営業戦略の立て方とは?企業の事例10選や自社の事業拡大につなげるポイントを解説!
営業の世界で成功を収めるには優れた戦略が不可欠ですが、「正解」となる戦略はひとつではありません。業界や顧客層、そして自社の強みによって、最適な戦略は大きく変わります。
では、どのように自社に合った戦略を見出し、実践すればよいのでしょうか。本記事では、さまざまな業界の成功事例を紹介します。さらに、事例から学んだ知見を自社の事業拡大にどう活かすか、具体的なポイントも紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
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営業戦略とは
営業戦略とは、企業が目標とする売上を達成することに向けた行動計画の方針や方向性を示したものです。
売上の確保は事業を行ううえで最も重要な目標です。上の図のように、さまざまな事業を行う企業では立てるべき戦略の概念は階層構造を持っています。
MVV(経営理念)にもとづいて自社の事業ドメインへの資源配分と優先順位を定める経営戦略(全社戦略)が決まり、この経営戦略にもとづき、事業単位ごとの事業戦略が立てられます。
そして、各事業を展開する部門(機能)ごとに立てられる戦略を機能戦略といい、営業戦略はこの機能戦略のひとつに位置づけられます。
営業戦略は、どんなターゲットにどんな方法で商品やサービスを販売していくかの大枠を決めることであり、マーケティングとも密接に関連する重要度の高い戦略概念です。
営業成績を高めるためのコツを知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
営業戦略の事例を知る4つのメリット
営業戦略の事例を知るメリットは、4つあります。
それぞれについて、順に確認していきましょう。
事業を成功させるポイントを知ることが可能
自社の事業を成功に導くポイントを得られることは、事例を知る大きなメリットです。
事業運営にはさまざまな困難がありますが、成功事例を知ることで障害を乗り越えるヒントを得られます。円滑な事業運営にも役立つことでしょう。
多くの企業は、同業他社の事例をよく知りたいと思っています。同業ならば、経営や事業を運営する際にぶつかる課題の共通点も多いためです。
他社の事例を知ることで、自社の事業を成功に導く重要な情報が得られます。
失敗に至った原因を事前にチェックできる
2点目のメリットは、事例に記された過去のストーリーにあります。というのも、成功に至る道筋の途中には、数々の失敗があるためです。
実際に多くの成功事例は、「以前は○○といった課題があった。営業戦略を改めることで解決できた」といったストーリーで進められています。
このように、結果的に失敗に至ってしまった原因やプロセスを事前にチェックできることは、重要なポイントです。
成功する確率をアップできる効果が期待できます。
また、営業戦略を成功させるには、フレームワークに沿って分析することが大切です。自社に適した営業戦略を立てるためのフレームワークや具体的な方法について知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてください。
参考:フレームワークを使った営業戦略の立て方とは?今さら聞けない基礎知識と実践
視野を広げるヒントとなる
視野を広げるヒントとなることも、事例を知る重要なメリットに挙げられます。
どれだけ業務を知っているベテランでも、気づいていないポイントは多々あるもの。むしろ、業務スタイルを確立したことが視野を狭める原因となり、競合に敗れる原因にもなり得ます。
事例を知ることで、これまで気づかなかった発想を得られることは大きなメリットです。よいアイデアを営業戦略に取り入れることは、業績のアップと会社の成長につなげるきっかけとなります。
参考:できる営業マンの7つの共通項|今の時代に求められる営業スキルも解説
生産性アップにつながる
営業戦略の事例を学べば、自社の生産性を大幅に向上させられます。他社の成功事例から効率的な営業プロセスを学び、自社に適用することで無駄な手順を省けるでしょう。
