ERPとは?基幹システムとの違いやメリット、導入方法を解説
「ERP」という言葉を聞いたことはあるが、いまいち意味がわからない、企業の業務効率化や成果向上につながるサービスを検索している中でERPを見たことはあっても、よくわからない、という方が多いのではないでしょうか。
この記事では、ERPの意味や特徴、メリット、そして具体的な導入方法を解説していきます。
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ERPとは
ERP(Enterpirse Resource Planing)は「企業資源計画」と訳されます。経営資源であるヒト・モノ・カネに関する情報を統合して扱うコンピュータシステムを指す言葉として用いられますが、本来は経営資源を効率的に配分し有効活用するためのコンセプトのことです。
企業に情報システムが導入されるようになった当初は、大手企業を中心に、金融機関であれば勘定系システム、製造業であれば生産管理システムなど、基幹業務を担うメインフレームと呼ばれる大型コンピュータを使った情報処理が一般的でした。
この段階では、基幹業務以外に使用する他の業務システムとの接続・連携が図られておらず、データの統合が課題として挙げられるようになります。
1960年代に入りMRP(Material Resource Planing:資材所要量計画)という、生産管理手法を実現するためのソフトウェアが開発され、急速に普及しました。これは、製造業の購買・在庫・販売・部品管理などの情報を統合して扱うものです。
MRPの生産管理に必要な情報に、販売、財務、会計、人事などの機能を加えて発展させた情報システムをエンタープライズという拡張した概念で捉えたものがERPです。
現在では、生産・販売・財務・会計など企業の事業活動に不可欠な業務を一元管理するための統合型ソフトウェアに対してERP(統合基幹業務システム)という名称が使われています。
ERPと他の業務システムの違い
基幹業務に対応するシステムを統合して一元管理する情報システムがERPです。
当初は、労務管理や会計などバックオフィス系業務の自動化に焦点を当てたものが一般的でした。その後、情報システムの役割が多様化するに従い、電子商取引や顧客管理といった機能など、幅広い業務システムを統合した製品が増えてきています。
ビジネスのなかで使用される業務システムに対しさまざまな呼び方が存在していますが、それらの区別や違いとして、次のようなものが挙げられます。
基幹(系)システム
基幹システムは、銀行における勘定系システムや製造業における生産管理システム、流通業における販売管理システムなど、それぞれの企業の中核的な業務に使用するシステムのことを指します。
また、企業の主要部門の業務データを管理するシステムという意味合いで用いられる場合もありますが、基本的にはビジネスプロセスごとに用いられるものという点でERPとは異なります。
情報系システム
基幹システム以外の他のシステムを指して情報系システムという場合があります。メールや会議システムなどのコミュニケーションツールのほか、RPAなどの事務作業効率化、BIなど意思決定支援のシステムなどが情報系システムに当たります。
基幹システムと情報系システムは、障害等でシステムが停止した場合の重大性によって区別されます。この観点から基幹システムと情報系システムは切り分けてリスク分散を図ることが一般的です。
ERPとERPパッケージ
ERPが考え方であることを述べましたが、現在では情報システムやソフトウェアのことを指すのが一般的です。基幹システムを統合管理するソフトウェアパッケージという意味でERPパッケージと呼ばれます。
ソフトウェアのパッケージとは、標準的な機能を搭載して製品化したものを指します。それに対し、企業それぞれの独自の業務に合わせて個別にシステムとソフトウェアをオーダーメイドで開発するスクラッチという導入方法もあります。
ERPパッケージはスクラッチに対するパッケージという意味で用いられることもあります。
ERPの主な機能
ERPパッケージは企業の各部門で用いられる業務システムのモジュールで構成されています。一般的には次のようなモジュールが用意されています。
モジュール | 機能 |
財務・会計 | 総勘定元帳、売掛・買掛管理、バランスシート、キャッシュフロー、資産管理など |
管理会計 | 原価管理、予実管理、経営分析、資金繰りなど |
人事・労務 | 勤怠管理、給与計算、人事考課、福利厚生など |
