目標達成シート(マンダラチャート)とは?特徴と作り方を解説
目標達成シート(マンダラチャート)は近年、注目されています。部署全体の目標と個人の目標のどちらにも使えるため、活用したいと考える人も多いでしょう。
目標達成シートを業績アップにつなげるためには、特徴やポイントを押さえたうえで、正しく書くことが重要です。この記事では、目標達成シートのメリット・デメリットも含めて詳しく解説します。
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目標達成シートとはなにか?
目標達成シートとは、目標達成に必要なステップや要素、取るべき行動を洗い出すために活用するシートです。「マンダラチャート」とも呼ばれています。
一例として、「年間売上高10億円」という目標を掲げたケースを考えてみましょう。達成に役立つ8つの要素や解決策と、各項目を達成するために必要な72個の行動や考え方が記されます。
マンダラチャートには、3×3のマスのA型チャートと9×9のマスのB型チャートがあります。A型チャートはかんたんな分析を行うとき、B型チャートは緻密な分析を行うときに使用します。
大谷翔平選手も目標達成シートを活用していた
米・メジャーリーグで活躍している大谷翔平選手は、高校1年生のときに、野球部の監督から薦められて目標達成シートを作成していました。
大谷翔平選手は「ドラ1 8球団(=8球団からドラフト1位指名を受ける)」ことを目標に掲げ、必要な8要素「キレ」「スピード160km/h」「変化球」「運」「人間性」「メンタル」「体づくり」「コントロール」と、それを実現するための72個のアイデアを洗い出して行動に移し、夢を叶えました。
目標達成シートを活用する5つのメリット
目標達成シートを活用することで、5つのメリットが得られます。日々の業務や業績にどのような形で役立つか、確認していきましょう。
課題を把握でき、目標達成に必要な行動を可視化できる
目標達成シートを作成すれば、目標達成に必要な行動を洗い出せるため、何に取り組めばよいかが明確に定まります。現状と理想を比較して課題を洗い出し、何が足りないかを考えてマスを埋めるため、やるべき内容を整理できるでしょう。
目標達成に必要な行動を可視化できること、これまでの取り組みを振り返る機会となることも、見逃せないメリットの一つです。
新たなアイデアに気づき活用できる
目標達成シートを作る過程では、目標を実現するために必要な要素や行動を深堀りすることになります。これまで意識しなかった多くの項目に気づく機会となるでしょう。
新たに気づいた要素やアイデア、行動は、目標の実現を後押しします。障害も乗り越えやすくなるでしょう。目標の達成により成長を実感しやすくなることも、メリットの一つです。
目標達成に集中できる
目標達成に集中できることも、メリットに挙げられます。目標達成シートを作成した段階で、必要な項目や行動はすでにリストアップされているためです。
やるべき項目が具体化されているので、目標達成に向けた取り組みを進めやすいでしょう。「次に何を改善していけばいいのだろうか?」と悩む必要もありません。
実際に行動に移せた項目が多くなれば、達成感を味わえます。モチベーションアップにつながり、目標達成への意欲が高まるメリットも見逃せません。
本人や上司による評価もしやすい
目標達成シートは本人・上司ともに、評価がしやすいこともメリットの一つです。目標につながる要素や行動は、80個に細分化されているためです。
各項目についてどれだけ達成できたか評価することで、客観的な評価をしやすくなります。多面的な評価も可能なため、評価の納得感を高められるでしょう。
目標の認識ズレを防げる
目標達成シートは個人目標のみならず、組織の目標達成にも活用できます。組織がどのような目標を設定しており、どのような行動をして達成するかを可視化できるためです。
内容が具体的に記されているため、認識のずれも起こりにくいでしょう。組織の全員が同じ意識を持って動けることも、メリットの一つです。
目標達成シートはどう作る?4つのステップで紹介
目標達成シートは、4つのステップで作成できます。すべて埋めると、目標達成に必要な8つの要素や解決策と、72の行動や考え方が記されます。
これから説明する内容をご確認のうえ、ご自身や組織の状況にマッチした目標達成シートを作ってみてください。
1.中央のマスに目標を設定する
まずは、中央のマスに目標を設定します。ここでは「年間売上高10億円」を掲げました。マスの色を濃く塗っておくと見やすいシートになります。
2.目標の周りの8マスに、目標達成に必要な要素を書く
次に、目標達成に必要な要素(アイデア)や解決策を8つ書き出します。ここでは「年間売上高10億円」を達成する要素として、以下の8項目を挙げました。
- ITツール
- 顧客との関係の維持
- 評価制度の見直し
- 営業パーソンの育成
- リピート率向上
- 新規顧客の開拓
- 社内コミュニケーション
- マーケティング施策
上記の要素を反映した図を、以下に示しました。
3.要素を中心に書いたマスを作る
2番目のステップでピックアップした要素や解決策を、周囲にある3×3マスの中央にコピーします。上の図を参考にしてください。マスには色を付けておくとよいでしょう。
4.要素をかなえるための行動や考え方を書く
3番目のステップでコピーした要素や解決策の周囲に、実現するための具体的な行動や考え方を8つずつ記入してください。たくさん思い浮かぶ場合は、重要な行動を選んで記しましょう。
