One to Oneマーケティングとは?手法や事例、役立つツールを紹介
消費者の趣味や属性、行動履歴などのデータをもとに、それぞれ個別に最適なサービスを提供するOne to Oneマーケティング。
ネットからさまざまな情報を手軽に入手できるようになり、消費者が情報に触れるチャネルも多様化した現代において有効な手法として注目されています。
今回はその具体的な手法や事例、役立つツールを解説していきます。
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One to Oneマーケティングとは?
One to Oneマーケティングは、ユーザーの購買行動の傾向から需要を推測し、ひとりひとりにマッチしたアプローチを行なうマーケティング手法です。たとえば、顧客ごとに異なったクーポンを発行したり、その人の好みに合わせた商品を提案したりすることで、顧客との関係構築が可能になります。
新聞広告や雑誌広告、テレビCMが主な広告媒体だった時代には、同一の広告を大勢の人にばら撒く「マスマーケティング」が主流でした。しかし、技術の発展によってネット上での個人の行動の追跡や分析が可能になり、ユーザー個々人をターゲットにしたOne to One マーケティングが重視されるようになりました。
マスマーケティングと比べて作業工程の増えるOne to One マーケティングですが、最近はITツールの発達によって煩雑な作業を行わなくてもよくなり、AIによる自動化も可能になりました。そのため、一般的な手法として用いられるようになったのです。
One to Oneマーケティングの目的とメリット
One to One マーケティングの目的とメリットについて、解説していきます。
One to Oneマーケティングの目的は「ファンの創出」
One to Oneマーケティングの主な目的は以下の3つです。
- 顧客満足度の向上:
顧客一人ひとりのニーズや嗜好に合わせた情報を提供することで、顧客満足度を向上させることができる - 競争力の強化:
顧客と良好な関係を築くことで、顧客ロイヤルティを強化することができ、結果として競合優位性が高まる - LTVの向上:
上記の顧客満足度とロイヤルティの向上により、顧客が継続的に商品やサービスを購入してくれるようになり、顧客生涯価値を向上させることができる
これらの実現により、顧客ファンが生まれ、継続的な購買を行ってもらえるようになります。つまり、One to Oneマーケティングとは「ファンの創出」により、顧客との中長期的な関係を構築する重要な手法といえます。
参考:LTV(ライフタイムバリュー)とは?言葉の意味や重要性・計算方法を紹介
One to Oneマーケティングを行うメリット
消費者一人ひとりに合わせたアプローチに行なうマーケティングには、以下のようなメリットがあります。
- ユーザーのニーズに沿った情報を配信するため、広告であっても「うっとうしい」「しつこい」と思われにくい
- マスマーケティングと比べてコストを低く抑えられる
- ITツールの活用によって、導入の手間や運用のコストも少なく済む
消費者に合った情報が提供されるため、関心を持ってもらいやすく、購買につながる効果的なアプローチを行なうことができます。
One to Oneマーケティングの具体的な手法
One to One マーケティングには具体的にどんな手法があるのか、特徴と合わせて紹介していきましょう。
レコメンデーション
「レコメンデーション」とは、直訳すると「おすすめ」「推薦」などの意味。その言葉どおり、おもにECサイトなどにおいて、顧客の購入履歴や閲覧履歴などをもとに類似商品や関連商品を勧める手法です。
レコメンデーションに活用されるデータとしては、同じ傾向を持つ他の顧客の興味対象や、顧客のプロフィールなどの情報も含まれます。
顧客が関心を持つ可能性の高い商品ばかりが表示されるため、顧客にとっては欲しいものを探す手間が省け、購買につながりやすい高効率な手法といえます。
リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、「Re targeting」という名称のとおり自社サイトを訪問したことのあるユーザーに対し、他のサイトでも商品・サービスの広告を表示する手法です。
ユーザーにとってすでに関心を持っている、ある程度の知識を持っている商品・サービスが広告として表示されるため、購入・成約率が高くなる傾向があります。
広告の配信先となるのはwebサイトやアプリ、SNS、動画配信サイトなどさまざまで、広告費用はクリックの回数や広告が表示された回数によって変わります。
メール配信・DM(ダイレクトメール)送付
メール配信やDM(ダイレクトメール)送付は、顧客一人ひとりの属性情報、購買履歴、行動履歴などをもとに、個別に最適化された内容を届けます。具体的には、以下の流れで行うことができます。
- セグメンテーション:
CRMツールを活用して顧客データを分析し、年齢、性別、地域、興味関心、購買履歴など based on 共通の属性を持つ顧客グループを分類する - ターゲティング:
セグメントされた顧客グループそれぞれに、そのグループに特化した内容のメールやDMを送付する - パーソナライゼーション:
顧客一人ひとりのデータを活用し、名前、購入履歴、閲覧履歴などにもとづいた個別メッセージや商品・サービスをレコメンドする
これらの手法により、顧客にとってより関連性の高い情報や商品・サービスを提供することができ、開封率やクリック率、コンバージョン率の向上につながります。
参考:セグメンテーションとは?分析に役立つ具体的な方法と手順、大手企業の活用事例を解説
LPO(ライディングページの最適化)
LPOとはLanding Page Optimizationの略で、検索結果や広告などをクリックして最初にたどり着くページである「ランディングページ(LP)」を最適化し、訪問したユーザーの購買・成約率を上げる施策のことです。
