テレワークの導入に使える助成金・補助金をまとめて紹介【2024年度版】
働き方の多様化が進み、テレワークやリモートワークも定着してきました。この流れは今後も続くと考えられますが、新たにテレワークを導入する際の費用負担は、DXを推進していく上での無視できないハードルとなります。
テレワーク導入を対象とした助成金・補助金を活用することで、投資負担を軽減することができます。この記事では、テレワークに関連する支援制度をご紹介します。
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テレワーク助成金とは?返済義務や補助金との違い
助成金とは、国や地方自治体が特定の目的で支給する返済不要の交付金です。テレワークに特化した助成金はいくつもあり、導入費用の一部や全部を補填できます。 テレワーク導入の費用は100万円以上かかる場合も多々あるため、助成を受けるメリットは大きなものとなるでしょう。
国や自治体の企業に対する支援制度としては、助成金のほかに補助金があります。助成金は一定の要件を満たせば原則的に支給されるものがほとんどであるのに対し、補助金にはあらかじめ採択件数や予算が設定されており、審査を経て支給が決定されます。
また、補助金は後払いであるものが多く、設定された事業期間に要した費用を後から補填する形となるため、事業を行うための自己資金は用意しておく必要があります。
全国または東京に拠点のある企業が対象の助成金(2024年5月時点)
IT導入補助金
経済産業省が、中小企業などの課題解決やニーズに合ったITツールの導入補助をしてくれる補助金です。対象地域は全国ですが、補助の対象者などが設定されています。対象者と支給額、支給の対象とみなされるものを確認していきましょう。
対象者
対象となるのは、会社法上の中小企業と小規模事業者に該当する企業ですが、業種ごとに資本金と従業員数が決まっているので公式サイトをよく確認しましょう。一例をあげると、卸売業者なら資本金が1億円までで、常勤の従業員が100人までです。
支給額
業務のデジタル化を目的としたソフトウェアやシステムの導入費用が対象です。テレワークに必要なITツールが対象となるのは通常枠であり、補助率1/2以内、補助額5万円以上〜450万円以下となっています。
支給対象
IT化する業務プロセスが指定されており、それらと関連づけたテレワークの業務システムであることが必要要件です。導入にかかわる汎用・自動化・分析ツールも対象になります。申請に際しては、公式ページを利用しての事業計画の作成や第三者による確認が必要です。
テレワーク定着促進フォローアップ助成金
東京都が実施する「テレワーク課題解決コンサルティング」を受けた事業者を対象に、コンサルティングのなかで提案された導入ITツールの費用を助成するものです。すでにテレワーク制度を導入している都内の中堅・中小企業が対象となります。
2024年度(令和6年度)については、5月8日(水)より受付が開始されています。
対象者
東京都内に本社か事業所があり、常時雇用の労働者が2名以上999名以下の企業が対象です。
支給額
助成率は2分の1で、限度額は100万円になっています。次に紹介する支給対象それぞれに対して支給額が独立しています。
支給対象経費
経費の助成対象はツール等とその導入にかかわる費用です。
【ツール等】
- コミュニケーションツール(ソフト、クラウドサービス)
- 管理ツール
- テレワークを可能にするためのシステム
【助成対象経費】
- ツール等の購入費・使用料
- ツール等の導入に伴う委託費(初期費用・保守管理費用)
- ツール等に付随する周辺機器の消耗品費・委託費・賃借料
IT・IoT導入補助金
東京都足立区が独自におこなっている補助金です。企業の場合は、本店登記が足立区でないと対象になりません。2024年度(令和6年度)については7月1日から募集開始が予定されています。
対象者
足立区で1年以上事業を営む個人事業者か中小企業者が対象です。事業活動の拠点が原則、足立区でないといけません。
支給額
補助率は3分の2で、IT活用は最大75万円、IoT活用は最大150万円まで補助されます。
支給対象経費
【IT活用】
- 自社ECサイトの作成にかかる費用
- 顧客管理システムの導入
- 3Dプリンターの導入
- オンライン予約管理あ自動見積作成など
- クラウドサービスの利用料
- 専門家相談経費 など
【IoT活用】
- モニタリングシステムの導入
- 遠隔操作可能なセンサーの導入
- WEBカメラの導入 など
サテライトオフィス設置等補助事業
東京都が、市町村部(23区外)に新たなサテライトオフィス設置の費用を補助してくれる制度です。サテライトオフィス設置には大きな費用がかかりますが、1,000万円単位の整備費や2年間の運営費が補助されます。細かな条件は公式サイトで確認できます。
