セールステックとは 顧客管理ツールについて解説
セールステックという言葉をご存知でしょうか?ここ1,2年で急激に知名度を上げているキーワードです。
SalesとTechnologyを合体させた造語で、企業の営業活動にITやAIなどの技術知識を活用するツールのことや、その活動を指します。
本記事では、営業の効率化、情報化や企業の営業力の向上などの効果が見込めるセールステックについて取り上げ、中でも営業活動でカギとなる顧客管理ツールについて解説していきます。
セールステックの概要
セールステックとは何をするものか
セールステックという言葉の由来は、
Salestech=営業活動(Sales)+ 最新のIT技術(Technology)
です。
2つの技術を融合させることで、より効果的に効率的に営業活動を行えるツールのこと、またその活動を指します。
この言葉の由来や背景についてもう少し掘り下げてみてみましょう。
セールステックが生まれた背景と理由
労働力人口の減少による生産性向上ニーズの高まり
「労働力人口は現在の8000万人から2060年に4500万人へ激減」
引用:総務省平成29年度情報通信白書より
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h29/html/nc135230.html
上図を見ればわかるとおり、高齢化社会、労働力減少問題への対応を迫られているのは明白です。
グラフのピンク色の部分が「労働力となる世代人口」です。
2060年には現在のほぼ半分になることが予測され、「労働力」は急激に日本経済から減少を続けています。
労働力人口の減少により組織改革の必要性に迫られている
技術の進歩により、ITシステムやIT技術は大きな変革を迎えています。
5Gモバイル通信やクラウドシステムを使ったITシステムが主流になっていく中で、企業も対顧客のデジタル技術の活用や改革が必要となっているのです。
そのため、旧態然とした営業組織から、データを活用した発展的営業組織への変革を目指す対策が急務となっています。
ビッグデータを活用するIT環境やツール(クラウド・5Gなどの技術革新)の出現でインフラが整った
これらの技術革新が起こったことでセールステックツールが実現できたと言っても過言ではありません。
モバイル環境やオンライン環境でストレスなく作業ができる環境が、最先端の営業現場の要望に追いついたということでしょう。
働き方改革の政府による推進とアフターコロナによる加速
上記のような時代の要請に加え、セールステック導入の加速に関しては、コロナウイルス禍が大きなトリガーとなっていることは間違いありません。
顧客への提案活動は寸断され、進行していたビジネスは無期限延期や中止されるなど、各地で大きな影響が出ています。
リモートでもなんとかビジネスを進行させるために、セールステックは有効な役割を担うことができる存在となったと言えるのではないでしょうか。
今後の日本経済は、アフターコロナに最善を尽くさねばなりません。
また、新様式(ニューノーマル)への対応、ダメージを被った事業の回復活動など、セールステックがまさにアフターコロナ対応のソリューションになると期待されています。
近年、政府により提唱されている「働き方改革」の具体的な手段となりうるソリューションでもあることから、重要なテーマであることは間違いありません。
セールスカオスマップを活用しよう
セールスカオスマップとは
セールステックツールの役割とプレイヤーを一覧できる俯瞰図が、セールスカオスマップです。
セールステックは自社組織が求める効果に応じて、使うべき適当なツールを選択しなければなりません。
そのため、以下のような目的で、セールステックカオスマップは作成公開されました。
- 全体像と各ジャンルの相関図を分かりやすく理解してもらう
- 機能ごとに存在する主要プレイヤー(ツールベンダー)を記すことで、採用検討するためにすぐにコンタクトできる
それでは、まず下記カオスマップを見てみましょう。
引用:日経クロストレンド セールスカオスマップ日本版
https://xtrend.nikkei.com/atcl/talk/19/00001/00008/?SS=imgview&FD=1420927604
カオスマップの見方
横軸の意味合い
グレーで分類されている横軸にあたる部分は、時系列に沿って「営業活動サイクルのどの段階で助けとなるものか」を表しています。
〇で囲まれている固有名詞が各ツールを販売するベンダー企業名です。
- 見込み顧客段階
- 営業商談段階
- 契約前後
- アフターセールス
などの段階で区分されています。
縦軸の意味合い
そのツールの生み出す効果=ユーザーが期待するメリットを表します
- 顧客管理/見込顧客管理 (マーケティング用途、営業顧客管理システム)
- 営業詳細業務での効率化 (オンライン面談や電子会議ツールの提供など)
- 組織と人材強化 (ナレッジマネジメントや人員育成用ツールなど)