たとえば、それぞれの会社の事例から最新のテクノロジーやトレンドを知ることで、時間と労力の削減につながります。
成功した事例だけでなく、失敗からも学べる点が多いことも認識しておきましょう。失敗事例から学ぶことで同じ過ちを避け、試行錯誤の時間を短縮できます。
他社の知見を自社の状況に合わせて適切に応用することが、営業力強化の鍵となるのです。
営業活動における生産性アップに興味がある方は、以下の記事も参考にしてみてください。
参考:営業の生産性を向上を実現させる取り組みとは?業務改善のための方法
一般消費者向け企業の事例6選
まず一般消費者向け企業について、6つの事例を取り上げ解説します。
衣料品チェーンA社
衣料品チェーンA社が持つ最大の特徴は、取り扱う製品が自社ブランドで占められていることです。これは、製品の企画から製造・販売までを自社で完結させる「SPA」により可能となりました。
また、以下の施策を取ることにより、良質の商品をお値打ち価格で消費者へ提供しています。
- 材料の大量仕入れによるコスト抑制
- 販売状況による生産調整の実施
- 品質向上への取り組み
もうひとつの特徴として、普段着の製造・販売に特化していることが挙げられます。
機能性に特化した商品も多く、着やすさも魅力となって、A社は多くの方に支持されるブランドとなっています。
家電量販店B社
家電量販店B社は、実店舗とECサイトとの連携を強化する企業です。B社のECサイトは品数の豊富さだけでなく、無料でスピード配送を行うことも魅力。
たとえば、自社配送エリアでは、最短で2時間半での配達を実現。ECサイトで購入した商品を、店舗で受け取ることも可能です。
一方で、年商1,000億円前後の店舗もあり、稼ぐ力が高いことも特徴のひとつです。
販売員の専門性も高めています。
また、数多くのテナントが入居する商業施設も展開しています。B社は2025年度までにネット通販の比率を5割に引き上げるとともに、全国で翌日配達の実現を目標としています。
実店舗とECサイトの連携と、圧倒的な規模を武器に、今後の流通業界を牽引する企業であり続けることでしょう。
うどんチェーンC社
うどんチェーンのC社は、ブランディングに成功し売上を伸ばした外食企業です。主な理由として、以下の3点が挙げられます。
- 本物にこだわった商品開発を行う
- 時代の変化に対して迅速・柔軟に対応する
- テレビCMを効果的に活用する
麺の製造は国産小麦を使い、店舗ごとに粉から製麺を行い、出来たてのおいしさにこだわってきました。これをブランド価値として積極的にPRし、消費者の理解を得られたことで、業績のV字回復を実現しています。
ファミリーレストランD社
ファミリーレストランを運営するD社は低価格競争に背を向け、高付加価値を指向して成功させています。
以下の取り組みは、その一例です。
- 2017年から全店舗で24時間営業を廃止
- 来店数の多い時間帯に従業員を再配置し、顧客満足度をアップ
- 一般的なファミリーレストランよりも高めの価格帯に設定
- 素材や健康にこだわり、家庭では味わえない本物の料理を追求
- ITを積極的に活用して業務を効率化
- 接客のレベルアップなど付加価値の向上にも取り組む
上記の取り組みにより、客単価だけでなく業績もアップしました。なかでも、24時間営業を廃止した結果、7億円の増収となったことは特筆すべきポイントです。
ホテルチェーンE社
E社は、いまや日本全国に10万室を持つ代表的なホテルチェーン。ビジネスマンを主な客層としつつ、シティホテルやリゾートホテルも運営しています。
そのコンセプトは、「高品質・高機能・環境対応型」。宿泊客のかゆい所に手が届くサービスを提供する一方、宿泊日によって料金を大きく変動させるなど、独創的な試みに取り組むことが特徴です。これらはトップの強い意思と責任を取る姿勢により、実現できていることも見逃せません。
フリマアプリ運営のF社
F社は2013年に創業し、フリマアプリのサービスを開始した企業です。
スマホ1台あれば手軽に不用品を売ることができ、安心して取引できるサービスとして開始。2年あまりでアプリが2,000万以上ダウンロードされました。
その後も出品や発送など、フリマに関するさまざまなプロセスにおいて利便性を追求したサービスを提供しています。2021年6月期の決算では、創業以来初めての連結営業黒字となりました。
