BPRは企業改革の手法!特徴や目的、主な手法や進め方を教えます
BPRは企業経営や事業運営を改善する方法として注目され、多くの法人で活用されています。「どのような方法か」「BPRは難しいのか」「業務改善との違いはなにか」など、BPRについて詳しく知りたいと思う経営者や管理職も多いのではないでしょうか?
この記事ではBPRについて、さまざまな観点から解説します。目的や主な手法、メリット・デメリットや進め方などを知ることができるでしょう。
自社の経営や事業を改善するきっかけとしてください。
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BPRとは何か? 企業活動で注目される理由
BPRは「ビジネスプロセス・リエンジニアリング」の略で、既存の組織や制度、業務プロセスを抜本的に見直す業務改革の手法です。
BPRによって職務内容や業務フロー、管理体制や情報システムも、大きく変わる場合が多いでしょう。全社単位で実施されるため、職種・部署を越えた改革となることも特徴の一つです。
法人の間でBPRが注目される理由とは?
BPRが注目される理由には、過度な分業への反省と全体最適の重要性、社会環境の変化にともなうビジネスプロセス変更の必要性などが挙げられます。
技術や社会が高度化した結果、企業も組織ごとに分業し、成果を挙げることを目指した時代がありました。この弊害として、部署内での最適化は行うものの企業全体を意識した最適化は行われにくい点が挙げられます。
結果として、複数の部署で同じような業務が行われる、部署をまたぐごとにチェックが何度も繰り返されるなど、非効率な事態が発生しました。
また企業は、社会の激変に対応したビジネスプロセスの変更も迫られています。少子高齢化や働き方改革は、代表的な要因といえるでしょう。改革の実現には、全社的な取り組みが必要です。
BPRを行うことで、企業全体を通して業務を最適化する「全体最適」を実現できます。重複業務の廃止などによる合理化はもちろん、部署間の連携などによる業績向上も期待できる手法です。
BPRを推進する3つの目的
企業がBPRを推進する背景には、3つの目的があります。いずれも、より優れた企業にするために欠かせません。それぞれの目的を確認しましょう。
業務の効率化や生産性の向上
業務の効率化や生産性の向上は、BPRを推進する目的の一つです。部署単位でも行える「作業手順の効率化」「マニュアルによる作業の標準化」とは、アプローチが異なることに注意してください。
BPRでは、全社レベルで業務の再配分を行います。以下のような改革を実現できるでしょう。
- 事務職や営業職、情報システム担当などを特定の部門にまとめる
- 部品Aは部門B、部品Cは部門Dなど、部品の製造を単一の部門にまとめる
これにより重複業務の整理や「ムリ・ムダ・ムラ」の排除、業務の効率化を実現できます。企業全体での生産性向上も実現できるでしょう。
業績改善や利益の確保
BPRには、業績や財務の改善という目的もあります。
たとえば、担当する業務の多くが赤字の部署では、不採算の業務を廃止すると組織が立ち行かなくなります。このため、部署単体での業務改革では、業務廃止という決断はしにくいでしょう。
BPRは、全社的な改革を行う手法の一つとして活用できます。赤字部門や赤字の業務をばっさり切り捨てる決断もできるでしょう。
重複業務の統合などによる改革でコストを削減できれば、企業の収支改善や黒字転換への後押しとなります。
競争力の強化
BPRは、自社の競争力を強化する目的でも使われます。重複業務の排除などによるコスト削減で損益分岐点を下げることも目的の一つですが、それだけではありません。
BPRの実施により社会や市場に合わせた改革を実現でき、顧客にフィットしたサービスも提供できるでしょう。部門間の連携や、経営判断のスピードアップも実現できます。
厳しい市場で勝ち抜ける企業体質づくりも、目的の一つに挙げられます。
BPRに使われる手法と、BPR以外の手法との違いを紹介
企業で使われる手法のなかには、BPRを後押しするものもあれば、事業改革や改善に関する手法であるもののBPRとは異なるものもあります。
BPRを実現する主な手法と、企業でよく選ばれるもののBPRとは異なる手法を確認していきましょう。
BPRを実現する主な手法
BPRの実現には、さまざまな手法が使われます。主な手法を、以下の表にまとめました。
BPRの実現に使われる手法 | 手法の概要 |
ERPの導入 | 経営や事業運営に関する情報を一元的に管理する。適切で迅速な意思決定や生産性の向上、経営資源の効率化につなげる |
シックスシグマ | 業務で発生するばらつきを分析して適切な対応を行い、高い品質を目指す |
シェアードサービス | 複数の拠点、複数のグループ企業で行っている業務をひとつの拠点に集約する。間接業務の改革で選ばれやすい |
BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング) | 業務の一部を、周辺業務も含めて他の業者に委託する。定常的に発生する業務だがコア業務でない場合に使われやすい |
SCM(サプライチェーンマネジメント) | 生産から消費までの一連の流れにおいて、部門間や企業間で情報を共有・管理する |
BPMツールの活用 | 新しいビジネスプロセスを効率的に作成する |
各手法の特徴を把握したうえで、適切な手法を選ぶとBPRの成功に近づけます。
業務改善などの企業でよく選ばれる手法との違い
事業運営をよりよくする方法には、業務改善やDXもよく選ばれます。BPRとの違いは、どこにあるのでしょうか?
