【売上予測】エクセルで作成する方法は?
営業&マーケティング部門において販売目標を設定するために必要不可欠な売上予測。
正確な売上予測をタイムリーに作成することで、計画性の高い経営も確立するというものですが、そのために売上予測の専門ツールへの投資と、十分なノウハウが必要と考えてはいませんか?
実は、エクセルに搭載された統計関連の関数や分析機能を使えば、実務に使えるベーシックレベルの売上予測は作成できます。今回はエクセルを使って、売上予測を作成する方法について確認してみましょう。
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売上予測とは?
日本ではいまだに、勘に頼って抽出した根拠のない数値での売上予測を正とみなしている企業が少なくありません。しかし、本来は、正確な売上予測から企業の予算が立てられ、営業目標が定められ、マネジメントは迅速に意思決定ができ、ひいては収益拡大できる、というのがあるべき姿というもの。
売上予測と売上実績の乖離は、企業の存続を揺るがすことにもなりかねません。正確な売上予測を作成することはきわめて重要なのです。
売上予測の定義
売上予測とは、過去のデータから今後の動向を予測すること。あらかじめ定められた期間でのデータに基づき、将来の売上の予測を立てることです。
売上目標との違い
認識していただきたいのは、売上予測は売上目標とは違うということ。売上目標は経営上の展望や理想から抽出される、「目指すべき着地点」なので、あくまでも目安としての位置付けといえます。
一方、売上予測とは、データの分析により客観的に弾き出される科学的根拠からなる予測ですので、人の感情は一切入りません。万一、売上予測に漠然とした期待や希望が含まれてしまったら、もはやそれは売上予測ではありません。誤った経営判断が生じてしまうでしょう。
売上予測に必要なデータ
正確な売上予測を作成するには、さまざまなデータが必要になります。基本となるデータ例を挙げてみましょう。
- SQL(Sales Qualified Lead=見込み客)から契約へ移行する割合(コンバージョン率)
- セールスリードタイム(案件化から受注までに要する期間)の平均値
- 契約期間
- 期間別(月、四半期、年度)売上高
- 製品別売上高
- 現在の案件数
- 契約更改率
- 契約解除率
前提となるのは、これらのデータを効率よく収集すること。必要なデータを効率的に収集することが、売上予測を作成する際の最初の課題と言えるでしょう。
より精度の高い売上予測を得たいのであれば、市場動向や社会状況、競合他社の情報などを押さえておくことも必要となります。
売上予測が確立していない場合の弊害
売上予測が正確でない場合、どのような弊害が起きてしまうのでしょうか。4つの観点で確認してみましょう。
在庫管理
売上予測は在庫管理に影響します。一般的に、売上予測にもとづいて事業計画は行われ、さらに販売計画が立てられた後に、製品の生産量がきまるものです。
売上予測より売上実績が高ければ、在庫不足で生産が追いつかない、という事態につながります。逆に売上実績が低ければ、過剰在庫に悩まされることになるでしょう。
企業の資金繰り
資金繰りも、売上予測に頼って行われるものですが、実績の数値が予測したほど伸びなかった場合には一気に資金不足に陥りかねません。
そうなれば、計画の立て直しのみならず、企業存続の危機に陥る可能性も否めません。
予算管理
売上予測の数値に信頼がおけないと、お金をいくら使えるか確信が持てなくなるため、予算管理が困難になります。
たとえば、営業活動に必要な新規リード獲得のための広告や、イベントのようなプロモーション活動も、予算が決まらないことには迅速に進めることができなくなります。
人員配置
売上予測が正確に作成されていないと、スタッフの配置計画も適切に行えません。人員を増やすべきか削減すべきか、判断するのが難しくなるからです。売上予測が正確であれば、人員の増減もタイミングを誤ることなく判断できるでしょう。
確立できない事情
売上予測の必要性を認識していても、すぐに実装できない事情が、営業組織側にある場合もあります。とくに中小企業では、売上予測のまとめ役は概して営業部長の仕事になるもの。
しかし、管理職として組織をまとめ、自分自身の数字も作らなければならないのに、そのうえ売上予測の数値を作れと言われても、そんな時間は取れないという実情があります。
あるいは、経験値から弾き出した根拠のない売上予測の数値を過信し、それが正しいと誤認してしまっている人も少なからずいるでしょう。
エクセルで売上予測を作成しよう
正確な売上予測を、気軽かつ簡単に作成する方法はないものか、と思われた方もいるでしょう。ここでエクセルの登場です。エクセルの既存機能を使って、ベーシックレベルの売上予測を作成するのはいかがでしょうか。
使っていない企業を探し出すのが困難なほど、いまやエクセルは表計算ソフトのデファクトスタンダードのような位置付けにあります。エクセルが導入されているならば、売上予測作成のための新たな投資は必要ありません。
使える予測シート (Windows版エクセルの場合)
Windows版エクセル2016 から、予測シートという機能が搭載されています。Windows版 Office 365のエクセルでも同様です。
既存データをもとにグラフとテーブルで予測が照会できる機能で、売上データ内の任意のセルをクリックし、「予測シート」ボタンをクリックすると、「予測ワークシート作成」画面が表示されます。
