グロスとは? ネットとの違いやビジネスにおける使い方、計算方法を解説
グロスとは総量や総体を表す言葉で、ビジネスにおいても広告業の費用合計や不動産の契約面積、食料品の重量など、さまざまなシーンで使われています。
本記事では、グロスとネットの違いやビジネスにおけるグロスの使われ方、計算方法、使う際の注意点などを解説します。グロスとネットの違いを理解してビジネスに活かしたいなら、ぜひ参考にしてください。
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ビジネスにおけるグロスとネットの違い
ビジネスシーンでは、広告代理店営業や広告費用、売上・会計の計算などにおいて、「グロス」と「ネット」がよく利用されます。それぞれの意味を理解しておかないと、正確な数字を算出できないため注意が必要です。
ここでは特に、営業職なら覚えておきたいグロスとネットの違いを解説します。
グロスとは?
グロス(gross)とは、「全体の」「総量・総体」を意味する英語です。ビジネス領域でもグロス価格、グロス重量、グロス面積などのように、合計値を表す言葉として使われます。
グロス価格とは、扱う商材やサービスと手数料(マージン)の合算値であり、顧客が支払うべき総額のことです。たとえば、広告業界では、実費となる広告費に広告代理店の手数料を足した総額がグロスとなります。
ネットとは?
ネット(net)の本来の意味は、「純量」「正味」です。ネット価格とは扱う商材やサービスの原価のことで、グロス価格から手数料(マージン)を差し引いた金額のことです。広告業界では、実費となる広告費がネットとなります。
グロスとネットの違いは、その料金に手数料が含まれているかいないかの違いです。この違いを理解しておかなければ、最終的な金額を算出する際に正確な数字を出せなくなります。
マージンとは?
本来の意味は、「利ざや」「売上総利益」で、ビジネスにおいては販売価格(グロス)から原価(ネット)を引いた「粗利」を指します。広告業界では、広告代理店に支払う手数料のことです。
ビジネスシーン以外のグロスとネット
ビジネスシーンには直接、関係がないものの、ゴルフでもグロスとネットという言葉が使われています。スコアを示す言葉として用いられており、グロスはホールアウトしたときのスコア、ネットはグロスからハンディキャップを引いたスコアのことを指します。
コンペなどでよく設けられるベストグロス(ベスグロ)賞は、コンペの中で最もスコアの良かった人に贈られる賞のことです。一方、コンペの順位はネットで争われます。
ビジネスにおけるグロスの使い方と計算方法
ここからは、ビジネスシーンで使われるグロスの使い方と計算方法を業界別に解説します。それぞれの業界におけるグロスとネットの使い分けを理解しておくと、営業活動にも活かせるでしょう。
広告業界や代理店業務のグロス
広告業界や代理店業務におけるグロスとは、費用の総合計を指します。広告業界では、実費となる広告媒体の費用に代理店手数料などの諸経費を上乗せして請求するのが一般的です。「請求額(グロス)=広告媒体費用(ネット)+広告代理店手数料(マージン)」で計算します。
たとえば、広告代理店A社からの請求が120万円(税抜)で、手数料率20%であった場合は以下の計算式となります。
グロス価格が120万円、ネット価格が100万円、マージンが20万円になることがわかります。
このときの手数料は、広告代理店や案件によって異なるため、かならず確認をしましょう。
CPAを計算する場合のグロス
グロスやネットは、広告運用などの費用対効果の指標であるCPA(Cost Per Action)を判断する際にも使用できます。CPAは「CPA=広告費÷CV(コンバージョン)」で計算でき、このときの広告費をグロスとネットの両方を使って計算しておくことで、費用対効果が適性かどうか判断できます。
たとえば、ある新商品をネット上で販売する際に、Web広告費用としてグロスで10万円、ネットで8万円をかけたとします。この広告で獲得したCV数(購入数)を10件とした場合、
- グロスで計算した場合 CPA=100,000円÷10件=10,000円/件
- ネットで計算した場合 CPA=80,000円÷10件=8,000円/件
となり、1件のCV獲得のためにグロスだと10,000円がかかり、ネットだと8,000円で済んだことがわかります。
これだけだと、グロス価格の方が費用対効果が悪いように見えます。だからといって、広告代理店に支払うマージンは無駄なのでしょうか。
仮に広告代理店を通さずに自社で広告運用を行う場合、その分、人材や人件費、時間などのリソースがかかります。マージンを自社で運用した場合の費用に置き換えて計算してみると、長期的にリソースをかけて自社運用するよりも、広告代理店に依頼する方が得策になることもあります。
広告のCPAを検討する際にはグロスとネットの両方を使って計算し、相対的に判断することが重要です。
食料品のグロス
グロスは食料品の重量表示にも使われています。この場合、食料品本体の正味の重量がネットで、本体以外の包装資材などを含む総重量がグロスです。
たとえば、豆腐やモッツァレラチーズ、生牡蠣などは、中身の品質を保つためにパッケージに水が入っています。この場合、パッケージにネットや内容量といった重量が書かれていれば、それが実際の中身の重さとなります。
不動産業界のグロス
