「ソリューション営業」とは? 企業が実践する方法は?
ここ数年「ソリューション営業」という言葉を耳にするようになりました。
しかし、そもそも「ソリューション営業とは何か?」 また「どうやってやるのか?」が理解できていない方も多いのではないでしょうか。
そんな疑問を持つ方に向けて、この記事ではソリューション営業と従来の営業スタイルとの違いや、実践方法を紹介していきたいと思います。
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ソリューション営業とは? 顧客の課題解決が目的!
ソリューションとは「解決する」という意味を指します。
つまりソリューション営業とは、顧客とのヒアリングを通して課題を汲み取り、その解決策を提供するスタイルです。
ここでヒアリングを行う課題には「顕在的な課題」と「潜在的な課題」があります。
顕在的な課題は、顧客自身がすでに認識している課題です。
質問をすれば、相手も答えてくれるでしょう。
一方で潜在的な課題は、顧客自身は認識していません。
そのため、過去の顧客データなどをもとに、顧客が抱えている課題をこちらで推測して、解決策を提示する必要があるのです。
飛び込み営業やルート営業との違いは?
従来の営業スタイルとしては、すでに取引のある顧客に訪問する「ルート営業」や新規の顧客獲得を目的とする「飛び込み営業」などもあります。
では、こうした営業方法とソリューション営業の違いは、どこにあるのでしょうか。
大きな違いは、ルート営業や飛び込み営業が「プッシュ型営業」であるのに対し、ソリューション営業は「プル型営業」と呼ばれる点です。
プッシュ型(Push=押す)営業は、もともと自社の商品やサービス名を知らない人にこちら側から商品を売り込んでいきます。
一方、プル型(Pull=引き出す)営業は、あくまでも顧客から自発的に行動を起こしてもらうように営業を進めていくスタイルです。
例えばWebサイトやセミナーなどを通して情報を発信して興味を持ってもらい、見込み客自ら問い合わせをしてもらう、といった流れです。
つまりソリューション営業では多くの場合、顧客はすでに何かしらの課題を持ったうえで、製品やサービスに興味を持って問い合わせを行うわけです。
そのため、商談ではその課題をヒアリングし、解決策を提示する姿勢が求められるといえます。
ソリューション営業を実践するプロセス
では、ソリューション営業はどういったステップで取り組めば良いのか。
具体的なプロセスを見ていきましょう。
ステップ1)顧客の分析
まずは商談を行う前に、顧客情報について事前に調査・分析をしておきましょう。
内容としては基本事項から顧客の業界まで、主に以下のとおりです。
- 代表者名・企業規模・事業内容
- 業界の動向・最新事情
- 自社で取引のある類似事例
- 顧客の強み
顧客に関する情報だけでなく業界の動向や、過去取引のある企業のなかで今回の顧客と似たような事業内容の事例はなかったか、といったことまで調べておきましょう。
そして、集めた情報をもとに「顧客の課題は何か?」仮説を立てておきます。
後ほど紹介しますが、事前に立てた仮説を顧客に伝えながら擦り合わせを行うと、解決すべき課題の精度も高まるといえるでしょう。
ステップ2)顧客の課題をヒアリング
前述したとおりソリューション営業のほかの営業スタイルと異なる点は、相手の課題を探り、その解決策を提示するところにあります。
商談においても、顧客自身が現在意識している課題のヒアリングに時間をかけましょう。
同じ企業でも現場の社員と上層部とで、言語化できている課題に相違がある可能性もあります。
そのため、事業を俯瞰して見ている立場の人、とくに事業責任者の抱える課題をヒアリングできると理想です。
ステップ3)仮説の提示によって認識を擦り合わせる
ヒアリングによって浮かび上がった課題、また事前に用意してきた仮説についてどう考えているか、顧客との認識のズレを擦り合わせていきましょう。
認識のズレがあると、当然ながら解決策の提案が的外れなものになってしまいますし、顧客との信頼を失うことにもつながり、成約に至るのは難しくなります。
ステップ4)課題の解決策を提案する
最後は、顧客の課題を解決するための具体的な商品の提案を行います。このとき、自社で売りたい商品の機能をツラツラと述べるのではなく、あくまでも顧客の課題をどう解決するのかに焦点を当てて商品のメリットやデメリットなどを説明していきましょう。
ソリューション営業の事例も紹介!
