DX人材とは|必要なスキルや職種、採用・育成方法について解説
DX化を推し進めるうえで、デジタル領域に特化した人材の獲得は急務といえます。本記事では、DX人材に求められるスキルや仕事の種類、採用・育成方法について解説します。ぜひ参考にしてみてください。
DX人材とは|概要を解説
DX人材とは、デジタル技術を活用して企業の変革を推進できる人材のことです。単にIT技術に特化しているだけではなく、ビジネス理解と技術スキルを兼ね備えた人材である必要があります。
DX人材は、業務プロセスの可視化や課題抽出から、デジタル技術を用いた解決策の立案・実行まで、一連のDX推進プロセスをリードできるスキルが求められます。つまり、デジタル技術に精通していることはもちろん、各事業部の業務内容を把握したうえで、DX化の取り組みを計画・実行できる人が、DX人材と呼ばれるのです。
社内のデジタル変革を牽引するキーパーソンの立ち位置にあるDX人材ですが、多くの企業において人材が不足しているのが現状です。DX化を推進しようとしても社内に適切な人材がおらず、DX推進が停滞するケースは珍しくありません。DX人材不足は、日本企業のデジタル変革の大きな障壁となっているのです。
なお、DX化の進め方について知りたい方は、別記事「DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を成功させるポイントや課題を解説」を参考にしてみてください。
DX人材に求められるスキル
優秀なDX人材に期待されるスキルを3つ紹介します。
ITにまつわる知識
DX人材には、人工知能のAIやあらゆるものをインターネットに接続するIoTなど、IT技術に関する幅広い知識が求められます。自社の業務にどのようなデジタル技術を活用できるかについて、適切に判断できるノウハウや知識が必要でしょう。
ただし、DX人材には特定の技術における専門性よりも、技術の可能性を理解し、適材適所で活用できる判断力が求められます。
また、技術系のチームとスムーズに意思疎通を図る能力も必要です。専門家チームと共有言語で情報をやり取りするには、デジタルにまつわる知識は必要不可欠といえるでしょう。
つまり、DX人材はDX化にまつわる業務を円滑に進めるために、幅広いデジタル技術に関する知識を身に付けておくことが求められるのです。
新しい事業の企画力
DX人材には、デジタル技術を活用した新規事業の企画力も求められます。既存事業の効率化だけでなく、デジタルならではの付加価値を生み出す発想力が欠かせません。
たとえば、小売業なら、EC事業を強化したりオンライン販売と実店舗を融合したOMOを推進したりするなど、デジタル時代の顧客体験を創造できるアイデアが求められるでしょう。自社の強みとデジタル技術を掛け合わせ、競争優位性を生み出す事業企画力が必要です。
他社事例を参考にしつつ、自社ならではの強みを活かした事業アイデアを出せる創造力も大切です。DX化を推進する仕事は、時代に合わせて既存事業の見直しや停止を決断するケースもあります。その場合、痛みをともなう変革になるため、強い意思でプロジェクトを推進できる人が向いているのです
プロジェクトマネジメント
DX人材には、社内外の関係者を巻き込みながらDXプロジェクトを推進するマネジメント力も求められます。経営層の理解を得つつ、現場の協力を取り付け、プロジェクトを円滑に進める調整力が欠かせません。
DX化を推進すると、現場の作業プロセスを抜本的に覆すケースも多いでしょう。そのため、関係部署との調整を図りながらスケジュールや予算を管理し、プロジェクトを成功に導くリーダーシップが問われます。
また、外部関係者とのすり合わせや社内の抵抗勢力への説得なども、DX人材の重要な役割です。プロジェクトマネジメントには、コミュニケーション力とロジカルシンキング、課題解決力が不可欠です。DX化を推進する仕事には、全体最適の視点を持ち、関係者を巻き込みながらプロジェクトを推進できる行動力が必要です。
なお、DXの成功事例について知りたい方は、別記事「【DX(デジタルトランスフォーメーション)の成功事例12選】推進ポイントを業界別に解説」を参考にしてみてください。
DX人材が担う職種7つ
次に、DX人材が担当する7つの職種について紹介します。
アーキテクト
DX人材が担う代表的な職種の一つが、アーキテクトです。アーキテクトは、自社のビジネス課題を理解し、デジタル技術を用いたソリューションを設計する役割を担います。