不動産業界におけるグロスは賃貸契約時などで使われ、契約対象となる物件の面積のことを指します。グロス面積には、賃貸などで契約する室内の専有面積に加え、廊下やエレベーターホールといった共有部分の面積も含まれます。
グロス契約とは、これらも含めたスペースも併せて契約するということです。一方のネット契約とは、室内の専有部分のみを契約面積とする契約です。
不動産投資のグロス
不動産投資でも、その利回りでの計算にグロスとネットが使われています。グロス利回りは別名「表面利回り」といわれ、購入時の諸費用や不動産経営にかかる経費が含まれていない利回りです。「グロス利回り=年間家賃収入÷不動産価格×100」で計算します。
一方のネット利回りは「実質利回り」と呼ばれ、収入から経費等を差し引いた利回りとなります。
たとえば、年間家賃収入が500万、不動産価格が6,000万の場合
- グロス利回り 5,000,000円÷60,000,000円×100=8.33%
となります。
不動産を購入する際に必要な、不動産会社や司法書士への報酬、保険などの諸費用は約5~6%、6,000万円の不動産購入時の費用は400万程度となります。このほか、管理費、修繕費、固定資産税、管理手数料などの経費が年間で60万円かかるとすると
- ネット利回り (家賃5,000,000円 – 経費600,000円) ÷ (物件価格60,000,000万円+4,000,000円)×100=6.875%
となり、グロス利回りを下回ることがわかります。
不動産広告などではグロス利回りが書かれていることが多く、実際の利回りとは異なるため注意が必要です。
自動車業界のグロス
日本産業規格(JIS)が定める自動車のエンジン出力の試験方法には2種類あります。1つが「グロス軸出力」試験法で、エアクリーナーやマフラーを含まず、エンジンの運転に必要な付属装置のみを装着した状態で軸出力を測定します。ここで出た値を「グロス値」と呼びます。
もう1つが「ネット軸出力」試験法で、エアクリーナーやマフラーを含む、エンジンを車両に搭載したときとほぼ同じ付属装置を装備して測定します。算出された値が「ネット値」で、現在の自動車出力はネット値で記載されています。
給与のグロス
給与におけるグロスとネットは、額面金額がグロスで、手取金額がネットです。各種税金や保険料を支払う前の額面全体、支給総額がグロス、各種税金や保険料などが差し引かれた後の金額、つまり手取り額がネットとなります。
日本では、提示される給与は支給総額(額面)のグロスであり、この支給総額から税金や社会保険料が控除されたネット金額が振り込まれます。
注意したいグロスとネットの使い分け
ビジネスシーンにおいて請求額や売上額を確認する際に、グロスかネットを取り違えると大きなトラブルになる可能性があります。ここからは、ビジネスシーンで注意したいグロスとネットの使い分けについて解説します。
広告業界のグロスとネットの違い
広告業界のグロスとは前述したように、広告そのものにかかるネットに代理店のマージンが上乗せされた費用です。広告予算を決める際には、発注側と受注側でグロスとネットのどちらで受発注するかを決めておく必要があります。
たとえば、発注側がグロス(仮に100万円)で発注したつもりでも、代理店側がネットと判断していた場合、マージン(仮に20万円)を追加した120万円が請求されてしまいます。認識のズレが大きな問題につながることもあるため、広告発注時には代理店と確認し合うようにしましょう。
売上や会計に関するグロスとネットの違い
売上確認や財務管理、経営判断などのシーンでも、グロスとネットを正しく理解して判断することが求められます。全社の売上を単純合算すれば、グロス売上高となります。
一方で、取引につきものな値引きや返品を加味した正味の売上実績を算出したものがネット売上高です。営業や経理、経営者は、どちらも理解しておく必要があり、相手とのやり取りでグロスかネットか曖昧な場合はかならず確認しましょう。
売り上げ分析を効果的に行う方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
効果的な売上分析7つの手法・メリットから成功事例まで徹底解説
値や重量に関するグロスとネットの違い
食料品の重量や価格についても、グロスとネットの違いは重要です。たとえば、ECサイトで商品を購入した場合、本体価格(ネット)のほかに送料がかかり、送料を含めた値段がグロスとなります。
また、本体価格(ネット)消費税込なのか税別なのかによりグロスの支払額が変わります。ショッピングにおいても、価格や重さのグロスとネットの違いを把握しておくとよいでしょう。
ビジネスシーンで主流になりつつあるのはネット取引
ビジネスのグローバル化に伴い、外資系企業ではスタンダードとなっているネット取引が増えてきています。ネット価格は実質金額であり、透明性が高いことが要因の1つです。一方、広告業界の取引は、いまだにグロス取引が主流です。
ビジネスにおいてはグロス取引とネット取引が混在するので、発注側・受注側共に注意を払う必要があります。
まとめ:グロスとネットは違いをしっかり把握して使おう
ビジネスシーンで使うグロスとネットは、それぞれの意味を理解して使わないと費用総額や費用対効果の計算を間違える可能性があります。また、発注側と受注側で認識が異なることもあるため、事前の確認が重要です。業界によってもその意味や使い方が違うため、営業職の方はとくに注意して使いましょう。
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