サービス申込みや商品購入に特化したページであるLPは、ユーザーに対する“表玄関”です。ページの訪問者のアクションなどを解析してサイトのデザインや構成、文言などを最適化することで、ページからの途中離脱を防いでコンバージョン(=成約)へ導きます。
デバイスやチャネルごとの使い分け
顧客へのメッセージ、アプローチを適切に届けるためには、複数のデバイス・チャネルを使い分けてコントロールすることも大切です。
消費者はスマホやタブレット、PCなど複数のデバイスを使い分けているのが一般的で、使うデバイスごとに接した商品への心理的距離が異なります。また、日中はPCで仕事に関する調べ物、スマホは夜のリラックスタイムに、といったようにデバイスによって利用する時間帯や用途も異なります。
年齢層や性別によって主に使うデバイスも変わるため、デバイスやチャネルごとに適したアプローチ、情報やコンテンツを提供することで、顧客により関心を持ってもらいやすくなるのです。
One to Oneマーケティングを実現する「MAツール」
MAツールとはMarketing Automation(マーケティングオートメーション)の略称で、顧客データを収集・分析し、顧客一人ひとりに最適なコミュニケーションを行うためのツールです。
従来の画一的なマーケティング施策とは異なり、MAツールを使用することで顧客一人ひとりの属性や行動にもとづいて個別に最適なメールや広告、Webコンテンツなどを配信することができるようになります。
MAツールによるOne to Oneマーケティングの実現
MAツールでは顧客の属性情報や行動履歴、購買履歴などを分析し、個々の顧客に最適なコンテンツやプロモーションを配信することができます。たとえば、以下のような施策が考えられます。
- 過去の購入履歴にもとづいてレコメンド商品をメールで配信する
- 閲覧した記事にもとづいて関連する記事や資料を配信する
- 顧客の興味関心に合わせたキャンペーン情報を配信する
One to OneマーケティングはBtoBにおいても重要
従来のアプローチだけでは、以下の理由で顧客ニーズを深く理解し、的確な提案を行うことが難しくなっています。
- 顧客企業のニーズも多様化
- BtoBで重要な「取引の中長期化」
- 市場の競争激化
顧客企業一社一社のニーズに合わせた営業活動(One to Oneマーケティング)を行うことで、顧客企業の満足度向上や取引の継続、そしてそれが売上向上へつながっていきます。
「営業×マーケティング」という観点で顧客に最適なアプローチを行うためにも、CRMやSFAの営業DXに加えて、MAツールの有効活用も検討して見るとよいでしょう。
営業 × マーケティングで受注率UPを実現!MAツール「esm marketing」の詳しい機能はこちら
One to Oneマーケティングの成功事例3選
株式会社ZOZO
株式会社ZOZOの運営する、日本を代表するファッションECサイト「ZOZOTOWN」では、2010年にCRM部門を立ち上げてOne to one マーケティングを導入。キャンペーン管理ツールの活用で、個々のユーザーにパーソナライズした200種類以上のメールの配信で成果をあげてきました。
また、
- カートにある商品のレコメンドする
- 購入完了メールにおすすめ商品を記載する
- お気に入り商品のセール情報やキャンペーンを通知する
といった手法を導入。
さらに、「ZOZOSUIT」や「ZOZOMAT」といった計測スーツを顧客に配布し、計測データを顧客への商品のレコメンドに活用する施策で、好業績を上げ続けています。
株式会社ゲオ
株式会社ゲオは、運営する複合メディアショップ「GEO」でCDやDVD、ゲーム、書籍など幅広いジャンルの商品を取り扱っています。会員メールの配信、アプリのプッシュ通知などにMAツールを導入し、データマイニングツールとの連携でOne to One マーケティングの施策を行なったところ、以下のような効果がありました。
- アプリプッシュ通知のA/Bテストでクリック率が向上
- パーソナライズメールの配信によりメール開封率が向上
- キャンペーン対象顧客の1ヶ月間のレンタル利用金額増加
顧客一人ひとりの趣味・嗜好にもとづいたおすすめ商品を、来店する可能性のもっとも高い曜日・時間帯に配信するなどの施策で、売上250%につながったそうです。
Amazon
言わずと知れた世界最大級のECサイト・Amazon。1995年に本の販売サイトからスタートした同社は、「地球上で最もお客様を大切にする企業になること」を理念に掲げ、驚くべきスピードで成長し続けました。
Amazonが具体的に行っている施策は、以下のようなものです。
- ユーザーの購入履歴にもとづいて「おすすめ商品」「関連製品」を最適化
- 自社のアルゴリズムで顧客の趣向に合わせてサイトを強化
顧客とのつながりによって、マーケティング戦略において重要な要素となるチャネル(=Place)、販促(Promotion)、価格(Price)、商品・サービス(Product)を改善し続け、他の追随を許さない独自路線を突き進んでいます。
One to One マーケティングによる上質な顧客体験で自社のファンを創出しよう
顧客の趣味・嗜好、ニーズに合わせアプローチするOne to One マーケティングは、顧客にとって満足度の高い“体験”となり、自社のファン=ロイヤルカスタマーの創出につながります。
人力で行なう場合には多大なリソースが必要となり、現実的な手法ではありませんが、MAツールの導入で自動化することにより、効率的なマーケティング施策が可能になります。
顧客との関係構築に課題を感じている方は、MAツールを活用したOne to One マーケティングの導入を検討してみてはどうでしょうか。