バイラルマーケティングとは?メリットや成功事例・バイラルの意味も解説
インターネットが普及した現代において、Webマーケティングは業種を問わず必要不可欠な活動となっています。
なかでも、自社の認知を拡大するうえで特にコストパフォーマンスに優れている手法が「バイラルマーケティング」です。通常の広告よりも圧倒的にすばやく、広範囲に情報を伝播させることができるため、多くの有名企業で取り入れられています。
そこで本記事では、バイラルマーケティングの基礎知識やメリット、企業の成功事例などを紹介します。「バイラル」という単語を使った用語の意味もあわせて解説するので、Web媒体を活用してビジネスを成長させたいとお考えの方はぜひ参考にしてください。
そもそもバイラルとは?
バイラル(viral)は、もともと「ウイルスの」「ウイルス性の」という意味を指す英単語です。「ウイルスに感染するように」人から人へ情報が広まる様子をあらわす際に用いられます。
「バイラル」という単語を用いた用語はさまざまなものがありますが、以下ではWebマーケティングでよく使われる3つの用語の意味を解説します。
バイラル広告
バイラル広告とは、商品・サービスのプロモーションを口コミ効果で広く伝播させる手法のことです。高額の宣伝費をかけ不特定多数に発信するTVCMとは対照的に、人から人へ話題が広まる仕組みを利用して情報を発信します。
主にSNSでの情報拡散を狙って制作されるため、バイラル広告には「インパクト」や「話題性」が必要不可欠になります。
バイラルメディア
バイラルメディアとは、バイラルコンテンツを発信・拡散させることで集客を狙うWeb媒体のことです。XやFacebookなどのSNSで話題になっているコンテンツを寄せ集めた「まとめサイト」とイメージするとわかりやすいでしょう。
バイラルメディアの代表例としては、BuzzFeed Japan株式会社の提供するBuzzFeedが挙げられます。
バイラルコンテンツ
バイラルコンテンツとは、インターネット上の口コミで急激に拡散され、話題を呼ぶコンテンツのことを指します。主にSNSを通じて拡散されることが特徴です。
多くの人の興味を惹く伝播性の強いコンテンツを、意図的に作り上げることはかんたんではありませんが、バイラルコンテンツには高い宣伝効果が期待できます。
バイラルマーケティングとは?
バイラルマーケティングとは、口コミやシェアなどを通じて商品・サービスの情報を「自然に」広く拡散させるマーケティング手法のことです。
SNSへのバイラルコンテンツの投稿や、Webサイトへの「SNSでシェアする」「友だちに共有する」などのボタンの設置も、バイラルマーケティングの基本的な手法になります。
以下では、バイラルマーケティングがさまざまな企業に普及した背景と、よく混同される「バズマーケティング」との違いを解説します。
バイラルマーケティングが普及した背景
バイラルマーケティングという用語は、アメリカのベンチャーキャピタル「DFJ」が、Hotmailのマーケティング戦略を説明する際に用いたことで生まれたとされています。Hotmailは、Webメールサービスの先駆けとして日本でも広く活用されていた無料メールサービスです。
Hotmailを開発した当初のHotmail社は、すべてのメールに「Get your own free Hotmail at www.hotmail.com(無料のHotmailを手に入れよう)」という一文を挿入しました。その結果、1年以内にユーザー数が2万人から100万人に増加したのです。
Hotmailを利用しているすべてのユーザーが無意識に宣伝を行ったことで、企業を急成長させたといえるでしょう。Hotmail社の成功は多くの組織にとって手本となり、バイラルマーケティングが広く知られるきっかけとなりました。
このように、バイラルマーケティングは「自然に」人から人へと情報が伝わることを目指すことが特徴です。「ユーザーが他人に共有したくなるようなメッセージとはどのようなものか」を掴み、シェア行動を誘発させる仕組みを構築することが重要になります。
出典:Small Business Trends「History of Viral Marketing」
バズマーケティングとの違い
バズマーケティングもバイラルマーケティングと同様、口コミを活用してユーザーに情報を拡散するマーケティング手法です。
バイラルマーケティングは「自然に」人から人へ情報が伝わるための仕組みづくりに注力するのに対し、バズマーケティングは「人為的に」口コミを発生させたうえで、バズらせるためのアピールを企業がみずから行います。
バイラルマーケティングは、Hotmailの事例のように情報拡散をユーザーに委ねることが特徴です。「メールへHotmailを宣伝する一文を加える」といった仕掛けは施すものの、情報を伝播させる行為に企業は積極的に関与しません。
一方、バズマーケティングは情報拡散に対して企業が積極的に介入することが特徴です。よくある事例としては、SNSを活用した「プレゼントキャンペーン」や「ハッシュタグキャンペーン」などが挙げられます。