生産・製造 | 製番管理、生産計画、所要量計算、工程管理、品質管理、作業実績など |
営業・販売 | 受注管理、請求管理、売掛金管理、顧客関係管理、出荷管理など |
ロジスティクス・サプライチェーン | 在庫管理、倉庫業務、配送管理、サプライチェーン計画など |
購買・調達 | 仕入先管理、契約管理、納期管理、受発注管理、検収・支払管理など |
サービス | フィールドサービス、リソース管理、返品・修理、ロイヤルティ分析など |
研究開発 | アイディア・企画管理、ポートフォリオ管理、プロジェクト管理など |
ERPの種類【タイプ別】
ERPには、いくつかの導入形態と種類があります。
それぞれ見ていきましょう。
導入形態の種類
ERPの導入形態は、どこに設置するかで分けられます。
オンプレミス型
オンプレミス型とは導入企業が自社でサーバーを用意し、サーバー内にERPパッケージを構築する方法です。導入に手間と時間がかかりコストも高めですが、カスタマイズの幅が広く既存システムと連携しやすいメリットがあります。
クラウド型
クラウド上に構築していくため、サーバーは不要です。導入コストやランニングコストはオンプレミス型よりも安いため、近年はクラウド型が主流になりつつあります。一からカスタマイズはできないため、既存システムと連携可能か、よく確認をしてから導入しましょう。
ハイブリッド型
ハイブリッド型は、オンプレミスとクラウドを併用する導入形態です。基幹系システムをオンプレミスで構築し情報系システムにクラウドを導入するといった方法や、拠点を多く持つ企業が本部と拠点でERPの2層化を図る場合に、拠点のERPにクラウド製品を導入するといった方法があります。
ERPサービスの代表例としては、SAP社の製品が挙げられます。ERPサービスを手掛ける老舗会社であり、オンプレミス型とクラウド型の両方を提供しています。気になる方は以下の記事もご覧ください。
参考:SAPとは?ERPシステムの特徴や導入メリットをわかりやすく解説
タイプ別の種類
ERPのタイプは、主に4種類に分けられます
統合型ERP
会計、経理、給与計算、人事など経営に必要なシステムを統合したERPです。費用が非常に高いため、大手企業を中心に導入されています。
コンポーネント型ERP(業務ソフト型)
必要な業務システムを組み合わせて導入できるERPです。
コンポーネントとは、営業、受注、生産など、一つひとつの業務単位を意味しています。必要なシステムだけを選んで導入ができるのがメリットです。比較的低予算・短期間で導入が可能です。
アプリケーション型ERP
業務だけでなく、機能やアプリを自由に選択できるERPです。独自性の強い企業におすすめです。
業界特化型ERP
物流業、サービス業、製造業など、さまざまな業界に特化したERPがあります。業界の特性が反映されているため、専門的な業界の場合は非常におすすめです。カスタマイズは不要で、短時間で導入できます。
ERPのメリット・デメリット
それでは、ERPを利用するメリットとデメリットをみていきましょう。
ERPのメリット
意思決定の迅速化
ERPによりさまざまな部門や業務プロセスのデータを統合し一元管理することで、情報の重複を防ぎ、データの整合性を保つことが可能になります。
経営にかかわる精度の高いデータをリアルタイムに可視化して把握できることは、経営判断と意思決定の迅速化につながります。
生産性の向上とコスト削減
経営資源を最適に配分するために企業内の情報を一元管理することがERPの目的です。
部門をまたぐビジネスプロセスを総合的に把握し、情報の共有を図ることで組織の効率性が高まり、生産性を高めることにつながります。同時に、経営資源の配分が最適化され、効率的に運用されることがコスト削減にも結びつきます。
ガバナンス強化に貢献
ERPに決済フローを組み込んだり情報へのアクセス権限をこまかく設定したりすることによって、業務フローの標準化と業務ルールの制度化が可能になります。
また、業務プロセスで発生するデータを一元管理することでデータの透明性が高まり、蓄積されたデータをトレースできることで監査機能が向上します。ERPの導入によって組織で流通する情報に横串をさすことが、ガバナンス強化に役立ちます。
ERPのデメリット
次に、ERPサービスのデメリットを2つ見ていきましょう。
業務フローの見直しが必要
ERPパッケージは各業務フローが最も効率的、かつ、効果的に実行されるベストプラクティスをもとに設計されています。そのため、現行の業務フローをベストプラクティスと整合させるための見直しが必要となる場合があります。