※補足資料:カオスマップ連動、時系列に沿って活用されるツールとその役割例
セールステック各種のトレンド
黎明期:営業支援システム(SFA)と顧客関係管理システム(CRM)
SFAとCRMについては、多くの企業がすでに導入済みかもしれません。
初期ITバブルにより、企業はオンプレミスの顧客管理システムを使い始めており、いまやそれが当たり前の時代になりつつあります。
発展期:専門的なマーケティング部門向けツールやアフタ―サポート向け
SFAやCRMのその後として、マーケティングを行うためのツール(マーケティングオートメーションツール)や、業務上の蓄積されたデータを活用して次の戦略のための根拠となる傾向分析などを行うツール(ビジネスインテリジェンス)などが開発されました。
現在:コロナや働き方改革による「オンラインツール」、5Gやクラウドの浸透による「ビッグデータ活用」の実現
2020年、コロナウィルス渦により一気に「オンライン化の波」が押し寄せました。
ビジネスにおいてだけでなく、学生の授業にさえ採用がはじまりました。
加えて、オンプレミス方式からクラウド方式への転換などの必要性が出てきています。
セールステックツールに限った話ではなく、技術の進化にともないツール自体のリニューアルや構築方式の変更が発生してきていますので、良く調査して最善なツールを選択することがとても重要です。
セールステックの顧客管理ツールを採用するメリット
営業支援システム(SFA)と顧客管理システム(CRM)の違い
SFA(営業支援システム)とCRM(顧客管理システム)の違いは、SFAが営業活動中の顧客管理の支援、CRMは主に取引先となった顧客の管理を目的としている点です。
ラフに分類するのであれば、「SFAはプリセールスから受注まで」「CRMは受注手前から受注以降」がメイン機能、と言ってもいいでしょう。
しかし最近はSFA・CRMの高機能化が進み、両者の機能を統合したツールが増えてきています。
新規に採用するのであれば、ベンダー業者と深く話し合うことで、想定より安いコストで希望のシステムを実現できるかもしれません。
SFA導入で実現できること:機能面
SFA導入のメリットは大まかに言って、営業活動の中での「属人化の防止」「情報の共有」「データ化による効率化」の3つになります。
具体的には以下の項目が実現できます。
顧客情報の自社資産化
御社では、これまでの営業活動データはどのように活用されていますか?
データは貯めるだけではなく活用しなければ意味はない、とよく言いますが、SFAはまさにそのデータ活用を実現するために存在します。
成功事例や傾向の共有
全営業担当がツールをないがしろにすることなく活用することで、
- 各営業担当による傾向
- 地域による傾向
- 商品ジャンルによる傾向
- 競合情報
などが取得出来るようになります。
受注前の商談状況確認
各営業担当が現在進行させている商談の状況確認を行う事ができます。
営業活動の報告が自動でなされます。
また流行のクラウドによるシステム構築を行えば、場所を選ばず、スマホやタブレットのようなモバイル機器で確認することができます。
あらたな営業企画にともなうターゲットの理論的な選定
的確なデータが保管されるので、「次の営業施策」や「来年度の営業企画」を立てるときに
- 顧客層
- 注力する商品やエリア
などの実データにもとづいた分析を行う事が可能となります。
営業結果集計の自動化 / 営業報告書類の電子化
営業担当によるタイムリーな事前報告と事後報告が行われていることが前提となります が、帳票出力やレポートのフォーマットに自動集計する機能がほとんどのSFAツールで実装されています。
データ入力の手間は少し増えますが、その代わりに定期報告書類の作成工数は大きく削減される事でしょう。
さて、ここまではSFAの長所を解説してきましたが、懸念点として述べられることも紹介していきましょう。
SFAの導入時に良く起こる問題例
現場の負担増
ツール採用により起こる、避けることのできない変化は、以下のような現場での時間的な負担増です。
- 導入時の教育研修などが通常業務を圧迫する
- 営業活動に「事前と事後のデータ入力」という負荷が加わる
この点は、仕組みによって企業がのりこえなければならない大きな課題となります。
ツール導入後の改善効果がすぐにあらわれない
何事も結果が出るまでは、関わっている人は不安なもの。
導入当初はデータ蓄積の効果や、活用が実感できずツールの効果に疑念的になりがちです。
最初の半年までのアウトプットがどれだけ出せるか(出し続けられるか)がカギとなってくるのではないでしょうか。
最悪の場合、ツールが放置されて自社の営業活動に定着しなかった企業もあります。
その問題を発生させないために、
「上層部が企業として全社的に重視している活動であることを伝える」
「必ず成功させたい重要なプロジェクトであることをはっきり伝えてスタートする」
ということが大切です。
SFAによる顧客管理活動定着のために行うべきこと
