ソリューション営業に必要な「ヒアリング」スキル徹底解説
営業スタイルが「モノ売り」から「ソリューション営業」へと変わり、「セールストーク」よりも「ヒアリング力」が重要視されています。
商品(モノ)を主張(セールストーク)するよりも、お客様の問題を聞きだし(ヒアリング)、解決策(ソリューション)を提案する時代となっているのです。
今回は、このソリューション営業に欠かせないテクニック、「ヒアリング」スキルを徹底解説します。
営業マンの方はもちろん、営業管理者の方も現場の指導に役立てていただけますと幸いです。
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1.「根性」では売れない!
営業現場のトレーニングは「セールストーク」と「根性」に徹している時代がありました。
自社製品の特長・メリットを覚え込み、お客様に伝える。他社製品との比較には、Q&Aに従って答える。あるいは見積もりで差別化する。
これで売れた時代があり、売上成績と営業担当者の数が、ほとんど一致していました。
営業教育は自社製品の特長を覚えること、そして「根性」の育成。
綿密な販売明細がデータ化されていないため、リーダーは精神論だけで現場のモチベーションを高めていたのです。
根性育成の典型例として「ローラー作戦」があります。
住所の一区画を個人で担当し、戸別にセールスをしかけていく手法。
これで新人が育ち、売れた時代がありましたが、現在、この手法はもはや通用しなくなっています。
2.ソリューション営業の時代だからこそ「ヒアリング」
営業の役割は「販売」ですが、現在、必要な製品・サービスなどほとんどがすでに導入されている状態です。
とはいえ、多くの企業では、現状に不満を感じています。
顧客が求めているものは、画期的な製品の出現ではなく、現在ある「不満・課題を解消する解決策」なのです。
従来は「御用聞き」「押し売り」で通用していたかもしれませんが、すでに導入されている製品・サービスなどをリプレースさせるとなると、同じ手法では通用しません。
営業の本質は、売ることではなく知ること。
今何が起きているか、なにを提供すれば顧客の不満・課題を解消できるかを知ることが重要となっているのです。
こうした中、精神論から脱却し、顧客の不満・課題の解消をサポートする営業スタイルとして注目されているのが「ソリューション営業(テキストリンク)」です。
ソリューション営業で最重要と言っても過言ではないのが「ヒアリング」スキルです。
3.相手が話したくなるヒアリングを心掛ける
相手が話したくなるヒアリングテクニックの一つ目は「得意な分野の話を聞く」。
答えづらい質問をしては、相手に恥をかかせるだけです。
現場の人間に「御社の企業戦略を教えてください」「他社とは異なるビジネススタイルはありますか」などといきなり聞いては困惑してしまいます。
その担当者のエリア内のことからはじめます。
人事担当者には人事から、営業担当には営業スタイルから、仕入担当者に仕入の難しさから聞くべきです。
二つ目のテクニックは、「うなずく、相づちを打つ、リピートする」。
これは一生懸命聞いていることを示すための重要なリアクションです。
聞いてくれるとわかると、相手も熱が入り、自分の考えが整理され、さらには自分で解決策も導き出していくものです。
そして三つ目のテクニックが、「相手を好きになる、関心を持つ」。
これがあると、相手は好意的に話し出します。
営業担当は相性が重要ともいわれますが、それ以上に、顧客や担当者を好きになり、関心を持つことです。
これは言葉を超えて伝わるはずです。
4.ヒアリング内容と具体的なトーク例
営業は「精神論」ではありません。
ここからは実践できるテクニックとトーク例を紹介していきます。
トーク例は、すぐに活用できるでしょう。
(1)お客様の基本属性の確認
まずは、年商、社員数、組織、営業マン数、事業エリア、拠点などを事前に調査しておきましょう。
