営業利益とは?経常利益との違いや計算方法、営業利益の活用法まで簡単に解説
財務諸表や決算書などに記載されている「営業利益」。企業の財務状況を判断したり、今後の経営方針を立てたりするための指標として役立つものであり、ビジネスパーソンとしては身に着けておきたい会計用語の1つといえます。
そこで、営業利益とはどのような利益なのか、具体的な計算方法やその他4つの利益である「売上総利益 」「経常利益」「税引き前当期純利益」「当期純利益」との違い、営業利益の具体的な活用方法について解説します。
営業利益とは
営業利益についてお伝えする前に、まずは企業の利益全体についてご説明しましょう。1年間の経営成績がひと目でわかる「損益計算書」には次の5つの利益が記載されますが、それぞれ意味は異なります。
- 売上総利益(粗利、粗利益)
- 営業利益
- 経常利益
- 税引前当期純利益
- 当期純利益
この中でもっとも重要な利益が営業利益ですが、営業利益を知る前に、売上総利益を理解する必要があります。売上総利益は「営業の売上から売上原価を差し引いた利益」のことで、企業の大ざっぱな収益のことをいいます(詳細は後述します)。
営業利益はこの「売上総利益から、さらに営業活動にかかった販売費と一般管理費を引いた利益」のことで、この営業利益が高額であればあるほど、優良な企業であるといえるでしょう。
営業利益とは「本業がどれだけ儲かっているか」
営業利益は、企業の主な営業活動において生まれた(稼いだ)利益のことですが、ここで注意しなければならないのは、本業(企業の定款において事業目的として記載されている事業)において儲かった利益のことだけを指している点です。
あくまでも本業で売り上げた売上高から、売上原価を差し引き、さらに販売に要した販売費と一般管理費を差し引いて得た利益であることを覚えておきましょう。つまり、営業利益からは、企業における「本業の稼ぐ力」がわかるのです。
ちなみに、企業が本業以外のサービスや商品で得た副業(営業外収益)の売上は、雑収入、もしくは雑益に計上しますが、本業と副業のバランスを見ていくことも経営上の重要なポイントといえます。
営業利益の計算式と具体例
営業利益の計算式
営業利益は、以下の計算式で算出されます。
売上高 - 売上原価 - (販売費 + 一般管理費)= 営業利益
それぞれの具体的な項目は以下の通りです。
売上高
- 本業のビジネスにおいて発生した売上髙
売上原価
- 売れた商品やサービスにかかったコスト
※材料費、外注費など(売上原価の考え方は業種によって異なる)
販売費
- 営業や販売に携わっている人の人件費
- 宣伝広告費
- 販売促進費
- 保管費
- 配送費
- 発送費
- 通信費
- 旅費交通費 など
一般管理費
- 販売に関係のない従業員の人件費(役員報酬込み)
- 家賃
- 水道光熱費
- 消耗品費
- 保険料
- 交際費
- 租税公課 など
営業利益算出の具体例
上記営業利益算出の計算式を使用して、具体的に計算してみましょう。
本業の売上高:3,500万円
売上原価 :1,500万円
販売費 :600万円
一般管理費 :400万円
3,500万円 - 1,500万円 = 2,000万円(売上総利益)
2,000万円 - (600万円 + 400万円) = 1,000万円(営業利益)
この企業の場合、本業の営業利益が1,000万円あり、黒字であることがわかります。売上原価や販売費、一般管理費を適切に管理しているといえるでしょう。
営業利益と売上総利益 、経常利益、税引き前当期純利益、当期純利益との違い
売上総利益との違い
売上総利益とは
売上総利益は「粗利」「粗利益」とも呼ばれ、本業の売上高から仕入れ値(売上原価)を引いて算出されます。
以下の計算式で本業における利益をざっくりと算出することができますが、この数字により、商品やサービスにどの程度魅力があるのかがわかります。つまり「商品やサービスの成績を表すもの」といえます。
売上高(本業) - 売上原価 = 売上総利益
売上総利益と営業利益との違い
この算出式からわかるように、売上総利益は営業利益とは異なり、販売費、一般管理費のコストは考慮していません。
一方、営業利益は、この売上総利益から、さらに販売費と一般管理費を差し引いたもののため、売上総利益よりも金額は少なくなります。営業利益は、「本業の成績を表すもの」といえるでしょう。
「売上総利益よりも営業利益がかなり低い」という結果になった場合は、販売費と一般管理費がかかりすぎている可能性があるため、見直しが必要です。
経常利益との違い
経常利益とは
経常利益は、「営業利益に営業外収益(本業以外で経常的に得ている収益)をプラスし、営業外費用(営業活動以外の活動において経常的に発生する費用)を引いたもの」です。
計算式は以下の通りです。
営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 = 経常利益
営業外収益
- 受取利息
- 有価証券利息
- 受取配当金
- 仕入割引
- 有価証券評価益
- 有価証券売却益
- 不動産賃貸料
- 為替差益
- 雑収入 など
営業外費用
- 社債利息
- 支払利息
- 有価証券売却損
- 手形売却費
- 為替差損
- 雑損失
- 売上割引 など
営業利益と営業外収益をプラスした金額よりも営業外費用がそれらを上回る場合、経常利益がマイナスになることもあります。
