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属人化
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営業が属人化してしまった結果とその対処「営業部長A氏の改革」

中堅企業X社の営業部長A氏は、困難な局面に頭を抱えていました。

それまで営業部門の売上を支えていた“エース中のエース”営業マンB氏が転職してしまったのです。

手詰まり感漂う中、A氏が選んだ“一手”とは?

今回は、営業の属人化(仕事・業務の属人化)がもたらすリスクと、その回避策についてストーリー仕立てでご紹介します。

プロローグ

営業が属人化してしまった結果とその対処「営業部長A氏の改革」_ビル

ここは数年前のX社・営業部門。

決算月が迫る中、オフィスの片隅で「営業部長A氏」と「エース営業マンB氏」の会話が聞こえてきます。

営業部長A氏「今期の目標達成まで1千万円ショートか・・・。Bさん、何とかならないかな?」

営業マンB氏「部長、任せてください!1千万円くらいなら何とかしますよ。ちょっとM社とN社の担当者に電話してみます!」

――これはX社の期末に“よく見られる光景”でした。

実際、エース営業マンのB氏は常に“何とか”して、それで営業部門が持っていた部分がありました。

しかし、長らく続く不況やグローバル化の影響で、X社の業界も規模が縮小し、顧客1社あたりの売上も減少。

その分、顧客数を増やす営業戦略を取らざるを得ない状況になりました。そんな中、エース営業マンB氏は転職。

B氏がどのような仕事をしていたのか。それは、営業部門の誰もわかりませんでした。

困った時には必ず得意先から“数字”を取ってきましたが、誰にどのようにしてアプローチしていたのか、はっきりとしたことがわかる資料は残っていません。

そしてB氏の顧客を引き継いだどの営業マンも、同じように受注することはできませんでした。

1章 悩める営業部長が直面した、営業属人化による“惨状”とは

営業が属人化してしまった結果とその対処「営業部長A氏の改革」_頭を抱える

営業マンのやり方やスキルがバラバラ、これでは効果が出ない・・・

「Bさんがいなくなってから、どうにも営業成績は上げられない。」とため息をつく営業部長A氏。

「とはいえ今、B氏がいた時代に比べると、1社当たりの売上はどこも小粒になった。組織を使って、より多くの顧客から売上を伸ばすことが必要な時代だからな・・・。しかし、このままではジリ貧だ。何とか打開策を考えないと・・・。」

A氏は、“スーパー営業マン”の存在は魅力的ですが、その「やり方」や「手法」がほかの営業マンに共有されない状態は大きなリスクだと考えるようになりました。

そこでA氏は熱心に部下とミーティングを繰り返し重点顧客へのアプローチを考えたり、部下の弱点を克服しようと一緒に考えたりと手をつくしました。

こうしてわかったのが、営業マンの営業スタイルやスキルにはバラつきが大きいこと。

「営業マンが最も力を発揮できるように、ある程度自由にやらせていたけれど、これではできる営業マンとそうでない営業マンとの間に差が広がる一方だ。感覚的には、できる営業マンが2割、そこそこだけれどもう一伸びしてほしい営業マンが6割、伸び悩む営業マンが2割、といったところか。」

A氏は、集団は[2-6-2に分かれる」という法則の通りだと感じました。

そして、「営業マンに自由にやらせたことが、このような事態を招いた」とも。

2-6-2の法則

「効果的な営業のやり方やコツ、手法をある程度、統一できればいいのだけれど、どうすればよいのだろうか。」

営業部長A氏の悩みは続きます。

営業部長A氏がつかんだ、課題解決への糸口

そんなある日。営業部長は興味深い話を耳にしました。それは、全国展開して成功している著名な小売業の経営層の談話でした。

その談話によると、その企業の店舗業務の9割は「型」だとか。

「どういうこと?」と思って耳を傾けると、業務には手本にすべき「型」があり、それを守ることで、従業員のスキルも向上し、売上向上や顧客満足度向上につながるというのです。

「本当にそんなことができるのだろうか? もし営業にも応用できたら、それは素晴らしいことだ。これまで営業マンの自主性や、やりやすさに任せた結果、スキルのバラつきにつながったのだから。」

直感的に“解決の糸口”を感じた営業部長A氏。このテーマについて、もう少し詳しく調べてみることにしました。

2章 営業の属人化を打破する一手は「型」だった!