このようなレベルを質問してはいけません。
これをベースに、営業スタイル、営業生産性指数、市場規模、成長性などを質問します。
さらに、次の質問も必須で聞きましょう。
ヒアリングトーク例
「よく競合する他社はどこですか?」
「特に意識している競合他社といえばどこですか?」
(2)深掘り質問
顧客のニーズを理解するために、すベての課題を洗い出さなければなりません。
ここで必要となるのが、1つのテーマについて深掘りをしてゆく「深掘り質問」です。
そこで効果的なテクニックとしてお薦めしたいのが4W・2Hの活用です。
主語(WHO 誰が)と目的語(WHOM 誰に)を明確にしながら聞き出します。
矢継ぎ早に聞くと尋問口調になってしまうので、ほかの会話も織り交ぜながら聞くようにします。
ニーズを聞き出すには「WHY」をつけることです。
慣れないうちは、「それはどうしてですか?」「それはなぜですか?」を丸暗記して使ってみてください。
ヒアリングトーク例
WHO(誰が?誰に?)+WHY(なぜ、その人なのか)
WHAT(何が?何を?)+WHY(なぜそれなのか)
WHEN(いつ?) +WHY(なぜ、その日なのか)
WHERE(どこで?どこに?) +WHY(なぜそこなのか)
HOW TO(どうやって?) +WHY(なぜそのやり方なのか)
HOW MUCH(いくらで?) +WHY(なぜその金額なのか)
(3)展開質問
他の話題やテーマに移りたい時に使います。
一通りニーズを聞きだし、次のテーマに移りたいときや、話題を変えたいときに必要となります。
ヒアリングトーク例
「ほかにはございませんか?」「これでよろしいですか?」と確認をとり、次の質問に移ります。
「OOの視点から見るとどうですか?」と別のテーマについての感想を聞きます。
「OOさんのところは人材育成でそれほど困ってないですよね」と、「否定疑問」形で質問を投げかけ、別の視点からニーズを聞き出します。
YES・NOで終わらせることなく、ヒアリングを継続できます。
(4)問題・ニーズの確認
お客様の問題・ニーズ・ゴール・背景を理解するために、まずは顕在的な問題やニーズを確認します。
さらに、顧客が不満は持っているものの、それが具体化されておらず、漠然としたままの場合が多くありますから、潜在的ニーズも質問形式で1つずつ明確にしていきます。
顕在的ニーズのヒアリングトーク例
「現状の○○についてはどのようにお考えですか」
「○○について具体的にはどのようにお困りなのですか」
「どうして○○が問題だとわかったのですか」
潜在的ニーズのヒアリングトーク例
「そもそも○○の狙いは何ですか」
「なぜ○○したいのですか」
「○○することによってどのような問題を解決されたいのですか」
(5)背景の確認
問題・ニーズの次は、背景の確認です。
なぜ顧客が課題を抱えているかを確認しましょう。
ここに大きな解決のヒントが隠されています。
背景には企業・組織のミッション、価値観、市場動向、業界動向、経営上の基本戦略、内外からの圧力、人口の変化や技術革新などがあります。
「少子化の影響で売上が落ちた」「規制緩和で同業他社が増えた」「景気が悪くてモノが売れない」など、様々な要因があるでしょう。
ヒアリングトーク例
「なぜ○○をすることが必要になったのですか」
「○○が重要だとお考えになったのはなぜでしょう」
「どのような経緯でそのような結論に達したのですか」
(6)ゴールの確認
いよいよゴールの確認です。
これはお互いに目指すべき共通のゴールでもあります。
ヒアリングトーク例
「○○の最終的なゴール(目標・目的・ありたい姿)は何ですか?」
「○○することで最終的に期待していることは何ですか?」
「どのような状態になれば成功したと言えますか?」
「成功の基準は何ですか?」
「何をもって、問題が解決されたと考えられますか?」
5.プレゼンテーション(提案)に進むためのヒアリング
ソリューション営業とはいえ、こちらも商売であり、売るための商材を持っています。
