事業戦略の策定に役立つフレームワーク10選|成功に導くポイントも解説
事業の成長と成功には、適切な「事業戦略」が必要不可欠です。しかし、事業戦略の立案は、いざ行ってみると想像以上に難しくわかりにくいものです。
この記事では、事業戦略の意味や役割、立案の際に役立つフレームワークなど、具体的な方法をわかりやすく解説していきます。
事業戦略とは?
事業戦略とは、企業が事業の目的と目標を達成するために立てた計画を意味します。ここでは詳しい意味や、経営戦略との違いを説明していきます。
事業戦略の意味や役割
事業戦略は、「事業ごと」に立案する戦略のことで、会社全体の戦略ではありません。
事業をより具体的な計画や方策に落とし込んだもので、目標達成までの現実的な道筋を示しています。事業戦略は、企業が変化する市場に対応していくための重要な役割を担っています。
事業戦略と経営戦略の違い
経営戦略とは、企業理念やビジョンを実現するための長期的な戦略で、会社のあるべき姿を描き、目指すためのものです。
一方、事業戦略は、上述した通り「事業ごと」の戦略に落とし込んだものです。経営戦略に比べて短期的な視点で策定される具体的な実行計画です。
作る順番としては、先に経営計画を完成させ、その後に事業計画を作成するのが一般的です。
事業戦略の策定方法3STEP
ここからは事業戦略の具体的な策定方法を見ていきましょう。
STEP1:競合や敵を知る
事業戦略は、変化する市場に企業が対応し、成長していくための道のりを示すものです。そのため、競合分析が欠かせません。
敵を知ることで「競合とどう差別化を図るのか」「自社にしかできないことは何か」を洗い出しやすくなり、より価値のある商品やサービスを提供できるようになります。
STEP2:事業の目標と方向性を明確にする
事業の方向性や、ありたい姿を明確にします。まずは、後ほど紹介する「SWOT分析」で自社の状況を客観的に整理をしてみるのが良いでしょう。
STEP3:実行と効果測定をする
計画と進むべき方向性がハッキリしたら、戦略を実行していきます。実行内容が事業戦略に則っているか、定期的に確認するようにしましょう。
実行後は、結果の数値をもとに分析を行います。改善点を話し合い、次に活かしていきます。
実行と効果測定を繰り返し、改善につなげる取り組みについては以下の記事をご覧ください。
参考:PDCAにおける検証・評価の必要性/営業効果を高めるチェックポイントは?
事業戦略を進めるためのポイント
ここでは、事業戦略を進めるために押さえておきたいポイントを3つ紹介します。
自社の強みを知る
「自社にしか生み出せない商品やサービス」と「強み」が重なったところが、もっとも利益を出せるポイントです。このポイントを押さえた事業戦略は、スムーズに成果につなげることができます。
事業戦略は、自社の強みを活かせるものになっているかを確認しながら進めていきましょう。
リソースや人材を把握する
まずは、自社のリソースを的確に把握し、実行する人材を確保しましょう。
どんなに優れた戦略を策定しても、実行できなければ意味がありません。現場のスタッフがスムーズに戦略を実行できるよう、具体的な行動に結びつけた指示をすることも忘れてはいけません。
経営戦略とのバランスをとる
事業戦略は、経営戦略を実現させるためのものです。事業戦略を進めていくにつれて、会社の理念やビジョンと乖離していないか注意深く見ていきましょう。
また、経営層と現場の間に摩擦が生じてはうまくいきません。経営戦略とのバランスが大切です。
【図解有り】事業戦略に役立つフレームワーク10選
事業戦略を立案する上で、フレームワークの活用は欠かせません。状況に応じて適切なフレームワークを選び、戦略立案に役立てていきましょう。
3C分析
対象となる方:現場責任者、中間管理職
対象となる職種:販売戦略立案、事業戦略立案など営業・マーケティング系職種
3C分析は、「実際に市場で競争優位を勝ち取るため」の分析をするフレームワークです。
3Cは競合(=Competitor)、顧客(=Customer)、自社(=Company)の関連から分析する手法です。
