口コミとは?購買行動につなげブランドイメージを高めるための効果的な活用法
SNSをはじめとする個人の情報発信が盛んになるにつれて、インターネット空間で拡散される口コミ情報をマーケティングに活用する取り組みは、すでに多くの企業に広がっています。
一方で、口コミのマーケティングへの活用には、ネガティブな反応が引き起こされたり、虚偽の情報が拡散されたりするおそれがあり、コントロールが難しいという特徴があります。
インターネット空間で発信される口コミについて、その種類や特徴、マーケティングに活用する場合の注意点について解説します。
口コミとは
口コミとは、「口頭」による「コミュニケーション」の略語と言われており、対面での口づたえによる情報の伝達・拡散といった意味で使われはじめたものです。
近年では、SNSなどを活用したインターネット空間での情報拡散を指す場合が多くなり、口コミをマーケティングに活用しようという取り組みも盛んになってきました。
口コミは自発的に発信される情報であることから、消費者の本音や率直な意見であるとされており、商品やサービスの肯定的な情報が口コミを通じて拡散された場合、企業側にとっては大きなマーケティング効果を得ることができます。
口コミマーケティングの種類
口コミによる情報拡散をマーケティングに活用することを「バイラルマーケティング」といいます。口コミマーケティングの用語として他に、バズマーケティング、インフルエンサーマーケティング、ステルスマーケティングという言葉があり、いずれもバイラルマーケティングに含まれます。
バイラルマーケティング
バイラルマーケティングは、マーケティングの手法の一つで、口コミを使って認知度を広げたり顧客を獲得したりすることを目的としています。
SNSを中心として個人によるネット上での情報発信が活発化し、自主的に商品やサービス、ブランドについて情報を共有するというユーザー行動が見られるようになりました。それをマーケティングに取り込んでいこう、という取り組みがバイラルマーケティングです。
SNSにはリツイートやシェアボタンなどの機能があり、これにより情報を簡単に拡散・共有することができます。これが口コミがネット空間で広まりやすい要因の一つになっています。
バズマーケティング
インターネット上で特定の話題が短期間に大きく拡散していく現象は、「バズる」と表現されることがあります。このインターネット空間の情報拡散のメカニズムを戦略的に利用しようとするマーケティング手法がバズマーケティングです。
意図的に注目されやすい情報を作り出すことで、口コミによる情報拡散を狙うアプローチです。
インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングとは、SNS上で多くのフォロワーを持つインフルエンサーを起用し、商品やサービスの認知度を高めるマーケティング手法です。
インフルエンサーは、その専門分野や趣味嗜好などで特定の層から支持を集めており、その発信する情報は大きな影響力を持っています。こうしたインフルエンサーに商品やサービスをPRしてもらうことで、ターゲット層へのアプローチを効率的かつ効果的に行うことができます。
ステルスマーケティング
ステルスマーケティングとは、広告であることを隠して商品やサービスを宣伝する行為です。
2023年10月1日より、日本では景品表示法が改正され、ステルスマーケティングが違法となりました。ステルスマーケティングを行った場合、課徴金等はありませんが、消費者庁からの措置命令の内容が公開されることになります。
以下のような場合が法規制の対象となります。
- 広告主がいるにもかかわらず、広告主を明示しない
- 広告に見えないマーケティング活動で、広告主体が明らかにされない
- 本来の広告主ではなく、名称の異なる主体によって行われる広告・マーケティング活動
口コミをマーケティングに活用するメリット・デメリット
口コミは消費者が自発的に発信する情報であることから、次のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
口コミマーケティングのメリットは以下のような点が挙げられます。
広告と比較して低コスト
商品やサービスの認知度を高めるためのマーケティング施策は、広告や宣伝が主要な方法です。しかし、広告制作費や媒体費用はけっして安くなく、企業の負担は大きくなります。
一方、バイラルマーケティングはユーザーの意思にもとづいて発信される情報であるため、広告に比べて費用がかかりません。広く拡散された場合の費用対効果は広告よりも優れています。
拡散の規模・スピードとターゲティング
バイラルマーケティングの最大のメリットは、SNSや口コミなどを通じて拡散していく特性上、短期間のうちに大規模なリーチを実現できる点にあります。
インフルエンサーのシェアやタイミングのよい呟きがきっかけとなって、一気に数十万単位の再生数を稼ぐようなケースも少なくありません。また、拡散スピードの面でも、口コミやSNSの特性から短期間のうちに拡散がピークに達するのが一般的です。
ユーザーは自身の興味や関心のある情報のみを積極的に拡散するため、ターゲット層に直接届くという点もバイラルマーケティングの特徴です。
信用されやすい(ソーシャルプルーフバイアス)
一般的に、広告によるメッセージは企業がみずからの利益のために発信する情報であるため、消費者はあまり信用しない傾向があります。