目標達成シートを活用する2つのデメリット
目標達成シートは目標を実現する後押しとなる一方で、デメリットもあります。主な2つのデメリットを確認し、よりよい活用につなげてください。
優先順位が設定されていない
優先順位が設定されていないことは、目標達成シートのデメリットに挙げられます。この場合、目標を達成できるかどうかは本人の意欲に大きく影響されます。
状況を判断しつつ優先度を考慮して自主的に取り組みを進められる人ならば、目標を達成しやすいでしょう。一方で、計画を立てずに手を付けやすいことから進めてしまう人は、苦手な項目への取り組みを避けがちです。
結果、要素ごとの達成度に大きく差がつき、目標をなかなか達成できない結果となることが考えられます。
実現に向けたスケジュールは別途作成する必要がある
実現に向けたスケジュールを記す欄が無いことも、目標達成シートの弱点です。それぞれの項目は短期間で達成できず、ステップを踏んで行わなければならない場合もよくあります。目標を確実に達成するためには、実現に向けたスケジュールを作成して計画的に取り組むことが重要です。
目標達成シートを作成する5つのポイント
目標達成につながるシートを作るためには、5つのポイントを理解し、実行することが重要です。どのように進めればよいか、それぞれのポイントを確認していきましょう。
「目標」と「目的」の違いを理解する
目標達成シートの中央のマスには目標を設定しますが、この時に「目的」を書いてしまう人もいます。目標と目的には、以下の相違点があります。違いをよく理解しておきましょう。
- 目的:最終的に成し遂げたい事柄(例:自社の業績をアップする)
- 目標:目的に到達するために達成すべきこと(例:新規顧客◯件獲得)
目標は具体的な数値で、達成度を測定できるものを設定しましょう。
SMARTの法則で目標を立てる
達成しやすい目標を立てるうえで、「SMARTの法則」の活用は有効です。どのような法則か、以下の表にまとめました。
頭文字・単語 | 意味 | 目標設定のポイント |
S(Specific) | 具体的 | 5W1Hを使って目標を作成する |
M(Measurable) | 測定可能 | 数値で目標を示す |
A(Achievable) | 達成可能 | 過去の業績や経営資源、経営環境を考慮し、現実的な目標を設定する |
R(Result Oriented, Related) | 経営目標に関連する | 企業の経営目標に関連する項目を設定する |
T(Time-bound) | 期限がある | いつまでに達成するかを示す |
SMARTの法則は、以下の記事もご参照ください。
参考:目標設定のコツとは?仕事や会社における具体例とフレームワークを解説
半年や1年など適切な期間を設定して、実現可能な内容を記す
期間の設定も、重要なポイントの一つです。目標の内容を吟味したうえで、必要かつ十分な期間を設定しましょう。多くの目標は、半年や1年単位での設定が適切となる場合が多いです。
期間が短すぎると、短期的な目標ばかりを立てるようになります。とても目標を実現できないほど短期間ならば、モチベーションも大きく下がるでしょう。
一方で期間が長すぎると「期限が近づいたときに頑張ればよい」と思われ、怠ける人が出てくるかもしれません。途中でのチェックや見直しの効果も下がるおそれがあります。
可能な限り定量的に記す
目標は、できるだけ定量的な項目を挙げるとよいでしょう。定量的な目標は数字で示せるため、客観的な評価をしやすくなるからです。
売上高や利益率は、定量的な項目の一つです。評価に対する納得度が高まり、モチベーションのアップにつながるメリットも見逃せません。
適切な目標設定は、適切なKGI(重要目標達成指標)やKPI(重要業績評価指標)、KSF(重要成功要因)の設定につながります。これらの指標は、以下の記事で解説しました。
テンプレートを活用する
目標達成シートは手書きでもExcelでも作成できますが、フォーマットを統一したい場合はテンプレートを活用しましょう。
インターネットに公開されているテンプレートを上手に使うことで、フォーマットを統一でき、データを管理しやすくなります。その際は、商用利用が可能なものを選びましょう。
目標達成シートを上手に管理・評価するコツ
目標達成シートは作成したら終わりではなく、管理して評価するようにしましょう。
- 目標は達成できたのか?
- 目標達成に必要な能力を身に付けることはできたのか?
- 目標達成のために、どれぐらい行動をしたのか?
- 行動して実現できなかったことはないのか?
などを確認していきます。マネージャーが部下の目標達成シートを活用して評価するときは、達成できたことを褒めて、つまずいているところはフォローしてあげましょう。
目標達成シートを作成して営業力を強化しよう
目標達成シートの活用により、目標の達成に必要な要素や取るべき行動を可視化できます。
多角的な視点で、業績向上につながる項目を洗い出せるでしょう。トータルでの営業力を強化でき、従業員それぞれの能力アップや自社の業績向上につながります。
一方で目標達成シートは、万能ではありません。業績向上につなげるためには、特徴を理解した活用が有効です。本記事を参考にして、営業力強化につながる目標達成シートを作成してください。
また、下記の資料は営業の改善や見直し方法をまとめたものです。目標を設定した後に、営業の強化を行いたいとお考えの方は、資料をダウンロードしてみてください。