ニーズとは?ウォンツとの違いやニーズに合わせた営業・マーケティング手法を解説
顧客を理解し、ビジネスを成功させる上で欠かせない概念の一つに「ニーズ」があります。
本記事では、ニーズとウォンツの意味や違い、そして顧客ニーズを営業・マーケティングにどのように活用するかについて詳しく解説します。見込み客の分類ごとに適したアプローチ方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
ニーズとは?ウォンツとの違い
ここでは、営業におけるニーズの重要性や、ウォンツとの違いについて解説します。
ニーズの定義
「ニーズ」とは、個人や集団が持つ欲望のことを指します。
具体的には、人々が満たしたいと感じる欲望や必要とする要求、または問題を解決したいという願望などを含みます。
また、ニーズは多様な形で現れ、物理的なものや感情的なもの、社会的なものなど、さまざまな種類があります。商品やサービスを提供する企業や組織は、これらの多種多様な顧客のニーズを理解し、それに応えることでビジネスを成功させるよう努めています。
営業におけるニーズの重要性
顧客ニーズを把握することは、営業において非常に重要です。具体的にはニーズの把握によって以下2点の効果を期待できます。
購買意欲の促進
顧客が自分の理想や課題を解決するために求めている商品やサービスを把握することは、新しい商品・サービスの開発や改善のための重要なヒントとなります。
さらに、顧客ニーズを理解していると、営業活動やマーケティング施策も効果的に実施できます。顧客の本質的なニーズを理解できれば、“伝わる”キャッチコピーや提案を通じて顧客の興味を引き、購買意欲を高めることができるでしょう。
顧客満足度の向上
顧客のニーズの把握は、既存顧客の満足度向上にも直結します。
顧客が「自分のことを理解してくれた」と感じる取引を行うことで、継続的な取引につながりやすく、企業の長期的な利益にもつながります。
「ニーズ」と「ウォンツ」との違い
ニーズとウォンツはしばしば混同されがちですが、以下のような違いがあります。
項目 | ニーズ | ウォンツ |
意味 | 必須 | 欲求 |
例 | 「喉が渇いた」 | 「冷たい水を飲みたい」 |
本質 | 普遍的 | 個人的 |
具体的な商品・サービス | 特定されていない | 特定されている |
顧客アプローチ | ニーズを明確にする | ウォンツを刺激する |
人の行動には何らかの目的(=ニーズ)があり、目的を満たすための具体的な手段に対する欲求がウォンツです。つまり、ニーズは「目的」、ウォンツは「手段」という違いがあります。
ニーズは顧客の根本的な欲求であり、ウォンツはその欲求を満たすための具体的な手段や方法です。顧客のニーズを理解し、それに合わせたウォンツを提供することがビジネスの成功につながります。
ニーズの種類
顧客ニーズには、顕在ニーズと潜在ニーズの2つの種類があります。
企業は、顧客の顕在ニーズを把握し、それに応えるとともに、潜在ニーズを顕在化させるための取り組みを行うことが重要です。以下で詳しく説明します。
顕在ニーズ
顕在ニーズとは、顧客が自分の欲しいものやサービスを明確に自覚している状態を指します。この状態では、顧客は自分が叶えたい理想や解決したい課題を理解しており、なぜその商品やサービスが必要なのかを説明できます。
また、顕在ニーズを持つ顧客は具体的な要求を認識しているため、条件が合えばすぐに購買行動を起こす可能性が高いといえます。企業にとって、顕在ニーズを持つ顧客は営業やマーケティングの方向性がつかみやすいこともあり、優先的に獲得したいターゲットともいえるでしょう。
潜在ニーズ
潜在ニーズとは、顧客自身がその必要性に気づいていない、または意識できていない本質的な欲求のことを指します。
この状態では顧客は自分が本当に求めている理想や、それを実現するための最適解であるとを認識していないため、このニーズを満たす商品やサービスを必ずしも購入するわけではありません。
潜在ニーズを満たしたことを認識できると、その商品やサービスが本当に自分が求めていたものであることに気付き、高い満足感を感じることから、顕在ニーズよりも高い顧客満足度やLTV向上につながります。
企業が売上を伸ばすためには、顕在ニーズ層の顧客獲得も重要ですが、顧客の潜在ニーズを顕在化させる取り組みが必要です。これは営業・マーケティング活動を通じて行われ、顧客が日常生活の中で突発的にみずから気づく場合もあれば、企業の働きかけによってはじめて認識されることもあります。
こうしたプロセスを通じて、潜在的な欲求が明確なニーズとして表面化し、商品やサービスの購入につながることが期待されます。
顧客のニーズを理解する方法
顧客のニーズを理解するためには、さまざまな方法があります。ここではソーシャルリスニング、アンケート、インタビューについて詳しく解説しています。
これらの方法を組み合わせて顧客のニーズをより正確に把握し、ビジネスに活かしていきましょう。
ソーシャルリスニング(SNS調査)
ソーシャルリスニングとは、SNS上でのユーザーの会話や意見を収集・分析する調査方法です。この方法では、顧客が好むものや本音をリアルタイムで把握できるため、顧客ニーズや市場トレンドの把握に役立ちます。
企業はキーワードやハッシュタグを活用して情報を収集し、SNS上で自社製品・サービスに関する課題や悩みが投稿されていれば、それを顧客ニーズとして対応し、製品やサービスの改善に活かすことができます。
