営業の仕事を助けるSFA(営業支援システム・ツール)とは? ~ SFAの基礎知識
「下がり続ける売上を改善したい」「競合他社との競争になかなか勝てない」「顧客に提案しても成果に結びつかない」「営業マン個人のスキルに差がある」・・・あなたの会社の営業には、こんな悩みはありませんか?
低成長時代の今日、多くの企業が自社の営業力を課題視していると言われています。
しかし、具体的な解決策を見つけられない企業は少なくありません。
インターネットで調べてみると、どうやら「SFA」という営業を支援するシステムがあるらしい ―― 藁にもすがる思いでSFA(営業支援システム・ツール)を導入してみたものの、効果が表れない ―― そんな声もよく耳にします。
SFAは、導入するだけで効果が期待できる魔法の道具ではありません。
一方でSFAを上手に使いこなし、目覚ましい成果を上げている企業があるのも事実です。
SFAとは、いったいどんなシステムなのでしょう?
今回は、SFAの基礎を駆け足で学んでみましょう。
営業活動と業務を効率化するSFA(営業支援システム・ツール)
SFAは、英語の「Sales Force Automation」の略語で、日本ではもっぱら「営業支援システム」と呼ばれています。
もともとは1990年代前半に米国で提唱され、日本でも20年以上にわたって利用されてきました。
SFA(営業支援システム・ツール)は当初、バブル期の終焉により不況の最中にあった日本企業に、営業の仕事を助けるツールとして大いにもてはやされました。
しかし、SFAの黎明期において、SFAを十分に活用して導入効果が得られたという日本企業はほんの一部に限られました。
その大きな理由は、米国と日本の商習慣の違いだと言われています。
Sales Force Automationを直訳すると「営業部隊の自動化」という意味になります。
日本で使われている営業支援システムという言葉とはずいぶん印象が異なりますが、それには訳があります。
米国における営業は、マーケティング部門の一機能とされることが多く、マーケティング担当者が戦略に基づいて営業を動かすことが一般的です。
そこで営業部隊の自動化こそが、営業力強化の最善策だと考えられたのです。
それに対して日本における営業は、企業の売上・利益を支える社内の中心的な存在と位置付けられています。
企業によっては、非常に強い権限を持っている場合もあります。
その結果、日本企業の営業部門は、各営業マンの経験と勘が重視される属人的な組織になりました。
そんな営業には業務を標準化・自動化するSFAの考え方が受け入れられず、多くの日本企業でSFAの導入効果が得られませんでした。
しかし、長引く不況によって市場が停滞・縮小してくると、これまでの属人的な営業スタイルは通用しなくなります。
そんなときに、SFAが再び注目されました。
もちろん、過去にSFAを導入して効果が得られなかった企業には“SFAアレルギー”があります。
そのため、SFAに頼らずに営業力を強化しようと動く企業もありました。
とはいえ、営業が目指すゴールは、端的に言えば売上・利益目標を達成することです。
売上・利益をアップさせるには「案件(顧客数)を増やす」「顧客単価を上げる」「営業コストを削減する」という施策が考えられますが、案件を効率的に管理しながらコストを削減するにはITを利用することが最適です。
それならば、営業の仕事を助けるSFAを上手に使うことで効果が期待できるのではないか ―― ということで、SFAの導入機運が高まったのです。
最初は営業部隊を自動化するという米国的な発想だったSFAも、日本企業の営業スタイルに合わせて進化しました。
現在は単なる営業の仕事を助けるツールではなく、営業プロセスの最適化を含む営業力強化の取り組み全体をSFAと位置付けるようになりました。
つまり、SFAとは営業活動と業務を効率化してコストを削減し、営業力強化を図るための手法や概念を指しているのです。
SFAとCRMの違いと共通点
営業力強化を実現するソリューションとして、SFA(営業支援システム・ツール)とともに語られることが多いのが、CRM(Customer Relationship Management)です。
SFAとCRMは、もともとまったく別のソリューションとして誕生しましたが、現在は一まとめにされることが多くなっています。それはなぜでしょうか?