それに対し、SNS等で発信される商品やサービスに対する評価は第三者による評価であることから、多くの人から支持されているものは信用しやすいという効果が働きます。
この心理的効果を「ソーシャルプルーフバイアス」といい、バイラルマーケティングはこの効果を狙っています。
フィードバックの収集チャネルとしての活用できる
口コミは、消費者からのフィードバックを収集するチャネルとしても活用することができます。
SNSや口コミサイトは、ユーザーがみずからの体験や意見を自由に発信するため、企業は消費者の生の声をリアルタイムで収集することができます。口コミによるフィードバックは、商品やサービスの改善や新たな商品・サービスの開発に役立てることができます。
デメリット
口コミマーケティングのデメリットは以下のような点です。
ネガティブな情報の拡散
口コミには、商品やサービスの認知度や信頼性を高める効果が期待できますが、同時に、ネガティブな情報が拡散されてしまうというリスクも存在します。
そのため、バイラルマーケティングを行う際には、ネガティブな反応があることも想定した上で取り組む必要があり、ネガティブな情報が拡散された場合に備えて、迅速かつ適切な対応を準備しておくことが重要です。
コントロールできない
バイラルマーケティングでは、SNSを通じて情報が拡散していく過程を完全にコントロールすることが困難な側面があります。情報がひとり歩きし、企業の意図しない方向で反応が広がってしまう可能性が常につきまといます。
たとえば誤情報が流布した場合、その影響を払拭するには多大な労力と時間がかかります。発信する前に、情報の正確性と社会的影響について入念な確認が欠かせません。
拡散後の対応が困難なことを念頭に、リスク回避のための柔軟な状況判断と対応力が求められます。
ステルスマーケティングの違法性
先に述べたとおり、口コミとして発信される情報に対して企業側が介入する場合、景品表示法を遵守する必要があります。
法規制がかかる以前にも、芸能人等を使ったステルスマーケティングに対し、厳しい批判が集まった事例があり、インフルエンサーを活用する場合には注意が必要です。
口コミのプラットフォーム別の特徴
インターネット空間のさまざまなプラットフォームの種類によって、ユーザーの種類や拡散される情報の内容が異なります。バイラルマーケティングに取り組む際には、商品やサービスのターゲットに合ったプラットフォームを選ぶ必要があります。
大手プラットフォーマー
インターネット大手プラットフォーマーには、ユーザーの口コミを掲載できるサービスがあります。主要なものは以下のものです。
Googleビジネス | Googleのビジネスプラットフォーム。Googleマップ上に店舗や企業の情報を掲載することができる。飲食店等の口コミが掲載される |
Amazonレビュー | ECサイトの商品レビュー。購入者の商品評価を商品ごとに見ることができる |
AppStoreレビュー | Apple端末専用のアプリを販売・無料提供するサイト。利用者のレビューが掲載されるとともに、開発者がレビューに回答することができる |
SNS
バイラルマーケティングの主戦場となるのがSNSです。主要なSNSプラットフォームは以下のものです。
写真・動画を主体とするSNS。若い年代層の女性ユーザーが多いことが特徴。視覚的な訴求力が高く、ターゲティングがしやすい | |
X(旧Twitter) | 短いテキストメッセージによるコミュニケーション中心。画像・動画も表示可能。リアルタイム性が高く、ユーザー層も幅広いため拡散効果が高い |
実名登録が原則であることから、精度の高いターゲティングが可能。さまざまな投稿フォーマットを利用可 | |
YouTube | 動画投稿サイト。幅広い年代層にリーチ可能。動画ジャンルにより同質なユーザーが集まる |
TikTok | ショートムービーの動画コンテンツが特徴。若年層のユーザーが多く、ユーザー同士の交流・コミュニケーションが盛ん |
分野別口コミサイト
特定のカテゴリーの商品・サービスに特化した多数の口コミサイトが運営されており、商品・サービス・会社などの利用後の評価や感想、他との比較などが盛んに投稿されています。
食べログ | グルメレビューサイト。飲食店利用者の評価が寄せられる。店舗側も登録することができるため、飲食店のマーケティングに利用可能 |
アットコスメ | コスメや美容に関するソーシャルサイト。コスメアイテムに対するユーザーレビューの他、ランキング、ブログ記事、最新商品情報など企業・ユーザーともに利用される |
en転職(enライトハウス) | 企業の在職者・在籍経験者による、職場に関する口コミ投稿サイト。就職・転職者が対象で個人情報の登録が必要 |
口コミの特性を理解して効果的に活用しよう
口コミのメリットとデメリットで紹介したように、バイラルマーケティングに取り組む際には、口コミの特性を理解しターゲットに合ったプラットフォームを選別することが重要です。
SNS上で情報を発信することで商品やサービスの認知度を高めることができるほか、ユーモアに富んだコメントやユーザーや競合他社とのやり取りを通じて、企業やブランドとの親しみやすさをアピールする場として活用している事例も多く見られます。
口コミの活用はすでに一般的なマーケティング手法であり、工夫を凝らした情報発信が今後も増えていくと考えられます。