顧客分析とは?10のフレームワークや分析に役立つツールを解説
BtoB営業では、それぞれの顧客と強い信頼関係を築くことが重要です。顧客分析は、そのうえで不可欠のプロセスといえるでしょう。この記事では、顧客分析の目的やフレームワークを解説し、データの分析に役立つツールもあわせて紹介します。
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顧客分析とは?
顧客分析とは、顧客の属性や購買行動を分析することです。顧客を理解し、適切なアプローチや戦略立案を実現することが目的で、既存顧客が主な分析対象となります。
リード獲得や新規顧客の開拓、休眠顧客の掘り起こしを目的とした顧客分析を行うこともあります。
顧客分析の主な分析項
顧客分析に使われる主な項目は、次のとおりです。
- 顧客とやり取りした履歴
- 過去の購買履歴や取引履歴
- 顧客の課題やニーズ
- これまでに実施したマーケティング施策
- 顧客満足度
- 顧客の意思決定プロセス
- 資本金や従業員数、売上高
顧客の特徴やニーズを把握することで、それぞれの顧客に対して最適なアプローチができます。また、分析結果を商品やサービスの改善に役立てることも可能です。
顧客分析を行う目的と必要性
ここでは、顧客分析を行う目的と必要性について解説します。
ターゲットを特定する
営業の現場では、パレートの法則を用いて、「売上の80%は20%の顧客が生み出している」とされています。より少ないコストでより多くの売上を上げるためには、ターゲットを特定し、上位2割に入る優良顧客に向けて集中的にアプローチすることが必要です。ターゲットを絞ることで、販促費用の効率的な活用も期待できます。
顧客のニーズを理解する
企業側が考える「よい商品・サービス」と、顧客にとっての「よい商品・サービス」は異なることを認識しておきましょう。たとえば、技術面で優れた商品であっても、「使いにくい」「高い」「デザインがよくない」などの理由で売れないことはよくあります。
また、売れている商品やサービスが、顧客の要望にフィットしているとは限りません。ほかに類似の商品やサービスがないことから、仕方なく選んでいる可能性もあるでしょう。
このような場合、顧客にフィットする商品やサービスが現れると、一気にシェアを奪われる可能性があります。顧客のニーズを把握し、提供中の商品やサービスとの不一致を見つけましょう。
顧客分析に活用できる10のフレームワーク
ここでは、BtoBセールスにおすすめの顧客分析に活用できる10のフレームワークを紹介します。
1.デシル分析
デシル分析は、エクセルを使って顧客を購入額ごとにグループ分けする手法で、次の手順で実施します。
- すべての顧客を購入金額の高い順に並べ、10のグループに分ける
- グループごとに、売上への貢献度合いがどの程度かチェックする
デシル分析の特徴は、どのグループがどの程度、売上に貢献しているか把握できることです。そのため、顧客ごとの購買額に大きな差があり、購入額の大きい顧客を見つけ出したい場合に適しています。優良顧客を囲い込む手法としても有効です。
一方で、たまたま多額の購入を行った顧客が上位に来る場合があることは、デシル分析で注意したいポイントです。真の優良顧客を見つけるためには、デシル分析を定期的に行ない、常に上位となる顧客を抽出する必要があります。
2.セグメンテーション分析
セグメンテーション分析とは、顧客を属性によって細分化し、グループ分けする手法です。
マーケティングで使われる「STP分析」の最初の段階として実施され、ターゲットの選定や自社のポジショニングを決めるうえでの重要な情報を提供します。セグメンテーション分析は、顧客のニーズが多様化したことなどを背景に重視されるようになりました。
セグメンテーションの分類方法には、次の4つがあげられます。
分類方法 | 例 |
地理的変数 | 地域、気候、人口密度 |
人口動態変数 | 年齢、性別、職業、年収、家族構成 |
