点」で解説します。
在宅勤務だからといって、常に家で仕事をするとは限らない
在宅勤務を取り入れている企業でも、すべての従業員が一日中、家で仕事をしているとは限りません。在宅勤務は、以下の2つに分かれることが理由です。
在宅勤務の形態 | 特徴 |
終日在宅勤務 | 一日中、在宅勤務を行う |
部分在宅勤務 | 1日のうち、一部の時間で在宅勤務を行う |
たとえば以下のような仕事の進め方も、在宅勤務の一つに挙げられます。
- 午前中のみ自宅で仕事を行い、午後は出社する
- 午前中は客先に出向き、午後は自宅で仕事を行う
台風襲来時などでありがちな「午前中は自宅で仕事を行い、交通機関の混雑がおさまった段階で出社する」という方法も、在宅勤務にあたります。
参考:在宅勤務は人手不足に効くテレワークの1種!詳細やメリットを解説
社外で働く他の方法との相違点
社外で働く「テレワーク」は、在宅勤務以外にもいくつかの方法があります。代表的な方法と特徴を、以下の表にまとめました。
社外で働く方法 | 勤務場所 | 特徴 |
在宅勤務 | 自宅 | 自宅のパソコンと職場をインターネット回線でつなぎ、仕事をするケースが多い |
モバイルワーク | 公共交通機関や喫茶店、ホテルなど | 移動中や滞在先でパソコンやスマートフォンを活用して仕事を行い、帰社して行う仕事を減らす |
サテライトオフィス勤務 | 自宅外のオフィス (支社や支店、営業所等とは別に用意された施設) | 従業員の自宅や外出先に近い場所を選び、通勤や移動時間を節約して働くことが可能。仕事に必要な設備は整っている。 レンタルオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースが代表的 |
在宅勤務はテレワークを実現し、生産性を向上させる選択肢の一つに過ぎません。他の方法とよく比較検討して、自社にとって適切な方法を選ぶことが重要です。
なお、サテライトオフィスは設置する場所により、ターゲットや期待できる効果が変わります。以下の記事で設置するコツを解説しましたので、ご確認ください。
在宅勤務の導入をおすすめする理由
自社の魅力をアピールして優秀な人材を確保したいなら、在宅勤務制度の導入がおすすめです。在宅勤務が求められる理由として、以下の項目が挙げられます。
- 少子化により生産年齢人口が減少し続けているため、必要な人数を採用できない
- 優秀な人材も、介護や出産・育児をきっかけとして辞職してしまう
- 長時間の通勤時間を生産性のアップに振り向けたい
- 地方に埋もれる優秀な、あるいは経験豊富な人材を発掘し、戦力として迎え入れたい
- 多様な働き方の要望に対応したい
内閣府「令和4年版高齢社会白書」によると、15歳から64歳までの人口は1995年の8,716万人をピークに減り続けています。2021年の時点では7,450万人まで減り、2065年には1995年の半分となる4,529万人にまで減少する見込みです。
在宅勤務は今いる従業員に働き続けてもらえることに加えて、居住地を問わず優秀な人材を確保するうえで有効な方法です。
自社の成長を見越して働き方を改革したいとお考えの方は、以下の記事を参考にしてください。
在宅勤務やテレワークに適した職種を紹介
テレワークは種類ごとに、適した職種が異なります。どのような職種に向くか、以下の表にまとめました。
テレワークの種類 | 適した職種の代表例 |
在宅勤務 | デザイナー、プログラマー、ライター、カスタマーサポート |
モバイルワーク | 営業職、フィールドエンジニア |
サテライトオフィス勤務 | 営業職、企画職、マーケティング職、IT・Web系の職種 |
職種によっては、在宅勤務以外の方法が向くケースもあることに留意してください。
テレワーク自体が不向きな業種・職種もある
業界や業種、職種のなかには、テレワークがなじまないものもあります。代表的なものを、以下に挙げました。
テレワークがなじまない理由 | 業種や職種の一例 |
競技会場で試合をする | スポーツ選手、審判 |
五感を使って現物を扱う | 漁師、調理師、薬剤師、ごみ収集員 |
人や動物の体に直接触れる | 医師、看護師、介護士、理容師、美容師、獣医師、トリマー、飼育員 |
資材や材料を組み立てる | 建設業、大工 |
現物を配送する | 郵便配達員、宅配業、トラック運転手 |
上記の業種や職種で働く従業員には、無理に在宅勤務をすすめないことが重要です。
在宅勤務やテレワークで働くメリット・デメリット
在宅勤務やテレワークには、それぞれメリットとデメリットがあります。状況に応じて適切な手段を選ぶことが重要です。ここでは在宅勤務とモバイルワーク、サテライトオフィス勤務の3種類を取り上げ、解説します。
在宅勤務
まず、在宅勤務が企業に与えるメリット・デメリットを確認していきましょう。
メリット
在宅勤務を導入することで、企業には以下のメリットがもたらされます。
- 通勤の負担が軽くなるため、求人する際のアピールポイントになる
- 通勤費やオフィスの賃料を削減でき、コストを大きく減らせる
- 通勤できる範囲の縛りが無くなるため、全国から優秀な人材を採用できる