一般的には、以下のようになります。
- 市場の分析(市場全般のニーズ分析)
- 競合企業の分析(競合の強み・価値提供ポイントはどこか)
- 自社分析(自社の市場訴求点+競合が持たない強みはどこか)
SWOT分析
対象となる方:経営企画部門、本部長、役員クラス
対象となる職種:企業経営に直接かかわる業務担当職種
- 強み=Strength
- 弱み=Weakness
- 機会=Opportunity
- 脅威=Threat
の4つの情報から自社の経営戦略・事業戦略を分析します。
一般的な進め方は以下のようになります。
- SWOTの各項目を抽出
※外部要因を先に抽出することが重要 - 図表のようにクロスさせたフォーマットに対策を書き込む
経営に直接関わる部門は、外的要因と内部要因の分析を行い、事業戦略・経営戦略に的確な提案をしていく必要があります。
とくに、外部環境要因は自社では解決できない問題が多く、ボトルネックになりやすいため、先に分析を行います。
その後、内部環境要因を分析し、外部環境による影響を重視しながら分析検討することが大切です。
SWOT分析については、以下の記事でも詳しく説明しています。
PEST分析
対象となる方:経営企画部門、本部長、役員クラス
対象となる職種:企業経営に直接かかわる業務担当職種
- 政治=Politics
- 経済=Economy
- 社会=Society
- 技術の進化=Technology
上記の4つの情報から自社の経営戦略・事業戦略を分析します。分析する情報は、いずれも「自社で解決できない問題」である点が特徴です。つまり、外部環境要因にフォーカスした分析です。
基本的には、現在と未来(何年後を予測するのか)を比較し、将来を予測する手法で、例示すると以下のようになります。
- 政治:税率変更や外交問題の影響
- 経済:不景気、デフレ等の影響
- 社会:人口動態、世論調査、教育水準、環境問題などの移り変わり
- 技術:IoTによる技術革新やDXへの投資が活発になる等
自社でコントロールできない将来についての分析であるため、予測自体がピントを外れていると分析が無駄になってしまいます。
必要に応じて、経済や社会状況分析の専門家の力を借りながら分析を行いましょう。
VRIO分析
対象となる方:役員クラス
対象となる職種:企業経営に直接かかわる業務担当職種
- 価値=Value
- 希少性=Rarity
- 模倣困難性=Inimitability
- 組織=Organization
これまでの分析と異なる点は、V・R・I・Oの4つすべてが揃う=戦略として「GO」を出せる、という点です。
4点それぞれについて事業戦略上、経営資源の優位性があれば実行できます。
- Value:PEST等の外的環境に対応できるかどうか
- Rarity:(経営資源的に)希少性を持つ条件があり、競合が参入しにくい
- Inimitability:他社が模倣することが困難である
- Organization:自社の組織上、実行に問題ない状況を確保できる
企業としての優位性をより長期に保ち、経営基盤を安定させる手法となりますので、経営者の視点として常に意識すべきフレームワークです。
TOWSマトリクス
対象となる方:役員クラス
対象となる職種:企業経営に直接かかわる業務担当職種
TOWSマトリクスは、SWOT分析を元に具体的な事業戦略を策定するためのフレームワークです。
SWOTに関連したフレームワークツールなので「クロスSWOT分析」と呼ばれることもあります。
SWOTの時に提示した図と並びが変わっていますが、大きな問題ではありません。
ポイントは、
- S×Oで行う強みを生かしてせめて出る戦略
- S×Tで行う脅威への対応
- W×Oで弱点を補って攻勢に転じる策を練る
- W×Tで致命的な自社の弱点を防御し、ダメージを防ぐ
のそれぞれについて具体的な戦略を生みだすことです。
PPM
対象となる方:経営者、役員や事業企画部門
対象となる職種:事業戦略立案部門