心理的変数 | 性格、価値観、ライフスタイル、嗜好 |
行動変数 | 購入経路、購入頻度、購入時間帯 |
セグメントを細かく分け過ぎると、かえって適切な施策を打ちにくくなるかもしれません。ターゲティングに役立つよう、分類方法を工夫するのがポイントです。
参考:セグメンテーションとは? 市場分析の具体的な方法と事例を解説
3.行動トレンド分析
行動トレンド分析は、時期によって売上が変わることに着目する分析手法です。
季節による売上の変動のほか、朝・昼・夜の変動、曜日ごとの変動、数年にわたる変動も行動トレンド分析の対象となります。商品やサービスがよく売れるタイミングで販促を打つことで、さらなる売上アップを狙えます。
一方で、コンスタントに売れる商品やサービスの場合、行動トレンド分析は適していません。
4.RFM分析
RFMは、次の3つの要素に着目して顧客を分析する手法です。
指標 | 日本語訳 | 指標が示す意味やランク付け |
Recency(R) | 直近の購入日 | 購入日が直近であるほどスコアは高い |
Frequency(F) | 購買頻度 | 購買頻度が多いほどスコアは高い |
Monetary(M) | 購買金額の合計 | 購入金額が多いほどスコアも高い |
上の要素をもとに、顧客を次の4種類に分類します。
- 優良層
- 見込み層
- 新規層
- 離反層
デシル分析では購買金額だけを指標として用いましたが、RFM分析では直近の購入日や購買頻度も見ることで、多角的な視点から顧客を分析します。購入額は少ないものの頻繁に購入する顧客も拾い上げ、適切な施策につなげることが可能です。
購買金額が多くても購買頻度が下がっている場合は、顧客が他社に流れている可能性があるため対策を行いましょう。
RFM分析の注意点として、しばらく購入がない顧客は、購入金額の大小に関わらず「離反層」に分類されてしまうことがあげられます。そのため、RFM分析だけに頼ると、「何らかの事情で一時的に購買がないロイヤルティが高い顧客」を手放すことになりかねません。
5.CTB分析
CTB分析とは、次の3つの指標をもとに、顧客をグループ化する分析手法です。
指標 | 分ける観点 |
カテゴリ | 商品やサービスの種類 |
テイスト | 色や模様、形状、サイズなど |
ブランド | 企業が展開するブランド。キャラクターも含む |
CTB分析の目的は、それぞれの顧客に合った商品やサービスを提供することです。
また、CTB分析により、それぞれの層が「よく購入する商品やサービス」、「あまり購入しない商品やサービス」を知ることも可能です。よく購入する商品やサービスは、買いやすい仕組みを整えることで、さらなる売上アップが期待できます。
あまり購入しない商品やサービスは、魅力を伝えて購入に結びつけましょう。
6.パイプライン分析
パイプライン分析とは、営業活動における一連の業務フローをパイプに見立てたものです。営業活動のプロセスを可視化して、ボトルネックを把握し、取るべき改善策を考案するために活用します。
業務フローのどこに問題があるのかが一目瞭然なため、テコ入れすべきポイントが明確になります。
参考:【図解】パイプライン管理とは?効果的な営業マネジメント方法について徹底解説
7.定性情報の分析
営業活動における定性情報とは、「数字に表しづらいが契約にいたるまでに重要な役割を果たすような情報」のことです。
定性情報を組み合わせて活用することで、営業活動の効率化が期待できます。
8. LTV分析
LTV分析は、「顧客生涯価値」を意味する「LTV」を分析に用いる手法です。1人または1社の顧客が企業にもたらす利益を表したもので、優良顧客の発見やフォローすべき顧客の抽出に役立ちます。
LTV分析は、過去の分析結果との比較が重要です。
LTVの急上昇や急降下は、よくない兆候を示す場合が一般的です。放置することなく原因を追究し、対策を行いましょう。
参考:LTV(ライフタイムバリュー)とは?言葉の意味や計算方法を紹介
その他の分析方法
