コロナ禍での顧客行動の変化に対して打つべき戦略は?
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言から8か月が経過するも、未だに見えない収束。
第2波、第3波が押し寄せる中で、これ以上もう企業活動を停滞させられないという、ひっ迫した状況が各社に迫っています。
ここではコロナ禍における顧客行動を考え、それに対するマーケティング戦略立案のヒントとなる事例を考えます。
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コロナ前は戻って来ない~顧客行動の変化は一時的なものではない
この1年間で人類の生活様式には大きな変化が起こり、コロナ前の時代が遠い昔のようにすら感じられます。
そして、この変化は元通りになるものではなく、新たな生活様式(ニューノーマル)として受け入れなければならない、と言われています。
アフターコロナで消費者向け製品に関する顧客行動にはどのような変化が起こったのか、例を紹介していきます。
外出自粛による服飾品や化粧品の売上の落ち込み
外出自粛になれば、「他人に自分をよりよく見せる」機会が減少します。
結果として服飾品や化粧品の売上が急速に減少します。
下図は、スキンケア化粧品とメイクアップ化粧品のコロナ後の購入行動の増減を表しています。
引用:化粧品業界新型コロナの影響で支援型消費が拡大/アイスタイル調査
https://www.syogyo.jp/news/2020/09/post_028732
この表から言えることは、
- 「いずれ再開する外出」のためにお肌のケアは止められないので、スキンケア商品はあまり売り上げに落ち込みがない
- 「いつになるかわからない外出」のために、メイクアップ製品をいま買い足す必要はない
という心理です。
服飾品も、下着など毎日どこでも使うものは消費の落ち込みは少ないですが、お出かけ着などはかなりの売り上げ減少が確認されています。
「おこもり」による新たな娯楽製品需要の高まりとWEBアクセスの増加
常に自宅にいることを強制された人間は、必然的に家庭内で楽しめる娯楽を求めるようになりました。
もちろん日用品などもかなりの品不足が起こりましたが、一時的な現象ではなく、新生活様式(ニューノーマル)として一定以上の割合は定着していくであろうものを挙げました。
- ネットで動画を配信する有料サイト(NetflixやAmazonプライムなど)
- 家庭用ゲーム機
- 自宅で食べるお取り寄せ食材のWEB注文
「密を避ける」衛生用品や「対話しなければいけない人向け」ツールの需要
「密を避ける」衛生用品についての大騒ぎは、皆さん今でも鮮やかに思い出されるのではないでしょうか?
マスク不足に対する不安が、オイルショックのトイレットペーパー騒動と変わらない大騒ぎを巻き起こすとは、誰も想像していなかったでしょう。
また、コロナ禍でも「接客や会議をして契約を取る」業種ではオンライン対話ツールなどが一気に浸透し、かなりの対面会議や商談がオンラインに取って代わられているようです。
- マスクやアルコール消毒液など感染防止対策品
- オンライン面談ツール「Zoom」「Microsoft Teams」その他多数
などの需要急増が思い出されます。
顧客行動と共に企業に起こった変化とダメージ
消費者向け製品を販売する製造業に起こった変化はどうでしょう。
顧客行動が変わったことで、どのような変化や悪影響を生じたのか見ていきます。
変化1 従来の戦略案が通用しなくなった
前章で挙げたように、新生活様式は製品の売り上げを大きく左右します。
ビジネスでは各業界ごとにそれぞれマーケティング戦略がありますが、従来のマーケティング戦略では新生活様式(ニューノーマル)に対応できず、期待される成果が出にくくなっているのです。
現在は、その変化に応じた新戦略を作るべく各社が試行錯誤をしている状況です。
しかし、コロナ発生後の状況はジェットコースターのように日々変動しており、収束にむかうと思いきや第2波や第3波が押し寄せています。
せっかく立てた新戦略さえ見直しを求められる現状は、企業を大きく悩ませています。
変化2 製造現場における「対人作業の制限・禁止」にともなう問題の発生
製造現場も同様に、コロナ禍による深刻な影響が出ています。
「対人作業の制限・禁止」とはどのようなケースがあるか、想像できるでしょうか。
以下に箇条書きで列挙してみます。
- 緊急時:製造機械の故障→修理担当者とオペレーターの協力による共同修理
- 緊急時:機械部品の故障等が原因である場合→部品メーカー担当者へ接触
- 新商品発売時:製品製造ラインの構想や設計についての話し合い→機械メーカーへ接触
- 製造原料の納品・出荷:物流業者との接触
あらゆる場所で、密の状態を覚悟で「共同作業」を行うことが必要となるのが製造現場です。
対人作業を完全に避けることは今後もできないと思いますが、最先端のツールを使って緩和する対策が求められる状況です。
変化3 輸出入製品の遅延による製品完成納期の大幅遅延
原料や素材を海外に求めなけければならない業界では、輸入品の納期、つまり「原料」や「販売製品の到着遅延」が売り上げ減少に大きな影響を及ぼしました。
そして輸出によってビジネスを行っている企業は、「製品を出荷できない」「技術関連人員を海外に派遣できない」「海外の協力企業や支部から来日ができない」といった深刻な問題が発生したと言われています。
緊急事態宣言が終わった後でも、輸出入が完全に元に戻っている企業は一部のようで、まだまだ国際物流が大きなボトルネックになっているようです。