営業支援システムとしてのSFAには、例えば予算と実績を比較して目標達成率と達成状況を見る予実管理機能、案件ごとの進捗状況を把握する案件管理機能、営業活動を記録・報告する機能などが備わっています。
それら一連の営業プロセス全体をシームレスにつなぎ、営業活動と業務を可視化することで抜け・漏れをなくして営業力を強化するのが、SFAの役割です。
属人的だった営業プロセスを標準化することで営業マンのスキルを底上げし、誰でも同じように営業できる体制をつくり上げることができるのも、SFAのメリットです。
SFAはいわば「営業を“見える化”する」ものなのです。
一方、「顧客関係管理」と日本語訳されるCRMは、詳細かつ膨大な顧客情報、および顧客との関係の管理を基本機能としています。
どの企業にもある顧客データベースは会社名、部署名、担当者名などの定量情報を記録するものですが、CRMでは購買目的、志向やニーズなどの定性情報を含めて顧客属性として管理します。
また、購入した製品・サービス、取引数量・金額などの購買実績、頻度や予算、次期購入見込みなどの拡大余地に関する情報も登録します。
これらの情報を蓄積して社内で共有し、その情報を分析して顧客満足度を高めることが、CRMの役割です。
CRMはいわば「顧客を“見える化”する」ものです。
このように、機能や役割に違いがあるのに一まとめにされるのには理由があります。
それは、いずれのソリューションも主な利用対象が営業であるという点です。
SFAは営業活動や業務を効率化するために営業部門で活用しますが、CRMもまた顧客と最も近い接点のある営業部門で最も多く活用されます。
また、営業活動において顧客の存在は重要な要素であり、SFAでも顧客の詳細な情報を管理・分析することが求められます。
そのため現在は、顧客情報の管理・分析を中心に据えながら、顧客との商談状況や訪問スケジュール、売上見込みなど営業プロセスを一元的に管理するソリューションが主流になっています。
正確にはマーケティングからサポートサービスまでの幅広い業務で活用されるCRMに、営業を支援するSFAが一機能として含まれていることになりますが、いずれにせよ現在提供されている多くのソリューションは、SFAとCRMの両方の役割を果たすことが一般的です。
営業マネージャーの役割はプロセスマネジメント
営業活動や業務を支援し、営業力強化に役立つSFAですが、営業支援システムを導入すれば効果が表れると考えるのは大きな間違いです。
当然のことながら、営業支援システムはツールにすぎず、営業プロセスの見直しも含めて正しく運用しなければ、決して効果は得られません。
営業力強化に向けて営業プロセスを見直すには、どこから取り組めばよいのでしょうか。
営業力強化を喫緊の課題とする会社には共通する問題点がありますが、その大本は実は営業マネージャーにあります。
営業マネージャーが本来の役割を果たしていないために、営業が上手く行かないのです。
だからまずは営業マネージャーの役割を見直すことから始めます。
一般的な企業の営業部門は、営業マネージャーに部門内の売上・利益などの数値目標を課します。
しかし、結果を管理することだけが営業マネージャーの役割ではありません。
営業マンがどんな営業活動・業務を行っているのか営業プロセスを管理すること ―― プロセスマネジメントこそが営業マネージャーの重要な役割なのです。
今の日本企業ではトップセールスの営業マンがマネージャーに昇格するケースが少なくありません。
トップセールスを実現するには、必ずその営業マンのプロセスに“成功の秘訣”(ノウハウ)があります。
したがって、営業マネージャーが最初にやるべきことは、自分がトップセールスの営業マン時代に培ってきたノウハウを分解して“見える化”することです。
営業の仕事を分解して棚卸しし、営業マンがやるべき仕事、他に任せられる仕事に仕分け、やるべき仕事だけを誰でも実践できる、再現性のある営業プロセスに組み立て直します。
そして、それぞれのプロセスにKPI(Key Performance Indicators=目標の達成度合いを計る定量的な指標)を設定します。