ソーシャルリスニングの大きなメリットは、顧客の生の声が聞ける点です。アンケートとは異なり、自由に投稿された内容から企業側では予想もしなかった顧客の意見を発見できる可能性があります。
また、インターネット上の情報を集計するため手軽に行えるのも利点です。しかし、発言者の性別や属性を把握するのが難しく、データの信頼性が低いというデメリットもあります。
アンケート(定量・定性調査)
アンケート調査とは、ユーザーにWebや用紙を用いたアンケートで必要な情報を回答してもらう手法です。
アンケート調査のメリットは、企業が知りたい情報に対して具体的な回答が得られることと、回答者の属性を把握できることです。また、一度作成したアンケート票を定期的に使用できるため、継続的な調査が容易です。
しかし、アンケートには「なぜそう思うのか」といった深いインサイトが掴みにくく、設問外の課題が見えづらいというデメリットがあります。
また、回答の動機が「インセンティブのため仕方がなく」といった理由の場合、本当の意見が得られない可能性もあります。そのため、インタビューなどさまざまな方法と組み合わせて実施するのが望ましいです。
商談でのインタビュー
インタビューは、自社製品やサービスを購入した顧客にヒアリングを直接行う手法です。
この方法では購入理由や実際の感想などを尋ねることが比較的、容易であり、顧客の本音をくみ取りやすいとされます。数量や割合では把握できないデータも得られる可能性がある点でアンケートとは異なり、顧客ニーズを理解する上で効果的です。
特に、商談の中でさり気なくインタビューを行い顧客ニーズを把握することは、営業活動において非常に重要です。データ数を稼ぐことは難しいものの、顧客の抱える本質的な課題(潜在ニーズ)が何かを直接聞いて明確化していくことができるのは、商談でのインタビューの大きなメリットといえるでしょう。
ニーズに合わせた営業×マーケティング戦略
近年、顧客は画一的な商品やサービスではなく、自分にとって最適な価値を提供してくれる企業を求めるようになっています。そのため、従来のマスマーケティング手法では顧客を獲得・維持することが難しくなっています。
顧客ニーズに合わせた最適な営業・マーケティング戦略を策定するためにも、以下の2点はおさえておきましょう。
ニーズへの適切なアプローチ手法を考える
顧客の心を掴み、確実な売上につなげるためには、適切な営業アプローチが不可欠です。以下では、顧客のニーズに合わせた4つの営業アプローチ手法をご紹介します。
① ペルソナ設定:顧客の「顔」を具体的に描き出す
まずは、自社の商品・サービスを購入する理想的な顧客像である「ペルソナ」を設定しましょう。
年齢、性別、職業、ライフスタイル、価値観など、顧客の属性を具体的に描き出すことで、より的確なアプローチが可能になります。ペルソナ設定は、単なる想像ではなく、市場調査や顧客データ分析にもとづいて行うことが重要です。
② 課題発見:顧客の「悩み」に寄り添う
ペルソナ設定にもとづき、その顧客が抱えている課題や悩みを具体的に特定しましょう。
表面的なニーズだけでなく、潜在的なニーズも見逃さず、徹底的に掘り下げることが重要です。課題発見には、ヒアリング、アンケート、SNS分析などさまざまな手法を活用しましょう。
③ ソリューション提案:顧客の「救世主」となる
ペルソナが抱える課題に対して、自社の商品・サービスがどのように解決に貢献できるのかを明確に示しましょう。
単に商品・サービスの機能や性能を説明するのではなく、顧客にとっての具体的なメリットをわかりやすく伝えることが重要です。提案内容は、ペルソナ設定と課題発見で得られた情報にもとづいてカスタマイズしましょう。
④ 関係構築:顧客との「信頼の架け橋」を築く
顧客との長期的な関係を築き、リピーターやファンを獲得するためには、信頼関係の構築が不可欠です。
そのためには、誠実なコミュニケーションを心がけ、顧客の立場に立って共感を示すことが重要です。また、アフターフォローもしっかりと行い、顧客満足度を高めましょう。
潜在ニーズの理解が重要
顧客は、かならずしも自分が本当に欲しいものや必要なものがわかっているとは限りません。
顕在化したニーズだけを捉えるだけでは、真の顧客満足度や売上向上は難しい時代です。そのため、営業・マーケティングでは潜在ニーズの理解がこれまで以上に重要となっています。
顧客との深いコミュニケーションや顧客行動の観察、顧客データの分析などを通じて潜在ニーズを掘り起こし、それを活かした戦略(施策)を立案しましょう。
参考:インサイトとは?顧客ニーズの分析方法やビジネス活用事例を紹介
ニーズの理解を軸とした営業・マーケティング活動を
本記事では、ビジネスにおける「ニーズ」の定義から振り返り、具体的な理解の方法や戦略への活かし方のヒントを解説してきました。
顧客ニーズの理解は、企業にとって持続可能性と売上を向上させるための最重要戦略です。顧客との深いコミュニケーションや多角的なデータ分析、また組織全体の取り組みを通じて顧客の真の欲求を洞察し、革新的な商品やサービス、顧客体験を生み出すことで、営業・マーケティングの目標数値を達成することができます。
これを機に、ニーズの理解を戦略の核に据え、顧客と共に歩む姿勢で営業・マーケティング活動を強化していきましょう。