バイラルマーケティングは口コミが自然と広まるように種をまく、バズマーケティングは企業みずからがアピールに参加してバズを狙う、と捉えるとわかりやすいでしょう。
バイラルマーケティングのメリット
バイラルマーケティングを取り入れることで、企業はどのような恩恵を得られるのでしょうか。以下では、バイラルマーケティングに取り組むことのメリットとして代表的なものを2つ紹介します。
直接的な広告よりも訴求力が高い
バイラルマーケティングは、人から人へ情報を伝える手法です。そのため、企業から消費者へ直接広告を届けるよりも、説得力のあるメッセージとして受け止められやすくなります。
たとえば、あるクラウドサービスをターゲットが認知するきっかけを考えてみます。たまたま見つけたWeb広告で認知した場合と、知り合いからシェアされて認知した場合とでは、どちらが好意的に受け止められやすいかは自明でしょう。
さらに、人は通常「紹介」や「シェア」をする相手を選びます。まったく興味がなさそうな人ではなく、興味を示しそうな人に対して推奨を行うため、受け手にとってその情報は迷惑になりづらいのです。
このように、バイラルマーケティングによって伝わる情報は、企業が直接的に行う宣伝よりも訴求力が高くなります。結果として、ターゲットから好意的な反応を得やすくなることがメリットです。
投資収益率(ROI)が高い
バイラルマーケティングは、一般的な広告・宣伝と比較して投資収益率(ROI)が高くなります。企業が発信した魅力的なコンテンツが注目を集めれば、広告費用をかけずとも自然と情報が広まり、多数のユーザーへアプローチできるためです。
コンテンツ制作費用は必要になるものの、Web広告や屋外広告などの継続的に発生する広告宣伝費は最小限に抑えられるため、長期的な目線ではコストの削減につながるでしょう。
加えて、情報の拡散には企業の認知度・ブランド力を向上させる効果もあります。結果として長期的な業績向上につながる可能性があるため、マーケティング活動全体のコストパフォーマンスが高まります。
バイラルマーケティングの成功事例
実際にバイラルマーケティングに成功している企業の事例を知ることで、自社へ取り入れる際のイメージがより具体的に湧くようになります。
以下では、有名企業によるバイラルマーケティングの取り組み例を紹介します。身近なところでバイラルマーケティングの手法が使われていることがわかるでしょう。
Apple|iPhoneの自動挿入メッセージでシェア率の高さを示す
出典:Apple
Apple社のスマートフォン「iPhone」から送信されたメールには、「iPhoneから送信」というメッセージが自動的に挿入されます。
実際に目にする機会も多く、もはや違和感もないほど見慣れている方も少なくないでしょう。これは、典型的なバイラルマーケティングの手法です。
前述したHotmailの事例とよく似ていますが、iPhoneユーザーがメールを送信するだけで、自動的に受信者へサービスを宣伝していることになります。
もともとこのメッセージは、iPhoneの認知拡大を目的として挿入されたものと思われますが、現代においては「iPhoneユーザーが世間の多数派である」ことを証明する役割を果たしているといえるでしょう。
iPhoneユーザーが増えるほどに情報が伝播する仕組みである一方、企業は情報拡散に対し直接的に関与していません。「自然に」情報が広まることを狙った仕組みづくりであり、バイラルマーケティングの代表的な施策といえます。
Dropbox|新規ユーザーの約半数を友人紹介によって獲得する仕組みを構築
出典:Dropbox
Dropboxは、2008年にサービスの提供を開始し、2016年までに5億人以上のユーザーを獲得するという驚異的なスピードでの成長を遂げたクラウド型のストレージサービスです。
Dropboxのシェアが急速に拡大した要因のひとつは「友人紹介サービス」。紹介元と紹介先それぞれにストレージの追加容量をプレゼントする企画を実施したことで、サービスを友人に紹介するユーザーが増加しました。
結果として現在は、Dropboxの新規ユーザーの44%が既存ユーザーからの紹介により生まれる状態になっています。人から人へ情報を伝播させるための戦略を練り、自然にユーザーが増える仕組みを構築することで、バイラルマーケティングを成功に導いた好例です。
バイラルマーケティングは「仕組みづくり」が要
バイラルマーケティングは、人から人へ情報が伝播することを利用して自社の認知度・ブランド力の向上をめざす手法です。通常の広告と比較して費用対効果が高いため、Webマーケティングに対する予算を十分に確保できない場合でも取り入れやすい施策といえます。
SNSを活用したマーケティングはBtoC企業にはもちろん、BtoB企業にとっても非常に有効です。ユーザーが「シェアしたい」と思えるコンテンツや仕組みを構築するために、まずは自社の顧客の分析から始めてみましょう。
顧客の属性やニーズを把握することで、狙いを定めるべきターゲット像が明確になり、よりユーザーに刺さる施策を検討できるようになります。