2020年2月にはまだF社のサービスを使っていない潜在顧客が約3,600万人いると公表し、実店舗の開設などさらなる顧客の開拓を行う方針を示しています。
メーカーやBtoB企業の事例4選
ここからはメーカーとBtoB企業の事例を2つずつ取り上げ、どのような営業戦略を取ったのか確認していきます。
化粧品メーカーG社
G社は約150年の歴史を持つ、世界でも代表的な化粧品メーカーです。
G社の事業からは顧客の支持を得た、強いブランドが生み出されました。その成功体験に安住せず、事業環境に応じた変化を続けています。事業の選択と集中、男性化粧品分野への進出などは、代表的な例に挙げられます。
またG社は、グローバル化も推進しています。海外におけるブランドイメージの統一は、その一例です。
さらに、2021年7月にはデジタルやIT事業を担当する新会社を設立。化粧品の拡販に資するデジタル技術の活用や、グループ企業全体におけるIT機能の拡充にも取り組んでいます。
営業活動を効率的かつ生産的に行ううえで、デジタル化の流れは避けられません。営業のデジタル化やDX化については、こちらの記事もご覧ください。
参考:営業DXとは?デジタル化との違いや導入方法まで解説【事例も紹介】
酒造メーカーH社
酒造メーカーH社は縮小が続く日本酒市場において、ブルーオーシャン戦略を取ることにより業績を急拡大した企業です。
H社は、どの酒造メーカーも満たしていない顧客のニーズに目を向け、日本酒好きでなくても美味しいと感じられるブランドを作り上げました。
加えて、杜氏の制度を廃止してオペレーションを標準化し、誰でも美味しい日本酒を製造できる仕組みに変えたことも特筆すべきポイントに挙げられます。
新たな分野を開拓することで激しい競争にさらされることなく、売上を大きくアップできた点は大きな強みです。
H社の売上額は2010年から2017年にかけて8倍以上となり、大きく業績を拡大しました。
法人向け通販サービスI社
法人向け通販サービスI社は「小規模事業所でも、翌日には必要なオフィス用品が手に入る」というコンセプトで事業を開始し、現在でも多くの支持を得ています。
オフィスで使われるさまざまな商品を取り揃えることで、総務担当者の負担軽減に貢献しています。
加えて、I社はネット通販の大手企業と差別化するため、社内に蓄積した顧客データを外部企業と共有するサービスを運営しています。
これにより、顧客の声をメーカーに届けられ、製品やサービスの改善につながりました。また、他社との協働も活発に実施しています。
ステークホルダーのWin-Winを目指すことも、営業戦略の特徴といえるでしょう。
ITサービスJ社
ITサービスを運営するJ社は、かつてはもっぱら大手SI企業の案件を請け負う下請け企業でした。
赤字であっても今後の関係を考慮して受注せざるを得ない状況は、下請けにとっての代表的な悩みに挙げられます。
赤字であっても今後の関係を考慮し受注せざるを得ないことは、下請けにとっての代表的な悩みに挙げられます。
このような経営に限界を感じ、J社は開発の効率をアップするサービスや保守の引き継ぎサービスなど、エンドユーザーから直接受注するサービスの強化に尽力してきました。
現在では、広報部門を設置するとともに、2017年からは採算性重視の方針に転換しています。
稼げる会社になったとともに働きやすい環境を提供できるようになったことも、戦略の転換による好ましい結果といえるでしょう。
営業戦略の事例を事業拡大につなげる4つのポイント
優れた営業戦略の事例を知ったからといって、そのまま自社にも適用すれば成功するとは限りません。
事業拡大につなげるためには、これから解説する4つのポイントを押さえることが重要です。しっかり把握し実行して、売上のアップにつなげましょう。
事例はアレンジして取り入れる
ここまで紹介した事例は、あくまでも参考程度とすることがおすすめです。事例で紹介した企業の規模や事業環境は、貴社とは異なるためです。
単に成功事例をそのまま適用した場合は、ほとんどのケースでなんらかの不都合が発生し、失敗につながってしまいます。
事例を自社の事業に活かすためには、以下のポイントを押さえることが重要です。