現行の業務フローを洗い出し、ERP導入によって改善される新しい業務フローを明確に定義しておくことが重要です。
導入時や保守・運用に費用がかかる
ERPは、導入費用やランニングコストがかかります。クラウドで提供されているERPを導入する場合、月額/年額の利用料金を計算するようにしましょう。
また、新しくERPシステムを導入する場合、システムの利用が社内で定着するまでに時間がかかることもデメリットとして挙げられます。
ERP導入直後は、不慣れな操作方法や新システムへの苦手意識などから、一時的に業務効率が低下する可能性もあります。
ERP導入の際は、目的とメリットを企業全体で理解し、システムの定着化までを含めた導入計画を立てることが大切です。
ERPサービス導入の流れ
ERP導入にあたり、基本的な流れを押さえておきましょう。
導入目的の明確化
「業務プロセスの改善」「基幹システムのリプレース」など、ERPの導入目的はさまざまなケースが想定されます。
導入形態や必要な機能によって、選択すべきモジュールの種類やそれを提供するベンダーを検討する必要があります。ERP導入により何を実現するかを具体化することが導入プロセスの第一歩です。
導入プロジェクトの体制整備
ERP導入は組織と業務の見直しにかかわる大がかりな取り組みであり、計画性のあるプロジェクトとして進められます。
プロジェクト全体の統括者、各部門ごとのメンバーの選定など、プロジェクトの体制整備が不可欠です。
業務フローの洗い出し
ERPの導入により、業務フローの見直しが求められます。
現行の業務フローを洗い出すとともに、ERP導入後にどう変更する必要があるのかを整理しておく必要があります。また、新しい業務フローはトライアルの時点で不都合がないかどうかを確認するとともに、本格稼働後についても見直しを続けていきましょう。
運用テスト
システムの稼働状況と新しい業務フローに問題がないかどうかを確認するための運用テストを行います。
一般的には、単一業務、部門、組織全体と範囲を区切って、運用に不都合がないかどうかの確認と、システムに負荷がかかった場合の耐性のテスト、トラブルが発生した場合の対応などについて検討します。
本格稼働
本格稼働も運用テストと同様に、スモールスタートから稼働範囲を広げていく方法が適しています。
操作方法やトラブル対応などの手順を定めてマニュアルを整備することも必要です。運用を拡大していく際には、説明会や研修を通じて情報提供と定着を図っていきましょう。
ERPの利用で業務を効率化しよう
ERPは、部署ごとで異なるシステムを利用していても、ひとつの業務システムとして一元管理ができます。それにより、「企業内でデータが分散して管理しにくい」「重複作業が発生している」といった問題も解決され、大幅に業務が効率化されます。
企業全体の情報が一元管理できるため、経営判断も迅速になるといったメリットも得られます。適切なERP導入で、DX時代の企業活動を成長させていきましょう。
ERPに関するよくある質問
ERPとは何ですか?
ERPは、Enterprise(企業)・Resource(資源)・Planning(計画)の頭文字をとったもので、ヒト・モノ・カネを集約し、効率よく事業を成長させるため、適切に分配や活用をしていく考え方や、これらを実現するシステムを指します。
ERPパッケージ、ERPシステムと呼ばれることもあります。
参考:【保存版】ERPとは?導入企業がメリットや導入効果、目的を解説
ERPとSAPの違いは何ですか?
SAPはドイツのソフトウェア会社で、ERP製品の開発や設計をしています。SAP社が提供するERPシステムを「SAP」と呼ぶことがあります。
参考:SAPとは?ERPシステムの特徴や導入メリットをわかりやすく解説
ERPシステムの料金はいくらですか?
クラウド型ERPの導入費用は、月額無料〜10数万円程度が多いと言われています。自社に合わせて開発をする場合は、1,000万円を超えることが多いようです。
ERPとRPAの違いは何ですか?
「ERP」は、複数の基幹システムを連携する一元管理するシステムを指します。
「RPA」は、繰り返し行う提携作業を自動化するシステムを指します。
ERP、SFA、CRMの違いは何ですか?
「SFA」は、企業内の営業活動を一元管理できるシステムです。「CRM」は、顧客との関係性を含めた顧客情報を管理するシステムです。「ERP」は、複数の基幹システムを連携して、一元管理するシステムです。