営業人材の育成に成功して個人の営業力を上げるための方法とは?
「売上を上げられる営業人材がなかなか育たない…」とお悩みではありませんか?
営業のスキル・ノウハウは属人的になりがちで、多くの企業が人材育成に課題を抱えています。
しかし、採用難のいま、自社で優れた営業パーソンを育てることは非常に重要です。
本記事では、営業の人材育成が重要視される背景や、営業が苦手な人の特徴、営業人材の育成に成功して個人の営業力を上げるための方法についてわかりやすく解説します。
営業の人材育成が重要視される背景は?
なぜ今、営業の人材育成が重要視されるのでしょうか?
その背景を説明します。
市場が成熟し、プロダクトは複雑化している
インターネットが普及し、いまや欲しい情報は誰でも気軽に得られるようになりました。
そのため、ただ自社商品の説明をして紹介するだけの営業手法では成果をあげることは難しくなり、顧客の課題解決に繋がる提案をしたうえで自社の製品・サービスを使ってもらう「ソリューション営業」が求められています。
こうした課題解決型の営業には、製品の説明を覚えて顧客に伝える以上の高いスキルが必要となり、ろくに教育を受けていない新人でも頑張ればなんとかなる、といったことは通用しません。
また、グローバル化や生産技術の向上で複雑化が進むプロダクト(=自社製品)への深い理解も必要なため、営業パーソンに求められる能力は以前よりも高くなっているのです。
顧客のとる購買行動が変化した
上述したような市場・プロダクトの変化にともない、顧客となる企業の購買担当者のとる行動も変化しています。
以前は、営業パーソンによるセールスを受けて製品を知り、そこから検討に入った上で購買に進んでいました。
いまは事前にネットで情報収集したうえで検討に進み、その段階で営業と接点をもつ、というパターンが一般的です。
購買担当者はすでにある程度の製品知識を持っているので、営業担当者はネットで得られる知識を上回る情報を与え、顧客の抱える課題を引き出して解決につながる提案を行える必要があります。
こうしたスキルを持った営業を育てるため、人材育成が重要視されているのです。
「 OJT(On the Job Training) 」という名の「丸投げ」が恒常化し、個人の営業スキルにばらつきがある
OJTとは「On-the-Job Training」の略で、実践を通して業務に関する知識を身につけさせる育成の手法です。
経験を積んだ上司や先輩がトレーナーとなって、実務を通してスキルや知識を伝えることで、新人教育に要する時間を削減できるメリットがあります。
しかし、実態としてはトレーナーを担当する社員への新人教育の丸投げ状態となっていることが多く、トレーナーの指導能力によって成長のスピードやスキルに大きなばらつきが生じる結果となっています。
体系化した教育や、入社時以外にも社員の階層に応じて異なる研修を受けさせるなどの取り組みができていない企業が多いため、人材育成に課題があるのです。
営業メンバー間のコミュニケーションが希薄に
仕事に関する価値観の変化で「職場の飲み会が嫌い」という社員が増えています。また、コロナ禍での宴席の自粛などにより、飲み会を通して上司・先輩からさまざまな話を聞いて学ぶ、といった機会は減りました。
さらに、リモートワークの導入により、多くの企業で、主なコミュニケーションが対面からチャットツールなどのオンラインでのやり取りへと変わりました。
こうした「密なコミュニケーション」の減少によって、上司・先輩から「仕事を見て学ぶ」という形は前時代的なものへとなりつつあります。
こうしたことから、以前のような属人的なOJTでの指導や対面での育成方法から、高い専門性をもった営業パーソンを安定的に育てる人材育成へと移行する必要性が叫ばれるようになったのです。
営業が苦手な人の特徴とは?
優秀な営業パーソンの育成方法を説明する前に、営業が苦手な人、出来ていない人にはどんな特徴があるのかを確認していきましょう。
根拠があり達成可能な売上目標を設定できていない
売上目標は毎月かならず達成することが、自信を深めモチベーションを維持するためにも重要です。
そのためには、自社の現状や過去の数値、季節要因などの根拠に基づいた、「頑張れば達成できる」現実的な目標設定が必要となります。
営業が苦手な人は「このぐらい売り上げたい」という願望の込められた甘い数字を、アポイント数の目標としがちです。
根拠のない非現実的な目標を立てると、「達成できないことが普通」となってしまい、成果の出せない営業パーソンになってしまいます。
ネクストアクションを設定できていない
成約までの道筋が見えていないと、次のアクションとしてなにを設定するべきかわからず、営業活動が行き当たりばったりで成果につながらないものとなってしまいます。
商談を成約までもっていくためには、商談を終えるときにかならず「ネクストアクション」を決めることが重要です。
これはたとえば、先方が「少し検討してみる」と言ったなら「お返事はいつまでにいただけますか?」と確認する、といったことでもかまいません。
クロージングまでの道筋を把握し、日時を区切った明確なネクストアクションを設定できないと、商談がなあなあで終わってしまうでしょう。
成果へのノウハウ・知見を自分だけで抱えてしまう
成約につながったパターンをノウハウとして他の営業と共有することで、チームとしての営業力の底上げになり、部門での目標を達成することができます。
しかし、自分が手柄をあげることだけを考えて、ノウハウや知見を共有せずに抱え込んでしまえば、全体での売上の向上にはつながりません。
組織全体の利益を上げることがチーム・会社への貢献につながる、ということに理解が及ばない社員は、たとえ個人としての成績が良かったとしても、優秀な営業パーソンだとはいえないでしょう。
営業活動を標準化するメリット
営業の育成を成功させ、営業活動を標準化すると、以下のようなメリットがあります。
個々人のスキルが上がることでチーム全体の営業成績がアップする