2024年度(令和6年度)第1️期の締め切りは7月31日までとなっています。
なお、サテライトオフィスを含めたテレワークの専門用語は後述する「助成金のためにテレワーク関連用語を覚えよう」で詳しく解説するので、参考にしてください。
対象者
対象となる事業者は、企業・団体・NPO法人などを含む「民間コース」と区市町村・外郭団体などを含む「行政コース」の枠があり、民間コースはサテライトオフィスが23区外に設置する新たな事業場であること、行政コースは23区を含む東京都内のサテライトオフィスを対象としています。
支給額
最大補助額は3,600万円(整備改修費:2,000万円・運営費800万円/年 ✕ 2年)補助率2/3となっています。
支給対象
複数企業の労働者が利用できる共用型のサテライトオフィスの整備改修費(交付決定から6ヶ月以内)と運営費(工事完了の日から2年間)が支給対象です。
各都道府県下の企業が対象の助成金(2024年5月時点)
コロナ禍においては、ステイホームを念頭においたテレワークのための助成金が数多く設けられましたが、それらのほとんどは終了しています。
2024年5月現在、自治体が主体となりテレワークの促進を行っている制度としては、移住やサテライトオフィスの開設などを目的とするものが挙げられます。
実施されている支援制度としては次のようなものがあります。
ワーケーション展開費用助成金(北海道富良野市)
北海道富良野市が実施する助成金で、市外の企業職員や個人事業主が将来的な移住や2拠点生活、サテライトオフィス設置などを検討する場合に、富良野市への訪問・滞在費用の一部を助成する制度です。
テレワークのための費用を直接助成する制度ではありませんが、将来的に富良野市に居住してテレワークを行う企業社員やフリーランスを想定した制度といえます。
次のような要件が設定されています。
【親子・企業の社員・フリーランスが将来的な移住や2拠点生活の検討を目的として、賃貸住宅などに2週間から1ヶ月以内滞在する場合】
- 滞在費用(家賃・宿泊費)のうち、10万円を上限に2/3以内の費用を助成
- レンタカー費用のうち、5万円を上限に1/2以内の費用を助成
【企業の社員・フリーランスがサテライトオフィス進出・コミュニティスペース創出・新規ビジネスの検討を行う場合】
- 2泊以上の滞在に対し、1名あたり道外3万円、道内2万円を定額助成
このほか、就農体験や企業研修、ワーケーションを実施する際に、旅費を助成するメニューなどが設定されています。
栃木県移住支援事業(栃木県)
東京圏から県内への移住・定住を促進するための支援制度です。東京23区に在住、または、東京圏から23区内の就業先に通勤していた人を対象としています。
テレワークで対象となるのは、所属先企業からの指示・命令などによるものではなく、自己の意志で栃木県内に移住し、生活の拠点として所属先企業の業務を引き続き行う場合です。
対象の要件と助成額は次のとおりです。
【対象要件】
- 東京23区に在住していた方、または、東京圏から東京23区に通勤していた方(栃木県に住民票を移すまでの直近10年間のうち通算5年以上、連続して1年以上)
- 2019年4月23日以降に栃木県の自治体に転入したこと
- 申請時点で転入後1年以内であること
- 転入先の自治体に支援金申請日から5年以上継続して居住する意思があること
【支援金額】
- 単身で移住の場合:60万円
- 世帯で移住の場合:100万円
- 18歳未満の子供がいる世帯での移住の場合:100万円+子育て加算
山梨県産業集積促進助成金:オフィス等の設置(山梨県)
山梨県に拠点を持たない企業が県内にオフィス・研究施設・社宅などを設置する場合、投資経費や住宅手当などの一部を助成する制度です。対象要件と助成率は次のとおりです。サテライトオフィスを設置する場合に活用したい制度といえます。
【対象要件】
- 県内にオフィス、研究・研修施設を新たに設置し、操業すること
- 操業から1年以内に県外からの転勤者または新規雇用者が5人以上となり居住すること
【助成率】
- 新たにオフィス、研究・研修施設、社宅を設置した場合:投下固定資産額の5%(固定資産税を除く)
- 賃貸でオフィス、研究・研修施設、社宅を設置した場合:賃貸料、通信回線利用料の1/2(3年間)
- 転勤者、新規雇用者に住宅手当を支給した場合:住宅手当の1/2(3年間)
- 賃貸したオフィス、研究・研修施設、社宅を回収した場合:改修経費の1/2(3年間)
【限度額】
- 新たにオフィス、社宅等を設置した場合:1,500万円
- 賃貸の場合:年500万円(最大3年間)
