セグメンテーションとは?分析に役立つ具体的な方法と手順、大手企業の活用事例を解説
市場や顧客を分析する際には、STP分析というフレームワークを活用する方法があります。セグメンテーションはそのSTP分析手法のひとつに分類されるものです。
セグメンテーションを行うことで、自社の顧客像をより明確にすることができ、より効果的な広告施策や、営業などの戦略立てを行うことが可能になります。
本記事では、顧客分析で重要となるセグメンテーションの基本や市場分析の具体的な方法と事例について詳しく解説します。セグメンテーションの理解を深め、ぜひ自社の顧客アプローチの改善に役立ててください。
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セグメンテーションとは?STP分析との関係
セグメンテーション(segmentation)とは「STP分析」の要素のひとつで、市場に存在する顧客層をさまざまな軸で区分けすることを意味します。たとえば、年代や職業、性格や心理状態などといった、人の属性で区切られることが一般的です。
セグメンテーションについて詳しく理解するために、本章で、「STP分析」やセグメンテーションのメリットなどもあわせて解説します。
STP分析
STP分析は、マーケティング戦略で用いられる市場分析フレームワークです。経営やマーケティング、営業の戦略設計に携わる方はご存じの方も多いでしょう。
参考:STP分析とは?やり方や注意点、活用事例を解説【マーケティング戦略】
STP分析では、顧客理解を深めるために下記の手順で3パターンの分析を行います。
- ① S:セグメンテーション(市場や顧客の細分化)
- ② T:ターゲティング(どの市場、顧客を狙うべきか)
- ③ P:ポジショニング(どう競合と差別化するか)
セグメンテーションは、STP分析の最初の段階で行う分析です。数多の顧客から自社の対象となる市場・顧客を絞り込むことは、顧客分析において、とても重要になります。
顧客分析において他にどのようなフレームワークがあるか気になる場合は、こちらをご参考ください。
参考:顧客分析とは?7つのフレームワークや分析に役立つツールを解説
セグメンテーションを行うメリット
市場や顧客を細分化して絞り込むセグメンテーションには、2つのメリットがあります。
効果的なマーケティング施策の実施
売上や利益の向上に効果的なマーケティングを実施するには、顧客をいま以上に深く理解しなければいけません。
セグメンテーションを行い、いま自社のメイン顧客が誰で、どのようなことに困っているのかを絞り込むことができれば、広告や営業などでどのようにアプローチすればよいかを具体的な施策に落とし込めるというメリットがあります。
経営資源の効率化
市場や顧客を細分化することができれば、自社の顧客となり得ない層に対するコストを削減し、利益率を高めることにも繋がります。
これまでの広告出稿や営業の対象としていた層で、売上にまったく繋がっていない顧客を見きわめる上で役に立つでしょう。
セグメンテーションをいま行うべき理由
これまでは、マーケティング戦略以外でセグメンテーションを実施する機会は少なかったかもしれません。しかし、今の時代、経営や営業を統括する立場も考え方を知っておくことが重要となっています。
ニーズの多様化と変化が激しい
ネットやスマートフォンの普及により、いまやさまざまなモノや情報がインターネット上に溢れています。
企業側においても、消費者ニーズに比例して少なくない変化が常に繰り返されており、トレンドや時流に則ったマーケティングや営業活動に対応するために、さまざまな領域に細分化しているのです。
こうした状況では、企業や消費者は不特定多数の広告プロモーションや営業には見向きもしません。
効果的なアプローチで興味を引くために、セグメンテーションによって自社が狙うべき顧客を細分化して見きわめる必要があります。
分析技術の急速な進化
テクノロジーの発展は、企業活動にもさまざまなアップデートを促しています。たとえば、SaaSによるDXの普及やAIサービスの発展などがわかりやすいでしょう。
これらの普及によって、企業がこれまで蓄積していた顧客データをより簡単に分析できるようになり、顧客の購買行動や興味分野などのより深い顧客分析が可能となりました。
すでに日本でも多くの企業がDX化を推進していることから、従来の方法のままでは、顧客分析力で競合他社に追い抜かれる可能性が非常に高いのです。
ツール導入やAI活用により顧客分析が簡単に行える現代において、セグメンテーションを行った分析はマーケティング活動において必要不可欠なものといえるでしょう。
セグメンテーションの分析方法
本章では、実際にセグメンテーションの流れや軸の決め方についてを詳しく解説します。セグメンテーションを行う際は、こちらをご参考ください。
まずはセグメンテーション対象を定める
セグメンテーションを行うにあたり、当然ながら、細分化の対象を定める必要があります。
ここでは、まず自社が現在提供している商品・サービスを振り返り、いまどういった市場でどのような顧客に対してビジネスを行っているかを再確認しましょう。
さまざまな軸でセグメンテーションを行う
セグメンテーションで区分け作業を行う際は、主に下表にある4つの要素を軸に分類していくのが一般的です。
変数 | 例 | 利用例 |
地理的変数 | 地域・気候・人口密度 | コンビニ |
人口動態変数 | 年齢・性別・職業 | アパレル |
心理的変数 | 性格・価値観・ライフスタイル | 無添加食品 |
行動変数 | 行動パターン | メール開封率 |
地理的変数
主に地域や気候、人口密度などの地理的な要素で区分けします。店舗事業にとっては必須の分析軸で、主にコンビニの戦略立てに用いられています。
たとえば、都心部と田舎ではショッピングエリアの数に大差があるため、売れる商品ジャンルももちろん異なります。