顧客行動の変化に対応した企業戦略〜新たなマーケティング戦略「ナラティブ」
新たな手法として注目れされる「ナラティブマーケティング」
ナラティブマーケティングというキーワードがコロナ禍のマーケティング業界で注目を集めています。
先の章「顧客行動の変化と共に企業に起こった変化とダメージ」で、従来のマーケティング戦略がコロナ禍でセオリーとして通用しない現象が起きていることをお伝えしました。
業界があらたに模索するマーケティング戦略の中で、このナラティブマーケティングが注目されているのです。
ナラティブマーケティングのメリットは
その手法は大まかに説明すると、購買者を主役に仕立てて展開する「物語」の中で、自社製品の存在を要所でクローズアップさせる、というものです。
メリットは、
- 購買者本人にまつわる事実をベースに物語にすることで、マーケティングをしたい企業側が「勝手に用意した」ストーリーよりも感情移入がしやすく、印象に残る
- 購買者自身が物語を進めていくため、展開や結末はその本人の意思や願望によって定まり、そこに企業の「販売したい商品」をさりげなく参加させることで大幅なイメージアップを実現できる
が挙げられます。
従来の“常識”が通用しなくなったいま、注目されている
これまでのマーケティング戦略自体がコロナ前の常識をベースに作られています。
その“常識”自体が通用しなくなった現在、さらにコロナによる状況変化が発生することも想像に難くないでしょう。
この正解がない状況におけるマーケティング戦略として、各消費者が主役として「物語(ナラティブ)」に感情移入することで生み出される、変動型物語によるマーケティング戦略が大きく注目を集めているのです。
まだまだ文献なども少ないですが、是非ご確認してみてください。
営業部門における変化~新しい営業戦略
消費者製品に限った話ではありませんが、営業部門においても大きな変化がありました。
ルート営業や対面営業が必須とされていた営業職が、対面を禁止されてしまったことです。
「顔を出してこそ営業活動!」
「重要な商談は責任者同士のトップ会談でまとめる」
といった企業の営業あるあるを、コロナが全面的に否定したのです。
この事実は日本企業の営業社員に大きな衝撃を与えたのではないでしょうか?
この流れによって、以下のような変化が起こりました。
オンライン面談やウェビナー(WEBセミナー)による集客や営業活動に
先述したオンライン面談ツール「Microsoft Teams」や「Zoom」などを使って営業マンとお客様との面談を実施し、商談を進めることが当たり前になりました。
そして、企業の新規顧客の集客では展示会場を使った大がかりなセミナーなどを行うのではなく、Microsoft TeamsやZoomなどを用いオンライン上で講師やプレゼンターが商品提案や技術トレーニングを行っています。
SFAやMAツールを使った営業手法の見直し
これまでのような、SFA(営業支援データベース)を使って大量に案内をばらまき、営業が個別に顧客コンタクトを行う事はNGとなりました。
大量の発信から数%の引き合い(リード)を得る時代は終わり、MA(マーケティングオートメーション)を使ってピンポイントに顧客の嗜好に合わせた提案を行う方法が主流になりつつあります。
そして言うまでもなく、ピンポイントで獲得した引き合いはオンライン面談やウェビナーにより深掘りされます。
また、SFAを用いた業務改善の施策の一つとして、「業務の外注化=アウトソーシング」があります。アフターコロナにおいては特にテレワークとの相性も良く、近年になって多くの企業が導入しています。以下の資料にアウトソーシングの概要から、CRM/SFAを用いたアフターフォローまで詳細を記載いたしました。業務の生産性向上の一案としてぜひご検討ください。
製造部門における変化~新しい工場運営
「俗人的」「匠の技」の技術伝承がコロナにより物理的に禁止された
日本企業の匠の技、徒弟制度などは少数派になっていると思われがちですが、実際のところは製造現場にはまだまだ存在していました。
「見て盗む」「習うより慣れろ」といったモットーを持った先輩によって維持されてきましたが、コロナ禍がこれらにさえも強制的に変革を求めています。
息遣いが聞こえるような距離で先輩の技を見る。
先輩にすぐ近くで見てもらいながら出来をチェックしてもらう。
このようなことが出来なくなったのです。
IoTへの強制的な出会い
その現状のもと、頼るべきはやはりITとIoTとなっています。
例えば、
- 匠の技術伝承にAR(拡張現実)を使う
- 匠の示した作業や知恵を動画に取って分析を行う
このような代替手法により、日本の技術はコロナによる分断をかろうじて避け、次世代につながれようとしています。
顧客行動の変化に対応したニューノーマル(新様式)を確立しよう
コロナ禍にともなう顧客行動の変化は、日本経済を担う民間企業のあらゆる部門に大きな変化を強制しました。
こうした変化がこれからも起こりえ、誰も予測できない段階であることが大きなボトルネックとなっており、まだまだ大きな難題が現れる可能性も否定できません。
しかし、間違いなく言えるのは、ITやIoTの技術革新がコロナ禍に揺れる企業を大きく救っているということ。
今後も新たな問題に対応するためには、最新の技術やITツールを使うことになるでしょう。
「新たな手法や知恵を学ぶことを止めない」事と、絶対に乗り越えてやる、という気概を持って進んでいきましょう。
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