業務プロセスを可視化し、デジタル化のポイントを見きわめ、全体最適なシステムを設計するのがアーキテクトの仕事です。アーキテクトには、専門外の人にも技術的な内容をわかりやすく説明するコミュニケーション能力が必要です。
またアーキテクトには、業務知識とIT知識をあわせ持ち、全社横断の視点でシステムを設計する能力が求められます。
UI/UXデザイナー
UI/UXデザイナーは、ユーザー視点に立ち、使いやすく魅力的なデジタルサービスを設計します。
Webサイトやアプリの開発において、ユーザーの利便性を追求し、直感的な操作性を実現するのがUI/UXデザイナーの役割です。たとえば、ECサイトの購入フローを最適化して購入率を高めるUI設計を行ったり、スマホアプリの操作性を向上させるUXデザインを施したりします。
ユーザーの行動分析や心理学の知見を活用し、ペルソナの視点に立ってデザインする能力が求められます。
UI/UXデザイナーは、ユーザーの満足度やデジタルサービスの差別化に直結するため、DX化において重要な役割を果たす仕事です。
プロデューサー
プロデューサーは、事業部門とIT部門の間に立ち、デジタルサービスの企画・開発をリードする役割を担います。
自社や顧客のビジネス課題を理解し、デジタル技術を活用した解決策を立案・推進するのがプロデューサーの仕事です。事業部門とIT部門、外部パートナーとの調整を図り、プロジェクトを成功に導くリーダーシップが問われます。
優れたプロデューサーは、デジタル技術を活用した新たな顧客価値を生み出し、DX化を強力に推進する原動力となるでしょう。
ビジネスデザイナー
ビジネスデザイナーは、デジタル技術を活用し、新たなビジネスモデルやサービスを企画・設計し、DXを推進する仕事です。
市場動向やユーザーニーズを分析し、自社の強みを活かした事業戦略を立案するのがビジネスデザイナーの役割です。また、関係者同士が円滑に意思疎通を図れるよう、ミーティングを適宜、開催して合意を形成することもその役目といえます。
DXの実現には、既存の事業の枠に捉われない発想力と実行力を持つビジネスデザイナーの存在が不可欠です。
エンジニア・プログラマー
DXの実現には、AIやIoT、ビッグデータなどのデジタル技術を使いこなすエンジニアリング能力が欠かせません。
自社の課題解決に適したシステムやアプリを開発し、デジタル基盤を構築するのがエンジニア・プログラマーの役割です。
エンジニアやプログラマーは、プログラミングスキルだけでなく、営業やマーケティング部門などのビジネスサイドと密にコミュニケーションを取って開発を進める調整力が求められます。また、最新の技術トレンドをキャッチアップし、常にスキルアップを図る向上心も必要です。
ビジネス要件を理解し、デジタル技術を使いこなせるエンジニアやプログラマーは、DXを推進するうえでなくてはならない存在です。
プロジェクトマネージャー
プロジェクトマネージャーは、DXプロジェクトの計画立案から進捗管理、課題解決までを一手に担います。
経営層の意向を汲み取りつつ、関係部署との調整を図り、プロジェクトを円滑に進めるのがプロジェクトマネージャーの役目です。プロジェクトのゴールを見据えてメンバーのモチベーションを高めながら、スケジュールと予算を管理する能力が問われます。
トラブルが発生した際には、臨機応変に対応し、問題解決に導くリーダーシップも欠かせません。DXプロジェクトを成功に導くには、強力なリーダーシップを発揮するプロジェクトマネージャーの役割は大きいといえるでしょう。
データサイエンティスト・AIエンジニア
データサイエンティストは、主にビッグデータを分析し、ビジネスに役立つ知見を導き出す仕事です。
一方、AIエンジニアは、機械学習やディープラーニングの手法を用いて、高度なデータ分析を行います。つまり、データサイエンティストやAIエンジニアには、統計学や機械学習の知識に加え、ビジネス課題を理解する力が求められるのです。
大量のデータから本質的な意味を見出し、ビジネス価値に変換するためには、仮説を構築する力と論理的思考力が欠かせません。データを縦横無尽に操れるデータサイエンティストやAIエンジニアは、DX化において重要な役割を果たします。
DX人材を獲得する方法
DX人材を確保するために効果的な対策を4つ紹介します。人材が集まらず困っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
中途で採用する