その右下に現れる「作成」ボタンをクリックすれば、予測データと予測グラフが新規ワークシートに自動で生成され、保存することができるのです。
マクロが使えなくても大丈夫
予測シート機能で作成される新規ワークシートの売上予測カラムには、FORECAST.ETS (指数平滑法を利用して将来の値を予測する関数)が自動的に挿入されます。そのため、ユーザーが自ら関数を選択する必要がなく、もちろん、マクロの知識も不要です。
信頼上限と信頼加減も
売上予測と合わせて、信頼上限と信頼加減データ生成に関しては、FORECAST.ETC.CONFINT(指数平滑法を利用して予測された値の信頼区間を求める関数)が、それぞれのカラムに自動的に挿入されます。正しい数値を難なく得ることができます。
テーブルとグラフで見やすく
予測グラフのレイアウトや種類は、ボタンをクリックすることで変更可能。また予想期間や予測開始日の変更も簡単に行えます。予測テーブルで数値の詳細を確認しながら、予測グラフで視覚で把握できるので、初めてエクセルで売上予測を作成する人にも優しいオペレーションといえるでしょう。
追記:Office365 for Macのエクセルの場合
便利な予測シート機能ですが、残念なことにMac版Office 365のエクセルには搭載されていません。また、今後、搭載されるというスケジュールも発表されていません。
2021年3月のマイナビニュースによれば、日本におけるデスクトップOSにおけるWindowsのシェアは約80%なのに対し、Mac OSは15%に留まるため、わざわざ追加開発する必要はないという判断でしょう。
しかしながら、FORECAST.ETSとFORECAST.ETC.CONFINTはOffice365 for Mac のエクセルでもサポートされていますので、少し面倒になりますが、必要な関数をデータシートに手動で張り付ければ、Windows版のエクセル同様、売上予測を作ることができます。
エクセルで売上予測をするメリットと限界
次にエクセルで売上予測を作成するメリットについて考えてみましょう。
メリット
すでに言及した通り、エクセルはほぼすべての企業で導入済みなので、新たな投資が不要ですぐに作業が始められる点が、最大のメリットです。
売上予測を作成するには、表計算機能以外の知識が必要になることは言うまでもありませんが、基本のオペレーションがわかっていれば、気軽に取り組めるでしょう。加えて、Office365のエクセルなら複数人での共同作業も簡単に行うことができます。
残念な点
ベーシックレベルで正確な売上予測が欲しい場合には手軽でよい方法ですが、エクセルはあくまでも売上予測作成の専門ツールでない以上、その機能には限界があります。
まず第一に、エクセルはデータ管理ツールではないので、保存できるデータ量に上限があります。中小企業であれば、元となるデータはそう複雑でなく、大容量でもないのでさほど問題にはならないかもしれませんが、中堅規模以上であれば扱うデータの種類、量も増えるもの。
データが増えれば増えるほど、エクセルのパフォーマンスが明らかに悪化します。また、エクセルでの作業にあまり慣れていない人が、挿入されている数式を誤って壊し、気がついた時には復旧不可能になっていた、というケースも珍しくありません。
より精度の高い売上予測を作成するにはSFAが有効
より正確な売上予測の作成や、ストレスレスな管理を求める場合には、SFA (Sales Force Automation) 導入をお勧めします。SFAは営業活動を支援するツールであり、売上予測に必要な機能はすべて搭載されています。
SFAで売上予測を作成する場合の、ベネフィットをご紹介しましょう。
データの一元化により精度の高い売上予測が可能
SFAを使えば営業メンバーそれぞれの営業活動の内容を一元化できるので、データ入力さえきちんとすれば、各顧客に対するアプローチ方法などの細かい情報まで共有できます。
また、営業組織全体の営業活動ステータスがリアルタイムに把握できるので、より正確な売上予測の作成ができます。
さらに、自動生成される売上予測のグラフや表によりビジュアルなデータ管理も可能で、わかりやすい売上予測が作成可能になります。マクロや関数の知識の有無も問われません。
データ蓄積とデータ統合は得意技、売上予測機能搭載、あらゆるデータソースに接続可能
SFAの場合、営業活動の結果をデータ入力するだけで、売上予測に必要な情報が日々蓄積されていきます。
事業別、ブランド別、商品別、営業メンバー別の売上といったように、さまざまな観点で売上データを確認でき、リアルタイムで管理加工することもできるので、詳細な売上予測を作成することができます。
また、営業活動に関するさまざなデータソースに接続可能で、SFA内で複数データソースを統合した分析を簡単にできる点も、大きなメリットでしょう。
意思決定がスピーディに
正確な売上予測をリアルタイムに作成できれば、予算管理や資金繰りなど、マネジメントの意思決定が迅速にできるようになります。活用可能な売上予測作成のベストソリューションは、SFAの導入と言ってよいでしょう。
勘に頼らない正確な売上予測を作成し経営の健全化を図ろう
勘と経験値のみに頼って作られ、実績と乖離した売上予測は、企業運営に支障をきたします。まずはエクセルを活用し、ベーシックレベルの正しい売上予測の作成から始めてみることも、手段としては有効です。
しかし、精度の高い売上予測には営業支援の専門ツールであるSFAが最適。まずはエクセルを利用して売上予測を作成し、各部門やマネジメントがその有用性を実感し始めたら、SFAの導入を検討してみてはいかがでしょうか。