もちろん、営業プロセスは一度に改善することはできません。
設定されたKPIで効果を測定・検証し、次の改善につなぐというPDCAサイクルを回します。
これが“営業を科学する”ということであり、SFA(営業支援システム・ツール)はそうした営業マネージャーのプロセスマネジメントを支援するとともに、各営業マンが営業プロセスを正しく遂行するためのセルフマネジメント機能を提供します。
ただ、これができる営業マネージャーは極少数に限られます。
ほとんどの営業マネージャーは勘やひらめきで行動してきたため、ノウハウを再現することが苦手だからです。
そんな営業マネージャーにとっても、SFAは有効です。
SFAの中には、システムを導入する前に業務を分解・定義してくれる営業コンサルティング、業務標準化の進め方などを支援するトレーニングなどのサービスを提供するソリューションもあります。
これを活用すれば、より早く確実に営業力を強化することが可能です。
「簡単」「サポート」「実績」で選ぶ
ここまで営業プロセスの見直し、営業マネージャーの役割など、SFAを導入・運用する際に取り組むべきことを説明してきました。
では、実際に営業の仕事を助けるツールとしてのSFAソリューションを導入するには、どんなポイントを押さえればよいのでしょうか?
SFAソリューションには、社内に構築するオンプレミス型のパッケージからSaaS型のクラウドサービスまで、多種多様な製品・サービスが存在します。
自社に最適なソリューションを選ばないと、「導入したのに使い物にならない」「営業マンが誰も使わない」といったことになりかねません。
SFAの導入に失敗しないためには、以下の3つのポイントに留意しましょう。
(1)操作が「簡単」
まずは、ぱっと見の第一印象が「使いやすそう」と感じるか画面構成をチェックします。
そして、入力が簡単かを確認してください。
一覧から選んでいくだけで、あっという間に入力が完了するような簡単さが何よりも重要です。
営業マンの仕事は本来、顧客と商談することですから、営業マンが苦痛に思うほど大量の情報の入力を強要するツールは間違いなく使われなくなります。
また、商談中や商談直後の移動中に使えるスマートデバイス対応も欠かせません。
わざわざ会社に戻ってPCに入力するのは効率が悪く、対応が遅れて機会損失につながるおそれがあるからです。
(2)「サポート」が充実
SFA(営業支援システム・ツール)を導入する際にツールを入れただけでは意味がないことは、すでにご理解いただけたと思います。
ツールを使って営業プロセスを改善していくことがSFAの目的です。
そのためには、SFAソリューションの選定時に“売りっ放し”ではないか、十分に確認します。
企業の営業部門にSFAが定着して効果が得られるまでには、試行錯誤が必要です。
そのため、SFAソリューションベンダー側にも中長期的なアフターフォローが求められます。
どのベンダーも、ソリューションを売ろうとするときにはあの手この手で自社の優位性を語ります。
しかし本当に重要なのは、導入後にもSFAを通じて企業の営業力強化を支援するしっかりとしたサポート体制が用意されているかどうかです。
SFAの選定に失敗しないためには、ベンダーのサポートを最重視すべきと言っても過言ではありません。
(3)豊富な「実績」
SFAソリューションが信用に値するかどうか、それを客観的に確認できるのは、導入実績です。
企業の営業がSFA(営業支援システム・ツール)の導入効果を得るには、試行錯誤を繰り返してノウハウをためていくことが大切ですが、それはそのままソリューションを開発するベンダーにも当てはまります。
つまり、導入実績が豊富なソリューションであるほど、ツールは安定して稼働し、営業プロセスを改善するさまざまな知見が蓄積されています。
こうしたソリューションを利用すれば、営業力強化の精度は確実に高まります。
同業他社がどのようにして営業の課題に取り組み、その手段としてどのようにSFAを活用して営業力強化に成功したのか。そうした導入事例を取り寄せて確認してみましょう。