プレゼンテーションやクロージングに進むための情報収集も欠かせません。
(1)予算の確認
まずは、お客様がゴールを達成するために投資してもいいと思っている予算と、こちらが考えている金額とが一致しているか、確認します。
誰しもが聞きたい内容ですが、唐突に聞くことは避けましょう。
価格を提示するのは、お客様が商品やサービスの価値を理解してから。
さらにいうと、こちらがお客様のニーズを理解してからとなります。
価格がハードルとなって商談が終わってしまうリスクがあるのです。
ヒアリングトーク例
「もうこれ以上かかるんだったら、検討外だと思ってしまうような価格というと、例えばどれくらいの価格ですか?」
【値段が調整できる場合】「お客様の状況によってそれぞれ異なりますが、以前、同様の内容のお手伝いをした時には、だいたい○○から××の予想範囲になりました。いかがですか」
(2)決定者やプロセスの確認
担当者の背後に最終決定をする権限を持っている人がいるならば、今後の営業はその人も視野に入れて行わなければならないでしょう。
「あなたに決定権があるんですか?」などとストレートに聞くのはNG。
決裁者・キーマンの確認は慎重に、そして丁寧に進める必要があります。
まずは最終決定に至るまでのプロセスを確認してみます。
たいてい、企業では最終決定に至るまでには、「候補選定→絞り込み→選考委員会→トップの最終決定」という具合にいくつかのステップがあります。
ヒアリングトーク例
「今、候補選定の段階ですか」
「今は絞り込みに入った段階なんですね」
「他にこの人の意見を尊重しておきたいと思う方はいらっしゃいませんか」
「すると、選考委員である○○さんのご意見が非常に重要ということですね」
(3)競合他社と提案内容の確認
売り込みに来ているのはあなただけとは限りません。
他社が誰に何を提案しているのか、できるだけ聞き出しておきましょう。
教えてくれるとは限りませんが、さりげなく聞き出します。
ヒアリングトーク例
「(差し支えなければ) 他にどちらにご相談なさっていらっしゃるのですか?」
「他にどちらの商品を検討されているのですか?」
「比較するポイントはどのような点になりますか?」
「もしよろしければ、比較表を作成するお手伝いをさせていただいたほうがよろしいですか」
6.プレゼンテーション(提案)に進める条件
十分聞き出したら、プレゼンテーションに入るための目安として、次の2点を確認しましょう。
(1)お客様のニーズがすべて吐き出されたと確認できた時
いろいろな角度からヒアリングしても同じことばかり話している時は、それ以上話すことがないのでニーズを出し切ったと考えられます。
(2)ニーズにピタリと合う提案内容の方向性が想定できた時
お客様から聞き出したニーズと、そのニーズにピタリと合う提案内容(解決策)が想定でき、その手段の1つとして自社の商品・サービスの提供価値がピタリと一致している場合は、プレゼンテーションに進んでも大丈夫でしょう。
ここまで進めば、顧客の望むプレゼンテーションができるはず。
狙いを外すことなく自社製品・サービスの優位性を強調しましょう。
7.練習を繰り返し、ヒアリングスキルを身につける
「ソリューション営業」は顧客に話してもらい、顧客自らが解決策を導き出し、それに自社商品を当てはめて商売に結びつけるという、理にかなった手法です。
ただ、相手にスムーズに話してもらうためには、ヒアリングスキルを身につける必要があります。
これには練習が欠かせません。
社内でロールプレイングを行い感覚を掴み、次に実際のお客様を相手にそのスキルに磨きをかけていきましょう。
また、営業マネージャーなどの管理者がメンバーのヒアリング力を定期的に確認し、適切な指導を行うことも重要です。
相手が抱えている漠然とした問題を整理し、必要な解決策を引き出す。
これは営業に限らず人生のあらゆるシーンで役立つ手法。
ぜひ、身につけていただければと思います。