- 育児や介護に追われる従業員にも仕事を続けてもらえやすい
- 従業員のワークライフバランスを向上できる
- オフィスが被災した場合でも業務を続行しやすい
在宅勤務の導入により、従業員に対して多様な働き方を提示できるとともに、企業のコスト削減やBCPの強化にも役立ちます。企業価値を向上させるうえで有効な手段の一つです。
デメリット
在宅勤務の実施にあたっては以下のデメリットにも目を向け、対策を取ることが必要です。
- 紙を使った文書のやり取りが行いにくくなる
- 従業員の自宅も含めたセキュリティ対策の徹底が必須
- 仕事とプライベートを切り替えにくいため、自己管理を行えるよう教育・指導が必要
書類の電子化は、在宅勤務を後押しする施策の一つです。一方で、従業員宅のセキュリティが甘いと、悪意を持つ者の侵入を許してしまうことに注意が必要です。
なお、在宅勤務では対面で話す機会が大きく減少するものの、コミュニケーション不足になるとは限りません。ビジネスチャットツールなどの活用により、コミュニケーションを密にすることは可能です。
参考:在宅勤務は人手不足に効くテレワークの1種!詳細やメリットを解説
モバイルワーク
続いて、移動中の時間を利用して仕事を行うモバイルワークのメリット・デメリットを見ていきましょう。
メリット
移動中の時間やすき間時間で仕事を進めることにより、生産性の向上に寄与することは代表的なメリットです。特に外出先で仕事を終えられれば、帰社する必要がありません。
拘束時間を減らせるため、残業代を削減できるほか、従業員のワークライフバランスも向上できます。
帰社後のデスクワークが減ることでねん出した時間は、ほかの用途に割り当てることが可能です。顧客とコミュニケーションを取る時間を増やせば、顧客満足度の向上に寄与するでしょう。
デメリット
モバイルワークには、以下のデメリットもあります。
- 直行直帰が増えるため、管理職は部下の状況をしっかり把握する必要がある
- 不特定多数の人がいる場所で仕事をするため、機密事項が漏えいしないよう工夫が必要
- 同じ部署のメンバーと対面で話す機会が減る
このため、導入が適切かどうかをよく検討することをおすすめします。コミュニケーションの課題は、組織の工夫次第で解決することも可能です。モバイルワークについては、以下の記事もご参照ください。
参考:モバイルワークとは?営業担当者に教育すべきセキュリティ対策を解説
サテライトオフィス勤務
自社と離れた「サテライトオフィス」で働く方法のメリット・デメリットも確認していきましょう。
メリット
サテライトオフィスには、以下のメリットがあります。
- 仕事に集中しやすい環境を提供できる
- 在宅勤務やモバイルワークよりも充実したセキュリティを確保できる
- 営業担当者の移動時間を短縮でき、生産性を向上できる
- 遠隔地に住む、または長距離通勤が難しい従業員にも対応可能。育児や介護とも両立しやすい
- 本社が被災して機能しない場合でも業務を続行できる
デメリット
有効なテレワークの手段に見えるサテライトオフィスにも、以下に挙げるデメリットがあることには注意が必要です。
- 在宅勤務と比べて、働く自由度は下がる。交通費の支給も必要
- 他社と共用するサテライトオフィスで、機密情報や個人情報は扱いにくい
- のぞき見防止やVPNの活用など、セキュリティの確保にも注意が必要
- 対面でのコミュニケーションは、オフィスにいるときよりも減る
サテライトオフィス勤務を導入する場合は、自社の業務に向くかどうかを考慮したうえで選びましょう。
在宅勤務で必要な機器やITサービス
在宅勤務では、いくつかの機器やITサービスが使われます。代表的な項目を、以下に挙げました。
- パソコン
- インターネット回線(モバイル Wi-Fi ルーターなど)
- スマートフォン
- マイクとヘッドセット
- ウェブカメラ(内蔵されたパソコンもある)
- モニター(デスクトップパソコンの場合は必須)
- クラウドサービス(例:Gmail などの Webメール、Slack などのビジネスチャット)
これらは会社の備品を貸与する代わりに、手当を従業員に支給する方法もあります。
機器やITサービス以外にも、椅子など在宅勤務の能率を上げる備品があります。快適な椅子を支給・貸与することは、一つの選択肢です。
従業員の人数が多いとトータルでの費用はかさみますが、従業員一人あたりのコストはそれほど多くありません。比較的低い投資額で在宅勤務を始められることは、メリットの一つです。
参考:在宅勤務におすすめのPC周辺機器はこれ!整えるべき必須の環境から仕事が快適になるグッズまで紹介
在宅勤務やテレワークの特徴を把握したうえで適した手法の導入を
在宅勤務はテレワークを実現する有効な方法の一つです。自宅で仕事ができるため、従業員からの満足度も高いでしょう。一方で、どのような職種・業種にも向く方法ではありません。
在宅勤務の導入をお考えの場合は、自社の職種や業種との相性をチェックしましょう。在宅勤務が適する業務であれば、導入することで従業員の満足度向上につながります。
他のテレワークの手法も、向き不向きがあります。在宅勤務やテレワークの特徴を把握したうえで、適した手法を導入しましょう。