たとえば、営業利益が1,000万円あったとしても、営業外収益が500万円、営業外費用が2000万円だった場合、経常利益はマイナス500万円となり、大きな赤字であることがわかります。
経常利益と営業利益との違い
営業利益は「本業の売上高から売上原価、販売費、一般管理費を差し引いたもの」ですが、経常利益には本業以外で得た収益と損失が含まれています。
たとえば、営業利益が赤字の場合は本業の経営状態が悪化していることがわかりますが、それにもかかわらず経常利益が黒字の場合は、資産運用など他の事業が順調であることがわかります。
税引前当期純利益との違い
税引前当期純利益とは
税引前当期純利益は、その事業年度のすべての「収益」から、すべての「費用」を引いた利益のことです。
つまり、前述した経常利益に、臨時的に発生した特別損益(特別利益と特別損失の差額)を加味した利益であり、法人税や事業税などの税金を納めていない状態の金額のことをいいます。
経常利益 + 特別利益 - 特別損失 = 税引前当期純利益
特別利益も特別損失も毎年発生するものではなく、以下のような臨時的に発生する項目が当てはまります。
特別利益
- 株式売却益
- 不動産売却益
- 保険差益 など
特別損益
- 自然災害による損失
- 盗難による損失
- 火災による損失 など
税引前当期純利益と営業利益との違い
税引前当期純利益が営業利益と違う点は、資金の運用結果(営業外収益をプラスして営業外費用をマイナスしたもの)を反映し、さらに臨時的に発生した損益(特別利益をプラスし特別損失をマイナスしたもの)を反映しているところです。
当期純利益との違い
当期純利益とは
当期純利益は税引前当期純利益から税金を差し引いた金額のことで、以下の計算式で求められます。
税引前当期純利益 - 税金 = 当期純利益
税金
- 法人税
- 事業税
- 住民税など
※上記計算式の合計額に、法人税等調整額(損益計算書の勘定科目のひとつで、企業の会計と税務の会計に生じるズレを調整するもの)が加減されることで、より適切な当期純利益を算出することができます。
当期純利益と営業利益との違い
営業利益は本業の総売上から売上原価、販売費、一般管理費を差し引いて算出される利益です。一方、当期純利益は、営業利益に営業外収益をプラスして営業外費用をマイナスし、さらに特別損益をプラスした額から税金を差し引いたものです。
つまり、営業利益からは「本業で稼いだ利益」がわかりますが、当期純利益からは「会社の最終的な利益」がわかるといえます。
営業利益を活用するには
売上高営業利益率で総合的な収益性を計る
売上高営業利益率とは
売上高営業利益率は、本業における利益が会社全体の売上高に占める割合を表し、以下の計算式で算出されます。
営業利益 / 売上高 × 100 = 売上高営業利益率
売上高営業利益率でわかることは?
売上高利益率は営業利益をもとに算出されるため、本業の稼ぐ力を知ることができます。
一般的に、卸売業や小売業などの売上高営業利益率が低いケースでは、「薄利多売(利益が少ないものを数多く販売する手法)の戦略」を採用していることが多いといわれています。
一方、専門技術を提供するサービス業や不動産業などの売上高営業利益率が高いケースでは、「商品やサービスに高い付加価値をつける戦略」を採用していることが多く見られます。
また、売上高営業利益率がわかれば、規模が違う同業他社との比較も可能です。
財務諸表分析で総資本営業利益率を計算
総資本営業利益率とは
総資本営業利益率は「会社の総資本(自己資本と他人資本を合わせたもの)に対し、本業が生み出している営業利益の比率のこと」で、以下の計算式で算出することができます。
営業利益 ÷ 総資本 × 100 = 総資本営業利益率(%)
総資本営業利益率でわかることは?
総資本営業利益率は財務諸表分析の利益に関する指標として使われ、管理会計においては、総資本営業利益率の比率の向上をめざすことが重視されます。
具体的には、以下のように分析します。
総資本が少ない、営業利益が多いなどの場合
→総資本営業利益率は高くなり、この比率が高いほど収益性が高いと判断します。
総資本が大きい、営業利益が少ないなどの場合
→総資本営業利益率は低くなり、収益性が低いと判断します。
賞与原資を算出する業績指標にも役立つ
役員や従業員に支給する業績連動型賞与とは、営業利益などの利益を指標として賞与額を連動させる賞与のことで、営業利益における一定の割合が賞与原資となります。
業績によって金額が決まるため、営業利益は賞与の金額を決める際の基準として役立つといえるでしょう。
そのほか、効果的な売上分析の手法については以下の記事で詳しく解説しています。
効果的な売上分析7つの手法・メリットから成功事例まで徹底解説
まとめ
企業には5つの利益があることをご紹介しましたが、その中でも経営の指標として基本となる利益が、本業の利益を表す営業利益です。自社の“稼ぐ力”がわかる営業利益を計算・分析することで、売上の増加、コストの削減など、今後の目標や方向性が明確となります。
さらに、企業の収益力を高めるためには、その他4つの利益や営業利益率も分析・活用してみてはいかがでしょうか。会社の経営状況をより正確に知ることができるでしょう。
売上管理を効率化し、さらなる業績アップを図りたい場合は、売上管理の専用システムを導入することも効果的です。以下の記事ではおすすめの売上管理・販売管理システムを厳選して紹介しているため、ぜひ参考にしてください。