DX人材を獲得する代表的な方法の一つが、中途採用です。即戦力となるDX人材を外部から招き入れることで、社内のDX推進を加速できるでしょう。とくにDX推進の初期段階では、経験豊富なDX人材の存在が欠かせません。
たとえば、大手IT企業でDXプロジェクトを牽引してきたプロジェクトマネージャーを採用し、自社のDX推進を託すという選択肢があります。また、AIベンチャーで活躍していたデータサイエンティストを招き入れ、データ活用の中核を担ってもらうのもよいでしょう。
ただし、DX人材の採用競争は激化しており、採用には工夫が必要です。DX人材が魅力を感じる事業ビジョンや働き方を打ち出し、自社で働くメリットをアピールするのも一つの手です。
他には専門エージェントを活用したり、SNSでのブランディングを図ったりと、採用手法にも多角的なアプローチが欠かせません。
また、採用後の活躍の場づくりにも配慮が必要です。DX人材のモチベーションを高め、定着を図る工夫が求められるでしょう。
社内人材を育成する
DX人材の獲得には、社内人材の育成も欠かせません。DX化は一過性のプロジェクトではなく、継続的な変革が求められる取り組みであるため、自社内でDX人材を育て、DX文化を根づかせることが重要です。
具体的には、既存社員向けのデジタルリテラシー研修や、DX人材育成プログラムの整備などが考えられます。たとえば、部門ごとに以下のような研修を実施しても良いでしょう。
部門 | 研修内容 |
営業部門 | データ分析の基礎を学ぶ |
IT部門 | ビジネス知識を学ぶ機会を提供し、事業部門との架け橋となる人材を育成 |
経営層 | DXの本質を学ぶ勉強会を定期開催し、DXマインドの醸成を図る |
社内人材の育成には時間がかかるため、長期的な視点を持ち、腰を据えて取り組む姿勢が大切です。
なお、営業部門のDX化について詳しく興味がある方は、別記事「営業DXとは?デジタル化との違いや導入方法まで解説【事例も紹介】」をご覧ください。
外部のリソースを頼る
DX人材の獲得には、外部リソースの活用も選択肢の一つです。たとえば、DX支援に定評のあるコンサルティングファームと提携してDX戦略の立案を委ねたり、デジタル領域に強みを持つベンダーと協業したりすることが挙げられます。
近年では、クラウドソーシングサービスを活用する人口も増えたため、プラットフォームを利用して個人の専門家に仕事を依頼してもよいでしょう。また、DX人材の育成を外部の専門機関に託し、社員のリスキリングを推し進めるという方法もあります。
ただし、注意すべき点は外部リソースに頼りきるのではなく、自社内でのDX人材の育成を並行して進める必要があることです。外部パートナーとの協業を通じて、自社のDX人材を育成する仕組みを整えていきましょう。
コンサルタントを受け身で活用するのではなく、ノウハウを吸収し、自社の力に変えていく姿勢でDX化に取り組む姿勢が大切です。
DX人材が定着したいと思える魅力的な環境を整備する
DX人材を惹きつけて自社に定着してもらうには、魅力的な職場環境の整備が欠かせません。そのためには、自社のビジョンや戦略を明確に示し、DX人材がやりがいを感じられる仕事を用意することが重要です。
たとえば、DX人材の主導で新規事業を立ち上げる機会を設けたり、最先端のITツールを整備したりして、ストレスなく働ける環境を整えることも一つの案です。
DX人材のアイデアを積極的に取り入れ、失敗を恐れずチャレンジできる企業文化を醸成することも欠かせません。また、DX人材のスキルアップを支援する教育プログラムの拡充や、適正な評価・報酬制度の整備なども重要です。
DX人材が「この会社で働きたい」と感じる魅力的な環境を整えることが、優秀な人材の獲得・定着につながる最も手堅い方法といえるでしょう。
DX人材を獲得しデジタル化を進めよう
DX人材は、ITスキルとビジネス知識を兼ね備え、変革の旗振り役を担う人材です。DXの推進には、アーキテクトやデータサイエンティストなど多様な人材が求められるでしょう。
そしてDX人材の獲得には、中途採用や社内育成、外部リソースの活用など、さまざまな方法があります。DX人材の中で才能が光る人が見つかれば、会社に定着してもらえるように働きやすい環境をつくり、長期的に働いてもらえるよう工夫しましょう。
デジタル時代を勝ち抜くためには、DX人材の獲得・育成に着手することは避けては通れません。優秀な人材を獲得し、DXを積極的に推進していきましょう。