営業が属人化してしまった結果とその対処「営業部長A氏の改革」_ポイント

「『型』は個性を損なう」という思い込みに注意

「しかし、営業を『型』にはめることは、個性を損なってしまうかもしれない。“金太郎飴”的な営業マンを作るのは、ちょっと抵抗がある・・・。」

はじめはこのように考えた営業部長A氏。しかし、「型」への理解を深めるにつれ、自身の考えが足りなかったことに気付きます。

「名刺の渡し方、挨拶の仕方、マナー・・・これらは皆、『型』として身に付けてきたものだ。この『型』がなくてはビジネスにすらならない。それに、売れる営業マンには、事前準備やヒアリングの方法などに “定石”があるものだ。できる営業マンの“定石”・・・これがつまり『型』なのではないか?」

野球、剣道、落語・・・強い人、成功する人は知っている「型」の重要性

ところでA氏は、幼いころから剣道や将棋に親しんで育ちました。また現在は、野球観戦や落語が趣味。

そんな経験から、「型」の重要性について思いを巡らします。

「剣道も習い始めは素振ばかり。でもこれは、正しい『型』を学ぶために必要なこと。さもなくば、実戦で大振りしたり、隙を突かれたりして負けてしまうから。強い人は『型』もきれいだし、さらに工夫して突き詰めている。将棋だって“定石”を知っているか知らないかで随分違う。“定石”を知らない人になんか、負けやしないのだから・・・。」

ほかにも次々と思い当たることがありそうなA氏。

「野球で言うならば、理論派と言われた野村克也さんの考え方に近いだろう。通常の野球解説者がストライクゾーンを『3×3』程度にしか分けていないものを『9×9』に分類するとともに、バッターもタイプ別に分類して、再現性がある仕組み=『型』を作り、根拠ある対策をしていた。」

ストライクゾーンの分け方

「落語では、あの“破天荒”・“生意気”と言われた立川談志は実は理論家だ。自身が家元を名乗る立川流では、弟子が前座から二段目に昇進するには『落語50席、長唄などの歌舞音曲』を覚える必要があり、厳しくチェックしていた。これはまさに、『型』の重要性を知っているからにほかならないだろう。」

このように「型」の有用性に気付いた営業部長A氏。

営業への活用についても、現実的なものと感じ始めていました。

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3章 属人化から脱却し、「型破り」な営業マンになろう!

営業が属人化してしまった結果とその対処「営業部長A氏の改革」_営業マン

できる営業マンのやり方を「型」にしてみると?

――その後、営業部長A氏の努力により、X社には徐々に営業の「型」が定着。その「型」とはどのようなものでしょうか?

「これまで見てきた“できる営業マン”たちは皆、『事前準備』が上手だった。準備が良いと初回アポでも良い反応が得られ、その後もスムーズに商談が進んでいた。もちろん、ほかの業務も重要だけれど、事前準備の『型』は、営業マン全員にとって役立つはず!」

こう考えた営業部長A氏が作った「事前準備」の「型」は下記のようなものでした。

<事前準備のステップと内容(★では仮説を立てる)>

  1. お客様に商談前に自社情報を提供する
  2. お客様を事前に理解しておく(企業・担当者の情報収集)
  3. アポイント内容(誰とどんなの話をするか)の事前確認
  4. ★お客様に「どんなニーズがあるのか」を想定
  5. ★「想定を確認する方法」を決める
  6. ★提案内容の企画立案
  7. ★お客様の「抵抗」を想定しておく
  8. ★面談のゴール(落としどころ)を設定

A氏は「事前準備」以外に「アプローチ」や「ヒアリング」、「プレゼン」「クロージング」などの業務も、「型」として詳細内容まで整理しました。

この「型」を喜んだのは新人営業マンばかりではありませんでした。

伸び悩んでいた中堅営業マンにも、解決策を指し示すものとなり、好意的に受け入れられました。

さらに、驚くべき効果が現れ始めました。それは、営業マンが「型」を破り始めたことです。

納得!「型」があるから「型破り」営業マンが生まれる

「営業マンの中には、この『型』を踏まえた上で、さらに独自の資料で提案したり、トークスクリプトを改善したりする人もいる。効果も出ているようだし、『型』をアップデートしてみようか。」

X社に現れたのは、いい意味で「型」を破る営業マンです。

「型」があるからこそ、独自の工夫を加えることでさらなる効果を上げることができたんだ・・・と営業部長A氏は感慨深い思いです。

「日本の武道や茶道・華道には昔から“守破離(しゅはり)”という言葉があるという。“守”とは教えを守る段階、“破”とは守で身につけた上で自分なりに応用する段階、“離”とは独自の境地・・・というが、目的に向かって工夫しアレンジしていく営業マンが現れたのは心強い。これこそ、『型破り』な営業マンだな・・・。」

守破離(しゅはり)

かつての“エース営業マン”は部下が目標にできませんでしたが、「型破り」営業マンならば皆が目標にできます。

こうしてX社の営業部門は、属人化から脱却し組織的な営業ができるチームへと変貌を遂げました。

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