- 成功事例の良いところを抽出する
- 成功につながる考え方を読み取る
- 失敗する方法を把握し、その方法を避ける
上記を踏まえたうえで、自社の事情にあわせてアレンジすることが成功への秘訣です。また、よい事例が複数あれば組み合わせることも、おすすめの方法です。
戦略と戦術の違いを理解する
戦略と戦術の違いを理解することは、事業の成功に不可欠なポイントです。戦略の失敗は戦術でカバーできないからです。
ここで、営業活動におけるそれぞれの違いを確認してみましょう。
- 戦略:営業活動の方向性や、目指すべき目標を定める
- 戦術:戦略に基づき、営業活動の具体的な進め方を考える
たとえば「最高品質の商品を提供し、ブランド価値を守る」戦略を取れば、「できるだけ定価販売し、利益率を高くする」という戦術が選ばれやすくなります。扱う商品が高級品の場合はこれでよいでしょう。
一方で、一般に普及する消耗品などでこのような戦略を取ると、いくら営業しても売上が伸びないかもしれません。なぜなら、消費者の多くは、より安価で購入することを求めているからです。
このように、戦略は企業業績を左右する重要なものです。可能な限り経営陣が関与するなど、トップダウンで進めるとよいでしょう。
また、自社を取り巻くすべての環境を把握したうえで、慎重に決めることをおすすめします。
良いところだけでなく課題にも目を向ける
事例に記されている課題、すなわち失敗事例に目を向けることも重要です。なぜなら、失敗事例を自社で実行した場合は、自社の事業も失敗につながる可能性が高いためです。
はじめから失敗する可能性が高い方法を選び実行することは、経営資源の無駄です。事例を見る際には、良いところだけでなく、課題もチェックしましょう。
失敗した理由を知ることでその選択肢を選ばずにすみ、成功する方法を選べる確率が上がります。
営業支援ツールを活用する
効率的な顧客管理と営業活動の最適化には、営業支援ツールの活用が不可欠です。CRMツールを導入すれば、顧客情報の一元管理と営業プロセスの可視化が実現し、チーム全体で情報を共有できるようになります。
また、近年ではAIを活用した営業支援ツールも登場しており、顧客の行動予測や最適なアプローチ時期を判断するのに役立ちます。このようなツールを活用することで、より効果的な営業戦略を立てられるでしょう。
さらに、データ分析ツールを活用して営業活動の効果測定や改善点の洗い出しを行えば、戦略の精度を高められます。
このように、適切な営業支援ツールを選択し活用することで、営業チームの生産性とマーケティング効果を向上させることにつながるでしょう。
なお、効果的な営業ツールの選び方については、こちらの記事で詳しく解説しています。
参考:2023年10月最新!おすすめの営業ツール10選と選び方を解説
営業戦略策定に不可欠なCRM/SFA
営業戦略を策定する上では、既存顧客の属性を分析し、それぞれの顧客との関係性を理解しておくことが大切です。それが新たな顧客を獲得するための重要な判断材料となるからです。
新規開拓の営業手法についてより詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
参考:新規開拓営業とは? 15の営業手法と顧客獲得のコツを徹底解説
CRMやSFAには、営業戦略の策定に役立つさまざまな分析機能が備わっています。上手に活用し、自社で強化すべきポイントを把握しましょう。
特に、日本国内で事業展開する企業には、「eセールスマネージャー」の活用をおすすめします。
eセールスマネージャーはいつでもどこでも簡単に入力でき、リアルタイムで情報が反映されることが特徴。導入実績5,500社以上、継続率95%以上という実績はその証明です。
導入により、業績アップの契機となることでしょう。
よい事例を参考にして事業の成功につなげよう
営業戦略の事例は、成功につながる道筋を教えてくれるだけにとどまりません。取るべきでない手法や、事業運営に役立つ気づきも得られます。
重要なことは、たんに事例をまねするのではなく、よい手法を選んで自社の営業戦略に反映させること。
過去の知恵から学んだうえで自社向けにアレンジを行い、事業の成功と業績拡大につなげましょう。