助成金のためにテレワーク関連用語を覚えよう
テレワーク導入費用の助成金を得るには、テレワークの関連用語を知っておく必要があります。助成金の対象となる条件の文章中に、サテライトオフィスといったテレワーク特有の言葉が出てくるからです。
関連用語の意味を正しく理解した上で対象条件や成果目標を達成しないと、助成金は支給されません。たとえば、サテライトオフィス勤務が助成金の対象なのに、在宅勤務ができる環境を構築しても助成金はもらえないのです。そこで、テレワークの定義や関連する言葉を理解していきましょう。
なお、テレワーク導入のステップや必要性を経営層に説明する際に役立つ情報、成功・失敗事例などは、以下の記事に記載しています。助成金は重要ですが、そもそもテレワークを導入するなら、まず営業部からが定番といった情報は知っておくべきでしょう。
参考:テレワーク(リモートワーク)とは?3つの働き方と導入メリット、事例を紹介
テレワークとは場所と時間にとらわれない働き方
一般社団法人日本テレワークによると、
テレワークとは情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方
引用元:テレワークとは│一般社団法人日本テレワーク協会
とされています。
要するに、パソコンやテレビ会議システムを使って、一定時間オフィス以外の場所で働く方法です。在宅勤務をイメージするかもしれませんが、実際には以下3つの働き方がテレワークに分類されています。
- 在宅勤務
- モバイルワーク
- サテライトオフィス勤務
上記以外にリモートワークや在宅ワークといった言葉もありますが、これらは一般的にテレワークや在宅勤務と同じ意味です。上記3つの働き方の名称は総務省でも使われており、各助成金や補助金でも使われています。したがって、これら3つの働き方を理解すれば問題ありません。
また、生産性向上や働き手不足への対応といったメリットを得るには、自社に最適なテレワークのスタイルを選ぶ必要もあります。上記3つのテレワークの詳細を見ていきましょう。
在宅勤務
在宅勤務とは、ノートパソコンやネット回線を使って在宅で勤務する働き方です。自宅での育児や介護と仕事を両立しやすいので、ワークライフバランスを向上できるというテレワークのメリットをより大きくできます。
ただし、従業員が自宅で作業する際にも費用は発生します。業務に必要なパソコンやネット回線、光熱費、Web会議システムなどで、これをだれがどのくらい負担するかは、就業規則で決めなければいけません。
こうした在宅勤務の費用を補助してくれる助成金や補助金も複数あります。自社で在宅勤務を取り入れるなら、ぜひテレワークの定義と必要なものを覚えて、助成金を申請してください。
在宅勤務についてより詳しくは、以下の記事が参考になります。
参考:在宅勤務は人手不足に効くテレワークの1種!詳細やメリットを解説
モバイルワーク
モバイルワークは移動中の電車内や顧客先、飲食店などで一時的に働くテレワークです。外出の多い職種に適したテレワークで、生産性の向上に期待できます。
もっとも、セキュリティの観点からネット回線や業務システムはきちんと自社で用意したものを使ってもらうべきですし、ファイル共有システムなどでも費用が発生するのが現状です。
モバイルワークついては詳しくは、以下の記事を参考にしてください。
参考:モバイルワークとは?営業担当者に教育すべきセキュリティ対策を解説
サテライトオフィス勤務
サテライトオフィス勤務は、自社以外のオフィスで働くスタイルです。
働く場所はレンタルオフィスやコワーキングスペースなどに分類されますが、法人向けに提供されているオフィスと理解しておけば十分でしょう。もちろん、企業として場所を借りてサテライトオフィス勤務用のオフィスにするのもひとつの手段です。
なお、助成金には自社でオフィスを構築する場合を対象にしたものから、レンタルオフィスなどでの勤務を対象にするものまであります。どのような形態が自社にとって最善かを見定めるには、以下の記事をお読みください。
参考:サテライトオフィスとは?働き方改革で企業を成長へ導く方法
まとめ:テレワーク助成金で費用負担を軽くしよう
テレワークの概要や用語、導入費用、各種補助金を紹介してきました。
今後、労働人口が減ることを考えると、 テレワークはいずれ多くの企業で導入されます。ライバル企業に差をつけられないように、今回紹介した情報を活かして、費用負担を軽減しながらなるべく早く導入を進めましょう。
ただし、助成金を活用してテレワークを導入しただけで、すベてがうまく回るわけではありません。新しい働き方には、新しい工夫や管理方法、コツが必要だからです。テレワークをうまく活用する方法なども提供しているので、あわせて参考にしてください。