主な違いを、以下の表にまとめました。
手法 | BPR | 業務改善 | DX |
目標 | 業務プロセスの再構築による業績改善や全体最適の実現 | 業務上の問題点を改善することによる業績アップ | デジタル技術を活用してビジネスモデルや企業文化を変革する |
実施される規模 | 全社規模 | 全社・部門単位どちらもあり得る | 全社・部門単位どちらもあり得る |
組織や仕事の流れ | ゼロベースで見直す | 基本的には変えない | 変える可能性が高い |
ビジネスモデルの変更 | 前提ではない(変更する場合はある) | 基本的には変えない | 変更する |
業務への影響 | 大きい | 業務改善の内容によって変わる(小規模に抑えることも可能) | 大きい |
期待できる効果 | 大きい | 業務改善の内容による | 大きい |
必要な期間 | 長い | 小規模の改善は、短期間で行える場合がある | ある程度の期間は必要 |
業務改善は、今の組織や業務を前提としてよりよく仕事を進める方法であることに対し、BPRは組織や仕事の進め方をゼロベースで見直し全社での最適化を目指す手法です。
また、DXはビジネスモデルの変革が前提ですが、BPRは業務プロセスの変革と最適化が前提という違いがあります。
業務改善やDXの詳しい内容は、以下の記事で解説していますのでぜひご参照ください。
参考:営業DXとは?デジタル化との違いや導入方法まで解説【事例も紹介】
BPRを推進するメリット・デメリット
ほかの改革や改善手法と同様に、BPRにもメリットとデメリットがあります。それぞれについて確認し、BPRの推進と円滑な実行にお役立てください。
BPRの推進で得られるメリット
BPRの推進により、以下のメリットが得られます。
- 業務を可視化でき、組織を越えた合理化や業務の効率化・最適化を行える
- コア業務とノンコア業務を分離し、コア業務に重点を置いた事業運営を行える
- 迅速な意思決定が可能となる
- 生産性の向上や利益の増加、顧客満足度の向上が期待できる
- 業務の属人化やタコツボ化を解消できる
すべての業務が可視化されるため、全社を巻き込んだ改革を行えます。ゼロベースでの改革を実現できることは大きなメリットです。
BPRの推進で発生しうるデメリット
さまざまなメリットが期待できるBPRも、よいことばかりではありません。以下のデメリットがあることにも注意が必要です。
- 短期間での成果は挙げにくい
- 多少なりとも現場の混乱が発生する
- 現状の職務を失い、配置転換を迫られる従業員が発生する可能性がある
- システムを導入する場合は、初期費用やランニングコストがかかる
BPRで成果を得るためには、ある程度の期間を要します。まとまった費用を投下する必要性も出てくることでしょう。
また、改革には痛みがつきものです。職務や仕事内容、ルールが変わることへの対応も迫られるでしょう。
BPRを業績アップにつなげる進め方
BPRを自社の業績アップにつなげるためには、以下の方法で進めるとよいでしょう。
- 課題や問題点、改善すべき点を、幅広くヒアリングする
- BPRの対象とする業務範囲を決め、目的や目標を定める
- 対象業務の内容や業務プロセス、組織体制などを分析し、改善方法を検討する
- 新しいビジネスプロセスを設計する(業務プロセスやルール、組織体制など)
- BPRの実行計画を作成する
- BPRを実施し、業務をモニタリングする
- BPRの実施結果を評価する。問題があれば再設計を行う
BPRを実施する3つのコツ
BPRを円滑に実施し、成功につなげるためには、ぜひ押さえておきたい3つのコツがあります。ポイントを確認して実行し、企業改革と業績アップを実現させましょう。
ゼロベースで考え、激変を恐れず大胆に改革を行う
BPRは、部門の垣根を越えた業務改革を実現する手法です。多くのケースで、劇的な変化が生じるでしょう。
改革を成功させるためには、激変を恐れず大胆に行うことが必要です。既存のルールや慣習にとらわれずゼロベースで考え、自社の業務をあるべき姿に変えましょう。
トップダウンとボトムアップを組み合わせる
全社的な改革には、経営トップのリーダーシップが欠かせません。しかし、現場の声を無視して一方的に改革を進めても、現場の協力を得られず、うまくいかないでしょう。
BPRの成功には、トップダウンとボトムアップの組み合わせが有効です。現場の声を活かし、現場の自発的な取り組みを活かせる手法を考えましょう。
IT技術やサービスを積極的に活用する
人手不足が恒常化している現代、企業が確保できる人手には限りがあります。一方で、BPRと関わりのあるITサービスは、ERPなどいくつかあります。
IT技術やサービスを積極的に活用して、機械化できるところは機械化することが有効です。従業員は人間のスキルを活かせる業務に集中配置することで、限られた経営資源を最大化できます。
BPRによる企業改革でさらなる企業の成長を目指せる
業務改善では改善が難しい、成長に限界があると感じる場合でも、BPRの実行によりさらなる成長を目指すことが可能です。
大きな改革となるため、少なからず痛みをともなうことは否めません。しかし、市場や顧客にマッチした体制や事業内容に作り変えられることは魅力です。
BPRは、よりよい企業経営と事業運営に有効な方法です。実行する際には綿密な計画を立て、覚悟を持って取り組みましょう。