上記で上げた分析方法以外に、CPM分析、ABC分析という方法があります。初めて顧客分析をする場合は上記の方法で対応可能なため、この2つは名前のみの紹介とします。
顧客分析における注意点
顧客分析を行う際は、次のようなポイントに注意しましょう。
分析対象とする「顧客」を明確に定義する
「顧客」という用語は、定義のしかたによって、いくらでも範囲を変えることが可能です。顧客の範囲が異なれば分析結果も変わってしまうため、次のような属性をもとに対象とする顧客を明確に定義する必要があります。
- すべての顧客を対象とするか、優良顧客に絞るか
- 企業の所在地
- 企業規模
明確な顧客の定義は、ターゲットに刺さる商材の提供につながります。顧客分析の目的を踏まえて、「顧客」の範囲を決めましょう。
購買プロセスも考慮する
顧客分析を行う際は、属性情報だけでなく購買プロセスも考慮しましょう。
特にBtoBでは、窓口となっている担当者と意思決定者が異なるケースが多く、意思決定者が複数存在するケースもよくあります。購買プロセスを把握し、各ステップで適切なアプローチを行うことが成約率に大きく影響します。
定量データと定性データをどちらも見る
顧客分析で扱うデータには、「顧客1人あたりの売上金額」などの定量データと、「顧客がこの商品を気に入った理由」などの定性データがあります。
定性データは数値化が難しいという特徴がありますが、顧客のニーズを理解するうえで欠かせません。両方のデータを組み合わせて分析することで、より詳細な顧客分析が可能になります。
顧客分析に役立つCRM/SFA
顧客分析にCRM(顧客関係管理ツール)やSFA(営業支援ツール)を取り入れると、定量データと定性データを組み合わせて活用できるようになります。
ここでは、CRM/SFAを組み合わせた便利な機能が充実した「eセールスマネージャーRemix Cloud」を活用した顧客分析の方法を紹介します。
eセールスマネージャーを活用した顧客分析の方法
eセールスマネージャーで、定量的な数値の把握と、顧客・案件情報などの定性情報を一元管理することで、営業活動を効率化します。
- 自動集計されたレポートからボトルネックにフォーカス
- 詳細情報へワンクリックでドリルダウン
- 活動履歴やキーパーソン、名刺交換履歴などの詳細情報を確認
- 迅速かつ的確なマネジメントが実現
その他、eセールスマネージャーに蓄積された顧客データを使った分析例
eセールスマネージャーでは、次のような軸で顧客データを詳細に分析できます。
業界別顧客ニーズ分析
業界別のニーズ分析は、セミナーコンテンツや取引先に持参する事例集の内容などを検討する際に役立ちます。
リード別確度分析
どのマーケティング施策で獲得したリードが最も受注しているかも、蓄積した顧客データからグラフ化することができます。
たとえば、この図の場合、最も案件化〜受注している施策は「自社セミナー・イベント」となり、この施策に注力することが受注を増やすカギと判断できます。
進捗別失注案件数分析
eセールスマネージャーは、プロセスマネジメントをコンセプトに設計されているため、営業プロセスごとに、さまざまな切り口でアウトプットが可能です。
たとえば、この図は、どの営業プロセス時に失注しているかをグラフ化したものです。プレゼンテーションと提案時に多く失注しているため、ここに改善点があると判断できます。
失注を防ぐ顧客満足度の上げ方は、次の記事を参考にしてください。
参考:CS(顧客満足度)とは?向上させる4つの具体策と成功事例を紹介
他社の成功事例も参考にし、自社の状況と照らし合わせて顧客分析にお役立てください。
営業・マーケティング戦略を最適化しよう
顧客分析をもとにした戦略で、売上向上や業務効率アップを達成した事例は多く存在します。
分析は複雑なプロセスですが、CRM/SFAツールを使うことで効率化が可能です。まずは、顧客分析が可能な環境を作り出すところから始めましょう。
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