パーソナライズとは?その意味とメリット、活用するための注意点について解説
私たちが日頃、なにげなく使っているWeb検索やSNSのタイムライン、通販サイトのレコメンドなど、Web上で接する情報の多くは自分用にパーソナライズされています。
ユーザーの求める情報にたどり着きやすくするためのパーソナライズという仕組みは、ユーザーの利便性を高めるだけでなく、サービス提供者側にとっても多くのメリットをもたらすものです。
この記事では、Webマーケティングで取り入れられているパーソナライズという考え方や仕組みについて解説します。
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パーソナライズとは
パーソナライズ(Personalize)とは、もともとあるものを特定の個人に向けて作りかえること。マーケティング領域では、個々ユーザーの属性、ニーズ、興味・嗜好、関心の度合いなどに合わせたUX(ユーザーエクスペリエンス)を提供することを指します。
代表的な例としては、Googleのパーソナライズド検索やパーソナライズド広告が挙げられます。
パーソナライズド検索は、検索エンジンがユーザーの検索履歴やお気に入り、評価などの分析結果にもとづいて検索結果を調整することで、ユーザーが求める情報にたどり着きやすくしています。
パーソナライズド広告も同様に、ユーザーの属性や行動履歴などのデータからユーザーに最も関連性の高い広告を表示させることで、ユーザーが求める商品を見つけやすくなり、広告効果を向上させることができます。
カスタマイズとの違い
カスタマイズ(Customize)も、ユーザーに合わせて製品やサービスに変更を加えることですが、カスタマイズにはユーザーがみずから設定やアレンジを変更する、あるいは、ユーザーの要望や意見を直接取り入れてサービス提供者側が対応する、といったニュアンスが加わります。
パーソナライズの主体がサービス提供者側であるのに対し、カスタマイズはユーザー側が主体であるという点で異なります。
オプティマイズとの違い
オプティマイズ(Optimize)は、最適な状態やパフォーマンスを実現するためにプロセスや戦略を調整することを指します。パーソナライズと同様に、オプティマイズを実施する主体はサービスの提供者側です。
Webマーケティングでは、SEO(Serch Enngine Optimization:サーチエンジン最適化)やLPO(Landing Page Optimization:ランディングページ最適化)、EFO(Entry Form Optimization:入力フォーム最適化)といった用語が使われます。
広い意味では、業務システムの性能を向上させるためのソフトウェアやハードウェアの調整、営業プロセスの改善のための活動、顧客対応やサービスを改善するための活動に対してもオプティマイズという用語が使われることがあります。
パーソナライズが求められる背景
幅広い業種や業界でパーソナライズされたUXが求められる背景として、次のような点を挙げることができます。
市場の成熟化と消費者ニーズの多様化
ほとんどの市場で消費者の顕在ニーズはすでに満たされており、消費者が製品やサービスに求める要素は多様化しています。
従来の画一的な方法で消費者にアプローチするマスマーケティングは限界を迎えており、個々の顧客との直接的な対話や関係づくりからアプローチを行うOne‐to‐Oneマーケティングが取り入れられるようになりました。
One‐to‐Oneマーケティングの根幹となる考え方がパーソナライズであり、潜在ニーズも含めた多様なユーザーの要求にアプローチするためには、さまざまなユーザーデータを活用したデータドリブン(データ駆動型)なマーケティングが求められます。
参考:One to Oneマーケティングとは?手法や事例、役立つツールを紹介
消費者が接する情報の肥大化
インターネットとスマートフォンが普及したことで、消費者は処理しきれないほどの情報に日々、さらされています。
大量の情報に接して多くの選択肢を持つことができるのは一見よいことに思えますが、多すぎる選択肢が与えられると、選択するための判断に大きな負担を感じることになります。
不要な情報を減らし、消費者が選びやすい状況を作り出すという意味でもパーソナライズは大きな役割を果たします。
パーソナライズ技術の発展
インターネットを通じてやり取りされる情報が増加するのに合わせて、CRMツールをはじめとする各種ツールを活用することが一般的になってきました。
属性情報や取引情報と合わせてWebサイトやSNS上でのユーザーの行動を把握し分析することで、パーソナライズされた広告やコンテンツを提供できるようになってきたことも大きな要因です。
パーソナライズの具体例
パーソナライズの具体例には以下のようなものが挙げられます。
レコメンド
ECサイトのレコメンド機能もパーソナライズの代表的な例といえます。ECサイト利用者の過去の購入履歴や閲覧履歴などを分析して、おすすめの商品を表示させる機能です。
商品の購買履歴や閲覧履歴から次に購入される確率の高い商品を提示する方法や、同じ商品を購入した他のユーザーの購入商品を勧める方法など、さまざまなルールが用いられます。
パーソナライズド検索
ユーザーの興味・関心に対する検索結果の精度を高めるのがパーソナライズド検索です。過去の検索キーワードや閲覧したページ、位置情報、SNSのアカウント情報などにもとづいて、検索結果に調整が加えられます。
店舗名で検索した場合に、ユーザーの現在地に近いお店が表示されるのがパーソナライズド検索の具体的な例です。
パーソナライズド広告
パーソナライズド広告もユーザーのWeb上での行動履歴を分析して、購買につながる可能性の高い広告を表示させる機能です。
ユーザーにとっては興味や関心がある分野の広告が表示されることが多くなるため、ノイズと感じられる情報が少なくなります。広告主側にとってはターゲット層と潜在顧客へのダイレクトなアプローチにつながり、広告の費用対効果を高めることができます。