このように、地理的変数が売上の変動に大きな影響を与えている場合は、この軸でセグメンテーションを行いましょう。
人口動態変数
顧客(ユーザー)の性別や年齢、職業といった細かい顧客情報を軸に区分けします。
たとえば、アパレルブランドの場合はレッドオーシャン市場を勝ち抜く必要があるため、人口動態変数で細分化してニッチな層を初期顧客として狙う戦略が効果的です。
心理的変数
顧客の性格や価値観、抱える不安といった、心理的な面を軸として区分けします。
この軸は顧客の持つ課題の要因とも直結する部分があり、セグメンテーションの活用には必須といえるでしょう。
無添加食品を扱うメーカーを例に挙げると、「自然なものを利用したい」というのは便益で、顧客の心理や無添加食品の比較検討シーンを考えると「美味しい食事でダイエットや健康を実現したい」「中国産のものが増えて不安」などがあるかもしれません。
顧客の本質的な課題やニーズを洗い出すには最適な反面、顧客の属性を絞るのは難しいので、人口動態変数とあわせてセグメンテーションを行う方法もあります。
行動変数
その名の通り、顧客の行動シーンや利用頻度から区分けを行います。
たとえば、「メルマガの開封」という行動を軸とすると、開封率の度合いでセグメンテーションを行うことが可能です。
ただし、心理的変数と同様、単一の軸だと細分化しきれないので、この場合は「メルマガから情報収集する頻度」など4象限でセグメンテーションすると良いでしょう。
セグメンテーションで注意すべき「4R」
セグメンテーションはSTP分析の初期フェーズであり、市場や顧客を細分化するものでした。より効果的に市場、顧客の分析を行うには、ただ区分けするだけでなく、次のフェーズである「ターゲティング」を意識することがポイントです。
ターゲティングは「どの市場、顧客を狙うべきか」を決定するフェーズです。失敗なくセグメンテーションを行うためにも、次に紹介する4つのポイント「4R」を念頭に置いておきましょう。
優先順位 (Rank)
セグメンテーションすることで細分化された市場、顧客の中で、自社にとって優先度が高いのはどのセグメントか。
優先順位を定めることで、広告や営業におけるアプローチの効率化などに大きく貢献します。目下、優先すべき顧客は誰かを、明確に順位付けしておきましょう。
有効規模(Realistic)
ターゲティング対象の市場規模はどのくらいなのか、その市場に成長は見込めるのか。
各セグメントごとに調査やトレンド分析を実施しましょう。今後の事業成長が見込めるかどうかを図る上でとても、有効規模は重要な判断材料となります。
測定可能性(Response)
顧客からの反応をデータとして測定して、PDCAを回すことは可能か。
顧客からの反応が得られないと、博打でのマーケティング施策になってしまうため、オンラインや対面で反応をどう集めるかを想定しておきましょう。
到達可能性(Reach)
そのセグメントに自社が商品・サービスを提供することはできるのか。
前提として、顧客にアプローチする手段がなければ認知や購入は生まれません。どのようにして認知・販売していくことになるかの想定を、セグメンテーションのフェーズで行います。
セグメンテーションでの分析事例
フレームワークの解説だけではセグメンテーション分析を理解し、実践することは難しいため、実際に企業が行った事例にユースケースとして触れることも大切です。
本章では、大手企業のセグメンテーションの2つの具体的な事例を解説します。
独自の販売戦略で成功した「ユニクロ」
アパレル業界では、細分化された顧客をターゲットに商品展開を行う戦略が主流でした。
そんな細分化されたトレンドの変化に対応することが必須であった状況の中で、ユニクロはあえて、性別や年齢層を絞らず、普段着「Life Wear(ライフウェア)」を打ち出すことで、独自の立ち位置や強みを確立することに成功しました。
激しいトレンドの変化に疲弊してしまっていた顧客の潜在的なニーズをうまく捉えた戦略であり、これは、セグメンテーションによりさまざまな切り口で細分化したからこそ生まれた成功事例といえるでしょう。
法人向けPCで新たな顧客開拓を実現した「パナソニック」
パナソニックのPCであるレッツノートの販売戦略も、セグメンテーションを上手く活用した事例のひとつです。
1990年代までは法人向けが主流だったPC業界では、2000年代に入ると消費者のインターネット需要が一気に増し、うまく時流に乗ったソニーの個人向けPCなどシェアが拡大していきました。
そこで、パナソニックはあらためて当時のPC市場についてセグメンテーションを行うことにします。
当時は、「法人・個人」と「高機能・低機能」の2軸でスペック競争が激化している状態であり、パナソニックは独自のポジションを模索するためにさまざまな切り口でセグメンテーションを実施しました。
そして、パナソニックが新たに見つけたセグメンテーション軸が、スペックではなく「利用場所」でした。法人向けでも、内勤の室内利用と外回り営業の移動での利用に大きく分かれます。
パナソニックは、外回り営業のビジネスマンを対象に「長時間駆動」「軽量化」を実現したレッツノートを開発し、大ヒットさせました。
セグメンテーション分析で営業を最適化しよう
さまざまな情報・サービスが溢れ、ニーズも多様化しているいま、いかに顧客を深く理解して広告や営業を適切なアプローチ方法で行えるかが重要です。セグメンテーション分析で顧客を細分化して理解を深め、自社サービスにとって最適な広告施策や営業戦略を立てていきましょう。
ただし、セグメンテーション分析にはかなりのデータ量や分析工数がかかってしまうため、会社規模によっては独自で分析を行うにはハードルが高い場合があります。
その際は、CRM/SFAといったツールの導入でセグメンテーション分析を楽に進めていく方法がおすすめです。
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