導入の意味合いを従業員全員に理解させる
前述の通り、ツールは使い方次第で貴重な武器にもなりますが、活用できなければ単なる負債にもなり得ます。
悪い方向に進まないためにも、ツールの導入は「情報システム部門のミッション」ではなく、全社として成功させなければならない事を従業員全員に理解させなければなりません。
経営者クラスが、これが重要なミッションであり、会社へのツールの定着に貢献できる人=業績としての貢献である、ということを発信する必要があるでしょう。
どんなメリットが現場に発生するのかを示す
しかし、どれだけ経営者が喝を入れても、「現場で発生するメリットとデメリット」を伝えなければ真の定着にはつながりません。
作業時間増加という現場にとってのデメリットをカバーするだけのメリットを伝える必要があるでしょう。
ツールが産むメリット(主に時間削減や自分で出来ない分析)ー ツールが増やすデメリット(日々データ入力をする仕事の増加) = ツール導入の現場効果となります。
この計算式から、現場がデメリットしかない、と考え始めるとデータ入力が甘くなるなどの問題が発生します。
他方、ツールを積極的に活用する人に対して、何らかの形で報いが公式にコミットすることで「新たなるメリット」を会社として創り出すこともで可能です。
具体的にはこの後で述べます。
責任を持って推進と定着に当たる人材を3方に配置する
ツールの推進と定着には、3方向の責任感と存在感が成功のカギとなります。具体的には以下の通りです。
経営層
いうまでもなく、会社で一番の指揮権を持っているのは経営者層です。
言い方は悪いですが、実務まで関与せずとも「ツールの定着ににらみをきかしている」ことが現場に伝わる事は大きな推進力になります。
営業現場管理職と若手リーダー
その次に、営業担当者と関連部門の活用を現場でモニターできて、進捗を細かく確認できるのは中間管理職クラスです。
まれにITリテラシーが低いまま管理職になってしまった人が見受けられますが、中間管理職層の方々がまず、管理職目線でメリットを感じ、活用できるようにならないと「活用の継続」実現は困難な道となるでしょう。
推進部門(営業企画部門またはプロジェクトチーム)
現場目線で「ツール利用者の支援者」となれるのが、このポジションとなります。
- 基礎的な使い方のサポート
- 業務の手助けになる使い方の提案
- 経営者層がどのような意図を持っているかの情報共有
など、現場の不安や不必要な工数増加が無いようにヒアリングをしながら、会社の方向性を示してあげることが大切となります。
活用度合に対するアメとムチの使い分け
積極的な活用を促す前向きな雰囲気と褒賞
具体的に新たに用意されたインセンティブや人事考課への加点や賞与などは、分かりやすいアメであり、全社でコミットすることにより、活用を強く後押しします。
成功事例の社内発表やチーム褒賞
先にも述べましたが、「活動をしっかりと行っている部門や担当者への賞賛」はマイナス効果になることがありません。
他部門の前向きな姿勢が社内で共有、賞賛されることで自分達との比較ができ、自発的に改善に向かう事は、普遍的な真理と言ってもよいでしょう。
消極的な利用に対しての定量的な分析と警告
活用したくても、単にITリテラシーの問題で使えない人もいると思います。
定期的な利用確認により、そうした方を早めに発見してあげて、マンツーマンで操作方法を教えることなどは、現場推進担当者の重要作業だと思います。
また、中には「使えないままで構わない」と内心思っている担当者もいると思います。
そのマインドに対しては上記のように会社としての方針や真剣度を示してあげる事で自然と解消に向かうでしょう。
営業として働く担当者は「売上数字を獲得する」ことは自分の人生に影響することなので、敏感に反応し真剣に実施します。
一方で、「数字にならない」「メリットがない」と感じてしまうと、心の中では無意識に、反射的に後回しにしてしまいます。
その嗅覚に「いいにおい」をかがせてあげれば、自然と活用してくれるようになります。
つまり、SFAプロジェクト推進役に任命される人は、人を上手に動かすコツを知っている方が適任でしょう。
セールステック導入のカギ
最重要のカギは“成功させる”という意欲を常に発信するこ
いかがでしたでしょうか。
- セールステック概要
- 顧客管理ツールSFAの概要
- SFA導入のカギ
について解説してきました。
全てのツールに共通して言えることですが、
- 導入時のコミットメント
- 継続して活動させることの大切さ
- 想定していたアウトプットを継続して行う
が新しく導入したツール定着の第一歩です。
一部の人がツールを使わないだけで全社のデータは不正確なものになってしまい、SFAの価値を大きく損なってしまいます。
全社の活動として、一丸となって定着させることでさらに大きなリターンを得られることになります。
ぜひ、入念な準備と効果測定、効果測定の基づく改善の継続で貴社にセールステックを定着させてください。