SNSのパーソナライズド表示
ユーザーのプロフィール情報のほかフォローやコメント、シェア、いいねなどの行動履歴をもとにユーザーの興味・関心を分析して、ユーザーが見たいコンテンツを表示させる機能です。
ユーザーにとっては興味をひくコンテンツが多く表示されるようになることで、情報収集の効率が高まり、プラットフォーム側にとっては滞在時間が増え、より多くのエンゲージメントを得られるようになります。
ステップメール
購買プロセスのなかでユーザーが特定のアクションを起こした場合に、あらかじめ用意したプロセスの段階に応じた内容のメールを配信するマーケティング手法です。toBの分野で多く採用されています。
資料請求のあったユーザーに対して製品活用セミナーの案内を送る、購入したユーザーに関連する商品を紹介する、といったことを行います。
参考:ステップメールとは? 作り方や配信例・成功事例まで解説
インタラクティブなコンテンツ
ファッション系のECサイトで用いられるバーチャル試着や、家具の配置をAR(拡張現実)で確認するARビュー、質問に回答してもらい、ユーザーの回答結果に応じた商品をお勧めする診断コンテンツなど、オンライン上でのユーザーとやり取りを行うものもパーソナライズの具体例に含まれます。
ユーザーがみずからインタラクティブに参加する要素を取り入れることで、商品の選定を効率化し、ユーザーの問題解決により近づくことができます。
パーソナライズがもたらすメリット
ここまで述べたように、パーソナライズされたコンテンツやサービスを提供することはユーザーにとってプラスの影響をもたらすと同時に、サービス提供者側も次のようなメリットを提供します。
コンバージョン率の向上
コンテンツや広告をパーソナライズすることで、ユーザーは自分が求めるものを見つけやすくなると同時に、求めていたものよりさらに相応しいもの、あるいは、合わせて必要なものなどを知る機会が増加します。
必然的に売上をはじめとするコンバージョンを高める効果をもたらします。
LTVの向上
パーソナライズされたコンテンツやサービスを提供することでユーザーの満足度が高まり、継続的な利用やより多くの購買行動につながっていきます。
さらに、パーソナライズの程度が高まるほどユーザーにとってのスイッチングコストも高まるため、LTVを向上させる大きな要因となります。
参考:LTV(ライフタイムバリュー)とは?言葉の意味や重要性・計算方法を紹介
潜在ニーズの掘り起こし
ECサイトでは、購入された商品に関連する人気の高い商品、同じものを購入した他のユーザーが購入した商品など、さまざまなルールにもとづいてレコメンドが表示されます。
このような仕組みによって、レコメンドに表示される商品がユーザーのこれまで気づかなかったニーズを掘り起こすことにつながり、クロスセルの増加や新しいユーザーの獲得につながります。
エンゲージメントの向上
特にサービスを提供する業種では、きめ細かなパーソナライズがユーザーの「理解されている」「大切にされている」という感情につながり、それがエンゲージメントを高めることに結びつきます。
エンゲージメントの向上が顧客ロイヤリティを醸成し、LTVを向上させます。
マーケティングの効率化
パーソナライズされた情報を提供する仕組みそのものがターゲティングの精度を高めることを挙げましたが、ターゲティングの精度が高まることは、ROAS(広告の費用対効果)の向上など、さまざまマーケティング施策の効率を高めることに寄与します。
パーソナライズのデメリット
ユーザーに最適な情報を提供するためのパーソナライズには以下のようなデメリットも考えられます。
ユーザーがフィルターバブルに陥る可能性
パーソナライズされたインターネット上の情報は、自分の興味・関心や好みに従った情報であるため、それ以外の多様な情報に触れる機会を狭めている可能性も否定できません。
これをフィルターバブルといい、特に、SNSで自分と同じ価値観や考え方の意見にばかり触れることで思想や嗜好が偏る「エコーチャンバー効果」を生み出してしまうことが懸念されます。
ユーザーニーズに合致しない可能性
パーソナライズのルールや仕組みはサービス提供者側によって決められます。そのため、パーソナライズを行うための顧客データが不十分であったり、パーソナライズのアルゴリズムが不完全なものであった場合、ユーザーに提供される情報が、かならずしもニーズに合致したものとはならないこともあり得ます。
また、パーソナライズされた情報を生成するためのもとになるユーザーの属性情報や行動履歴は、過去のデータであるため、ユーザーの興味・関心や嗜好が変化した場合に、それが反映されるまでに時間がかかるといったこともデメリットのひとつです。
toBの場合のパーソナライズ
ここまで、toCのビジネスを対象としたWebマーケティングにおけるパーソナライズを中心に述べてきましたが、toBのビジネスにもパーソナライズという考え方が取り入れられるようになっています。
企業を顧客とする販売では契約や納品の条件など相手先による個別対応が多いという点では、もともとパーソナライズという概念がなじむ業種であったといえます。
toBの場合、購入担当者と購入意思決定者が異なり、購買プロセスが多くの段階を踏むことが特徴です。
特に、インバウンドセールスの割合が高まってきている昨今では、購買プロセスのどのタイミングでどんな提案や働きかけを行うかという点がパーソナライズを検討する上で重要なポイントとなります。
CRMを活用してパーソナライズに取り組もう
主に、Webマーケティングの文脈で語られることの多いパーソナライズという考え方ですが、顧客データの有効活用はあらゆる業種に求められる優先課題のひとつです。
特に、記事のなかでも触れたtoBの業種では、リアルタイムで進捗状況を把握しタイムリーに適切な情報を届けることがパーソナライズ化を進めていく上で不可欠な取り組みです。
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