営業手法を標準化していないと、一人ひとりがあげる成果にばらつきが生じてしまいます。
担当者それぞれの持つセンスやノウハウに頼った“属人的な営業”となってしまうからです。
担当者それぞれの活動内容や成果を可視化すると、優秀な成績をあげる営業担当者の手法や特徴を分析できるようになります。
そして、その結果を“勝ちパターン”として共有することで、他のメンバーのスキルの底上げを図れます。
標準化した営業手法で個々人のスキルを底上げし、それぞれが安定した成果をあげられるようになれば、チーム全体としての営業成績も向上します。
モチベーションの向上で離職率を改善
どんな営業活動を行うべきか正解がわからず、目指す成果をあげられないままノルマに追われ続けていると、営業担当者のメンタルは低下していきます。
そうした状態では“顧客目線の営業”を行うことは難しいため、さらに成果をあげられない悪循環に陥ってしまいます。
自責の念に駆られてメンタルダウンしたり、上司から叱責を受けてやる気を失うことで、退職に至る社員も出てくるでしょう。
しかし、営業活動の標準化でトップ営業のノウハウを共有し、営業として“なすべきこと”が明確になっていれば成果につながり、担当者も自信を持って仕事に取り組めます。
モチベーションも向上し、離職率もおのずと低下します。
新卒人材や中途人材の育成のスピードアップ
営業活動の標準化は、既存の人材のスキル底上げだけでなく、新たに配属される新卒や中途採用者の人材育成にも効果的です。
営業手法の勝ちパターンが標準化されていれば、採用者が身に付けるべきスキルとノウハウがはっきりしているため、育成にかかる時間を短縮することができます。
とにかく場数を踏んで経験を積む中で、それぞれが自分のやり方を見つけていく、という古いやり方にくらべ、はるかに効率的です。
新規人材が成果を出せるようになるまでの期間も短くなるので、採用コストを回収できるまでの時間も短縮できます。
営業の育成を成功させるための方法
では、営業の育成を成功させるためには、具体的にどうすればよいのでしょう?
方法とポイントを解説していきます。
1.営業活動の遂行手順を可視化する
まずは、売上向上に必要となる業務をプロセスに沿って段階設定、数値化します。
指標となるのは、例えば以下のような数値です。
- 受注率
- 解約率
- 商談期間
各段階の移行率や、移行に要した期間等を測定し、分析や改善点の洗い出しを行えるようにします。
必要なプロセスやアクションは、業種や自社で扱う製品によって異なるため要注意です。
人によって認識がズレないよう、誰が活用しても同じように判断ができるプロセスであること、顧客目線と齟齬のないプロセスであることも大切です。
2.担当者個々人の成果を可視化する
営業業務全体で段階ごとに測定した数値と同じものを、メンバー個々人でも測定し、各々の成果を可視化します。
ステップごとに数値を出すことで、メンバーそれぞれがどの段階で躓いているのか、何を苦手としているのかを洗い出すことができます。
その際、各担当者がステップごとにどういった行動をしているのか、具体的にヒアリングして把握しましょう。
紙資料を見せながら話しているのか、タブレットなどを使ってデモ動画を見せて説明しているのか、といった行動内容の違いが成果に影響しているパターンがあるからです。
目標を達成しているか否かだけで判断し、漠然と「あいつはデキる」「あいつはデキない」と評価するのではなく、定量的なデータで各プロセスごとの課題を検討していきましょう。
3.理想となる営業担当者の特徴、成功パターンの抽出
測定したメンバー個々人のプロセス前進率や推進スピードなどを指標に、それぞれで上位にくる担当者の特徴や、活動量などを抽出し明確化します。
たとえば、各指標の上位担当者がそれぞれどのような電話をしているのか、どのようなメールを送っているのか、といったことが把握できれば、どのような手法が有効なのかが見えてきます。
このようにして、理想となる営業担当者の特徴、成功パターンが抽出できれば、それをモデルとして人材育成の方向性、プロセスを考えていくことができます。
4.スキルレベルを可視化し、求めるレベルを設定する
2.で可視化した営業メンバーそれぞれの成果から、個々人の抱える課題を洗い出し、現時点でのスキルレベルを可視化します。
そして、3.で想定した「理想となる営業担当者」の特徴と成功パターンを基に、個々人に何が足りていないのか、どのぐらいのレベルのスキルを求めるのかを設定していきましょう。
たとえば、「新入社員にはリードとの関係構築〜案件化まで」といったように、レベル設定を明確に行うことで、計画的に人材を育成していくことができます。
そのうえで、具体的にどういったトレーニングが必要なのかを検討、設計しましょう。
5.育成プロセスを定期的に検証し、改善する
設計したトレーニングを実際に運用し始めたら、それが本当に「理想となる営業担当者」に近づけるものになっているのか、効果を定期的に検証します。
設計段階だけに注力し、そこで満足してしまっていては、実際には効果のない形骸化したトレーニングを続ける結果となるおそれがあります。
しっかりと検証・見直しをし、継続的に改善を加えていくことが大切です。
この効果測定、改善にはPDCAサイクルを用いるとよいでしょう。
PDCAについてくわしく知りたい方は、こちらの記事をごらんください。
営業プロセスを洗い出し、人材育成を成功させよう
営業人材の育成を成功させるためには、自社の現時点での営業プロセスを洗い出して、チーム全体・個々人の成果と課題を可視化することが重要です。
それには、営業担当者の日々の活動をしっかりと記録し、チーム全体で共有する仕組みが不可欠。
日報による報告やエクセルでのデータ共有では現場の負担が大きく、限界があるため、営業活動に関する情報を一元的に管理できるCRM/SFAツールを導入するとよいでしょう。
可視化したデータを基に営業活動を標準化し、成果をあげられる営業人材の育成を計画的に行っていきましょう。