続いて、他社はどういった取り組みを行っているのか、ソリューション営業の事例を紹介していきます。
事例1)ジェイアイエヌ
これまではメガネといえば「目が悪い人がかけるもの」という認識がありました。
しかし「PCやスマホの画面を長時間見ていると目が疲れる」という一般の人の潜在的な課題を汲み取って、ブルーライトがカットできるPC用メガネを開発した同社。
メガネをかけない人にまで、市場を広げました。
そんな同社では法人向けに、集中力を可視化するメガネ「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を使って、企業の生産性を可視化して高めるIoTソリューション「JINS MEME BUSINESS SOLUTIONS(ビジネス・ソリューションズ)」を展開しています。
JINS MEME BUSINESS SOLUTIONSは、従業員の集中状態を可視化するだけでなく、その効果を「高める」までをワンストップのサービスとして提供するソリューション。
働き方改革の推進やマインドフルネスの導入といった、企業の生産性を高める取り組みが進むなかで、その取り組みの成果を見える化し、より集中できる仕事環境を整えるなどの狙いがあるといいます。
「働き方改革やマインドフルネスは取り入れているけど、その成果が見えにくい」といった企業が持つ課題を解決するためのソリューションといえるでしょう。
参考:https://news.mynavi.jp/article/20170123-jins_meme_for_business/
事例2)富士ゼロックス
複合機を法人向けにリースし、メンテナンスを一括で提供することで事業を拡大させてきた富士ゼロックス。
同社では研修会社の支援を受けて、担当者のソリューション営業のスキルを教育するプログラムを導入しています。
このプログラムはソリューション営業を
- 事前準備
- 興味喚起
- ニーズの共有
- 提案
- 受注
- 設置検収
- アフターフォロー
という7つのステップに分け、それぞれで必要な行動を習得させるというものです。
また、単に複合機をリース販売する「製品の営業」のみならず、働く環境全体を整えることを目的とし、さまざまな企業と協同しながらテレワークの導入支援や契約プロセスのデジタル化なども提案。
自社製品のみならず他社の製品も提案できるようにすることで、より顧客の課題を解決するための最善の案が提案しやすい、ソリューション営業を行っています。
事例3)NTTコミュニケーションズ
NTTコミュニケーションズでは、電話やネットワーク回線の導入といった通信事業者としての提案だけでなく、「ワークスタイル変革」や「クラウドマネジメント」「グローバル経営力強化」などの視点から、顧客の課題を解決できる製品を複数用意し、ソリューション営業を行っています。
さらに同社ではSFA(営業支援ツール)を導入し、全世界に広がる拠点での営業データが一元化できるように管理。
顧客の分析や管理を効率化しながら、ソリューション営業の質を高めているといいます。
顧客の潜在的課題を見つけ出す「インサイト営業」も
ソリューション営業では課題解決の視点が重要になるわけですが、顧客自身が課題に気づいていないケースもあります。
つまりは潜在的な課題です。
そこで用いられるのが「インサイト営業」という手法。
インサイト営業では目の前の顧客からヒアリングを行うのみならず、他の類似案件も分析したうえで、隠れた課題を見つけて解決する姿勢が求められます。
NTTコミュニケーションズの事例でも紹介しましたが、他案件の管理や分析などを、SFAツールなどを使って一元化・効率化する必要もあるでしょう。
なお、ソリューション営業との違いを強いて挙げるとすると、自社製品による課題解決という決められたゴールから逆算してヒアリングを行うのではなく、顧客の客観的な事実をもとに課題を探って解決策を提案するスタイルであるということ。
そのため、課題を探った結果、自社で取り扱っている製品では解決できずに、他社製品を紹介することにもなるかもしれません。
とはいえ、自社製品を紹介できずとも課題に寄り添う姿勢が信頼関係の構築につながり、顧客のなかで新たな課題が生じたときに、自社製品を導入してくれるといった可能性もあります。
ソリューション営業はあくまでも「課題解決」が目的
今回紹介したソリューション営業は顧客の「顕在的な課題」と「潜在的な課題」を把握し、その解決策を提供するのが大きな目的です。
とくに顧客の潜在的な課題を発見する目を養うためにも、他案件の分析なども大切となります。
こうした他案件の管理・分析は前述した通り、SFAツールなどの導入で効率化できる可能性があることも覚えておきましょう。