現存の自社製品を4つの市場ポートフォリオに配置し、今後の戦略を分析する手法です。軸となるのは、「市場占有率の大小」と「市場成長率の大小」です。
「金のなる木」は投資を最小限に絞り、生まれた利益を他の事業に振り分けます。「花形」の事業は投資を続けて金のなる木に育てていきます。
「問題児」は投資をしつつ成長が止まれば撤退を視野に入れます。「負け犬」は早期撤退を検討します。
このフレームワークにはめ込むことで、自社の事業のどこに資源を集約させていくのか等の判断に活かすことができます。
AIDMA
対象となる方:販促部門、営業管理職など
対象となる職種:販売マーケティング、営業 ※主にBtoC商材
消費者の視点や状況から、購買行動を促す対応をしていく手法です。
上図のように、 認知段階、感情段階、行動段階に消費者行動を定義し、消費者が商材を購入するまでの行動フローを示しています。
認知から行動までタイムリーに接点を持ち、機会損失を防ぐことを目的としたフレームワークです。
4P分析
対象となる方:販売戦略を作成するマーケティング担当や企画担当
対象となる職種:マーケティング部門、営業部門
以下の4点に注目し、企業側の視点で販売戦略策定の際の課題を洗い出すフレームワークです。
- 製品(Product):商品名、品質、パッケージ、デザイン等
- 価格(Price):定価、小売価格、販売条件、支払い条件等
- 流通(Place):流通地域や納期、在庫、リードタイム等
- 販促(Promotion):広告宣伝、広報やPR等
※BtoC製品の場合Packageも加わり5Pで分析する場合あり
4C分析
以下の4点に注目し、顧客・消費者側の視点で該当製品の課題を洗い出します。
- 顧客が得る価値(Customer Value):顧客としてお得感を感じられるか
- 顧客が支払うコスト(Customer Cost):商品の購入価格だけでなく、ネット販売ならば配送費用や手数料も含む
- 顧客の利便性(Convenience):実店舗であれば販売時間、ネットであれば顧客登録の手間を削減する方法、納品までの時間など
- コミュニケーション(Communication):企業からのPRポイントが顧客にとって「わかりやすく顧客のニーズを突いた宣伝」かどうか
4Pと4Cは、セットで用いられます。
経緯として、4Pが先に重要なフレームワークツールとして世の中に提唱され、活用されていく中で、「企業側の視点である4Pの設定前に、顧客側の視点で分析検討することの重要性」が提唱されたためです。
マーケティングは、企業側の視点だけでは上手くいきません。購入者側の視点に立って分析をすることで、これから企業は何をしなければいけないのかが明確になってくるのです。
ファイブフォース分析
対象となる方:販促部門、営業管理職など
対象となる職種:企業経営に直接かかわる業務担当職種、販売戦略立案など
ファイブフォース(5F)分析は、業界の構造を分析し、自社の戦略に役立てるフレームワークです。
業界に働く5つの脅威を表しています。
- 新規参入者の脅威
- 代替品の脅威
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
- 代替品の脅威
5つの観点から業界が魅力的かどうか、どうすれば収益構造を構築できるかを判断していく際に役立ちます。どれくらいの投資が適切か、撤退を視野に入れた方がいいのかを判断する時にも使用されます。
なお、営業部門の組織力を向上させる概念としては、近年「セールスイネーブルメント」が注目を集めています。以下の記事で詳細を解説しているため、ぜひ参考にしてください。
参考:セールスイネーブルメントが注目される背景や効果、事例を解説
事業戦略ではフレームワークを上手に活用しよう
事業戦略の立案方法と代表的なフレームワークを紹介してきました。
フレームワークを上手に活用すれば、自社の状況を客観的に漏れなくはめ込むことができ、効率よく成果を生みだすことができます。
ぜひ、日々の事業戦略策定で積極的にフレームワークを活用し、分析提案力を高めていきましょう。