SWOT分析のやり方を解説! 企業戦略に活かす方法
企業が成功を目指すには、自社とその市場環境の詳細な分析が欠かせません。新規事業の展開や既存ビジネスの課題解決に特に有用なのが、SWOT分析とその応用形態であるクロスSWOT分析です。この記事では、SWOT分析の基本から応用まで、図解を交えてわかりやすく解説します。
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SWOT分析とは何? 基本について解説
SWOT分析は、企業やプロジェクトの強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4つの要素を分析するフレームワークです。
この分析手法では、企業の内部環境(強みと弱み)と外部環境(機会と脅威)を同時に考慮し、それらを相互に関連付けて考えます。これにより、企業は自社のビジネス戦略立案やプロセスを見直すことができます。
さらに、SWOT分析と他のフレームワークとを組み合わせることで、より深い洞察や具体的な戦略を導き出すことも可能です。たとえば、PESTLE分析(政治、経済、社会、技術、法的、環境要因を分析)と組み合わせることで、外部環境のより詳細な分析が行えます。
SWOT分析を行う目的とは?
SWOT分析の目的は、企業やプロジェクトの全体像を把握して、改善点やビジネスチャンスを見つけることです。このフレームワークで自社の「強み」となる部分はさらに強化し、弱みとなる部分はリスクマネジメントを行う、といった戦略を立てることができます。
SWOT分析のメリットとデメリット
SWOT分析は戦略策定の基盤となる手法です。メリットとデメリットを理解することが重要になります。
メリット
企業の強み・弱みを明確にすることができる
SWOT分析を通じて、企業が持つ優位性、ブランド力、人材などの強みを明確に認識できます。同時に、資本構造、技術の遅れ、人材不足などの弱点も明らかになります。これにより、企業は自身の資源を最も効果的に活用できる方向性を見つけることができます。
機会や脅威といった外部環境の変化への対策を考えやすくなる
外部環境の要素、たとえば市場の動きや競合他社の戦略、規制の変更などを分析することで、新しいビジネスチャンスや潜在的なリスクを早期に捉えることができます。企業は事前に対策を講じることが可能となり、リスクを最小限に抑えつつ機会を最大限に活用する戦略を練ることができます。
戦略的な意思決定が行いやすくなる
SWOT分析を使って企業の内部環境と外部環境を総合的に考慮することで、よりバランスの取れた戦略的意思決定をしやすくなります。具体的には、どの商品を強化すべきか、どの市場に進出すべきか、どのようなパートナーシップを結ぶべきかなど、最適な選択肢を検討できます。
デメリット
SWOT分析は実施者の主観や経験に大きく依存する
多様なバックグラウンドや視点を持つ人々が分析に参加していない場合、一面的な視点、先入観に基づいた分析となり、誤った戦略につながるおそれがあります。また、影響力の大きいメンバーの意見に寄ってしまう傾向もあるため、注意が必要です。
SWOT分析を行った時点の情報に基づくため、変化に迅速に対応できない
市場環境や競合状況は常に変動しています。SWOT分析が古いデータや情報に基づいていると、現在の状況に合わない戦略や判断を下すリスクがあります。
一般的なカテゴリで捉えるため、具体的なアクションプランへの変換が難しいケースがある
詳しくはこちらのページで解説していますのでご覧ください。
SWOTとはどういう分析方法? 目的ややり方、活かすポイントをご紹介
SWOT分析の要素
内部環境(横軸)
内部環境とは、企業が直接コントロールできる要素であり、以下のような項目を含みます。
- 人材のスキルセットや教育レベル、モチベーション
- 保有する特許や研究開発能力、製造技術
- 資金調達能力、財務健全性、利益率
これらの要素は企業が自らの戦略で改善・強化が可能であり、企業の強みと弱みに直結しています。
外部環境(横軸)
外部環境とは、企業が直接コントロールできない要素です。
- 市場の成長率や市場の需要と供給
- 消費者の嗜好、競合他社の戦略や市場シェア
- 製品の特性
- 政府による業界規制、環境基準、輸出入制限
などが主な要素です。これらの要素は企業の機会と脅威に直接影響を与え、戦略の方向性を大きく左右します。
プラス要因(縦軸)
プラス要因とは、企業が利用して成長や利益を上げることができる要素です。
- 独自の技術
- ブランド力
- 優秀な人材
などの「強み」と、
- 市場の成長
- 競合が見逃しているニッチな領域
- 規制の緩和
などの「機会」があります。
マイナス要因(縦軸)
マイナス要因とは、企業にとって障害となる、または損失を招く可能性がある要素です。
- 財務力の不足
- 技術の遅れ
- 人材の不足
などの「弱み」と、
- 新規参入企業
- テクノロジーの進化による産業構造の変化
- 厳格な規制
などの「脅威」が考えられます。
SWOT分析のやり方を具体的に紹介
Strength(強み)
企業が持つ「強み」とは、その独自の価値や優位性を指します。具体的な分析手法としては、まず自社の主要な製品やサービスをリストアップします。次に、それぞれの製品やサービスが持つ独自性や競争力を評価してください。
