3時間で実践!営業戦略フレームワーク「4つのSTEP」
企業にとって売上を伸ばすことは重要な使命。
そのために何をすべきか、何をしないべきか、目標設定と目標達成までの取り組み方を考えるのが営業戦略です。
営業戦略の策定は営業マネージャーの重要な役割ですが、同時に頭を悩ませるテーマです。
そこで今回は、“3時間でできる”営業戦略フレームワークを紹介します。
1章 “絶対にしてはいけない”営業戦略の落とし込み方
頭割りでノルマ設定してはいけない!
とある営業部門の目標予算が決まりました。半年間で3億円、毎月5000万円です。そこで営業マネージャーは次のように各営業マンに指示を出しました。
「月間目標予算が5000万円、営業マンが8人だから…5000万円÷8人=625万円。よし、毎月1人頭630万円を目標にがんばろう!」
しかし実は、これは大きな間違いです。
現場の営業マンは「目標630万円だ!がんばれば達成できるだろう!」と考えて行動に移すかもしれませんが、具体的に何をどうするのかは、各人に委ねられています。
もし、目標達成できなかったとしても、その理由は「がんばりが足りない」ということにもなりかねず、結果が出ても出なくても、次にはつながらずに部下は迷ってしまうかもしれません。
このようなことにならないためにも営業戦略を立てることが重要であり、「何を・いつまでに・どれだけすればよいのか」を具体的に示すマネジメントが必要なのです。
「予算の目標」だけ伝えても行動にはつながらない
上記の例にはもう1つ問題があります。
それは「目標630万円」と述べましたが、どのようなプロセスで達成するのか、その根拠がないのです。
本来ならば、目標をどのように達成していくのか、ゴールから1つひとつ丁寧にさかのぼり、その上で行動量に落とし込むべき。
目の前に「目標」だけを与えても、そのプロセスを示していないから営業マンが迷ってしまうのです。
つまり、「目標630万円」はゴール(KGI:Key Goal Indicator)です。
ゴールまでのプロセスを明示し、いつ、どのような行動をすべきかを示すことが必要です。
つまりプロセスごとのKPI(Key Performance Indicator)を設定し、KPIに対する的確な行動量を示す営業戦略を立てることが営業マネージャーには必要なのです。
では、目標からどのように行動量を割り出すのか・・・。
次章でそのためのフレームワークを紹介します。
2章 3時間でできる!営業戦略フレームワーク
目標から逆算するための4つのSTEP
この章では、目標から逆算して具体的な行動を割り出すための方法をご紹介します。何をすべきか、下記の4つのSTEPを順にご紹介します。
- STEP 1 営業プロセスを分解しよう<30分>
- STEP 2 歩留率を出そう<1時間>
- STEP 3 目標から逆算…プロセスごとの数値を割り出す<45分>
- STEP 4 必要行動量を設定する<45分>
STEP 1 営業プロセスを分解しよう
まずは最初のSTEP。ここでは、自社の営業プロセスを分解します。
本コラムではあくまで簡略化するために、下記のような4つのプロセスに分解した例をご紹介します。
ここは自社の状況に応じて、分解するようにしましょう。
(1)初回面談
↓
(2)ヒアリング(案件化)
↓
(3)提案(見積り提出)
↓
(4)受注
STEP 2 歩留率を出そう
次のSTEPは、プロセスから次のプロセスへ移行する際の「歩留率」を算出すること。
ここは少し時間がかかるかもしれません。
例えば、直近の過去6ヶ月の実績などをもとに計算することになります。
具体的に例を挙げてみましょう。
<過去6ヶ月間の実績(例)>
(1)初回面談:1000件
↓
(2)ヒアリング(案件化):200件
↓
(3)提案(見積り提出):160件
↓
(4)受注:48件
某社で振り返ったときにはこのようになりました。
では、その歩留率を計算してみましょう。
<過去6ヶ月間の歩留率>
(1)初回面談:1000件
↓ 【案件化率:20%】
(2)ヒアリング(案件化):200件
↓ 【見積提出率:80%】
(3)提案(見積提出):160件
↓ 【成約率:30%】
(4)受注:48件
過去の件数を振り返って計算するのが大変かもしれませんが、このようにすることで、各プロセスの歩留率がわかります。
この歩留率こそが、あなたの営業部隊の「実力」ということになります。
これを図にまとめると下記のようになります。
STEP 3 目標から逆算…プロセスごとの数値を割り出す
次に、目標金額(ゴール)から営業プロセスを順にさかのぼり、それぞれプロセスごとに必要な行動数を割り出しましょう。
ここでは、目標金額を月間5000万円、平均受注単価を200万円として計算してみましょう。
(1)必要な受注件数を割り出す
5000万円(目標金額)÷200万円(平均受注単価)=25件
…目標達成の「必要受注件数:25件」
(2)「必要受注件数:25件」に必要な「提案(見積提出)」件数を算出する
25件(必要受注件数)=提案(見積提出)件数×30%(成約率)
→提案(見積提出)件数=83.333…≒84件
(3)「提案(見積もり)件数:84件」に必要な「ヒアリング(案件化)」件数を算出する
84件(提案件数)=ヒアリング(案件化)件数×80%(見積率)
→ヒアリング(案件化)件数=104.16≒105件
(4)「ヒアリング(案件化):105件」に必要な「初回面談」件数を算出する
105件(ヒアリング件数)=初回面談件数×20%(案件化率)
→初回面談件数=520.83≒521件
目標から逆算することで、目標達成のためには月間に「初回面談件数が521件」が必要ということがわかりました。
これをまとめると下図のようになります。
下図の右側を見ると、目標から逆算して各プロセスの「必要行動量」を割り出せることが一目瞭然なのではないでしょうか。
STEP 4 必要行動量を割り出す
次に具体的な行動量として、「初回面談件数521件(月間)」から、1人・1日当たりの客先への訪問数と、1週当たりに提出しなければならない見積件数を計算してみましょう。
ここでは、営業マンが8人いる場合として考えます。
(1)1人・1日当たりの訪問数
・521件(初回面談件数)
・105件(ヒアリング件数)
・84件(提案件数)
↓
営業マンは各プロセスを同時に進行していることから、この3つの和を求める。
↓
710件
↓
710件(月間)÷20(営業日)÷8名=4.43件≒1人・1日当たり5件
(2)1週間当たりの見積件数
84件(提案件数)÷4週間÷8名=2.625件≒1週間当たり1人3件
こうして、
(1)1人・1日当たりの訪問数:5件
(2)1週間当たりの見積件数:3件
という行動量を割り出すことができました。
つまり、営業マネージャーが求めるべきは、この行動量です。
これらが実践できていることが、目標達成のための指標となるわけです。
まとめ
今回は目標達成までの道筋を具体的にするための、営業戦略フレームワークをご紹介しました。
この4つのSTEPを活用することで、具体的に算出できるのではないでしょうか。
また、このようなフレームワークを使うことで、毎月・毎期ごとのPDCAを回し、営業生産性向上にも役立てることができるようになります。
チェックするポイントとしては、下図のように「質の向上」「量の向上」「単価の向上」ということになります。
こうした点も考えることで、さらなる営業生産性の向上に役立てることができるでしょう。