この過程で、顧客からのフィードバックや市場調査を用いて、自社が他社とどのように差別化されているのかを明確にします。たとえば、高いブランド価値、特許技術、または優秀な人材などがその強みとなるでしょう。
Weakness(弱み)
自社が改善すべき点や競合他社に劣る要素を「弱み」と定義します。具体的な分析手法としては、内部の業績データやKPI(Key Performance Indicator)を分析し、従業員やステークホルダーからのフィードバックを集めます。
さらに、競合分析を行い、自社が劣っている点を特定します。たとえば、財務の不安定性、技術の遅れ、マーケティング力の不足などが含まれます。
Opportunity(機会)
外部環境に存在する、企業が利用できる可能性や市場を「機会」と定義します。具体的な手法としては、市場調査を行い新しい市場や顧客層を特定します。また、政治的・経済的な動きや規制の変更をモニタリングし、業界のトレンドや新技術の動向を調査します。
これにより、新しい市場の発見、規制の緩和、または顧客の未満足なニーズといった機会を探ることができます。
Threat(脅威)
外部環境からくるリスクや障害を「脅威」と定義します。具体的な手法としては、競合他社の動きを密に監視し、社会的・政治的なリスクを評価します。たとえば、貿易戦争や政治的不安定性などがそれに該当します。
さらに、業界のニュース、レポート、発表を定期的にチェックすることで、新しい競合製品の登場、規制の強化、市場の縮小などの脅威を早期に察知することが可能です。
SWOT分析が出来たらクロスSWOT分析で深掘りを行う
クロスSWOT分析はStrength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の4要素をそれぞれかけ合わせます。基本的なSWOT分析が提供する情報をさらに詳細に掘り下げ、具体的な戦略やアクションプランに変換するための手法です。
この分析によって、SWOT分析の一般的なデメリット、たとえば「具体的なアクションプランへの変換が難しい」といった点を補完することができます。
SO戦略(Strength-Opportunity)
企業が自身の「強み」を最大限に活用して、外部環境の「機会」を引き出すための戦略です。たとえば、企業が高いブランド価値を持っている場合、その強みを活用して新市場での製品ローンチを行うことが考えられます。
WO戦略(Weakness-Opportunity)
外部環境が良好であるものの、企業自体が内部環境に課題(弱み)を持っている場合に採用される戦略です。たとえば、財務が不安定でも規制緩和によって新市場への参入が可能な場合、資金調達を行って進出する、といった例が挙げられます。
ST戦略(Strength-Threat)
企業がポジティブな内部環境を持ちつつ、ネガティブな外部環境に直面している場合に採用されます。この戦略では、外部の「脅威」に対抗するために企業の「強み」を活用します。例としては、特許技術を活用して競合他社の新製品に対抗する方法があります。
WT戦略(Weakness-Threat)
企業が「弱み」を持ち、さらに外部環境も不利な場合に採用される戦略です。この戦略の目的は、リスクを最小限に抑えることです。具体的には、マーケティング力が不足している場合、競合が多い市場から撤退して、ニッチな市場に集中する、といったアプローチが考えられます。
実施手順
1.戦略マトリックスの作成
SWOT分析の結果をもとに、SO、 WO、 ST、 WTの各戦略に該当する要素をマトリックス形式で整理します。
2.優先順位の設定
各戦略の中で最も効果が期待できるもの、または最も緊急性が高いものを特定します。
3.アクションプランの策定
選定した戦略に基づき、具体的なアクションプランを作成します。
4.実施とモニタリング
アクションプランに従って実施を行い、その結果を定期的に評価します。
クロスSWOT分析で自社事業の競争力を最大化する
戦略策定のステップ
クロスSWOT分析の結果を基に、具体的な戦略を策定します。この段階では、SO、 WO、 ST、 WTの各戦略に基づいて、事業の方向性や重点的に取り組むべきアクションを明確にします。
たとえば、新製品開発、市場拡大、コスト削減などの具体的な目標を設定し、それに対する戦術とアクションプランを作成します。
戦略の実行とモニタリング
策定された戦略を実行に移します。この過程では、KPI(Key Performance Indicator)を設定して、戦略の効果を定量的に測定できるようにします。定期的なモニタリングによって、戦略が目標に対してどれだけ効果的であるかを評価し、必要な調整を行います。
フィードバックループの重要性
戦略の実行過程で得られるフィードバックは、次の戦略策定に生かす重要な情報源です。このフィードバックを再度、クロスSWOT分析に取り込むことで、戦略の柔軟性と効果性を高め、企業の競争力を持続的に強化します。
SWOT分析とクロスSWOT分析で戦略を最適化する
ビジネスフレームワークの一つであるSWOT分析と、それをより発展させたクロスSWOT分析について解説しました。
これらの分析手法は、経営戦略を策定する際に非常に有用です。とくに、企業が蓄積した内部データと、外部環境の調査結果を組み合わせることで、より精度の高い戦略が可能になります。
戦略の実行とその結果に基づくフィードバックループを通じて、戦略の柔軟性と効果性を高めることができるため、継続的なブラッシュアップと調整を行い、企業の競争力を最大化していきましょう。